全部 1- 最新50


【地上最強の駒】擬人化将棋あいこまっ!【龍】
1 名前:以下、名無しにかわりましてGODがお送りします。:2007/07/28(土) 21:08:48.46 ID:sc74Ps190
プログラマー,絵師.コンテ師,文豪,動画師,音楽家,広報まとめ支援,ネタ師など、
                       あらゆるスキルを持った者たちよ今御旗の元へと集え―
     もし例えスキルは無くとも参られよ!
                        その存在が我らを存在せしめるのだ!
       将棋の駒に熱きものを感じたとき、
                       そこに確かな命が生まれる。

                 今、新しい将棋が来る―――

   /\     \/\/
 /_ふ_\   /_と_\    黄楊の平野に
 ノ( ' ヮ' ハ   ノ( 'ヮ ' ハ      ぱちりと鳴けば
  (つ△ )つ   (つ△C)       いざ勇ましや
  〇_〇     〇_〇         陣太鼓

VIP擬人化将棋まとめWIKI (※遊べるものもこちらから)
    http://wiki.livedoor.jp/vipshogi/d/FrontPage
【ニュー速VIP】 前スレ
   【初手】擬人化将棋あいこまっ!【天元】
http://wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1185458839/

【パー速VIP】  避難所
   将棋の駒擬人化しようぜwwww打ち合わせスレ 〜二枚飛車〜
    ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1178465966/

※このスレは応援によって成り立っています良かったら感想を書き込んでね※

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 21:09:30.02 ID:rIX5oIvD0
2ゲット

水銀燈みたいな銀たん可愛いよ銀たん

3 名前:以下、名無しにかわりましてGODがお送りします。:2007/07/28(土) 21:14:38.53 ID:sc74Ps190
――現在のテスト版――

―「あいこまっ! CSA改造版」― ※とりあえず結構遊べるよ版

まとめwikiの「将棋プログラム(CSA)」ページ
ttp://wiki.livedoor.jp/vipshogi/d/%be%ad%b4%fd%a5%d7%a5%ed%a5%b0%a5%e9%a5%e0%a1%caCSA%a1%cb

ここの「CSA将棋改造版」の最新のものをDLしてください。
起動できない、プログラムが足りないなどの疑問点も同ページに
まとめられています。

*注意*
上記のプログラムは、プログラマが離脱したので更新が停止しています。
現在、新規にプログラムを作成するため、プログラマを募集しています。
ふるってご参加下さい(作業の進捗状況は後述)。


――新規作成中プログラム――

―「あいこまっ! JAVA版」― ※クォータービューだよ版
ttp://shogi.vip2ch.com/dl.php?f=koma0543.zip

―「あいこまっ! 2代目CSA改造版」― ※遊べないこともないよ版
ttp://shogi.vip2ch.com/dl.php?f=koma0494.zip

新規参入してくれるプログラマ向けのページ
ttp://wiki.livedoor.jp/vipshogi/d/%a5%d7%a5%ed%a5%b0%a5%e9%a5%df%a5%f3%a5%b0

4 名前:以下、名無しにかわりましてGODがお送りします。:2007/07/28(土) 21:15:00.40 ID:sc74Ps190
――各スレの用途・位置付けについて――

【ニュー速VIP本スレ】

新規参入者・住人増加を目的としたスレ。
そのため比較的自由な話題が可能。
メインはキャラ案、システム案、ストーリー案、報告、絵うp、各種ファイルうp、妄想、ネタ投下
プログラム案もたまに顔を出したりして楽しくやる。
基本は落とさない事が大事。
※ 初心忘るるべからず。本質は将棋擬人化スレでありゲーム作りはあくまで「ついで」なんだぜ?
  誰もががネタ出し、デバッグ、妄想と閉鎖まで色々遊べばいいんじゃねえの!?

【パー速VIP避難所スレ】

本スレにあげられた画像等を再掲載しておく場所および避難所。
プログラムに実装すべき素材、wikiにうpするべき素材などは本スレだけではなくここにも書き込んでおく。
また、本スレが落ちたとき、次スレが立つまでの避難所として活用。
効果的なスレタイ、テンプレなどを吟味する。


――まとめwiki――

本スレ、避難所スレで出た話題をカテゴリ毎に分類する。有志でまとめ支援人募集中。
現在、名前がかぶっているwikiもあるので、改名を検討中。

5 名前:以下、名無しにかわりましてGODがお送りします。:2007/07/28(土) 21:15:47.78 ID:sc74Ps190
よく出る質問
Q、OPムービー毎回見るの面倒なんだけど、飛ばせないの?
  A、Escキーかエンターキーかスペースキーかマウスでツールボタンクリックで飛ばすことができます。

Q、COM弱すぎor強すぎ
  A、思考に関してはまぁ作り中だ。一応今はレベルを五段階まで
    設定できるようになったがもっと強い思考とやりたい場合は、
    http://www.geocities.jp/bonanza_shogi/
    ここからボナンザ落としてきて、解凍したボナンザのフォルダ内に擬人化将棋を
    上書きすればいい。(強すぎ注意)
    逆にLV1にも勝てないってやつはちょっと勉強汁

Q、シナリオはセーブはこの方式で確定なの?
  A、セーブファイルの形式を今後どのようにすれば汎用性が出るのかといった事
    が見えていないので現段階では応急措置としてのセーブ機能です(^ω^;)
    ただ、シナリオテストが入っているので、それを使えば好きな場面から楽しむ事もできます(^ω^;)

Q、バグ多すぎってレベルじゃねーぞ!!
  A、バグ報告は多ければ多いほど、プログラム修正の参考になります。
    スクショやバグ発生時の棋譜があればなお良いです。
    バグ取りも遊びの一環。ファミコン時代はバグも含めて遊び倒したもんだぜ?

Q、で、主人公って誰よ?
  A、さぁ?文豪次第なんじゃね?もし作りたければ書いてみれば?
    誰かシナリオデータにしてくれるかもよ?
    ttp://wiki.livedoor.jp/vipshogi/d/%a5%b7%a5%ca%a5%ea%a5%aa%ba%ee%c0%ae%cb%a1
    ここ読んで挑戦してみるのもまた一興。意外と簡単に作れるようになってるんだぜ?

Q、今北wwwwwwwwwなにこれwwwwww
  A、お前初めてかここは?力抜けよ。

6 名前:以下、名無しにかわりましてGODがお送りします。:2007/07/28(土) 21:16:34.89 ID:sc74Ps190
――――軍団 キャラ絵 シナリオまとめ―――――
○全キャライラスト有り △数個のキャラのイラストあり ×まだイラストなし(´・ω・`)ショボーン
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【メイン軍団】
○ 玉ちゃん軍団(本家プレイヤー軍団) 暫定シナリオ「遠い記憶」第15話まで有り(108話まである予定らしい)
○ カラクリ軍団(本家メイン敵軍団) 個々のキャラシナリオ サブシナリオ シナリオ誰か作って(・∀・)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【サブ軍団】(本筋に絡めて登場 ちょい役)
○ 山賊軍団(全キャラ実装済み 絡み役筆頭候補) シナリオは桂馬のギャク恋愛シナリオなど
○ 動物軍団 (全キャラ実装済み ただし立ち絵がない 議論はほぼ終結?) シナリオ無し
○ 女子高生軍団 (全キャラ実装済み)暫定シナリオ「憂鬱の生徒会 将棋部の謀反」有り
〇 怪物軍団(西洋妖怪)(全キャラ実装済み)
○ 先代王将軍団 (全キャラ実装済み)シナリオ無し
○ 雪国軍団(全キャラ実装済み)sce化されてないシナリオメモが2話まで有
○ ビッグアスホールズ(全キャラ実装済み)擬人化将棋の初期構想キャラたち
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【サブ軍団まで後ちょい】デフォルメ絵が全キャラないためキャラ絵がゲームに未実装
△ 妖怪軍団(和風妖怪)(キャラ絵あり。未実装)シナリオ無し
△ 海賊軍団(議論終了 キャラ絵制作中)シナリオ無し
△ 海軍(海洋生物軍)(現在議論中)シナリオ無し
△ 昆虫軍団(全体図有り デフォルメ絵数個有り 個々イラスト有り 全部は未完成)シナリオ無し
△ 西洋騎士軍団(イラスト、デフォ絵が数個有り)シナリオ無し
△ 給仕軍団 (イラスト、デフォ絵が数個 絵師さん数人) シナリオ無し
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

