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第99話 もの言わぬ友よ(後編)


ここで先頭を行くデイアスが外の異変に気付いた。
人影が一つ、周囲を探るようにうろついているのだ。
目を凝らしてその人影の正体を探る。
背後のプリシスもその誰かの正体を見極め2人はその人物の名前を口にした。
「「ガブリエルっ!?」」
前の二人が止まる事で後ろがつっかえる。
「どうした?」
アリューゼが身を屈める2人に尋ねた。一応前の2人に習って彼とアルベルも壁際に身を屈める。
「敵だ」
「間違いないのか?」
短く応えたディアスにアリューゼが更に問いかける。
「ああ、あいつには説得も無意味だし、この島の参加者を皆殺しにするつもりだ。
 先程確かに倒したはずだが…」
「ならどうする? このままやり過ごすのか? それともぶっ倒して行くのか?」
アルベルの質問を聞きつつ、考えをまとめながらディアスはガブリエルを観察する。
先程奴の身体を貫いた傷や、全身に見受けられた傷跡が無くなっている。
どんな手品を使ったかはわからない。
数の上ではこちらの方が有利だが、全員それぞれ疲弊している。
ガブリエルからダメージが完全に消えているか判断しかねるが、先程と違って奴に全力を出されたら勝算は薄い。
ここは首輪解除のキーパーソンであるプリシスと護衛に誰かをつけて逃げてもらうか。
そうまとめた後に口を開こうとしたとき。プリシスが先に言葉を発した。
「私に手があるんだ。少し時間を稼いでくれないかな?
 殺し合いに乗ったガブリエルを放って置くともっとたくさんの人が死んじゃうよ。
 私達で力を合わせてあいつを倒そうよ!」
(確かにプリシスの言う事にも一理ある…。先程二手に分かれてしまったからこそ、
 首輪の解析が頓挫してしまったわけだし、まとまって行動していた方が良いかもな)
「わかった俺が前に出よう。おそらく奴は俺を探しているだろうし、俺以外の存在を知らないはずだからな。
 アルベル、お前は伏兵として伏せていてくれ。
 俺がやられそうになるか、プリシスの準備が完了した時に隙を作る役目を担って貰う。
 アリューゼ、お前の傷では戦うのも厳しいだろうから、プリシスの護衛と手伝いに専念してくれ。
 プリシス、お前は首輪解除の鍵を握っている。
 約束してくれ、俺達が時間稼ぎに失敗したり、お前の考えていた手が通用しなかったら撤退してくれ」
ディアスの指示にアルベル、アリューゼは頷くがプリシスだけは抗議の声を上げる。
「そんなっ! 私だけ逃げろって? 冗談でしょ?それに1人だけ前に出るって…」
しかしディアスの真剣な面持ちから、彼が冗談で言っているのではないことはプリシスにも判っていた。
「奴の『ディバインウェーブ』の前には数で攻める事に余り意味は無い。
 それに、いいか? 俺の知る限りこいつをどうにかできる人間はお前ぐらいしかいない。
 そんなお前が死んだら最悪の場合、最後の一人まで殺し合いを続けるしか手はなくなる。
 それだけは避けなければならない。だから…わかってくれ!」
プリシスは目を伏せながらもディアスの言葉に頷いて見せた。
「よし、俺が先に出て奴の注意を引きつける。
 アルベル、お前は後ろの窓から出てガブリエルの背後に回れ。
 アリューゼ、プリシスを任せた。プリシス、お前を信じている。
 だから、お前も俺を信じろ。必ず時間は稼いで見せるし、俺は死なん!」
そう言うとディアスは扉を蹴破りガブリエルの前に躍り出た。

