L:燃料生産地 = {
t:名称 = 燃料生産地(施設)
t:要点 = 油田,精錬所
t:周辺環境 = 人里はなれた自然
t:評価 = なし
t:特殊 = {
*燃料生産地の施設カテゴリ = ,,,国家施設。
*燃料生産地の位置づけ = ,,,生産施設。
*燃料生産地の面積 = ,,,1000m2。
*燃料生産地の燃料生産 = ,,,(生産フェイズごとに)燃料+15万t。
}
t:→次のアイドレス = 燃料精錬所(施設),海軍兵站システム(技術),燃料気化爆弾(技術)
}
0.目次
1.基本設定、あるいはプロローグ
愛とは命そのものであり、愛を謳うこの国家の昔にも当然その痕跡はあった。具体的には有機燃料であるところの石油が、あったのだ。
海洋国家であるレンジャー連邦には古代からの化石燃料の眠る可能性が元々あり、またターン1から時折猫士たちが探しに(
その1/
その2)行っていた成果がついに実ったと言える。
四都市から程よく離れたところで発見された油田の上にはただちに精錬所が造られ、かつては技どころかアメショーの出撃ですらかつかつだった窮乏に、浴びるほどの安定した供給源を確立することに成功したのだった。
また、アイドレス的に言えばここぞ稼ぎどころとばかりに力が集約された。継続した収入につながるものへと力をかけずにどこへかけるというのだ、ということだ。
これを受けて国内ではただちに、ある一団へと依頼が飛んだ…
2.燃料生産アイドレス:(株)MEIDEA建築、お仕事です!
「吼えろ、燃料生産地ィィィィ!!!!!!!!」
天射す光を割って拳が大地に降り注ぐ。男が、落下するというよりは、拳ごと、隕石のように砂漠の大地へ降り注ぐ。
にぃ……と、打ち下ろした拳、微動だにせぬ大地に続けて両の足を着き、そいつは不敵な顔面一杯に笑みを浮かべた。
ぴしり、どこかで音がする。
/*/
「注文です!!」
どん!!
テーブルに叩き付けられた白い紙束を見る。
きいいー…
軋んだ回転椅子の軸受けが、その上に乗ったデカいケツの主を声の相手に振り返らせる。
「注文か!!」
どん!!
安物机の上に、デカいケツの主の、デカい足が靴ごと乗った。太い。
スマートに、強い日差しを吸い込んで、焼けた色したスーツを着込んだ、スマートとは程遠いほど唇めくれあがらせ強烈に笑った男が、そこにいた。
「注文です」
マニキュアを塗った、だけの美しいほどに壮健な女性の指が、白い紙束を持ち上げて見せた。
そこに書いてある文字、わずか10。
ページをめくる。めくる、めくる、めくる。
文字数増加、なし!!!!
「……注文か」
「注文です」
それはただ10文字の、堂々たる注文書であった。ただ一発、表紙にどかんと見慣れたイグニシア入りの、蝶のマークの判子がある。
男はそれを取ると、ふ、ふふ、ふ、ふ、と、不規則に呼吸を漏らしたような、ありていにいってかなり不気味な笑いを漏らす。
ばがあん!!!!!!
金属製の安い作りの頑丈だけが売りの机の引き出しを、目一杯に引き出して、宙に舞うもの両手に二つ。
ぱきゅーーむ!!!!
それはただ一振りのどでかい判子と、そのためだけに存在する、真四角い朱肉の皿であった。
ど、かん!!!!!!
猫と蝶、絡み合った意匠の判子の隣、左右一対に彩るように、宙から直接四角い判子が叩き下ろされた。
「ふ、ふ、ははははははははあ、面白いッッ!!!!!」
立ち上がり、手袋締めて、背もたれかけた緑の作業着跳ね上げ、ずばあっと着込む。
きらんと光る、目と目が見合う。
「この仕事ォ、請け負ったああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
六畳一間の事務所を飛び出し、豪快に、ばがんと扉がぶち開けられる。
颯爽と玄関先に立てかけられたつるはし担ぎ飛び出た男のその後を、爽快と、長く美しい髪に黄色い安全帽、かぶせて慎ましやかに扉を閉じた女性が続く。
扉にはまったガラスの上に、どかんと赤く、名乗りが刻む。
ここまでで、ぴたり1000文字、め組、出陣!
