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第103話 Start Up from Prolonged Darkness(前編)


己の宿命に翻弄される青年がいた。
その青年の人生は長い暗闇だった。
ただ宿命のために生きる生活は虚構のように長く陰鬱だった。
宿命の証の指輪だけが暗闇の中で彼を嘲笑った。
その笑いが更に青年を陰鬱にさせた。
その青年は暗闇の中で生きるのを拒んだ。
青年は―――が欲しかった。
その手に―――を得るために。青年は暗闇が包まれる空間を歩き出した。
だが、それは『無理』を証明するための旅。
たとえ、無駄な抵抗だと分かっていながらも、青年は足を進めた。
そして、彼は果てのない暗闇の最中、同じような境遇の少女に出会った。
青年は喜んだ。自分と同じような苦しみを持つ存在いることに。
だが少女は同じ境遇だったが、青年とは少しだけ違った。
少女は『無理』を証明するためではなく、『可能性』を証明するためだった。
青年は少女の強さと温もりに触れ、そこで初めて自分の弱さを知った。
そして、その少女こそ彼が欲しくて止まない―――だったことを知る。
だが、後一歩のところで青年は―――を手に入れることができなかった。
暗闇は彼を許さなかった。暗闇は二人を飲み込み、引き離す。

再び青年はまた暗闇の中にいた。
―――はもう側にはいなかった。
温かみに触れた青年はまた少女を探し出す。あの温もりをもう一度手に触れたくて。
だが、彼は蝕まれていた。暗闇は彼を暗闇へと変えようとしていた。
青年は自分が暗闇に溶け込んでいることに気付かない。
暗闇に完全に溶け込めば、―――を得た瞬間、消えることも気付かない。
暗闇は歓んだ。青年を暗闇に導いたことを。
だが、その思惑は外れることになる。
その男は暗闇の中で新たな―――を見つけたのだから。
闇に堕ちる青年の瞳に一人の少女が映った。
その少女は暗闇に飲まれたことに怯えていた。少女は弱かったのだ。
青年は昔の自分に似た少女を殺そうとする。
そうすれば、もう一度あの少女に会えると思ったからだ。
だが、少女は弱すぎた。それ故、彼は少女を助けることになる。
そして、少女の弱さは他人の思いやる優しい気持ちからだと後から知ることになる。
その少女の存在は青年の心を揺るがした。
青年が闇に堕ちそうになるたび、その少女は彼を止めようとする。
まさしく、その少女の優しさは彼が欲しかった―――だった。


そして、今、その青年は暗闇が包み込む森の中、草木の雑踏を掻き分けていた。

―――――――Start Up from Prolonged Darkness―――――――

+++

月が煌々とする闇夜の森に、一人の男がランプの灯りに釣られ、茂みに潜んでいた。
ガウェインは気配を殺し、視界に映る団体の行動を静かに見張っていた。
無作為に飛び掛ることなく、相手の状況を把握する。敵の人数や武器の有無、構成などありとあらゆる情報をその目で遠巻きから取り込んでいく。
しかし、その気配を団体の中の一人、レナスは感知する。
その鋭い察知能力でまだ見ぬ侵入者の存在を見出す。

「そろそろ、隠れていないで、出てきたらどうだ。
 気配を隠しているようだが、とっくに私にばれている」

レナスが何もない空間に抑揚のない声で言い放つ。
情報交換と今後について話し合いを進めていた一同にざわめきが生まれ、すぐに収まる。
ルーファスが死んだことで顔を濡らし、鼻を啜っていたソフィアは啜るのを止め、まだ見ぬ存在の代わりにレナスに問いかけた。

「レナスさん、それどういうこと……」
「「しッ、静かに」」

ソフィアの言葉はレナスに遅れて気配を探るレザードとクリフは遮られ、場に深い静寂と緊張が漂う。
しばしの時間が経過する。それはほんの数十秒に過ぎないが、極限的な状態ではまるで数十分の感覚であった。
そして、静寂を破る一人の影、ガウェイン・ロートシルトがレナスたち一行の前に現れる。