ディアスの姿を見つけたガブリエルはニヤリと口元を歪める。
手にしたハルバードを両手で構えディアスを睨みつける。
(やはり、さっきまで使ってなかった右腕を使っているという事は傷が癒えているのだな)
あくまで自分の役目は時間稼ぎ。正面からガブリエルと対峙しながら剣を構えつつ口を開く。
「何故生きている?」
「フンっ、当然の疑問だな。なに、貴様の知り合いセリーヌ・ジュレスを葬った時の戦利品に一度だけ死を逃れる効力の支給品があってな。
 それを使わせてもらったに過ぎない」
仲間の名前を耳にしたディアスの身体が怒りで打ち震えた。
「セリーヌを? 貴様が?」
「そうだ…。無意味にも私に挑みかかり、そして死んだ。虫けらのようにな」
その言葉を聞いてディアスの中で何かがキレた。
怒りと共に振り下ろした剣で『空破斬』と『弧月閃』を放ち、間髪いれずに自分もガブリエルに肉迫する。
放たれた『ディバインウェーブ』に初撃がかき消された。
「はあああぁぁぁっ」
広がる力場を飛び越え、雄叫びと共にガブリエルに飛び掛かるディアス。
金属の激しい衝突音が闇夜に吸い込まれる。
斬り結んだ2人が互いの持つ獲物越しににらみ合った。
「一つ…、言い忘れた。貴様もあの女の様にここで無意味に果てるのだ」
「貴様ぁぁぁっ!」
剣を力任せに弾き、間合いを広げる。
そのディアスにガブリエルが戦斧の槍部分による突き、斧部分による叩きつけ、石突による薙ぎの3連撃を放つ。
突きを交わし、殴打を流して薙ぎ払いを剣で受け止めるディアス。
懐より取り出した短刀『竜穿』をガブリエルの額目掛けて投擲。
こめかみを霞めて短刀は彼方へと飛んでいった。
怯んだその隙に懐に入り込むとディアスは太刀を浴びせる。
しかし、その太刀はガブリエルには届く前に、広がる力場で遮られてしまう。
吹き飛ばされたディアスが空中で身を翻すと着地した。
再度離れた間合いで、にらみ合いが始まる。

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戦端が切られた中プリシスは自分の考えた手を実行に移していた。
無人君を『無人君スーパービーム』が放てる状態に変形させると、砲身にエネルギーを充填し始めた。
様々な計器に目をやりつつマニュアルで照準の制御を行う。
(ダメだ…。内部のエネルギーが減っている。だったら!)
無人君の背後のバッテリーボックスを開き2本のコードを伸ばす。
伸ばしたコードを『セブンスレイ』のエネルギーカートリッジにつなげて無人君にエネルギーを送り込む。
だがそれでも予定の7割程度しかチャージされない。
(この家には電気が通じてないし…)
何か代用の利きそうな物を探し求めるプリシス。
脱衣所にあった無駄にデカイ洗濯機、軒先にある後輪のパンクした自転車、そしてアリューゼ。
彼女の頭の上に豆電球が灯った。
「アリューゼっ、お願いがあるんだ」


プリシスは無人君を待機状態にしてその手を忙しなく動かしていた。
洗濯機をばらしモーターを取り出すと簡易な発電機に改造する。
その回転軸と自転車の車輪の回転軸を一本の棒でつなげると、発電機から伸びたコードを無人君に接続した。
ここまで所要時間僅かに5分。
「これ漕いで!」
?マークを浮かべるアリューゼにこの急場凌ぎの装置の説明をする。
今無人君のエネルギーが足りなくて、如何にかして電力を送り込まないとならない事。
この自転車を漕ぐと電力が発生する事。
自分は無人君のコントロールをしなければならない事。
取り敢えず自分はそれを漕げば良い事だけは理解したアリューゼは自転車に跨った。


額に汗を浮かべてアリューゼが自転車のペダルを漕ぎ続ける。
もちろん自転車のギアはトップギア。そのペダルは尋常じゃないくらいに重い。
「アリューゼ、頑張って! 後もう少し…」
無人君に備わった計器の内の一つ。内部エネルギーを示す計器は85%を指し示していた。