7 名前:以下、名無しにかわりましてGODがお送りします。:2007/07/28(土) 21:17:24.66 ID:sc74Ps190
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【サブのまたサブ軍団】
△ ふひょー軍(ふひょーが下克上を狙う!?全体図有り 王将デフォルメ絵有り)シナリオ無し
△ 古参新参AA軍(全体図はあるがデフォルメ絵無し)シナリオ無し
△ 西部劇軍(歩兵、と金あり)
△ チャイナ軍(飛角あり)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【まだイラストも何もない妄想軍団】
× 亜細亜軍 ×SF軍 ×ミリタリ軍 ×企業軍
× 商店街軍(コックや花屋などいろんな職業) ×獣人軍 (ケモノ耳)
× 薔薇乙女軍(アニメ ローゼンメイデンのキャラたち)
× SOS団 (アニメ 涼宮ハルヒの憂鬱のキャラたち)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
軍団絵のイメージ達 http://wiki.livedoor.jp/vipshogi/d/%b7%b3%c3%c4
今までのシナリオ保管庫 ttp://www23.atwiki.jp/vipshogi_gijin/pages/12.html
シナリオ作成法(初心者でもすぐシナリオ作れます みんなどんどんシナリオと絵を完成させていってくだちぃ)
ttp://wiki.livedoor.jp/vipshogi/d/%a5%b7%a5%ca%a5%ea%a5%aa%ba%ee%c0%ae%cb%a1
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

まとめwiki内抜粋ページ

現在の体験版へのリンクとその他注意書き
ttp://wiki.livedoor.jp/vipshogi/d/%be%ad%b4%fd%a5%d7%a5%ed%a5%b0%a5%e9%a5%e0%a1%caCSA%a1%cb
現在製作中版の仕様など
ttp://wiki.livedoor.jp/vipshogi/d/CSA%a4%cb%a4%c4%a4%a4%a4%c6

おまけ

非常に大雑把な説明
ttp://shogi.vip2ch.com/koma0010.gif

8 名前:以下、名無しにかわりましてGODがお送りします。:2007/07/28(土) 21:18:14.15 ID:sc74Ps190
827 :VIPにかわりましてパー速からお送りします :2007/07/26(木) 01:07:55.16 ID:dYLNrTg0
過去スレうp乙
思い付いた事を書き加えてみる

第一案(通称恥故に)
  肯定意見1)カタルシスがあるのでストーリーとして良い
  肯定意見2)鉄観の精神状態が色々で玉ちゃん軍も一緒に成長できる
  否定意見1)鉄観のテンションのアップダウンが激しい(明るくなるのは後半が多い)
  否定意見2)ストーリーが一貫している分複数で書くのは難しい
  問題点1)恥故に、の部分を静子の心理描写無しに表現ないし理由付け可能か?
  問題点2)鉄観が記憶を取り戻すカタルシスと椿国王=静子カタルシスが上手に表現出来るのか?

第二案(通称メンタンピン(仮)
  肯定意見1)シンプル!
  肯定意見1)王道で伏線もなくみんなで書ける
  否定意見1)仲が良くなっていくとこが起4と承1だけってのは寂しい
  否定意見2)シンプルすぎて物足りないかも
  問題点1)桂馬が黒から元に戻る理由って何よ?
  問題点2)告白寸前なのに異世界でのんびりしてラブコメ?

第一案は引っ張ってくれるシナリオ師がいれば凄く面白くなりそうだね
コメディを入れるところも沢山あるしスレ住人の参加できるし
引っ張ってくれる人がいなくなったら終わりってことだけど

第二案は本編をみんなで書けるのが魅力だね
でも逆に本編をみんなで書くと混乱の元になる可能性が高いかも
他にコメディを入れれる部分があるなら追記してほしい

9 名前:以下、名無しにかわりましてGODがお送りします。:2007/07/28(土) 21:20:05.48 ID:sc74Ps190
テンプレ終了

わたしはかならず龍を殺す!!

藤堂よなぜうたがうのだ
わたしはGODだ

わたしは龍をたおすため
(スレを)復活した

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 21:21:32.57 ID:Sp2GrjqJ0
そうか、GOD繋がりかwwww
マイナ過ぎるネタだが、スレ立てGJ!

11 名前:以下、名無しにかわりましてGODがお送りします。:2007/07/28(土) 21:21:53.20 ID:sc74Ps190
よく考えたらスレタイの意味が分からない人の方がまず多いだろうから
          ↓  ↓  ↓
脳細胞を無駄な事に使いたい場合は下のリンクをくりっく☆
ttp://koware.hp.infoseek.co.jp/jyu-goya/comic/ryu.htm

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 21:22:06.79 ID:XmxME9Tb0
>>1


13 名前:以下、名無しにかわりましてGODがお送りします。:2007/07/28(土) 21:25:33.30 ID:sc74Ps190
とりあえず夕飯もまだなんだ、暫く席をはずすが
どうか瞬殺という憂き目だけは避けてくれたまえよ!ノシ

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 21:28:23.29 ID:Sp2GrjqJ0
じゃあ時間も時間だし、議論をするかい?
GODの提案だと案2でさくっと完成に持ち込めって感じだったけど、それでいく?

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 21:33:37.12 ID:Sp2GrjqJ0
まさか誰もいないとか?

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 21:40:29.91 ID:XmxME9Tb0
誰もいないようだ

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 21:41:24.42 ID:Sp2GrjqJ0
本当に誰もないのかww
議論が面倒なら雑談でもいいと思ったんだが、それも無理だな。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 21:49:07.75 ID:Sp2GrjqJ0


19 名前:以下、名無しにかわりましてGODがお送りします。:2007/07/28(土) 21:49:11.40 ID:sc74Ps190
夕食?もう…喰ったさ。ハラァ…いっぱいだ。
人がいないならば、とりあえずSSでも貼り付けておくべきであろうか
前スレはどうも人がいなかったみたいだし
(でも既に43レス分になるんだよなあ)

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 21:51:34.29 ID:Sp2GrjqJ0
>>19
お帰り。
と言うかどうしてそうマンガに詳しいんだ。
SSがあるならよみたいな。

21 名前:以下、名無しにかわりましてGODがお送りします。:2007/07/28(土) 21:53:31.03 ID:sc74Ps190
前スレに上げた奴だが。金銀藤堂物語。既に43レスで未完、プロットはできているので
あとはしこしこ書き上げるのみ。だがまだ三分の一位なんだよなあ

まあどうせ過疎だし、一ッ丁はりはりしてみるか!

22 名前:金銀藤堂物語 一:2007/07/28(土) 21:54:39.21 ID:sc74Ps190
鍛錬場では二人の影。金将と銀将、二人の姉妹が手合わせをしている。
一進一退の攻防。鋭く、速く、時に軽く、時に重く。緊張と弛緩の連続は、
見る者があればその呼吸を奪っただろう。ようやく二人が離れた時、
流石の両者の肌にも玉の汗が浮かんでいた。
「また腕を上げたわね、銀」
「姉さんこそ」
緩やかな空気が流れる。
「ああ、汗を掻いたわ、いきましょう」
鍛錬の後には湯に浸かるのが二人の習慣である。

23 名前:金銀藤堂物語 二:2007/07/28(土) 21:55:19.83 ID:sc74Ps190
「ふ……ぅ」
湯船に浸かると、吐息が漏れる。
「姉さん、気持ちよさそうね」
「銀、早くいらっしゃいな」
優しい響き。その声を聞きながら、銀の胸に微かなざわめきが走る。
(金姉さん……元気になったなあ……)
その昔。今とはかけ離れた姉の姿が二重写しに胸中に浮かび上がったからだ。

24 名前:金銀藤堂物語 三:2007/07/28(土) 21:55:50.52 ID:sc74Ps190
数年前……。
「たあっ!」
「甘い!」
ドン、という大きな音と共に、人形のように吹き飛ぶ人影。
「あいたたたぁ……。ちょっとお姉ちゃん、もう少し手加減してよね……」
「……甘い、というのは技量の事だけではないようね、銀。」
銀と金の両親は既に病没し、残された道場を姉妹二人で
守っていた。幼少からの鍛錬の賜物か、天賦の才か。二人の腕は、
達人の域に達していた。
「いいですか、銀。実戦の場ではわずかな油断が命取りなのですよ。
こうした日頃から、感覚を鋭くしておく為の訓練なのです。なのに手加減などと……」
はあ、とため息をつく金。それを受けて、今度は銀がため息をついた。
「お姉ちゃん、またそれ?実戦だなんて、戦場に立つどころか私以外の
誰とも立ち会ったことないくせに。ぜーんぶ死んだ父さんの受け売りじゃない」
「な、何を言うのです。体験した事が無くても、
その言葉の正しさは分かるでしょうに」
「でも、戦争はとっくに終わったのよ?護身術としてなら、私もお姉ちゃんも
もう十分強くなってると思うわよ。これ以上強くなる必要はないと思うけどなあ……」
「銀、またそれですか。あなたは今の平和を言い訳に、たださぼりたがってるだけよ。」
「さぼるも何も、道場に人がいないからねえ……」
この時、門下生の数は零。親の残した財で食いつなぐ日々であった。