/*/
世に七界で形作られし、無名世界と呼ばれるゲームあり。その第七世界の電脳に、にゃんにゃん共和国と呼ばれるそのゲームのファン集団あり。ナンバー06、ゲームプレイヤー集団の中にありてなおファン魂の塊と呼ばれる、レンジャー連邦なる藩国あり。その国家、日本列島は東北の山形に根を下ろし、北国の、雪をも溶かす熱き西国の魂と設定を持つという。
藩王の名は、蝶子。
藩国に集うものの名は、摂政、砂浜ミサゴを筆頭に、国家へと、有形無形の足跡刻む、熱き男女の集まり。
その、熱き国が、熱き砂漠にありて、熱砂よりもなお激しく燃え立つ燃料オイルを求めて一大国家事業に着手する。
燃料生産地、発掘である。
「いいか野郎ども、そもそも燃料ってなーあ掘れば掘った分だけ出るわけじゃねえ、一発どかんと引き当て油田の園に、一大根拠地を築き上げるてなもんだ!!」
おおおおおおおおおおおおーーーー!!!!!!!!!
怒号が砂漠に湧き上がる。
「燃える魂に、メカも人間もあったもんじゃあねえ!!!!! 俺たちは、それを燃やすための漆黒のぉ、油田の園を、掘り当ててやるってなもんだ!!!!!」
そして、居並ぶ数十数百の男たちを前にして、自分の言葉の漆黒よりもなお黒い、スーツに身を包んだサングラスの男が、両耳に手あて、眺めて回す。
「疑問はあるか?」
応じるのは、完璧な静寂。微動だにすらしない直立不動。
「油田は、どこだ。ボーリング施設は、どこだ。聞く奴は、いないか?」
「そんな野暮聞く野暮天野郎、あっしらめ組にゃいませんぜ、社長ぉー」
にやりと笑ってサングラスを光らせながら、先頭にいたリーゼントの男が答えてみせる。
「なあ、おめぇら?」
振り返られる、男たちすべてが、きらんと揃いのサングラスを右手の人差し指で押してみせた。
頷いた、スーツの男の瞳が同じ形のサングラス下、きらんとそれに負けずに光って笑う。
ふわり作業着、宙を舞い、男の後ろに控えし女性の手から、社長と呼ばれし男の背へと、かかって外れず背に負うは、『現場第一』の朱塗り文字。
「よかろう。ならば掘削、掘削、掘削。一心不乱の大掘削を!!!!」
「あの大砂丘に目にもの見せてやるのだ、このレンジャー連邦の大地に、あの悠久なる塀壁打ち建てたのは、どこの誰かを!!!!!」
「そしてその血を受け継ぐ男と女が、どうしてここにいるのかを!!!!!!!!」
「株式会社、MEIDEA建築、通称め組の底力を!!!!!!!!」
「さあ、始めよう、その五体五感と六感で、生まれて鍛えた肉体でえ!!!!!!!!!!」
「この荒涼たる大地に、油田の園を、打ち建てようぜえええええええええ!!!!!!!!!!!!!!」
ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!
莫たる砂漠のまん前で、突き上げた、つるはしシャベルの灼熱よりも、今、ここに集った男女の胸の内と魂が、間違いなく100万倍度に燃えていた!!!!!!!!!!!!
ジャスト2222字着工!