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(どうにもこうやってコソコソするのは性に合わねえ)
裏手に回っていたアルベルは唇を噛みながら機会を伺っていた。
現在の戦況は5分5分といったところか。
だが、その拮抗も長くは続かない事を彼は読み取っていた。
戦闘開始から出し惜しみもなく大技を放つディアスに対して、対峙しているガブリエルと呼ばれた男はまだ余力を残している。
何度目かになる鍔迫り合いと共に火花が散った。
次第にディアスの息が上がってきているのがここからでもわかる。
(そろそろ援護しねえとまずいか?)
だが、相手はとてつもなく強い。
奇襲をかければ隙を作る事は出来るだろうが、ここで援護に出たら奇襲どころではない。
正面から遣り合って隙を作れるかは微妙なところだ。
しかし、このままでは間違いなくディアスは押し負ける。
袈裟懸けに斬りかかった斬撃が空を切る。
生じた隙にガブリエルの回し蹴りがきまり蹴り飛ばされた。
立ち上がろうとしたディアスの膝が折れる。
止めといわんばかりにそんな彼に迫るガブリエル。
「チィ!」
身を隠していた物影よりアルベルは飛び出すと、ディアスが体勢を整える為の時間を稼ぐべく『空破斬』を放つ。
その攻撃を回避するガブリエル。
アルベルは2人の間に割り込んで、ディアスに悪態をつく。
「手間取ってるようじゃねえか?」
「お前! 身を潜めていろと!」
「けっ! 死にそうだったのはどこのどいつだ?」
「…」
ディアスは返す言葉も無く黙り込んだ。
「オラ! 立てよ! それとも、もう戦えねえのか? だったら下がってろ!
いい加減暴れたくてウズウズしていた所だ!」
威勢の良い叫びと共に一歩前に踏み出すアルベル。
「フッ、まだ俺はやれるさ…。それに、お前だけではあいつには勝てん!」
2人の我流剣士がそれぞれの獲物を握り締め、ガブリエルに同時に斬りかかった。

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(今宵は乱入者の多い日だ)
ガブリエルは心の中で毒づいた。
迫る2筋の白刃を掻い潜り、反撃として『ディバインウェーブ』を見舞う。
2人とも剣を盾にして衝撃波を受け止める。
「「『空破斬』」」
異口同音の咆哮と共に同じ技を放つ。
2つの衝撃波は互いに混ざり合うと巨大な空圧の柱となりガブリエルに迫った。
(流石にこれは『ディバインウェーブ』でも相殺仕切れんな)
飛び退きこの攻撃を交わした所にアルベルから脳天目掛けて振り卸しが繰り出されていた。
ハルバードでその一撃を受け止め、掌打を鳩尾に決める。
「がはっ」
血を吐き、目を見開くアルベルへの追撃はディアスによって阻まれた。
「ちっ」
そんな2人を諸共『ディバインウェーブ』で吹き飛ばす。
ブロック塀に叩きつけた二人をただ眺めるようなガブリエルではない。
『スターフレア』
解放した魔力光が新たに瓦礫の山を築き上げる。
だが、ここで立ち昇る煙に視界が塞がれてしまった。これでは、仕留められたかどうかわからない。
手持ちの道具に暗視スコープがあるのを思い出しそれを装着する。
瓦礫の中に人影が2つ立ち上がった。
(まだ抗うのか…。だが何度立ち上がっても同じ事だ)
ボーガンに新たな矢を装填しながらその2人に歩み寄る。
そんな中、後方で小さな爆発音が木霊した。
その方向を見ると暗視スコープ越しに巨大な人型の様な者と、その上に跨る小さな人影。
加えてその横で何かに座ってる人影が見えた。

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その爆発音を聞いて顔を見合わせるアルベルとディアス。
あれはプリシスたちの準備ができた事を知らせる合図で、解体した首輪の爆薬を破裂させたものである。
「どうする? 準備は出来たらしいが隙を作れなきゃ話にならねえぞ」
小声でディアスに語りかけるアルベル。
ディアスは暫しの黙考の後に
「俺に手がある」
険しい顔つきでディアスは言葉を発した。



「お前? 正気か?」
ディアスの策を聞いてアルベルは彼にしては珍しく素っ頓狂な声を上げた。
「あぁ、頼んだぞ」
ディアスはそう言い残し一直線にガブリエルの方へと駆け出した。

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「馬鹿の一つ覚えのような突撃。いつまでもまかり通ると思うか?」
『ディバインウェーブ』を放ちディアスを吹き飛ばさんとする。
それをディアスは正面から受けても尚、弾丸のような勢いで突っ込む。
受けた衝撃で血を吐き、左腕があらぬ方向に曲がろうとその勢いは止まらない。
「玉砕覚悟か…。ならば!」
ハルバードを上段に構えてガブリエルは彼を迎え撃つ。
既に2回も見ているディアスの『疾風突』如何に疾い攻撃でもタイミングは掴めている。
間合いに入り次第両断する腹積もりだ。
そんな彼がここに来て更なる加速をした。
ディアスはその背にアルベルの『空破斬』を受け推進力を得たのだ。
タイミングを外されたガブリエルの脇腹にディアスの剣が再度突き刺さる。
だが、ガブリエルも黙って刺されるようなことは無い。
カウンター気味に放った拳打でディアスの胸を貫いていた。
その場に崩れ落ちながらディアスは最後の叫びを上げた。
「撃てー! プリシスー!!」
只ならぬ気配を感じたガブリエルは先程発見した人型物体上の人影にボーガンを射掛けた。