25 名前:金銀藤堂物語 四:2007/07/28(土) 21:56:21.79 ID:sc74Ps190
「実際、父さん達の残してくれたお金もあと2年もすればなくなってしまうわ。
そうしたらこの道場、手放す事になるかも……」
「そうならない為にも、鍛錬をしているのではないですか!」
「お姉ちゃんは厳しすぎるのよ、前に来た人も、一ヶ月と持たずに辞めちゃったじゃない」
「あれはアキラカに目的が不純だったわ」
「ま、確かにね……」
三十過ぎの中年太りは、アキラカに美人姉妹目当ての入門者であった。
「人を呼ばないとこの道場は潰れてしまうわ、何か売りが必要なのよ」
「売り……って?」
「お昼の弁当に、私の手料理とか」
「死人は出したくありません」
過言ではなかった。
「『宣伝』が必要……って事かなあ」
「『宣伝』……?」
「城下へ行くのよ。そこの剣術道場に公開試合を申し込むの」
「な、なんですってー」

26 名前:金銀藤堂物語 五:2007/07/28(土) 21:56:58.36 ID:sc74Ps190
三日後、城下の剣術・槍術・弓術等、武術道場を巡り歩く姉妹の姿があった。
「対外試合は初めてだから、結構緊張したけど」
「あまり、得る物はありませんね」
銀の発案に、当初は渋った金。勝っても負けても、どちらかに悪評が
立つのではないか。遺恨を残す事になるのではないか。それに対し、
銀は「弱い武術道場なんて存在価値なし」
「私達は、勝っても負けても『経験』という何より得がたい学習が出来る」
という言葉に一片の理を認めたためである。
「道場の看板を持っていこうとしたら『それだけはやめてくれ』ですって」
「それでお金を出して口止め料とは情けない限りです」
「ま、いいじゃない。これで暫くは生活できるわ、何か目的が変わってきたけど」
帰り道、角を曲がると、そこに看板があった。
『護身術〜武芸百般なんでもござれ〜』
「へえ、こんな所にもあるんだ」
「今日はここで最後にしましょう」
そうして二人は乗り込んでいった。道場の名は、『藤堂道場』とあった。

27 名前:金銀藤堂物語 六:2007/07/28(土) 21:57:42.04 ID:sc74Ps190
「たのもうッ!」
銀の張り上げた声は、静寂の中に溶けていった。
道場は、いや、道場らしきところは、全くの無人だった。門人の名を記す札も、
木刀などの練習道具も、掛け軸の類も、一切が無い。
「……誰かいませんか?」
「……いないねえ、お姉ちゃん。……帰る?」
「ええ、そうね…… ……?」
少しずつ足音が近づき、奥の衾が開くと、そこには一人の美丈夫が
驚いたように二人を見つめていた。
「あなた方は……?」
「ん……コホン、私達は武者修行の身。無作法ですが、立会いが望みで参りました」
後ろの銀ともども一礼をする。それで合点がいったのか、青年は柔らかく微笑んだ。
「ああ、なるほど。残念ですがそれは無理です」
「え?」
「ここの道場主は数日前に亡くなってしまいました。
先に看板を片付けておくべきでしたね、この道場は潰れたんですよ」
「あなたは?」
「私は藤堂……ここの道場主の遠縁に当たる者です。」
「ならば……」
「ちょ、ちょっとお姉ちゃん?」
「あなたと……立会いが望みです」

28 名前:金銀藤堂物語 七:2007/07/28(土) 21:58:12.54 ID:sc74Ps190
「……さっきもいった通り、『この道場は潰れています』……
それでも立会いが望みなのですか?」
「ええ」
「ちょっと、お姉ちゃん、どうして?」
藤堂は、少し困ったような顔をした。はにかむ様な表情に、
銀は少しだけ心惹かれた。
「やれやれ、あなたは生真面目な人ですね……潰れた道場で
立会いを望む……つまり、名声や金目当てではなく、
純粋に己の腕を試し、高めていきたい……という訳ですか」
「……」
「あなたみたいな道場破りばかりならいいんですがねえ」
「それでは、立ち会っていただけますか?」
「ですが断ります」
「!」
「いいですか?そもそも武術とは理不尽な暴力に立ち向かうためのもの、
こうして他流に試合を申し込む時点で実際に貴女たちの腕は
それなり以上にあるのでしょう」
「……」
「ならばそれで十分です。荒くれ者を相手に動じないくらいの『自信』が
あれば、武術はそれで十分。それでもどうにもならない災いは、逃げてしまえばいい」
「……」
「やれやれ、納得がいかないようですね……妹さん、何とか引き止めてもらえませんか?」
「え?あ、無理です。姉はこうと決めたら絶対ひきませんから」
呆れたようなため息。それを見て苦笑する藤堂。
「分かりました……私でよければ立ち会いましょう」

29 名前:金銀藤堂物語 八:2007/07/28(土) 21:58:46.62 ID:sc74Ps190
夕暮れが、街を紅く染めつつある。その中を、数名の男達が肩をいからせて
闊歩していた。その様子はどうみても悪意に満ち満ちていた。
剣呑な雰囲気の彼らを避けて通る町民達。彼らは皆、ひとつ所を目指していた。そう、『藤堂道場』である。
一方、その道場では、金と藤堂の立会いが始まろうとしていた。
「では、お願いします」
「?」
「どういうことです?武器を取らないのですか?」
「ええ、いりません」
「!……女相手だから、手加減をする、とでも?」
金の眼に、怒りの表情が宿る。だが、藤堂は飄々と。
「はい、手加減します。」
火に、油を注いだ。
「……」
(こ、怖い……お姉ちゃん、ホントにキレちゃったよ……!)
銀が姉の本気の怒りを見たのは四歳の頃である。
まだ幼い金が遊びから家に帰ると、母親が声をかけた。
「おかえり、金や。中にお菓子がありますよ」
「ほんとう!?わーい!」
食卓では。
「あ、おかえりおねえちゃんもぐもぐ」
「ただいま。ぎん、あたしのぶんは?」
「食った」
その後の事を未だに夢に見て、うなされる事がある。

30 名前:金銀藤堂物語 九:2007/07/28(土) 21:59:27.11 ID:sc74Ps190
(あの時のお姉ちゃんでさえ、あれほど暴れたんだ……今、凄腕の
武術家になったお姉ちゃんが本気でキレたら……)
背筋に怖気が走る。姉は……
「……後悔させます」
呟いた時には、もう走っていた。
手中の木刀を、間合いにはいると同時に胴体に叩き込む。
見え見えの大振りは、計算しての事だ。
(どのように防ごうが、道具がなければ無傷ではすまない)
藤堂は、大きく後ろに飛びずさった。
(速い)
己の予測を大きく上回る速さに、思わず感嘆する。
続く撃。撃。撃。全ての動きをかわしていく。否、かわすしかない。
(無駄の無い動き、見事。まともにやっていては、いずれ喰らう、か)
藤堂は、そのまま後ろに下がっていく。
(……頭いいな、あの藤堂って人)
銀は藤堂の機転に感心した。藤堂は自ら道場の隅を背にした。
(隅に追い詰められたようだけど、実際は違う。あの位置の相手を
木刀で仕留めるとしたら、横薙ぎは左右の壁が邪魔になる。
また、上段からの振り下ろしも危ない……間合いを誤れば後ろの
壁にぶつかる。突きは、当たればいいけれど、避けられたらまず掴まれる位置関係……)
実際、金も攻めあぐねた様子で、相手の出方を伺っている。

31 名前:金銀藤堂物語 十:2007/07/28(土) 21:59:56.90 ID:sc74Ps190
(さあ、どうしますか?)
藤堂は、『手加減する』といったが、それは決して『手を抜く』という意味ではない。
立会いを避け、そして『手加減』の意味、そうした自分の真意を伝える為に
全霊をもって闘い、また全霊でなければ敵わぬ相手であった。
金は、暫し立ち尽くし、
「……」
微かに、唇を吊り上げた。
「!」
投げた。木刀を、真正面に、真っ直ぐに。狙いは胸。
(左右の壁を利用した!お、お姉ちゃんエゲツない……)
藤堂は。