「貴様、何者だ? なぜ私たちの―――」
「いや、レナス……そんな必要はねえ」

その問いかけはレナスの前をクリフに覆い隠され阻まれる。その声は怒りに打ち震えているようだ。

「話す手間が省けた、こいつは殺し合いに乗っている。こいつには借りがあるんだ」

クリフは拳を強く握り締め、両腕を胸に構え、ステップを踏む。

「悪いが…俺一人でやらせてくれないか」

極めて落ち着いた声でレナスたちに言い放つが、争いを避けたいソフィアはクリフを宥めようと身体を震わせる。

「クリフさん…まだ、敵だと…」
「ソフィア……アイツはルーファスを襲った敵だ…俺はアイツを許す事はできねえ…」

ルーファスが死んだ今、いきり立っているクリフにガウェインの存在はその怒りを向ける矛先でしかない。
クリフはルーファスとの邂逅を思い出す。目の前にいる男は、ルーファスに傷を負わした敵だ。

「そ、そんな。ルーファスさんを…」

ルーファスという名が出るとソフィアは一瞬怯んだ。彼女にとってルーファスは命の恩人だ。
そんな彼が目の前の男に襲われた。その言葉を聞くと、彼女にとっても止めるのを躊躇えそうにない。

「でも、でも……」

それでも、矛盾を抱えながらもソフィアは納得がいかない。
殺し合いの場にいるとはいえ、簡単に人を殺すようなことはしたくない。
それは、ソフィアが持つ、優しさ。だが、それはもう一つある意味を持つのだが。

「それで、お前の気が治まるなら…いいだろう」
「レナスさん!?」

ソフィアは何か言いたげに、レナスの顔を悲しそうに覗き見る。

「悪い。レザード、荷物を預かってくれ……援護はいらないぜ。
 俺一人でやらないと…借りは返せないんでな」
「仰せのままに」

レザードは放り投げられたパックを受け取り、右手を胸に添え深々と頭を下げた。
クリフの意を汲んだと合図を送った。

「レザードさん!?」

ソフィアはレザードのほうを振り向き、同じように悲しみの表情を浮かべる。
闘争は止められそうにない、ソフィアは敵の下へと進むクリフを見ながら、事の顛末を見守るしかなかった。

「何か言いたいことはあるか? じいさんよ、あの時はよくもやってくれたな……」

クリフはガウェインとの距離を詰めると、声を掛けた。どんな理由があろうとも弁明の余地はないが、殺し合いに乗った理由を、ルーファスを傷つけた理由を、確かめたくなったからだ。

「最後に聞かせてもらうぜ……どうして殺し合いに乗る?」
「我が信念と宿命のためだ……若造…」

そうか、と目を一瞬伏見がちに落とし呟き、クリフはすぐに顔を持ち上げる。
両拳を互いにぶつけ、ガウェインを真っ直ぐに見据える。

「なら、テメエをぶっ潰して、その信念とやらを何度も否定してやるぜ。
 拳が疼いて疼いて仕方ないんだ……テメエをぶん殴りたくてな」

ガウェインは剣を構え、戦闘の態勢に整える。
逃げることは不可だと判断する。
敵対している人数は四人、とてもじゃないが逃げ切れるとは思えない。
目の前にいる金髪の男を倒しても、後ろには三人も相手が控えている。
つまり…これは…負け戦。
ガウェインに勝機はない。もしあるとするならば、人質を取るぐらいだ。
だが、ガウェインには人質を取ることはできない。
信念や宿命のためであっても騎士道に反することは己を否定することになる。
ならば、私がすること、この身が滅びようとも、戦い続ける。

できて…二人ぐらいか…。

ガウェインは己の決意を強固なものするため、目をふと閉じた後、剣を地面に叩きつける。
風圧が木の葉を舞い上げ、ゆらゆらともう一度地面に散り落ちていく。

「できるかな……若造に…」

舞い落ちる木の葉の隙間からクリフは右手を前に指を三本立て、ガウェインに宣言する。

「三分だ……三分でテメエをぶちのめしてやるぜ。
 テメエを倒すには充分すぎるぐらいだ」
「……嘗められたものだな」

ガウェインは木の葉が全て舞い落ちる前に脚を奮い立たせ、全速力で立ち向かう。
クリフも同じように全速力で駆ける。
最初に先制をかけたのはガウェインであった。豪腕から放たれる重い一撃。
大地を揺るがしかねないその一撃は向かい来るクリフを的確に狙う。
クリフは剣線を動体視力で見極め、呼吸を整え、集中力を高める。
振るわれる剣先を流れるように避けていき、相手の死角に潜り込み拳を振るう。
その緩やかな流れの拳打は一つ目に剣を捌き落とし、二つ目に腕を弾き、そして最後に露になった懐に拳を突き入れる三連撃。
カーレントナックル。

