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天の子供達

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zecre

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最前線
「警務組織コンストラクション・オブ・ライト」と「天国の矛クラリオン」
           vs
「アトランティス大陸の軍勢」

アリスとカリメロ

●

アトランティス大陸の軍勢と地獄の民の連合軍の戦線の最前線。
もともと実力部隊として組織されていた「天国の矛クラリオン」が
中心となって戦闘の指揮をとっている。
新米の司令官のウリエルは主に作戦会議室に引きこもっているが
仕事熱心なクラゲ・サツキと天真爛漫で戦闘意欲旺盛なアリス・ヘヴンズゲートは
絶えず最前線中の最前線に赴き、その実力をどんどん練磨させていっていた。

●

轟音が鳴り響く戦場で無数の影が行ったり来たりして
衝突音を鳴り響かせ、そこら中に衝撃波を発生させている。
「天国の矛クラリオン」と「警務組織コンストラクション・オブ・ライト」の
仮設された陣営の背後には鬱蒼とした樹海が生い茂り、
前方の交戦地帯はカラッカラの荒野であった。
雲より高い天空において幾度も幾度も七色の花火のような閃光が
間断なく炸裂を続けている。
その光は地上でせせこましく俊敏な戦闘を続けている
兵士達に活気を取り戻させたり、または畏敬の念を抱かせたり、
色んな作用を及ぼしていた。
花火を発生させている張本人はクラリオンの
「統制の利かない秘密兵器 アリス・ヘヴンズゲート」である。
その相手をしているのはアトランティス大陸の軍勢の大幹部の一人、
十牛のカリメロ・ヴィットーリオエマヌエーレである。
アリスが掌から射出している七色の光球は「愛弾(マブラヴだん)」という物で
彼女の体内を流れる血球型エニグマ「サンズリバー」と彼女が時おり使えるようになる
精神エネルギー「愛(マブラヴ)」を組み合わせる事で使えるようになる代物である。
空中で相対するカリメロという男は肩で息をしているが、
防御に特化した彼の「傍観力(イン・ユア・ポジション)」という力で
アリスの撃ってくる球を腕や脚をたくみに使って必死に弾いている。
彼は銀髪碧眼でトルコの民族衣装を着てグラディエーターを履いている。
幾ばくか劣勢の気があるが、彼は首を斜めに傾けて気味悪くニヘラと
笑い続けている。額には汗が滲み、仕草とは裏腹に余裕が全く無い事が
見て取れる。
十牛の間では「なるたけ相手に本気の自分を見せない事」というのが
暗黙の共通ルールになっているが、彼の場合は少し状況が違い、
「本気を出したくても出せない。出す理由が見つからない」など
甘えた現代っ子らしいヘタレ具合を持っているような部分があるらしかった。

●

雲の上で虹色の巨大な両翼を柔らかく羽ばたかせて
やや顔を火照らせているアリスは前方のカリメロを見つめながら
柔和に笑っている。
黒と白の修道服を着ていて、髪は腰より下まで伸びている。
髪の色は薄い藍色のように見えるし、頭の右左に機械的な小さな角が生えている。
彼女は普段は黒髪だが、「愛(マブラヴ)」を使い始めると
髪の色が変わり、角が生えるのだ。
前方で同じように翼で羽ばたいているカリメロは
体力の消耗で少し空ろになりかけている眼で
生気を漲らせて、それでいて迫ってくるような厳しさを感じさせない
アリスを見つめながら逡巡している。
アリスが次の弾を撃ってこないのをいぶかしみ、
そして、もし撃つ気が無いのだとしたら「この娘と少し話がしたい」と
思うようになっていっていた。

●

「ねェ、前から思ってたんだけどさ」
カリメロが少しはにかんで下を向きながらアリスに話かける。
「その髪の色、スッゲ綺麗だと思うんだよ」
「昔あったじゃん。色ボールペンで『日本の伝統色 絹物語』とかいうシリーズがさ」
「海の底でも出回ってたんだよね。アレ」
アリスは少し素の顔に戻って、
軽く微笑して流し目でカリメロを見ている。
「ああいう系の色だと思うんだよ。その髪の色」
「美しいよね」
「強くなって髪の色が変わるんなら普通金とか銀とかだと思うけど…」
「君は意表を突いてくる」
「その辺がギャップ萌えっていうか…」
「浅葱色って言うんだよ?」
慌しく無意味なジェスチャを加えながら喋っていたカリメロに対して
アリスが言葉を返す。
彼女は空中で少し斜めになって浮かびながら
自分の長い髪を竪琴でも弾くようにサラサラと弄んでいる。
顔の火照りは失われてしまい、ただ柔和な笑みが一層柔らかくなったように
カリメロには感じられた。
「浅葱色・・・」
「水より濃くて・・・花より薄い・・・」
「そんな色だ」
はにかんで上目遣いでアリスを見やりながら、
カリメロは話し続ける。
「お前、最初に見た時さ」
「初めは寝てた」
「そんで次にスゲェ怒りだした」
「そんですぐに虹色の球を出して・・・」
「更にしばらくして、お前が満足いかなくて力を込めすぎた所為で
七色だった球は真っ黒になっちゃった」
「俺達、スゲェ焦ってさ。お前がラムウ様を一直線に狙ってるのがすぐに分かったから」
「皆で必死になって球を止めようとしたんだ」
「結局俺とラムウ様の秘術ではね返す事ができたけど…」
「アレさ・・・もしお前が欲張らなくて七色のままで投げてたら・・・」
「お前らが労せず官軍・・・っていうタラレバがあったかも・・・」
そこまで話してカリメロは羞恥心で顔を赤らめ、ブンブンと首を振る。
「ま、今は俺も強くなっちゃって七色の球でもはね返せるようになったから」
「良いよな。そんな話」
ニヘラとヘタレ性を滲ませてカリメロが笑いかける。
アリスはソレを見て微笑みの度合いを強め、
斜めになっていた体を真っ直ぐに整える。
「良いんだよ。たとえ共通見解だって」
「実際に話す事にはそれなりに価値があるよ」
「なんだか気持ちがホッコリするでしょ?」
「その価値、プライスレスだと思うな」
そう言い終えるとアリスは真っ直ぐだった体をまた
斜めに傾けて浮かんで、天使のように目を細めた。
瞳がなだらかな山型になっていて、その辺の少女と何ら遜色が無い
人物であるように見える。
彼女は実際は地獄の民側の最強の実力者であるにも関わらず。
カリメロははにかんだ表情を一層はにかませている。
何度となく交戦を繰り返した目の前の女性が
どんどん性質を変えていっている事を不思議がる気持ちがドンドン湧いてくる。
知りたい
という気持ちが湧いてくるわけだ。