(掴む)
           (無理)
   (かわす)
               (空間がない)
       (覚悟)
                    (覚悟しかない)

腕を十字に組み、歯を食いしばり、木刀を受けた。
ボグ、という嫌な音がした。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 22:00:11.56 ID:XmxME9Tb0
つC

33 名前:金銀藤堂物語 十一:2007/07/28(土) 22:00:26.45 ID:sc74Ps190
ダン、と大きな音を立て、藤堂は壁まで吹き飛んだ。そしてそのまま前のめりに崩れ落ちる。
(うわー、折れちゃったかな……)
銀は、顔をしかめつつ、この立会いも無事に終わった事に安堵した。
それは金も同様で、一瞬前まで身に纏っていた緊張感が薄れている。
そして、結局はその一瞬が全てだった。
「え?」
「……」
銀が気付いた時には、金はもう意識を失い、藤堂がその体を支えていた。
「これで終わり……でいいですね?」
藤堂は、銀に優しく微笑んで、言った。
銀が呆けて、頷いた瞬間。音を立てて扉が吹き飛んだ。
ぞろぞろと中に入ってきた荒くれ男達を見て、しかし藤堂の表情は変わらない。
反面、銀は直ぐに臨戦態勢を取った。見覚えのある顔ぶれだったからである。
「……さっきの……道場の奴ら!」
「なんのようですか?」
「……うるさくてすまないが、ちぃっとばかりこのお嬢さん方に用があってねえ……
その抱えてる金髪の姉ちゃんもこっちによこしてくれないかい?」
藤堂はにっこりと笑って、
「一昨日来やがりなさい」
落ちていた、金の木刀を拾った。

34 名前:金銀藤堂物語 十二:2007/07/28(土) 22:01:17.39 ID:sc74Ps190

       ……夢の中で。

夢の中には、その中で起こる出来事に驚いたり、悲しんだりしながら、
どこかで「これは夢だ」と気付いているような夢がある。だから、金は夢の世界を
暖かく、懐かしく思いながら、どうしようもなく過ぎていった時間を思い、
泣きたいような思いを抱いた。それは、父の夢。優しく、強かった、今はいない人の夢。

はっと、目を覚ます。
「気が付きましたか」
辺りを見渡すと、見知らぬ場所に、布団をしいて寝かされていた。
「あなた…藤堂……」
「お姉ちゃん、大丈夫?もーう、あれから大変だったんだから!」
「銀……何が……私は……負けたのですか……」
「そうそう、藤堂さん、あれはどういうこと?おねえ……姉がやられたと思ったら、
いつのまにかやられていて……」
藤堂は、片方の手を包帯で吊っていた。そう、木刀を投げた。全力で。壁に吹き飛んで、
手ごたえは十二分。間違いなく、最低でも片腕を骨折させた。だが。
「……途中」
金は呟いた。
「私の剣は……結局、道場剣法に過ぎなかったということなのね」

35 名前:金銀藤堂物語 十三:2007/07/28(土) 22:02:50.56 ID:sc74Ps190
「ど、どういうこと、お姉ちゃん?」
「私も……恐らく銀も、貴方の腕を折った時点で試合終了だと判断した。でも、そんな事は
私達の勝手な思い込み。まだ試合は『途中』だったのに、緊張感を切った私は、距離を詰められ、気絶させられた」
腕を折られた時の心身の衝撃を『覚悟』して乗り越え、背の壁を蹴りつけ加速。
うずくまった姿勢から、一気に矢の様に飛び出し、金の後方に回り込むのには
一足飛びで十分だった。首筋への当身で金の意識を奪った。
それでも緊張を維持していれば直ぐに反応され、藤堂は敗れていただろう。二人の勝敗を
分けたもの、それは『戦闘』への意識そのもの。技量は互角でも、闘争の認識の深さが
違えばそれは致命的な一瞬を作る。
浅い認識は天才を木偶に変える……!!才能ある新兵も凡庸な古参兵に敵わない……!!
「……」
「でも……何故?負けてからいうのも何だけれど……貴方と私の腕前はそんなに離れてない、
何回か手合わせをすればきっと私も何本か取れる、互角の技量だと思う」
「そうですね、素晴らしい動き、素晴らしい腕前でした」
「だから不思議なの……何故貴方は手加減なんてしたの?……私達が女だと思って
甘く見たわけじゃあない、……慢心したわけじゃない。それくらいは分かる」
「参ったなあ……」
無事な右手で鼻の頭を掻く藤堂。困ったように銀を見やると、銀もじっと答えを求めていた。
「やれやれ……単純な事です。痛みを知らない相手だったからです」

36 名前:金銀藤堂物語 十四:2007/07/28(土) 22:03:21.07 ID:sc74Ps190
「痛み……?」
「物心つくかつかぬかの幼子を殴って叱る親はいません」
「!」
一瞬、目の前が暗くなるほどの屈辱。敗北による謙虚な気持ちが消え、先程抱いた
怒りが蘇りそうになる。
「勘違いしないで下さい。腕前の話ではありません。貴女は……恐らく、ここ数日で
初めて他流試合をしたのではありませんか?」
その怒りも、図星を突かれた驚きに霧散した。
「どうして……」
「貴女たちは綺麗な顔をしている」
「!?」「!!」
姉妹は二人とも真っ赤になった。
「生傷の類がまるでない。それに手合わせをする前の緊張感の無さ」
「ひ、酷いなあ」
先の言葉にどぎまぎしながら銀が言った。
「試合開始をしてから臨戦態勢に移る。……それで分かったのです、あなた方が
こうした事を最近始めたばかりだという事を」
「……」
「実力的には差がなくとも、心構えの違いはハッキリと明暗を分かつもの。それが
手加減の理由です」
「でも!納得いかないわ。それで実際に怪我をするなんて……」
「貴女と私の違いはそこです」
「え……」
「貴女には……相手を傷つける覚悟をしても、自分が傷つく覚悟がない」

37 名前:金銀藤堂物語 十五:2007/07/28(土) 22:03:58.12 ID:sc74Ps190
「そんなことはないです!自分の敗北は覚悟して試合に望みました」
「では……敗北の味は如何ですか?」
「……」
そこで金は、あらためて、はっきりと自分の敗北を認識した。そして、
「あ」
「お、お姉ちゃん!?」
自然と涙が流れていた。
「………ッ〜〜〜〜〜〜〜!」
藤堂は辛そうに眉を顰めている。
金は、理性的には自分が何故泣いているのか分からなかった。だが、もっと深い、
より敏感な部分では、自分がこれまで積み上げてきた大切な何かが台無しになった事を
嘆き、狂いもだえていた。
「お姉ちゃん……」
銀は、その涙を見ているうちに、自らの視界もぼやけてきた事に気付いた。
ああ、そうか。あんなに強いお姉ちゃんが、負けちゃったんだ。さっきはあまりに唐突で、
全然実感がわかなかったけど。負け、ちゃった……私まで……悲しくなっちゃうよ……
「……敗北の味は苦いもの。その苦味を貴女に教えたかった。一切の言い訳の利かない形で」
「……ッ、も、でも、そんな、腕を折ってまで……」
「手加減しよう、と決めた時点で覚悟はしています。それこそ頭を割られて死ぬことすらね」
そういって、なんでもないような顔で藤堂は微笑んだ。

38 名前:金銀藤堂物語 十六:2007/07/28(土) 22:04:42.90 ID:sc74Ps190
「……わ、私……甘かったのね……」
目元を拭って、金が呟いた。
「……実は貴女が倒れた後、貴女たちが巡った道場の連中が仕返しにやってきました」
「え!?」
「そ、そうなの、お姉ちゃん。何十人と集まって、刀や槍を持ってて……
藤堂さんと一緒にやっつけたんだけど」
銀はその時の藤堂を思い出し、寒気を感じた。
片腕の負傷が信じられない程の強さ。そしてあの殺気。
恐らく姉は、そして自分は、少なくとも今は何回闘っても勝てないだろう。
「人間は、『痛み』に敏感です。身体の傷は消えませんし、今、貴女が感じているように、
精神的なものも長く残るもの。それは恨みとなります。闘わずして力量差が分かれば、
闘う必要などないのです。生真面目な貴女の事だ。きっときっちり最後までやっつけたのでしょう」
今度こそ、金は恥ずかしさを堪え切れなかった。悪さを見咎められた子供のように顔を赤らめた。
「で……でも、手を抜くのは失礼だと……」
「手加減と手抜きは違います。そう……自分が傷つくとしたらそれは自分の責任。格下に
全力を出し尽くすなど、生き死にの場で無いならばただの虐めです」
「……」
「将棋でもそうでしょう?素人相手なら駒落ちで戦うのが常道です」
何も言えなかった。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 22:05:25.79 ID:XmxME9Tb0
つC

