『【DW暦1027年12月31日】
今年ももう残り僅かになった。
「年越しといえば年越しそばだ!!」と、誰が言い出したのかは忘れたけれど、街の皆でそばを作って食べた。
もちろん、その前におせちを作って、重箱に詰めた。
今年は戦争は起きなかった。
争いで仲間が傷つく事は無かった。』
「おーい、レイー、どこに居るー?」
私は部屋の入り口で叫んでいるパートナーの声を聞き、ペンを止めた。
「ここにいるよー、本を片付けたら行くから、先行っててー」
「わかったー、先に行っているぞー」
『一ノ宮』と書かれた表札が掲げられているこの家の中で最も広いこの部屋は、図書室と化している。
本棚が乱立しているため、場所によっては入り口から見えない。
そして、この部屋にある本を全て知っているのは集めた私だけ。あまりに多すぎるため、
パートナーのストックですら一部しか知らないはずだ。
だから、私が書いている日記のありかは知らないだろう。(第一、私が日記を書いていることを知らないかもしれない。)
今日は大晦日。
これから、このはじまりの街のレストランで、街の住人と、ファイル島各地に住んでいる仲間達と『年越し忘年&新年会』を行う。
そろそろ、参加者がレストランに集まり出す頃だ。
私は、机の上に置いていた数冊の本を本棚に戻した。
机の上に残ったのは、先程まで書いていた日記。
毎日書いていた日記は、1冊が1年分の記録。去年まで書いていた日記もすべて取ってある。
そして、今年の日記も、最後のページを残すのみとなった。
そろそろ、部屋を出なければならない。
私は、日記の最後のページに最後の一文を書き足し、本棚に戻した。
『来年も、平和でありますように――。』