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耳に入ってきたディアスの叫び声。
(何言ってるの? ディアスがそこにいたら巻き込まれちゃうじゃない! 早く逃げてよ!)
ビームの照準器越しではよくわからない。無人君の背後から顔を出して二人の姿を覗き込む。
そんなプリシスの眉間目掛けて夜風を切り裂きボーガンの矢が迫った。
「えっ?」
次の瞬間に彼女の眼前に大きな背中が現れ、迫る矢の盾となった。
「ア…リュー…ゼ?」
「無事…か? プリシス…?」
肩越しにこちらを見て語りかけるアリューゼ。
その瞳からは徐々に力が抜けてきている。
「どう…して?」
「なぁに…、もう目の前で…お前みたいなガキに死なれるのが…嫌なだけ…」
アリューゼはプリシスの瞳に浮かぶ涙を、無骨で大きなその指で優しく拭った。
「聞け…。ディアスって野郎は…死んだ…。このまま躊躇っていたら全滅だ…。
 だから、奴を撃つんだ…。それが、あいつの願いだ…」
リング状に広がる力場が2人に襲い掛かるもアリューゼはその身を盾にし、プリシスを守る。
プリシスは一度その大きな背中に向かって頷くと、無人君の銃座に着いた。
そんなプリシスの後姿を眺めながらアリューゼの意識は徐々に薄れていった。
(こんな…ガキ庇って死ぬなんてな…。いつから俺はこんな…)
死して尚、大きなこの男の身体は地に伏することはなかった。

無人君の銃座でガブリエルを照準器の十字の中に収めた。
ディアス諸共撃たねばならない事に躊躇いが無いといえば嘘になる。
僅かに震える指先が引き金にかかる。
(でも、ここで撃たなきゃ、ディアスとアリューゼが無駄死にになっちゃう…。だから…!)
「いっけぇぇぇっ! 『無人君スーパービーム』」
引き絞ったトリガーと共に放たれた蒼白いエネルギーの奔流。
対抗のためにガブリエルが『神曲』を放つがそれでも、放たれた粒子は周囲の大気を焼きながらガブリエルに襲い掛かる。
命中。そして爆発。
濛々と立ち昇る煙を前に立ち尽くすプリシス。
そう、これでガブリエルを倒せるはずだった。倒せるはずだったのに。
奴はそこに立っていた。
ガブリエルはディアスの死体をアリーシャと同様、盾にして直撃を間逃れていたのだ。
「そんな…」
ガブリエルの前にあるディアスだったモノ。
その姿は見るも無残に焼け爛れていて、背中に至っては完全に炭化していた。
ディアスの遺体はそのような姿になろうと剣を離す事は無かったが、
その手をガブリエルは強靭な握力で握りつぶし、ディアスの遺体から剣を奪い取った。
その後は用済みと言わんばかりに無造作に瓦礫の中に投げ捨てる。
「このぉっ、クソ虫がぁぁぁっ!!」
その光景を目の当たりにして激昂するアルベル。
「うわあああぁぁぁっ!」
半狂乱になったプリシスが『マグナムパンチ』のコントローラーを握り締める。
2人が同時にガブリエルに飛び掛かるが、彼の放つ衝撃波がそれを阻み2人を弾き飛ばす。
「ちっ、これでは…また、傷だらけではないか…。
 まぁ、良いだろう。後は貴様とあの触覚を生やしたプリン頭だ」
ガブリエルはディアスの死体から奪った剣を握り締め、プリシスの方に向かって歩き始めた。
しかし彼の歩みは巨大な何かに羽交い絞めされ、止まる事となった。
顔を上げたプリシスがガブリエルの背後の者の名前を叫ぶ。
「無人君!!」
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
ガブリエルはディアスに対しセリーヌ達の戦いは無意味だったと告げた。
しかし、そんな事はなかったのだ。
アリーシャとセリーヌの与えたダメージがあったおかげで、ディアスは一度目の戦いでガブリエルを倒す事ができた。
そして、ジェストーナが最後に見せた行動は無人君の記憶の中に残り、彼に今のような行動を選択させた。
追い詰められし者達の牙はここにきて尚、ガブリエルにその牙を突きたてていた。