40 名前:金銀藤堂物語 十七:2007/07/28(土) 22:06:26.30 ID:sc74Ps190
「まあ、私が言いたかったのはそれだけですが、別に深く考えないで下さい」
そういって藤堂はぽりぽりと頭を掻いた。
「ようは私のワガママです。言いたいことを言う為に、勝手に腕を折った馬鹿者ですよ」
ハ、ハ、ハと笑う。金はその笑顔を正視できなかった。
「…そんな事無い」
「お姉ちゃん……」
「……お願いです、私たちには今、『師』がいません……
私達に、手ほどきをしてくれませんか!?」
「……あの……私、腕折れてるんですが」
「貴方は素晴らしい人です……あなたなら、私達に足りない『精神面』を鍛えてくれます!」
「……しかし、それは……」
ちらりと藤堂は銀の方を見た。
銀は全てを諦めた表情で
“コイツ一度言い出したら梃子でも動かない人格障害だから”
というような視線を送った。
藤堂はたはは、と笑った。
「……何目で会話してるんですか、先生」
「せ、先生?」
「これから師と仰ぐ人、先生以外になんとお呼びしていいか分かりませんわ」
「……参ったなあ」
そういってはにかむ藤堂。その顔を見て、金はなにか心に波が起きるのを感じた。
それは、今までとは違った明日を予感させた。

41 名前:金銀藤堂物語 十八:2007/07/28(土) 22:06:51.30 ID:sc74Ps190
翌朝、道場に帰還した姉妹の傍らには藤堂の姿があった。
最初藤堂は道場入りに反対したが、結局桜国には道場の後始末をしにきただけで
全く知り合いも無い事、この後も特に行くあての無い事から、
「せめて腕が治るまででも」という繰り返しの懇願(これには銀も賛同した)に、
しぶしぶと逗留を決めた。
「藤堂さん、ここが我が家の道場です」
「銀。藤堂『先生』とお呼びなさい」
「お姉ちゃん……」
「金さん、そんな固い事は……」
「いけません。たかが呼び方一つかもしれませんが、何事もケジメは大切だと思います」
「う、は。はい」
何となく、背筋の伸びる藤堂。
「とりあえず上がってくださいな。銀、足を洗う桶を持ってきて頂戴」
「ええ」
ばたばたと動き出す姉妹。
「ああ、そんなの結構……って、いっちゃった」
藤堂は頭を掻きながら思った。
(……ただの居候になりそうなのになあ)
この腕では何も出来まい。それに、姉妹の心は今どきでも珍しいくらい真っ直ぐだ。
よほど親がしっかりしていたのだろう、姉の金は少し生真面目すぎるきらいはあるが。
「……まあ、そこが彼女のいい所ですか」
どうせ二週間もすれば旅立つ身。親切を甘んじて受けよう。
この時、藤堂はこの家で2年の時を過ごす事になるとは思っていなかったのだった。

42 名前:金銀藤堂物語 十九:2007/07/28(土) 22:07:30.26 ID:sc74Ps190
「まずは御一献、いただいてくださりませ」
トクトクと音を立てて注がれる酒。時間は夕暮れ。帰宅してから一刻半、食卓には
ささやかだが、手間をかけた馳走が並んでいた。
「やあ、ありがとう銀殿」
杯をあおる藤堂。特に酒好きという訳ではないが、美女の酌した酒を飲まぬ道理は無い。
「この料理も銀殿が?」
何気ない一言だが、銀は一瞬硬直した後、不意に十ほども老け込んだような表情で、
「……お姉ちゃん、私を厨房に立たせてくれないんです」
と呟いた。
「私、料理は結構得意なんです。でも、お姉ちゃんは信用してくれなくて……」
俯く銀。
「せっかくお客さんが来たのに、藤堂さんに食べてもらえないなんて、がっかりです」
「はは、もう暫くは滞在するわけですから、いる内に食べさせてもらいますよ」
「本当ですか?約束ですよ!」
ぱっと、弾ける様に表情が明るくなった。そこに、金が残りの膳を運んできた。
「つまらないものしかありませんが……どうぞ召し上がってください、先生」
「ああ、ありがとうございます」
酒が入り、微かに心が浮き立ってくると、藤堂は楽しさを感じた。
ここまで歓待される覚えは無い、と申し訳なさをしきりに感じていたが、酒が
気持ちをほどかせていた。料理の味も申し分がないときては、藤堂ならずとも
天国のような気分になるだろう。

43 名前:金銀藤堂物語 二十:2007/07/28(土) 22:08:24.67 ID:sc74Ps190
藤堂は地獄にいるような気分だった。
先から注がれ続ける杯、既に二十杯。嘔吐感に苛まされ、ついに藤堂は言った。
「あの……金殿、もう……お酒は十分ですよ……ぅぇ」
目の前の金の顔は真っ赤。目はグルグル目で、首がぐらぐら揺れている。
「あらあら、またまたそんな事おっしゃって☆まだまだいけますわ〜」
コロコロと笑う金。銀はすでに部屋の端に退避して、一人酒としゃれ込んでいる。
「なんという他人事」
金がぬるりと懐に忍び寄る。
「ささ、御一献〜」
「金殿、あなた、あなたも酔ってますよ」
「わた、わた、わたたたたた」
「いい加減にしてください」
「私のお酒したお酌は呑めないって言うんですかぁ……」
そう言って、おもむろに泣き出す。
「お姉ちゃん、絡み酒の下戸なんでしゅよねー」
そういってシャックリをしている銀。彼女も地味に酔っているようだ。
机に置いたままの杯に口を当てて啜っている。行儀悪りぃー。

44 名前:金銀藤堂物語 二十一:2007/07/28(土) 22:08:59.06 ID:sc74Ps190
最初こそ泣き出す金に戸惑った藤堂だが、
同じ流れが十数回繰り返された今となっては
ひたすらに鬱陶しいだけであった。
「ちょっと失礼します」
「ろこえ行くんれすか!ちょおと、かえららいでください」
「少し風に当たってくるだけですよ」
嘔吐勘に堪えつつ、涼やかに応える。
だが、金は藤堂の裾をつかんで離さない。
困って顔を向けると、う〜〜〜、と唸って上目がちの涙目で
睨んでくる。正直、酔っているとはいえこんな表情をする人とは
思わなかった。銀に助けを求めると、彼女は
机に置いたままの杯に口を当ててブクブクと息であぶくを作ってる。行儀悪りぃー。

45 名前:金銀藤堂物語 二十二:2007/07/28(土) 22:09:27.33 ID:sc74Ps190
「分かりました、分かりましたから。では、一緒に夜風に当たりましょう」
「ふぁい」
朦朧としたまま、金がついて来る。藤堂自身、足元が少しふらつく。
お酒でここまでやられたのは二度目ですね。あの時は辛かった。
明日は二日酔い確定ですかねえ……
そんな事を思いながら歩いていると、金が腕を掴んできた。
「金殿?」
「あれあれあれ、なんででしょー。足がふらふらふらしますわ?!」
「大丈夫ですか?」
「だ、だいじょぶです!私、そんなたよりなく見えますか!?」
「頼りなくよたよたしてるんですが」
「ふ、ふぅ〜〜〜、す、少しだけ酔ったのかしら……」
少しじゃないだろう、と心中で呟く藤堂。
銀は、あれからどうなったのか、杯の酒を頭からかぶって杯を後頭部に乗せたまま
いびきをかき始めている。駄目だこりゃ。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 22:09:40.84 ID:XmxME9Tb0
このペースだと猿喰らうぞwwwwwwwww

47 名前:金銀藤堂物語 二十三:2007/07/28(土) 22:09:54.29 ID:sc74Ps190
二人で縁側に腰掛けていると、涼しい風が心地よく汗ばんだ肌を弄った。
「ふう、やっと一息つけました」
「……」
空を見やると、棚引く雲に薄く隠れて、三日月が輝いている。
藤堂は不思議な心地がした。数日前までは故郷にあり、この桜国にやって来る事自体
想像もしていなかった。それが今は、片腕を負傷し、その腕を折った相手の家に逗留している……
「生きるということは、真に不可思議なものです」
「……」
「金殿?」
気付くと、金は藤堂の方にもたれて寝息を立てていた。
「やれやれ」
困ったようにため息をつき、しかし表情では優しく微笑んで、藤堂は月を眺めていた。