/*/
そして、問いかけが成される。
「…一万tて何だ?」
昼休み中のことだ。ドカ弁をかっくらう作業員達を前にして、社長はどでかいやかんから直接麦茶を飲み下しつつ、いつもの調子でやにわに語り出した。
「画一的な単位じゃねえか万tだぞ万t、どうやったら一人の人間が何万tもの化石燃料を消費できるんだよそもそもどうやって使うんだ燃料飲むのか一万tどころか10mlだって飲みたくねえぞそんなもん。そんなわけでこれは概念の話とする」
「機械類動かすのに燃料がいるのはわかる。これは量だけ常識的に考えて意味不明だが他はわかる。そもそもアイドレスって情報概念の世界だろだからこの場合燃料ってのは何かを特別に動かすための概念で単位がでかいのはイメージさせやすいせいだ何てたって万tだからな万t、tと違って逆に具体的イメージがまったくできないとこにアイドレス的認識が発生するのにちょうどいいわけだ」
「で、まあ、本題になるわけだが…」
「社長話長いすよ」
「飯粒飛んでますよ」
「つうか社長麦茶飲みすぎ」
「社長やかんこっちー」
「やかましい! いいかお前ら、石油化学は現代の工業基盤の一つとはいえビビるこたねえ、論理に従ややるこた一つだ。油田を、危なくないよう掘り当て、安定して供給できるよう管理し運営するその設備と体制を造るだけ!」
『ウス!』
「俺らの熱い命を吹き込むことで、二重二元にこいつは燃えるようになる、一刹那たりと気を抜くなよ!」
『ウス!』
「七十五分の一秒たりともだぞ!」
「社長…」
「そんな難しいこと知ってたんですね」
「俺見直しました!」
「はったりだけかと思った!」
「マジに大学卒業してたんだ!」
「…お前らなあ…」
『ウス!』
「掘るぞ!」
『ウス!』
「建てるぞ!」
『ウス!』
「メンテするぞ!」
『ウス!』
「そいじゃあ午後の始まりだ、おめえらたらふくカッ喰らったな、ようし、かーーかれぇええええ!!」
『おぉおおおおーーーー!!』
/*/
太い、首。太い、肩。太い、腕。太い、腰。太い、足。太い、眼光。
その男は何もかもが太かった。そして何より、熱かった。
MEIDEA組の社長、メイ="ザ・ガイ"=ブラスフィールド。
MEIDEAの名は白天で知られる無名世界の伝説的戦闘機でありそれにあやかったものである。機動建設アルファ-システムの、その足元に、及ぶ、及ばないではない。MEIDEAを、生み出す、生み出さないではない。ただ、憧れて、ただ、名をあやかった。そしてその名に恥じぬ力を、実績を。それだけを掲げて、この愛の遊撃連邦に相応しく、数々の建築を請け負ってきた企業に人は、いつしかめ組の愛称を冠していた。
この連邦で、その国が請け負わなかった土木作業は流れて消えてしまうという。国内の土木業界の、最後の防衛ラインが、そこだった。
「はっ……嬉しいねえ、藩王が、うちらを頼ってくれたとはね」
鼻をこすりながら、既にして、一個の隕石が降った並みのクレーターを周囲に築き上げているメイは、同じ名を持つ秘書に見上げてそう告げた。
メイロード="レイディ"=ブラスフィールド。
男の双子の妹にして副社長でもある。
金勘定と、ありったけのデータ処理とを一手に担う、め組唯一の頭脳派であった。そのトレードマークの長く美しい髪をして人は彼女を灰のラプンツェルと呼ぶ。社長をして、そのツルハシの一撃の灼熱を、炎の一人七人の小人という異名があり、人はこの兄妹を電網適応・灰燼のブラスフィールド兄妹と呼んでいる。
普段は六畳一間、たった二人の会社だが、この二人がおいと声をかければ国中から猛者たちが集い、着工することから、同業他社が、そのありさまを恐れて、灰燼の異名をつけたのだ。
「燃料を、掘って見つけて、それを安定的に汲み出し守るための施設をおったてる。なあに簡単、要はそれだけのことよ。ドリルなんざ必要ねえ」
そういって、メイは自らの胸を親指で突いて見せた。
「心のドリルが、1万kwのタービンつきで、ここにあらあ」
「相変わらず無茶を言います、社長は」
ふふ、と、切れ長の目を微笑ませて、メイロードは兄の汗と砂にまみれた作業を見やった。
体躯は筋骨隆々、骨は髄まで太く頑丈、短く刈り込んだ西国人の証の灰髪は、直射日光で目が焼けぬようにとかけられたグラサンににやりと浮かべた強い屈服することなく際限のない笑みとに表情を添えられ、逞しく汗で輝いている。
