法官試験解答


設問1 なぜ法をもて人を管理する必要があるかを答えなさい。

 理由:社会秩序の維持。
 異なる価値観や利害関係をそのまま放置しておけば激しい対立につながる。これを防ぐために調整機能を働かせ、各人に相互協力のための自覚的努力を促すべく、法による人の管理は必要となる。

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設問2 未必の故意とはなにか、答えなさい。

 行動の結果を予測してはいるが、その結果を確実なものとするための努力まではしていない状態。

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設問3 殺人を犯したのに死刑ではなく懲役刑になることが多いのはなぜか、答えなさい。

 死刑の執行は犯人の存在そのものを社会的に完全に否定する最終手段であり、更正の余地なしとされた人格や、また社会的に受け入れられる余地なしとされる極めて悪影響の大きい犯罪行為に対して適用するのが相応しい量刑である。特に後者に対しては同様の犯罪発生を予防するための威嚇効果を期待する面もある。
 殺人においてはまったく同情の余地がない、利己的で他を顧みぬ狡猾な殺人に適用することこそが相応しく、感情を理由に機械的に殺人に対し殺人でもって報いることは裁判そのものの客観性を損なう危険性にもつながってくる。よって判断は慎重とならざるを得ず、結果として懲役刑が多く下されることになる。

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設問4 アイドレス世界での標準的な罰則金の額を答え、増減の仕組みを説明しなさい。

 解答:10億。これはこの額がアイドレスの初期総予算の1/30であることから由来している。
 アイドレスは「みんなで協力して楽しく遊ぶこと」を目的としたゲームである。ルールは目的を達成するためにある。よって、その目的を妨げること=「人に迷惑をかけたかどうか」が罰則発生の判断基準となる。
 意図的に他人へと迷惑をかけ、かつ、その事実を正しく認識していなかったり、自覚していなかった場合は罰則金は重くなるが、意図しないミスによるものの場合は発覚前の自己申告による謝意と実務面での協力行為が認められて軽くもなる。
 また実務面において問題がなかった場合は初回罰則金なしとするケースもある。これは、ルールがそれ自体を遵守するために存在するのではなく、みんなで楽しく遊べさえすればその目的を果たしているからである。初回のみと限定されるのは、以降も同様のミスが続いた場合、甘えが生まれて迷惑行為を正しく認識・自覚しなくなる危険性を排除するための措置である。
 利己的な迷惑行為についてはこれを不正と認識し、特に重たい罰則金を課するほかに、事態における自己認識の度合いを確認するための自己罰則申請をさせ、これを審査することによってさらに改善の必要性の多寡を判断、量刑の増減を定めるものとしている。

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設問5 法を厳しく適用する場合のデメリットと、法の適用を機械ではなく人間が行う意義を答えなさい。

 法とは目的を達成するために規定するものであり、厳密に適用を繰り返した場合、法を守ること自体を目的と錯覚し、本末転倒な事態が発生する危険性が極めて大きくなる。その弊害は法の精神の正しい執行が出来なくなるという根本的な危機を孕んでいる。
 また、その適用に際しては上記の危険性を排除するべく、執行そのものが目的にそぐわぬものとならないよう慎重に配慮しなければならず、そのため事実を一面的な部分からではなく、総合的な影響を予測した上で判断を下す必要性があるので、その時々の状況に応じた見通しを立てる、人間の判断は欠かせない。

(回答:城華一郎)

最終更新:2007年01月26日 22:53