無人君が最小半径最高硬度の『バーリア』を展開する。
その中にガブリエルを閉じ込めると無人君は体内に残る全てのエネルギーを暴走させ始めた。
彼の狙いは自爆してガブリエルを倒す事。
この『バーリア』はガブリエルを逃がさないためと、外にいる2人に被害が及ばないようにする障壁。
そんな彼の狙いに気付いた少女が叫び声を上げる。
「無人君っ!! やめてぇ!!」

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
「無人君っ!! やめてぇ!!」
僕の聴覚センサーが彼女の声を拾った。
それだけは出来ないよ。だってこいつを逃がしたら君まで…。
「なんで? なんで私の言う事を聞いてくれないの?」
そう、僕は君が創ったロボットだ。本当は言う事を聞かなければいけないんだけど…。
「自爆なんかしたら、もう私と一緒にいられなくなっちゃうんだよ!?」
そうだね…。僕達はずっと一緒だった。
故郷のリンガ村を出た時も、エナジーネーデに飛ばされた時も。
「もう一緒に遊べなくなっちゃうんだよ!?」
尚も叫ぶ僕のマスターの声をセンサーが捉える。
うん。一緒にいっぱい遊んだね。
追いかけっこしたり、高いところに一緒に上ったり、かくれんぼしたり…。
「そんなの私イヤだよ!!」
僕もイヤだよ。でも、君が死んじゃうのはもっとイヤだ。
だから、最初で最後の我侭を許して欲しいんだ。
「友達が…、いなくなっちゃうのは…、もう…イヤだよ…」
泣き崩れる彼女の姿を視覚センサーが映している。
大丈夫だよ。今の君には僕以外にもいっぱい友達がいるんだから。
リンガ村にいた時とは違うよ。機械ばっかりいじってて、周りから変な子って言われてたあの頃とは違うんだ。
君を守ってくれる友達がいる。君を頼ってくれる友達がいる。
だからもう、泣かないで。


暴走したエネルギーが臨界点を迎えた。
僕の身体から赤い光が漏れ出す。
その現象が意味するところを彼女も知っている。
「無人君っ!!」
もうすぐお別れだね。
僕は喋る事は出来ないから伝えたい言葉を伝える事ができないけど。

さようなら。僕の大切なお友達。

大好きだよ。僕の小さな御主人様。

ごめんね。ずっと側にいてあげられなくて。

そして、最期に。

プリシス、僕を創ってくれて

ありがとう。



長き夜の始まりに戦端を切ったこの戦いは、大地を揺るがす爆発音と少女が叫ぶ友の名と共に終焉を迎えた。

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
爆発の余波が収まり漸く視界がはっきりしてきた中でアルベルが立ち上がった。
(どうなったんだ?)
流石にあの爆発の中心にいては跡形もなくなるだろう。
無人君がいた爆心地には一振りの剣が残されているだけだった。
それ以外は大きなクレーターが一つあるだけだ。
(あれは、オペラとかいう奴が最初使ってて、今までディアスが使ってた剣か)
その剣を拾い上げる。あの爆発の中でも傷一つつくことなく、その刃には一点の曇りも無かった。
(コイツはお前の追加依頼の報酬として貰ってくぜ)
「俺に手がある」
そう言ったあいつは自分に空破斬をぶつけろといってきた後に、
「プリシスをレナ達の所まで無事に送り届けてくれ」
と言ってきた。
(まぁ、返事はしてねえんだが。このまま無視するにはなんとも後味悪いしな。
それにルシファーの野郎をぶっ倒すにはこの方法が一番早そうだ)
バリアの外に放置されていたディアスとガブリエルのバックを拾い上げると、
その近くにフェイト達が確かノートパソコンとか呼んでいた物に似た物が落ちているのを見つけた。
ついでにそいつも拾い上げこの場にいるもう一人の生き残り、プリシスの方に向かって歩き出す。
「オラ、立てよ!」
まだ泣き続けるこのガキを無理やり立たせた。
(これだからガキの扱いは面倒くせえ)
「行くぞ。いつまでもこうしている訳にはいかねえだろうが!」
だがこのガキは俺の手を振り解きまたへたり込みやがった。
「私が…私がここでガブリエルを倒そうなんて言わなければ、ディアスもアリューゼも死んだりしなかったっ!
 無人君も壊れたりなんかしなかったっ! アシュトンの事もそうっ!
 私があんなこと言わなければ…ネルって人も、夢留って子も死ななかった…。
 きっと、みんな私の事を恨んでる…」
ったくこんな事までディアスの依頼に入ってるのだろうか?
ため息を一つした後、再度プリシスを立たせる。
「んなことはねぇよ…。ディアスもアリューゼも戦士だ。
 戦いの中で死ねた事に後悔や恨みなんてねえ! 守ろうとしたものを守れたのなら尚更だ。
 夢留って奴は知らないやつだからわからねえが、ネルも誰かを恨んで死ぬことなんてしねえ。
 それにあのみょうちくりんな機械もだ」
そう言ってプリシスに先程拾った小型端末のモニターを見せる。
そのディスプレイには無人君と呼ばれた機械が最後に出力しようとしたメッセージが残されていた。
たった1語。文字数にして5文字の言葉。
『ありがとう』と。
その文字を見たプリシスは端末を抱きかかえてまた大声で泣き始めた。