拳を打ち込まれるガウェイン。普通の人間ならここで確実にノックダウンだが、
並みの耐久力ではないガウェインはその場に崩れ落ちることなく、咄嗟に上に弾かれた腕をそのまま振り降ろし、剣の柄の部分でクリフの後頭部を狙う。
クリフは危険を感知しガウェインの裏に回りこみ、お互いに背を合わせた状態に持ち込まれる。
お互いに背中に温かさを感じ、呼吸を合わせ、極限的な緊張感で張り詰められる。

「効いただろ。俺の拳はよお…だが、まだまだ足んねえぜ。
 これから、もっと浴びせることになるんだからよお」
「若造が…粋がりおって…。
 だが、粋がるのは私を倒してからにするがいい」」

ガウェインは瞬間的に力を込め、身体を返し、体勢をクリフに向ける同時に斬り付けた。
クリフはそのガウェインの微弱の動きを察知し、身体を返しながら、前方に飛び跳ね、目と鼻の先というぎりぎりの感覚で避ける。クリフは崩した身体を利用し、地面を手に付け、それを軸に無防備になったガウェインの脚を払う。
ガウェインの脛に激痛が走る。足元がすくわれ、行動が遅れる。
クリフはその隙を見逃さず、ガウェインの背中に回ると腕を取り、関節技を決める。
腕の関節を固められ、地面に押さえつけられるガウェイン。身動きを止められるのだ。
時間はちょうど三分というクリフの予告どおりだった。勝負は決したのだ。

「くっ、私が手も足も出ないとは…」
「ふっ、いろいろと成長したんでな」

クリフは自嘲気味にのたまう。

「テメエの負けだ、爺さんよ。話したいことがいっぱいあるんだが、最初にあんたの使命とやらを聞かせてもらうぜ」
「語る言葉などない。
 私の負けだ、殺すがいい……お前たちに話すことは何一つない」

腕を固められたガウェインは横目で気迫に満ちた眼孔をクリフに注ぐ。覚悟を決めた目。
経験上、こいつは何一つ喋らない。クリフは瞳からその強い決意を感じ取った。
なら、クリフのすることは止めを刺すことだ。危険人物を放置するわけにもいかない。
「そうか」とクリフは呟くと、そのまま首に腕を巻きつけ、首を締め上げようとする。

だが、タイミングを計ったように、突然の来訪者により、クリフの行動は止められる。
クリフとガウェインの前に現れたのは、洒落込んだ鎧を着こなした一人の美少女。
膝を抱え込んでしゃがみこんだ美少女は争う二人を見て、
さらさらと流れる金髪の髪を掻き揚げながら、クスクスと無邪気に微笑んでいた。

「なんて、醜くいんだ、人間は。
 ……同じ種族でありながら、身体の心底まで満たされた業ゆえに…争い殺し合う」

一見すれば貴族のお嬢様が地面にいる蟻の喧嘩を興味津々と見る、優雅で微笑ましい光景かもしれない。
だが、その少女の二人に向ける眼差しは、人間を虫のように見下した邪悪な瞳であった。
そして、クリフはその人間を卑下した目を覗き見ると、不意にダオスの存在を思い出す。
あの男の目を見た時と同じような、いけ好かないオーラを感じ取った。

「テメエ、なにもんだ?」

クリフが最初に発した言葉は拒絶を含む言葉であった。
初対面の少女に送るには少々荒い言葉だ。
だが、クリフはひしひしと感じていたのだ。
目の前にいる存在は、か弱い少女とかそんな性質の良い存在でないことを。
だから、聞いたのだ。

目の前にいるお前は――――――本 当 に 人 間 な の か。

だが、その問いは思わぬところで答えられる。

「……リドリー」

クリフは少女の名を呼ぶガウェインの方を振り向く。
ガウェインは目を大きく見開き、目の前の少女に視線を向けている。

「ほう、お前は確か……ガウェイン・ロートシルト。妖精側に付く唯の人間……」

リドリーと呼ばれる少女は一瞬でクリフとガウェインの前に姿を現す。
クリフは一瞬で間合いを詰められ、「早いっ」と驚愕する。

「お前には感謝しているぞ。お前のおかげで世界は救われるのだから」

少女は片腕を振り上げ、クリフの巨躯を弾き飛ばすと、
何事もなかったように地にひれ伏すガウェインに歩み寄り、手を差し出す。
ガウェインは少女の手を取り、まじまじと少女に呟きかける。