●

アリスは最初、橘という男に担がれて寝てた。
諏訪内という女が気を失うと突如として怒りだした。
自分達一人一人ではどうしようもないような力を発して女王を倒そうとした。
球がはね返されて、その自分で放った球を受け止め、自分の仲間を守って気を失った。
しばらくしたらまた戦いに帰ってきた。
最初に見た時より弱くなってると思った。
でも、だんだん以前の力を取り戻していった。
そして現在、以前よりも強くなって性質を変えて俺の目の前で笑顔で浮かんでいる。
性質は最初はかいつまんで言うと無軌道だった。
烏のように落ち込んでる時があったかと思うと
ハチ鳥みたいに喚起に湧いてる時もあった。
両極に揺れる触れ幅が大きいって事はそれだけ不安定だっていう事でもあって・・・
メンヘラっぽい・・・と言う事もできたかもしれない。
専門的には双極性欝というのだろうか。
そんな危なげな魂を抱えているように見えた。
戦争が長引くにつれて
彼女は自分の力の使い方のコツを覚えてだんだん精神の安定を取り戻していった。
鷹のように攻め、鶴のように佇み、梟のように知彗を働かせ、
雀のように平凡な少女のような顔を見せた。
戦うたびに楽しくて楽しくて、
自分のヘタレ性が消えていくよりも早く彼女のメンヘラ性は消え失せていった。
一体何故そうなったのだろうか?
その理由は正直分からないのだ。
でもソレが彼女にとって太陽に向かうような善い変化なのだとしたら、
その変化は敵である自分にとっても善い事であるように思える。

●

想像を巡らせているカリメロの困った顔を眺めているアリスの顔に
再び火照りが見え隠れするようになった。
首をクタクタくねらせて彼女が元々持っている呪術的な素養が
カリメロの目にも映る。
より一層に首を傾け、カリメロの方に伸ばし、アリスは話し始める。
「・・・なんだか空気で何考えてるか分かっちゃった・・・」
「だから、もう喋らなくて良いや。いつもみたいに踊ろう」
アリスの両目から透明な涙がしとしとと零れ落ち始める。
少し狼狽するカリメロ。
「なんかずっと昔にもこんな事があった気がするな・・・」
「いっぱい嬉しくていっぱい悲しくていっぱい絶望して・・・」
「そんでいっぱい泣いた・・・」
「自分でも自分の制御ができなくてさ・・・」
「ただただ自分の外の物が愛おしくて・・・」
「今にも消えてしまいそうな・・・その・・・何か」
アリスは涙を流しながら急に真顔になり、またより一層斜めに浮かび始める。
「・・・マッドな気分になっちゃったよ」
「踊ってる相手がマッドな気分になったらね」
「自分も同調してマッドな気分になってあげるのが舞踏のマナーなんだよ」
「それが相手を尊重するという事」
「理解よりもまず先に来ないといけないモノ・・・相手を尊重する事」
姿勢をまっすぐに正してアリスはまた目を山型にしてカリメロを一直線に見つめる。
両目から涙を流したままだが、その表情には翳りが無い。
カリメロは未だに狼狽している。
「初めはメンヘラみたいだった娘・・・実力は同程度だった・・・」
「今はお前の方が少し強い」
「そして俺を気遣ってアドバイス・・・」
カリメロの左目からもつうっと熱を持った涙が零れる。
少し下を向いて、後ろめたさの無い雰囲気でニヤッと笑った。
「嬉しい」
「楽しい」
その二言だけ呟いて、カリメロの片方からだけ涙を流した鷹のような目が
見開かれる。
生気が満ち、そこら中の大気が震える。
再度のアリスとの戦いに備えて、彼は身構えた。
アリスは少し優しげで少し厳しい表情で、構え、
彼を迎撃する態勢を整えた。

●

荒野の大地。
枯れ果てたような植物がまばらに生えている中を
無数の影が飛び交っている。
相手を斬りつける音や液体が飛び散る音が時折鳴る。
最前線の兵士達はもっぱら白兵戦で凌ぎを削っているようである。
頭上でアリスとカリメロの激しい戦いによって生じた大きな音が反響している。
彼らは戦法を肉弾戦に切り替えたようだ。
彼らの趣味と気分によって戦い方が切り替わったようだ。
お互いがお互いを尊重して相手に合わせている。
勝負をつける気持ちはぶっちゃけお互いの中で希薄なのである。
地上のほとんどの者もその事を知っている。

出典:水の林道のブログ「至らなかったり モードが切り替わったり 学んだり」
http://rindousan.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-9ac9.html

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