桜よ、咲け!


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「うわぁ、うわぁ、うわぁ!!」
「すっげ。すっげー。スッゲー!!!」

私、浅葱空は猫士にゃふにゃふと手を繋いだまま万歳万歳うわぁすっげ!と騒ぎながら桜の木を見上げていた。サクさん発案の桜を花見しに来たのだが、本当に綺麗でびっくりだ。
「サクさん、凄い。綺麗です」
サクさんがいないのはわかっていても思わず讃えずにいられなかった。

桜が。命が咲き誇っていた。
風がそよぐ度に桜がざわめき、それはまるで生命の合唱。
そこにあるのは、美しい桜色の雪。
ただただ生命力に圧倒された。

こんなにも心が揺れている。ざわめいて、叫んで。

「空、だいじょーぶ?」
「何が?」
「泣いてるよ」
「ほえ?」

知らぬ間に涙が頬を伝っていた。
右手にアヒルちゃん、左手ににゃふにゃふの手を握って、涙を拭えなかったので右腕で拭った。
心が自然に泣いていた。
にっこり笑って……笑ったら何だか嬉しくて嬉しくて仕方がなくなってきた。
「にゃふにゃふ!」
「んー?」
「嬉しいね」
にゃふにゃふはちょっとびっくりした顔をして目をぱちくりさせた後、桜のような優しい笑顔で
「うん。嬉しいね」
ここにも満開の桜がひとつ。
「ねぇ空、そろそろお団子食べよう~」
そう言って、私の手を握っていない左手でお団子が入ったバスケットを掲げた。

桜はただ咲いているんじゃない。
見た人の心にも桜を咲かせてくれる。
桜を見上げて、にっこり笑えば桜は貴方の胸に咲く。

桜の下でのお団子は格別。
「うまー」
「おいしー」
皆にお団子配れないかなーとか考えつつうまーおいしーとパクパク食べる。
たらふく食べてゴロンと横になる私逹。
にゃふにゃふのお腹を枕に桜を見上げていたら、にゃふにゃふが耳を悄々させて言ってきた。
「でもさ~。散るのは残念だね~こんなに綺麗なのに」
「だいじょーぶだよー。散ったらまた新しい芽が育つから。」


何度でも。何度でも。
桜が咲いたら。咲き誇ったら。
貴方の胸に咲いた桜と一瞬に吹雪を起こして散るがいい。
悲しみも、切なさも、苦しみも、怒りも無理に忘れなくていい。
忘れずにただ桜と一緒に咲き誇り散ればいい。
そして、また新しい命を、蕾を、夢を。未来を。
大地に。
貴方に。
私に。
レンジャー連邦に。

名もなき愛を咲き誇って。

桜よ、咲け!

(文:浅葱空)
(絵:矢神サク)

最終更新:2009年03月31日 23:51