どれ位の時が流れただろう?
いつの間にか金は目覚めていた。それでいて、二人は言葉もなく、移ろう雲と、月の輝きと、
時折聞こえてくる虫の声、禽獣の息吹、そうして流れていく自らの心をあるがままに感じていた。
金は、ふう、とため息をついていった。頭は藤堂の肩にもたれかけたままである。

48 名前:金銀藤堂物語 二十四:2007/07/28(土) 22:10:31.09 ID:sc74Ps190
「ごめんなさい、こんな」
ご迷惑を、と言おうとするのを制して
「構いませんよ、素敵な御料理の代わりと思えば安い物です」
と藤堂。
金は困ったように眉をひそめ、
「もう少し……このままでいいですか?私、まだ少し気分が悪くて……」
暫し言葉が途切れる。先までの平穏の代わりに、互いに互いを意識しているような、
少々こそばゆい沈黙が訪れた。無論、藤堂はそんな内心を表には出さずにケロリとした表情で澄ましている。
金は、何か言おうとするも、酒で曇った思考は胡乱な呟きしか漏らせない。
「お酒、弱いんですね」
会話の糸口に放った一言は、しかし金を動揺させた。
「わ、私、その……」
言い繕おうとして、今の現状が現状なだけに、どのような言葉も説得力を持たない事を感じ、
金はうぅ、とうなだれてしまった。
「……嫌いではないんです。お酒の味は好きですし、飲んだ時の気分もすっきりしてて。
でも、少し人より弱いみたいで、度を過ぎるとこんなに……」
真っ赤になっているのは、酒の為だけではないようだ。
「普段は気をつけて、おちょこにほんの一口だけにしてるんですけど」
「では、何故今日はこんなに?」

49 名前:金銀藤堂物語 二十五:2007/07/28(土) 22:12:28.68 ID:sc74Ps190
すると、急に金は、怒ったような、困ったような、照れているような、形容しがたい表情を見せた。
「……?」
訝しむ藤堂に対し、金は呟くように言った。
「……たから」
「え?」
それは意外な内容だった。
「……銀が。あの子が酌をしていたから、私もして差し上げようと思って……」
そして、お返しの杯を律儀に呑んでいたから度を越してしまった、という。
「呑みたかったのではなく、私に酌をしたかった、と?」
「……はい」
うっすらと頬を染める金。
「私……はじめてだったんです」
「……何がです」
「男の人に……負けるの」
そして、切なそうに目を伏せた。

50 名前:金銀藤堂物語 二十六:2007/07/28(土) 22:12:56.31 ID:sc74Ps190
「はじめて……」
「はい、父は既に老齢でしたから、師事こそいただきましたが試合った事は一度もありませんでした。」
「それは……」
藤堂は内心ウゥム、と唸ってしまった。実戦経験が零に近い、正に道場剣法しか経験のない金。
それであれだけの動き、力量なのかと思うと怖気すら走った。心の在り方が定まれば、間違いなく
当代一を争う達人の域になるだろう、いや、既にそのとば口に達している……
「実際に、他流試合をしても……敵う相手はいませんでした……貴方を除いては」
「買い被りです、私より強い者など、それこそ今見ている星の数ほどいますよ」
「でも……今の私には、他の星など見えませんし、見るつもりもありません」
つい、と金の頭が肩から離れた。そして、藤堂を真正面から見据えると、言った。
「はしたないかも知れませんが……」
一瞬、躊躇い、視線を下に落とし。
やがて、顔を上げて、高揚した顔で言った。
「一つ……お願いしたい事があります……」

51 名前:金銀藤堂物語 二十七:2007/07/28(土) 22:13:41.68 ID:sc74Ps190
「お願い……?」
「はい……」
そうして、金は消え入りそうなほど身を縮こまらせて、苦しげに眉を寄せる。
「昨日、立ち会ったばかりなのに……不躾かもしれませんが……」
上目づかいで、藤堂の様子を伺う金。藤堂は、不意に鼓動が高鳴るのを自覚した。
そう、美しい女性である。それは容貌ばかりではない。一人の武道家として。
一人の姉として。一人の、自分の同世代の女性として。その心根の美しさは、
短い間でもしっかりと藤堂に伝わっていた。それは、あの立会いの時に既に
知れていた事。その女性が、自分に全霊を込めて、何かを伝えようとしている……
「どんな……お願いですか……?」
少し、喉が渇いた。
金は、瞬きもせず、一息で言った。
「もう一度、私と立ち会ってください」

52 名前:金銀藤堂物語 二十八:2007/07/28(土) 22:14:47.53 ID:sc74Ps190
風の音、虫の声。そして金の瞳が世界の全てだった。
ただ、黙して見つめあう二人。藤堂は、今が現なのか、はたまた酒に酔った果ての夢なのか、
その区別がつかないでいた。
「もう一度……」
「その腕が治りましたら、どうか発たれる前に、もう一度……私と立ち会ってください。
今度は……どうか、手心を加えずに」
そうか。その為に、この家に逗留を勧めたのか。
「勘違いしないで……恨みの気持ちではないんです。悔しくない、といえば嘘になりますが……
それよりも、父以外で初めて武道家として尊敬した貴方に、もっと……分かって欲しい、
……伝えたいんです、……私自身を、私の全力を」
真っ直ぐな、ひたむきな瞳。そう、その瞳だ。何の益にもならぬ試合を、
純粋に向上心から望んだ娘。その瞳に惹かれたから、叩きのめした。
この人が、いつかどこかで、致命的な恨みや傷を抱かないように、と。
「いいでしょう、お約束します」
「……ありがとうございます、先生」
そういって、金は立ち上がった。
「そろそろ、片付けをしてきます」
そういい残し、後には藤堂が残された。
「……参ったなあ」と、頭を掻きながら。
夜は静かに更けていった。

53 名前:金銀藤堂物語 二十九:2007/07/28(土) 22:15:39.38 ID:sc74Ps190
翌朝、藤堂は己のくしゃみで目が覚めた。
「……ここは」
縁側だった。結局、あのまま寝てしまったのだろうか。
「やれやれ、私もまだまだですね」
頭を掻きながら、昨晩の事を思い出した。

   ……もう一度、私と立ち会ってください……

「……やれやれだなあ」
今に入ると、金と銀の二人が並んで寝そべっていた。酒の臭いがぷうんとする。
「……」
藤堂は硬直した。二人の呑んべえは、寝汗でもかいたのか、服をはだけていた。
着衣の乱れという生易しいものではない。
布切れが素肌に引っかかっている、という程のものだ。
「これは眼福、と言っている場合ではありませんね」
嫌な悪寒を感じ、昨日誂えてもらった自室に戻ろうとした瞬間、
何処からか鶏の声がした。
「うう……頭痛ぁ……」
「ん……ふぅ、もう朝なのね」
そして、ぼんやりと美人姉妹は藤堂に視線を送った。
「「おはようございます、藤堂(先生)(さん)」」
「……参ったなあ」
今度こそ、冷や汗と共に呟いた。一瞬後に蜂の巣をつつくような大騒ぎになった。

これが三人が迎えた最初の朝。三人が「家族」となり、やがて別れるまでの、
二年間の最初の朝だった。

54 名前:金銀藤堂物語 三十:2007/07/28(土) 22:16:16.86 ID:sc74Ps190
道場では、二つの影が向き合っていた。
「……」
「……」
その後方。一人の男が二人の様子を窺っていた。
「ハァッ」
「応!」
上段で飛び込んでくる金を、抜き胴で迎撃する銀。それを察し、柄頭で相手の一撃を防ぐ。
「……ッツァ!」
そのまま後ろに飛びずさり、正眼に構えなおす。追撃をしようと迫る銀は、すぐに立ち止まり、
慎重に間合いを計った。
……藤堂の逗留から三日。二人の稽古の在り方は劇的に変わっていた。
(こんなにも違うものね……)
心中、呟く銀。下段に構える。
(『誰かに指導される』というのは……)
心中、呟く金。正眼のまま、にじり寄る。
それまでも、二人は自分等の稽古は心技を凝らしたものだと思っていた。
だが、今こうして藤堂の眼の下で行う稽古は緊張感が違った。
それまでは、どこかで姉であり、妹である事に甘え、馴れ合っていた空気が遭った事を否めない。
今、姉妹は各々独りの武道家として、自らの全てを用いて相手を破る算段をして戦っていた。
それは、自らを勝利へ導く公式を紡ぐ計算機械と化す事であった。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 22:16:31.51 ID:XmxME9Tb0
つC