【I-06/夜中】
【アルベル・ノックス】[MP残量:60%]
[状態:左手首に深い切り傷(応急処置済みだが戦闘に支障あり)、左肩に咬み傷(応急処置済み)、左の奥歯が一本欠けている。内臓にダメージ]
[装備:セイクリッドティア@SO2]
[道具:木材×2、咎人の剣“神を斬獲せし者”@VP、ゲームボーイ+ス○ースイ○ベーダー@現実世界、????×0~1、荷物一式×6(一つのバックに纏めてます)]
[行動方針:ルシファーの野郎をぶちのめす! 方法? 知るか!]
[思考1:プリシスをレオン達に合わせる]
[思考2:傷を治してもらうまでプリシス+レオン+レナの用心棒をする]
[思考3:龍を背負った男(アシュトン)を警戒]
[現在位置:I-06 町中]
※木材は本体1.5m程の細い物です。耐久力は低く、負荷がかかる技などを使うと折れます。



【プリシス・F・ノイマン】[MP残量:100%]
[状態:アシュトンがゲームに乗った事に対するショック、仲間と友人の死に対しての深い悲しみ]
[装備:マグナムパンチ@SO2、セブンスレイ〔単発・光+星属性〕〔25〕〔0/100〕@SO2]
[道具:ドルメラ工具セット@SO3、????←本人確認済み、解体した首輪の部品(爆薬のみ消費)、無人君制御用端末@SO2?、荷物一式]
[行動方針:惨劇を生まないために、情報を集め首輪を解除。ルシファーを打倒]
[思考1:仲間、ヴァルキリーを探す]
[思考2:アシュトンを説得したい]
[思考3:首輪の解析を進める]
[現在位置:I-06 町中]


[備考1:ガブリエルの持ち物で、アルベルの道具欄に無い物は爆発に巻き込まれ消滅しています]
[備考2:護身刀“竜穿”@SO3がI-6のどこかに落ちております]
[備考3:アリューゼの持ち物は彼の遺体の側に置いてあります]
[無人君制御用端末について:無人君の行動ルーチンや姿勢制御を行っていたものです。それなりに高性能なCPUを積んでいます]
[首輪について:中の構成品は、爆薬、マイク、送受信機、制御用紋章力結晶体(以下結晶体)です。
 結晶体は首輪の制御を行う信号をだしており首輪の機能の中枢を担っています。
 そこからの信号が途絶えた瞬間に爆弾は爆発する仕組みになっており、仮に術に精通しているものが結晶体の仕組みを暴いたとしても解除できません。
 あくまで術師が解析した結果を踏まえて結晶体をハックする装置作らなければ外せないでしょう。
 その他に結晶体は首輪の持ち主の生死を判断していますがプリシスはその機能に気付いていません。
 また8本の線の内、当たりだけを切断しても、ルシファーの下に配線が切られたという情報が行くのでその場で爆破されるでしょう]



【ディアス死亡】
【アリューゼ死亡】
【ガブリエル死亡】
【無人君大破】
【残り26人】




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第99話(前編) ディアス
第99話(前編) ガブリエル
第99話(前編) アルベル 第102話
第99話(前編) アリューゼ 第102話
第99話(前編) プリシス 第102話
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