速い。尋常ならざる膂力。否。それに上乗せすることの、体の使い方が、完璧に無駄のない動作を示している。一人七人の小人などという意味不明な異名こそは、彼が一人で通常の七倍速の肉体労働をこなすことからついた、最強の現場主義社長の勲章であった。
幼い頃からガラガラのかわりにシャベルを握り、おむつより先に安全帽をつけた、そんな生粋の武術家が如き生育環境が、彼を芯から土木作業マンに、仕上げていた。
その彼という建築物に着工した両親は、彼の作業員としてのスキルと肉体が、ちょうど棟上し終わる直前に、作業員をかばって亡くなっている。最後まで、安全第一を貫いた、両親の代での最初で最後の死亡者が、そのまま自分たちになったのだ。
以来、二人は稼業を継いで、め組の命脈を細々と保っていた。
そこへ来た、最初の大仕事が、この、燃料生産地の採掘である。
「だってよう、うれしいじゃねえの。まだまだひよっこの俺らがこんな大仕事をぽんと無条件に注文されるなんてよ、応えなけりゃあ、め組の名前が悔し涙で汚れるってなもんだ」
「そうですね……まだ、完成の見通しも何も立ってはいませんが、ここでやらねば女もすたります。鋼とまでは、まいりませんが、"真鍮平原(ブラスフィールド)"の家名にかけて、これしきの作業でへし折れていては、先代たちの笑い種」
「燃えるか」
「その先、灰になろうとも」
見据える目と目が同じ色、熱く燃え盛り、頷きあった。
メイロードが踵を返す。すべての作業員の進捗と進行と体調と健康を一手に管理する、それが非肉体労働者・メイロードの請け負うすべて。灰のラプンツェルとは、長く美しい髪色からだけでは決してない。童話に曰く、その長き髪もて自ら幸せを招き入れ、7年の後に最愛の人との再会を果たした稀有なる女性の気性の如く、驚くべき忍耐を厭わぬ、炎よりもなお剛い意志の主にこそ与えられた異名である。
二人はそのやりとりで、もはや言葉交わさず視線交えず、己の使命に燃えて燃えた。
それから幾日が経ってのことだっただろう。大地のどこかに燃料のある兆候を見出し、そこへ拳を打ちつけたのは。
「吼えろ、燃料生産地ィィィィ!!!!!!!!」
天射す光を割って拳が大地に降り注ぐ。男が、落下するというよりは、拳ごと、隕石のように砂漠の大地へ降り注ぐ。
にぃ……と、打ち下ろした拳、微動だにせぬ大地に続けて両の足を着き、そいつは不敵な顔面一杯に笑みを浮かべた。
ぴしり、どこかで音がする。
ぐらぐらと、大地が揺れて、吹き上げる燃料を汲み出し守るための、機械が動いて刺し込まれる。
「はっはあ!!!!!!!!!」
「おお、自慢の腕の、見せ所だああああああああ!!!!!!!!!!!!」
ぅううううぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおああああああああああ!!!!!!!!!!!!!
すさまじい、男たちの怒号が砂漠に確と響き渡る。
今ここに、レンジャー連邦の燃料生産地が、産声を上げたのだ。
/*/
「命を燃やすってことには二つある。一つは昔の命の名残りを今に燃やしてその力を借りることだ。そしてもう一つには、自分の心を燃やすってことだ。二つは一つだ。解るか。二つは一つだ。自分の命は昔の命のずっと先にあるもので、要するにどっちも同時に燃やすんだ。解らねえか。だったら解るまで油田の前で正座しろぉ!」
後日のことである。完成した精錬所の中で部下に激を飛ばすと、社長はふうと息をつき、それから改まって、襟を正した。
「…何故、神棚を燃料生産地に造るんですか?」
見習い秘書の質問に社長は神妙な顔で神棚を拝みながら答えた。
「燃料てのは突き詰めれば昔の命の塊だ。粗末にしちゃなんねえ。何でもそうだ。関わるものすべてへの感謝を忘れちゃ生きてけねえよ、例え電子の世界でもな」
命を燃やす。何もそれは生きたものの特権ではないということだ。
世界はゆるやかにつながっている。無名世界観的な意味ではなく、もっと身近なレベルで、それはいつでも感じられる。