56 名前:金銀藤堂物語 三十一:2007/07/28(土) 22:17:06.95 ID:sc74Ps190
姉妹のそれまでの稽古は、より早く、より強く、より多くの撃を加える事を主眼にしていた。
今の二人にとっては、それは拙い児戯であった。
勝利の為には、与える撃は一撃でよい。その一撃を繰り出す為には、無数の撃は不要である。
毎度ただ得失なく、この一撃に定むべし。動きは隙を作り、力みは疲労を生む。
緩急を自らで制御していく。姉妹の戦闘技術は、確実に一つ上の段階に進んでいた。

すでに、半刻もの間、二人は身動きしなかった。
――否。
常人には認識できぬ程の速度で、両者は目まぐるしい駆け引きを行っていた。
数十秒をかけて指一本分の移動を行い、確実に隙をなくし、或いはあえて隙を作り、
相手を誘導し、相手の動きを追う。膨大な変化の、常に一手先を読み合い、
ぎりぎりの均衡状態を繋ぎ続ける。だが、それもいつかは破綻する。
喩えるならば鹿脅しのように、無音の静寂は、いつか音立てる緊張を高め続けていた。
そして姉妹は互いにその時を狙い続けている。

57 名前:金銀藤堂物語 三十二:2007/07/28(土) 22:17:40.48 ID:sc74Ps190
既に二人の肌には玉のような汗が浮かんでいた。
(決着は近い)
藤堂は思った。それは戦っている両者にも分かっていたことだろう。
果たして、流れ落ちた汗が、金の目に入った。
「……」
目をつぶる金。そして、それこそを待ち望んでいた銀は、一歩で間合いに立ち入った。
「……ッ」
そして、勝敗は決した。

「大丈夫ですか?」
藤堂は、失神した敗者を抱きかかえながら言った。
「……藤……」
ぼんやりとした瞳が、次第に光を取り戻していく。
「私……負けたんですね」
そう言って、銀はため息をついた。

58 名前:金銀藤堂物語 三十三:2007/07/28(土) 22:18:16.36 ID:sc74Ps190
金の目が塞がれた瞬間、銀は一歩で間合いに立ち入った。
「……ッ」
最速の攻撃。それは突きを措いて他にない。体の真正面ならば、避ける事は出来ない。
また、攻撃部位が点となる突きならば、払う事は容易ではない。
(今日は私の勝ちね、お姉ちゃん)
――それこそが、最大の隙だった。

銀のこうした思考の流れは、そのまま金の思考の流れであった。
自分か相手、どちらかが必ず隙を作る。その後の流れを追うのは、
いうなれば将棋の詰め方を探していく作業だった。
恐らく狙ってくるのは突き。視界を閉ざされたら間違いなく喰らってしまう、
少なくともまともな避け方ならば。では、まともでなかったとしたら?

銀が攻撃に移った瞬間、金は一歩後ろに飛びずさった。
(甘いね、お姉ちゃん!)
さらに一歩、跳ねる銀は、その瞬間、違和感を抱いた。相手の金の様子に。
(……あれ?)
金は、手ぶらで後ろに飛びずさっている。
そして、上方から迫る何か。
次の瞬間、おでこに衝撃を感じると同時に、銀の意識は失われていた。

金は、避け切れぬ事を悟ると、銀の頭部を狙って木刀を投げていた。上方から
相手に投げ渡すように、横向きにして。
「まだまだ甘いわね、銀」
そういって、涼やかに笑みをこぼした。

59 名前:金銀藤堂物語 三十四:2007/07/28(土) 22:19:38.24 ID:sc74Ps190
ため息をついた銀に、藤堂は優しく笑いかけた。
「互角の力量ならば、勝負は時の運です。それより、この稽古で一つでも学べる
ものがあったなら、何よりも素晴らしい事ですよ」
そういって、水で絞った布を銀の頭にあてがった。
「……藤堂さん……」

「藤堂先生よ、銀」
オホン、と咳払いする金。その表情は何やら不機嫌そうだ。
「さて、後片付けは任せてしまって構いませんか?」
「「はい!」」
金銀姉妹の声に笑顔で答え、藤堂は道場を後にした。
(……あれだけの熱戦を目の当たりにしたら、こちらも汗まみれになりますねえ)
そういって、藤堂は浴場を目指した。こんな昼から入るのは、この家に来てから初めての事だ。
藤堂は知らなかったのだ。姉妹が稽古の後に湯に浸かる事が習慣になっているという事を……

60 名前:金銀藤堂物語 三十五:2007/07/28(土) 22:20:12.25 ID:sc74Ps190
「やあ、いつ入って大きな温泉ですねえ」
道場が盛んだった頃には、門下生は50人を超えていた。先代、すなわち姉妹の父は、
屋内風呂ではおっつかぬとして、敷地内の一部を改築して温泉をこしらえたのだ。
温泉脈にぶち当たり、放棄していた井戸があったのを再利用したのである。

「あ”〜〜〜〜〜……」
何で温泉に入るとこんな声が出るのでしょーね、と藤堂はぼんやり考えていた。
何で空はこんなに青いんでしょーね
何で雲はあんなに高いんでしょーね
何で金殿が裸でここにいるんでしょーねって、

え?

思考がまとまる前に、本能は「身を隠せ」と命令した。
結果、最悪の行動選択。藤堂は湯船の中に身を隠した。

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 22:20:28.51 ID:XmxME9Tb0
つC

62 名前:金銀藤堂物語 三十六:2007/07/28(土) 22:20:41.69 ID:sc74Ps190
「……気のせいかしら?湯船から音がしたような……」
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「え?……ああ、何でもないわ」
「変なお姉ちゃん。頭を打たれたのは私の方よ?」
そう言ってくすくす笑う銀。
二人は掛け湯ををして汗を流すと、湯船に浸かった。
コボリ。と、湯船の底から水音がし、泡が浮いてきた。
「……?」
「お姉ちゃん、隙あり!」
「きゃあ!」
銀は、後ろから金の胸部に手を回した。
「わ、また大きくなった!?」
「こら、駄目よ、ふぁ、あはははは!くすぐったい!」
バシャバシャと波打つ水面。ゴボゴボと、湯船の底から水音がし、泡が浮いてきた。

63 名前:金銀藤堂物語 三十七:2007/07/28(土) 22:21:09.08 ID:sc74Ps190
「ふ〜〜〜……」
「は〜〜〜……」
姉妹は二人でため息をついていた。
「気持ちいーねー……」
「サイコーだわ……」
平和な時間が流れていた(表面的には)。
「……あ〜あ」
銀が頬を膨らませる。
「どうしたの?」
「さっきの稽古。……今日こそお姉ちゃんに勝てたと思ったんだけどなぁ」
「あら、今までに何回だって勝ってるじゃない」
「それは、この前まででしょ」
『この前』とは、藤堂が訪れた三日前の事だ。
「藤堂さんの前では、負けた所しか見せてないからさぁ」
「……いい?銀、貴女が負けたのはきっとその心のせい。
『いいところ見せよう』って思うから負けるのよ」
「ちぇ、言う事固いなあ」
「そういう口は勝ってから利きなさい」
「明日は勝つもん」
そういって笑いあう姉妹。と、不意に銀が表情を変えた。戸惑うような目で、ぼそりと尋ねた。
「ね、お姉ちゃん……藤堂さんの事、……どう思う?」
湯船の底からゴボリ、と水音がした。

64 名前:金銀藤堂物語 三十八:2007/07/28(土) 22:21:43.82 ID:sc74Ps190
「?どうって……」
金はここ数日間の事を思い返す。藤堂道場での出会いから、先の稽古場まで。
「素晴らしい達人だわ。私達の稽古への指示も的確だし」
すると、銀は、ハァ〜、とため息をついた。
「確かに凄腕の人だけどさぁ、そういう意味じゃなかったんだけど」
「?じゃあ……」
金は言いよどんだ。
「……男の人として、って意味」
そういう銀の顔は少しずつ紅潮していった。
「銀、あなた……」
「お願い、教えて、お姉ちゃんの気持ち……」
金は思った。思えば銀は男性に対しての免疫がない。
きっとこれは麻疹のようなものなのだろう。そうした自分の気持ちに、
初めて風邪をひいた子供のようにとても混乱しているのだろう……
「銀。藤堂さんが好きなのね」
「ッ……」
その一言で、銀は完全に真っ赤になったかと思うと、次の瞬間に……
「う、うわああああん!」
「銀!?」
ゴボリゴボリと水音。
突如泣き出した銀は、そのまま金にすがりついた。
「わああああ!」
金は、銀の頭を撫でながら思った。
(初恋、なのね……)
その眼差しは、何処までも優しかった。

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 22:26:43.16 ID:XmxME9Tb0
つC