「リドリー…なのか?」
「ガウェイン…私はもうリドリーではない。金龍の器であるリドリーの魂は死んだ。
 私は金龍。妖精を守護し世界を監視する神。トゥトアスの秩序を調停する者。
 金龍クェーサーだ」

金龍クェーサーはガウェインの頬に触れ微笑む。

「銀龍フォティーノ亡き今、私が新しい神だ。
 歪みの元凶である人間どもを滅ぼし、世界を救おうではないか」

ガウェインは目の前にいる存在金龍に圧倒させられるばかりであった。
全身から漂う圧倒的な力に身が竦む。
だが、金龍はそんな畏怖の念を無視するかのように言葉を続けた。

「ただ一人、妖精に味方してくれたお前には感謝している。
 だから、お前は世界の行く末を見る権利を与えよう。
 人間が滅び、妖精たちが謳歌する世界に導いてやろう。
 その礎に――――人間どもを滅ぼそうではないか」

金龍はガウェインを手の中から解放すると、目の前に映る四人の男女を見据える。
クェーサーは嗤う。人間の死を感じたくて感じたくてたまらない。
お腹をすかした子どものように、今にも食事にありつけたくてしょうがないのだ。

「手出しは無用だ、ガウェイン。
 私の行うすべてをその目に焼き付けるがいい。
 心ゆくまで人間を殺そうではないか!!!!!!」

その瞬間、クェーサーの身体が眩い光を放ち、周囲を昼間のように明るく照らす。
少女の背中には黄金に輝く羽が全容を現す。強大な魔力の塊が金龍を包み込む。

誰もが、死を予感させる空間に一人の女性がこの気迫を断ち切るように剣を前に突き出す。
レナスが冷静沈着に、そして金龍を断ち切る眼光を注いだ。

+++

「戯言はすんだか」

レナスが金龍に対し鋭い眼光を尖らせる。
金龍は自分を侮辱する言葉に顔を歪ませ、レナスと対峙する。

「戯言だと……私の宿命は人間を滅ぼすことだ。貴様はそれを否定するのか?」
「ああ、そうだお前のやっていることは愚かな行為にすぎん。
 人間が滅べば、世界が救われるだと……甚だ馬鹿馬鹿しい」
「人間風情が私に口出しするのか…この神に対して」
「神を名乗る不届き者はお前だ。私は創造神レナス。
 私がいる限り……人をお前の傲慢で殺させはしない」

レナスは金龍に、金龍はレナスに、宣戦を布告する。
神々の戦いの火蓋が切られる。

「その報い、滅と知れッ!!」
「ならば、返り討ちにしよう。
 この私、クェーサーに歯向かったことを後悔するがいいッ!!」

両手に魔力を纏うと金龍は両手を合わせ、そのまま天に振り翳し、強大な魔力を集束させ、力をレナス目掛け放つ。
金龍の先制――――アクセルレーザーがレナスを蹂躙すべく、真っ直ぐとレナスに向かって伸びていく。
その極太の極光は全てを巻き込む。
直撃は死を意味していた。だからといって避ければ、魔力が弾け、周囲を焦土に変え、仲間たちを巻き込みかねない。
レナスは魔力に向かって突き進む。鞘に収めていた魔剣グラムを引き抜くと膨大な魔力の塊を居抜く。
剣を振るった瞬間、魔力が掻き消され、そのまま金龍目掛け突っ走る。金龍はいとも簡単に攻撃を無力化され、しばし驚いた。
が、すぐに手を突き出し、光弾を連発して放ち、相手の動きを固定化させ、向かい打つ。
金龍は同じようにレナスが光弾を無力するものだと考えていた。だから、その動きの隙を狙っていたのだ。
だが、レナスは剣を構え、走る勢いに乗せ、スライディングで回避する。
そのまま、金龍の間合いに進入すると、疾風のような速さで剣を振り上げた。