「形式は形式にすぎねえ。日本人だから神棚だし、別に何か具体的なものを祭ったり拝んでるわけでもねえ。昔の命よありがとう、そんだけのこった。ほれ、お前も拝んどけ。理屈をつけて斜に構えてつっぱるのは簡単だが、それで世界が変わってくれるわけでもないだろ。だったら感謝の気持ちを忘れるな。説教でもなんでもない、俺の秘書になるならそれくらいは感覚で解っとけって話だ」
「はい」
アイドレスは曲芸ではなく協力のゲームだ。感謝は何かの儀式めいた行いではなく、単純なマナーである。それを思い出すと見習い秘書も、社長に倣って合掌した。
ありがとう、ただ、その、一言。
3.余韻、ついでで周縁産業のお話です
時間は何しろアイドレスでのことである。何十日もの時間がかかった、そうとしかは語れぬし、その間も、それぞれの作業員の日誌をのぞけば実に人間らしい日々が送られていたが、それを題材にすれば一本の長編小説となるような生暖かい人間ドラマなので割愛させていただこう。
工程的には、まず、基礎工事を行い土台を建設、設備と建物を組み上げた上で安全機構を万端に整え、それから貯蔵曹をつくり、これも安全機構を設置、その上で三重目の安全機構を施し採掘開始。これが国内の一大雇用を生み出した。
建築用資材の取り引き、運搬、また作業員たちのための食糧や新技術開発といった需要が数々の雇用を創出し、観光地開発につながる重要な活性化となったのだ。
4.アカデミック・パート、つまりは詳細設定
そのイグドラシルに元から燃料生産地という『能力』が備わっていた西国人は幸せだった。油田を開発する際、試掘を行う必要なくMEIDEA建築のようなパワー勝負の面々に任せて一気呵成に作業を押し進められたからだ。
油井(原油を汲み上げる井戸である)を地上に建築し、そこからほど近いところに精錬所をまた打ち建て原油を資源利用可能な形に蒸留する設備まで一式そろえたレンジャー連邦の、目に見える表舞台に立ったのが汗と砂と油にまみれた彼ら現場労働者であるとしたら、裏の立役者は地質を研究しもっとも適した採油法を確定、図面を引いて機械類を納品した西都大学と東都大学であった。
元々地質学を専攻分野に修めていた西都大学と、高い実践技術力を誇る軍事系の東都大学とが力をあわせ、このいかにも砂漠の国らしい新名所を影から支えた。もっとも危険性の高い火災に対する安全機構として、特殊な薬品や爆破による消火方法を軍の緊急実働体制マニュアルまで含めて完成させたのは東都大学であるし、蒸留装置に、環境に悪影響を及ぼすことなく化学的処理を施す技術を加えたのは西都大学だ。
また、常時採掘の震動やミスの許されないという高いストレスにさらされる職員をいち早く鑑みた国王の指示により、そのお膝元である藩都大学が心理学的にこれをサポート、その上この新たな仕事に対する国民への理解を深めるため、学生たちからのレポートを広く募集、「燃料はじめて物語」から「石油・天然ガス・オイルサンド ~燃料資源界の今と未来~」までをパンフレットにして配布したことは、愛の藩国としての名に恥じぬ福利厚生をこの新たな雇用環境に対して組み込んだという点において特筆すべき事項であるといえるだろう。
人里離れた地形での作業とはいえ、そこは狭い領内のこと。観光地での無料チケットやフィクショノートたちとの懇談会出席権が与えられることもあり、国民たちはこぞってこれに応募、ブラスフィールド兄妹を特別顧問とした面談が執り行われ、心身ともに極めて頑健なにゃんこたちがめでたく採用されることになった。
ここに経済科のある北都大学を加えて、蒸留過程で得られる各種のオイルやガス資源を細かく市場流通に乗せて関連産業を興すという需要を見込んだラインまでをも組み立てることで、藩国レベルでの運営を洗練させ、まさに一大産業と化すことに成功、国民の生活レベルで極めてスムーズにこの燃料生産地という存在は意識に定着することにもなったのだった…。
なお、以下に記すものは国民に配られたパンフレット内にあるQ&Aから抜粋した内容である。
5.燃料なぜなにQ&A、あるいは会話的補講
「ねえねえナルホド先生、燃料ってどうやって作られるの?」
「うん、それはね、昔々の生き物たちが、とても長ーい時間をかけて化学変化を起こして姿を変えた、原油という黒いねばねばしたものを地面の深くから掘り出して作るんだよ。この国は海に囲まれている通り、今僕たちの立っている場所も昔は陸地じゃなかったのかも知れないから、きっとそこにはいっぱい海藻が生えてて、そこから出来たんだろうね」