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 22:27:10.42 ID:Vv0UrWad0
さるさんだそうです

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 22:32:57.15 ID:U/ar3Yh20
ナンテコッタイ

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 22:34:28.80 ID:Sp2GrjqJ0
そりゃそうか。
って最初からうpるとは思ってなかったぜ。
てっきり途中からと。

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 22:46:37.53 ID:089SZRbg0


70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 22:56:51.58 ID:Sp2GrjqJ0
まだ11時なのに、なんたる過疎。
宿題すっかな……

71 名前:金銀藤堂物語 三十九:2007/07/28(土) 22:59:13.16 ID:sc74Ps190
「落ち着いた?」
「う、うん……」
銀は、少し恥ずかしそうに俯いている。
「いい?藤堂先生はお客様で、まだこの家についてから三日しか経ってないわ」
「……」
「だから、いきなりその気持ちを伝えても、ビックリさせてしまうだけで終わってしまうわ」
「うん……」
「だから……先生の腕の怪我が治る頃、そう、もっと親しくなってから、告白すればいいわ」
「うん……でも……お姉ちゃんはそれでいいの?」
「ええ、私は銀の事を応援するわ」
「……」
「藤堂先生は素晴らしい人だけど……私が興味があるのは武術家としての彼だけよ」
ゴボリ、と水の音。
「……本当に、応援してくれるの?」
「当たり前じゃない、たった一人の妹を応援しない姉がいるもんですか」
そういって、優しく笑いかける金。銀は、また少し目を潤ませた。
「ありがとう……お姉ちゃん」
その時であった。
ゴボリ。ゴボゴボゴボ。と、泡が二人の間に立ち上った。

72 名前:金銀藤堂物語 四十:2007/07/28(土) 22:59:41.67 ID:sc74Ps190
「……」
「……おなら?」
「お、お姉ちゃん!怒るよ!」
「下に何かあるの?」
そう言った途端、泡が止まった。
「……何かしら?」
「ちょっと覗いてみる」
そういって、銀は湯の中に潜り込んだ。

人間の肺活量とは、どれ位のものだろうか?藤堂は思った。
無呼吸状態が長く続けば、人は失神する。訓練次第ではその時間をより延ばすことが出来るが、
いずれにせよはっきりしているのは、『自分はもう限界だ』という事だけだ。
だが、断末魔の瞬間!藤堂の精神の爆発力が危険な冒険を生んだ!
普通の人間は、息が続かなくなったら水面を目指そうとする。だが!藤堂は逆に!
「あれ〜、やっぱり誰もいないかなあ」
さらに!地底目指して潜った!
「もういいわ、さっさと上がりましょう」
水面上から届く声と、動きの気配。その瞬間に合わせ、地底の石を動かした。石と石が
重なり合う中に閉じ込められた『空気の泡』が浮かび上がる。藤堂はその泡で一呼吸をした。
たった一呼吸。だが、これであと一分は耐えられる……!
さらにその石を抱えて身を隠す!幸運は二つあった!有色の温泉であった事!そして、
底が視界の届かぬほど深くあった事!こうして藤堂は生き残った。

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 22:59:52.36 ID:XmxME9Tb0


74 名前:金銀藤堂物語 四十一:2007/07/28(土) 23:00:14.84 ID:sc74Ps190
姉妹が立ち去った後、一分弱。
「ぶるぁあああああああああああ!!!」
ザバラッシャーン、と水音を立てて藤堂が飛び出した。
激しい息遣いは、生命の弦が危うかった何よりの証である。
「よ、よく考えたら先に湯船に入っていたのは私だった筈……!
隠れずに話しかけて事情を説明すればよかった……!!」
辿りついて、未だ山麓……。藤堂は己の未熟を改めて悟った。
大体、脱衣場の服に気付かなかったのですかねえ、あの二人は。
『あの二人』、という言葉を思い浮かべた途端、心が重たくなるのを感じた。
「銀、殿か……」
浴場から出て、手早く服を着る藤堂。身支度を終えると、頭を掻いた。
「……参ったなあ」
その表情は、また、今までのものとは風合いの異なるものであった。

そして、扉に手をかける直前。扉が開き、金が顔を出した。
「あら、藤堂先生」
「!?」
ばれたか、と身を硬直させる藤堂に、金は笑顔で言った。
「いらっしゃらないと思ったら入浴ですか。ふふ、当家自慢の浴場なんですよ」
「え……ええ、お二人が上がったので入らせていただこうと思いまして……」
「あら、先生を待たしてしまうなんて!申し訳ございません」
いや、あはは、構わずに、と言い捨てて、扉を閉める藤堂。ため息をつく。
「……また、浸かるか」
そうして、とぼとぼと服を脱ぐのであった。

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 23:00:49.06 ID:XmxME9Tb0


76 名前:金銀藤堂物語 四十二:2007/07/28(土) 23:00:51.96 ID:sc74Ps190
桜国城下町――某所。薄暗い一室に、暗い顔をした男達が集まっていた。
「……では、依頼の内容を聞こう」
一人、他の男達と向かい合っている男がぼそりと呟くように言った。
年の頃は不明、だが壮年へと言っていい頃合か。
長い髪を束ねて後ろに流している。怜悧な表情は、その細い眼の為か。
着流しを来たその姿は、何者をも寄せ付けない排他的な無頼人の気配を孕んでいた。
「……女、二人だ」
「理由は……」
「……面子を潰された。看板を下げる目に陥った道場もある。今更、奴らがどうなろうと
状況はかわらねえ。それでもおさまりがつかねえってのが人情、だろう?」
話しながら興奮しているのか、無頼人と交渉している男は怒気を孕み、青筋が浮かんできている。
周囲の男達も、ざわめき始めた。悪口、罵り。凶気、悪意。
「……」
無頼人はそれを黙殺していた。
「……事情は分かった……俺をはめるような罠の類は無いよう、だな……」
「ああ、こちとら溜飲を下げてえ一心なんだ、引き受けてくれるか?」
「……一息か」
「あ?」
「……その女二人……一息に殺すか、寸刻みに殺すか、どちらにすればいい?」
ざわめきが一瞬おさまった。その場の男達全員が、無頼人に畏怖を感じた。
男の言動の剣呑さに対し、その表情が完全に無表情、つまり彼にとっては日常茶飯事のような言動だと悟ったからだ。

77 名前:金銀藤堂物語 四十三:2007/07/28(土) 23:01:36.61 ID:sc74Ps190
「……で、報酬の話なんだが」
「……」
「100、でどうだい?」
「……」
男の顔は変わらない。だが、無言の気配の内に、依頼人達に対する嘲笑的な意思が込められていた。
「500、だ」
「なんだと!?」
一座がどよめいた。
「無理ならば他所をあたれ」
「この餓鬼、舐めるんじゃねエッ」
「手前、足元見る気かァッ、勘違いしてやがる!」
ざざ、と音を立てて無頼人を取り囲む一堂。だが、交渉していた男だけは青褪めていた。
「ば、馬鹿野郎!手前ら、手を出すんじゃあねえ!」
だが、時遅く、一人が男を投げ飛ばしていた。宙を飛び、畳に叩きつけられる無頼人。
「やった!」「ざまぁねえ!」「何が伝説の人斬りだ!」
一斉に騒ぐ周囲の声は、しかし、今度こそ凍りついてしまった。
投げ飛ばした男は、その投げた時の姿勢のまま、首が完全に反転していた。
無頼人は投げ飛ばされた瞬間に、頚椎をへし折っていたのだ。受身をとった彼は、全くの無傷で立ち上がった。もはやうめく声も無かった。
「やっぱりあんたは特別だ、500で頼む、あの姉妹を地獄に送ってくんな」
男は、わずかに頷き、何事も無かったようにその場を後にした。

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 23:02:07.75 ID:XmxME9Tb0


79 名前:以下、名無しにかわりましてGODがお送りします。:2007/07/28(土) 23:03:21.64 ID:sc74Ps190
とりあえずここまで。
今日は疲れているのですまないが寝させてもらいます、すんまそん。
明日また、今度は新しい何かをうpりますわノシ

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 23:03:40.06 ID:XmxME9Tb0


81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 23:08:41.68 ID:XmxME9Tb0


82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 23:10:57.72 ID:U/ar3Yh20
>>79
乙!

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 23:17:33.74 ID:XmxME9Tb0




84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 23:24:09.42 ID:XmxME9Tb0


85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 23:27:53.64 ID:N1G5E7zq0
ホシュ

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 23:37:56.16 ID:N1G5E7zq0
ホシュ


全部 最新50
DAT2HTML 0.34 Converted.