「掘ってるのって、写真のでっかいおもちゃのクレーンみたいなやつ?」
「そうだよ、でもおもちゃみたいはひどいなあ。あれでも下は地中何百mまで刺しこまれていて、横に並べてみたら全体ではあのでっかいお城の何十倍も大きいんだから」
「ほえー。じゃあ、この写真の長く伸びてるでっかい管はなあに?」
「いいところに気がついたねワカッタ君、それは精錬所という、原油を燃料に変えるための場所までつながっているものなんだ。すごく頑丈に出来ていて、とっても大事なものだから、普段は普通の人が近寄っちゃいけないんだよ」
「セイレンジョでどうやって原油を燃料に変えちゃうの?」
「うん、大きく分けるとこれには2つの段階があるんだ。まずは、蒸留、そして熱回収だ」
「む、難しそうだよナルホド先生!?」
「ははは、そんなワカッタ君のためにやさしく解説するから安心して。まず最初のだけど、ワカッタ君はやかんでお湯を沸かしたことはあるかい?」
「うん、お母さんにいつも頼まれる。ぷしゅーって湯気が出てきて、その湯気に下敷きをあてるとどんどん水滴がつくのを見るのが楽しいんだ。あれ不思議だよねえ」
「お手伝いか、えらいねえ。わかりやすくいうとまず原油はそのやかんの湯気にあてて、いらないものを溶かして水滴と一緒に底から流し出しちゃうんだ。これが蒸留だね」
「へー…原油は溶けちゃわないの?」
「うん、少し成分が混ざっちゃうんだろうね、この水を別のところに集めてさらに湯気をあてると、軽油や灯油になるんだよ。これらの燃料はディーゼルエンジンを動かしたりストーブを焚いたりするのに使われるね。残ったものは、溶け残ったもので、重油っていうんだ。それっぽいだろう? 他にもこの時原油からぐつぐつ湧いてくるガスは、工場で使われるオフガスという燃料になったり、沸かしたてっぺんで溜まったLPGという液体はガソリンの原料になったり服の原料になったりするし、とにかく原油からはいろんなものが取れるんだよ」
「へえー、無駄がないんだね、すごいや! そんでそんで、次は? ナルホド先生?(わくわく)」
「レンジャー連邦はただでさえ砂漠で土地が貧しいからね、空気まで汚れないよう、特殊な施設で重油から成分をぽぽいっと抜いちゃうんだ。これはみんなが元気でいられるようにとえらい先生たちがわざわざ考えてくれたものなんだよ、感謝しなくっちゃね」
「うん! あれ、でも先生、そういえばお湯を沸かすのにも燃料って必要だよね、ぐるぐるループしちゃわないかな?」
「お、いいところに気付いたねえ! そうだよ、実は原油をあっためる時には、あつあつになった重油や軽油、灯油の熱も利用するんだ。こうすることで、それらの燃料を冷まして加工できるようにもしているから一石二鳥なんだ。ちょっとでも無駄のないよう、実際にはこれらの過程は複雑に組み合わされているものなんだ、これがさっき言った熱回収なんだよ」
「ふえー、すごいや…でも、基本は案外単純なんだね! 僕にもおかげでわかったよ、ありがとうナルホド先生!」
「これでみんなも燃料について一つ詳しくなったね、次はこれらの燃料が実際にみんなの生活にどのようにして関わってくるかと、この仕事をしている人たちがどんな風に暮らしているのかを一緒に見るよ」
「わーい、楽しみ!」(以下延々と愉快な挿絵入りのQ&Aが続く…)
6.エピローグ:漢のシメに長話はいらねえ!
「……以上が私たちMEIDEA建築の仕事です。ご満足、いただけましたか?」
執務室でここまでの文章=資料を読み上げるメイロード。
ぐっと1アクション、漢たちの熱い仕事に呼応して、親指を立てる藩王。
「完璧です。どうもありがとうございました!」
7.スタッフ
Staff List
illustration
picture 4:舞花 ※最初の作成当時国民、現在は紅葉国の舞花・T・ドラッヘン
picture 1,2,3,5,6,7:むつき・萩野・ドラケン
text
城 華一郎
special thanks
→ (株)MEIDEA建築
最終更新:2009年10月22日 13:11