「何!?」

金龍はとっさの判断で腕に結界を張り、防御を施すがレナスの剣撃は重く、大きく吹き飛ばされる。
剣の衝撃を一身に受け、木の幹を二つほど突き破ったところで、勢いが止まると、金龍は散り舞った木の葉から起き上がる。
苦々しい表情で起き上がる金龍に余裕はない。手に切り傷がつき、血がじくじくと溢れる。
もし、防御が遅れていれば防いだ手を断ち斬られていたかもしれないからだ。
腕に滴る血を見ると、レナスの力の凄まじさは金龍にとっても認めざるをえないものだった。
レナスは金龍が起き上がると同時、剣を振るい、追撃を開始する。
険しい形相の金龍は向かってくる剣線に合わせ、両手を振るうと黄金の斧が具現化し、レナスの一撃とクェーサーの一撃が激突する。
魔力と魔力がぶつかる、辺りに爆音を響かせ、二人の力の凄まじさを形容させる。
この二人の衝突で押し勝ったのはレナスであった。レナスは力を振り絞り、金龍の斧ごと吹き飛ばした。

「小癪な!?」

宙を舞う金龍は、空中でバランスを立て直し、指を弾く。
すると、頭上に四つの濃縮された魔力の玉が現れ、弾けるように波動が押し寄せ、レナスを狙う。
追撃のため駆けていたレナスは一度その場に立ち止まる。
静かに呼吸を整えると、一振りで四方向からくる波動を切り裂く。
散り散りとなった残光がレナスを照らし、不思議な美しさを醸し出した。

金龍は地面に着地すると、相手を見据える。
金龍が手を構えると黄金の斧が具現化し、振りかぶる勢いをつけるために後ろに斧を構える。
その刹那、悪寒にも似た空気がこの場全体を支配する。

その金龍の構えに、近寄れば殺られかねない、とレナスは間合いを大きく引き離し、敵の動向を冷静に見極める。
明らかに感じる敵の必殺技の気配にレナスは緊張を張り巡らせる。

「貴様は心底私を怒らしたいようだな」

それは、目の前にいるレナスとあると同時に、もう一人の存在に向けた言葉だった。
もう一人の存在―――内側から力を抑えるリドリーに向けたものだった。
小癪なことにリドリーは戦闘が始まってから、ずっと力を抑えていたのだ。
そのため、金龍はレナスに苦戦を強いられていた。
ほぼ互角の戦いが不利な戦いへと強いられていたのだ。

金龍はそれを振り切るかのように斧に莫大な魔力が加わる。
その瞬間、抵抗していたリドリーの意識が完全に途切れる。
強大な力によって微弱なリドリーの意識を押さえ込む。
所詮は神の器でしかない、お前に何が出来る、と毒づく。

金龍は構えた斧を薙ぐと身体をその重さに乗せ、両足を軸に身体感覚と運動能力を極限に高め、回転し始める。
その回転力は壮絶なもので、金龍を軸に竜巻が発生し、木の葉を巻き上げる。

「見るがいい。リドリー、これがお前と私の力の違いだ。
 私自身の10倍の力+斧に加えた魔力の10倍で…20倍!!
 貴様の2倍の回転速度が加わって20×2の40倍!!
 そして、貴様の3倍の回転数を加えれば40倍×3の―――貴様自身の力量を上回る120倍だーっ!!」

超回転の最中、最も威力が高まるところでは金色の戦斧を手放す。

「その身に受けるがいい―――――ワイルドピッチ!!!」

斧が放たれた瞬間、轟音と供にレナス目掛け、飛び放たれていく。
空気を切り裂くとはまさにこのことだと、感じさせられる。
その速さは動体視力で捉えきれない一撃。
そんな一撃を回避できようか? 受け止めることが出来ようか? 否、出来るはずもない。
それらの行動に移す刹那、身体は引き裂かれ、跡に残るのは肉片のみだ。

「ならば……」

レナスは決心を固め囁くと、目を閉じ精神を集中させる。
辺りは巨大な魔力で流動している。肌に感じる全てのものを意識させ、全神経を最大限に高める。
集中力で身体全体に張り巡らせる。
そして、レナスは静かに剣を構え、光り輝く魔力の円盤を迎え撃つ。

その瞬間、爆ぜる。

そこにいるものなら誰もがレナスの死を確信しただろう。それは金龍も然り。
あの攻撃を受ければ、身体など木っ端微塵に吹き飛んでしまう。
斧を放った瞬間、金龍は勝利を確信していた。

だが、その期待は裏切られることになる。

「そんな……馬鹿な!?」

金龍は目の前に起こった出来事に絶句した。
何故、そんなことができる、と零していた笑みが一変、表情が崩れる。
その場に起こった出来事は目を疑いかねない奇跡的な光景。
剣を構えたレナスは金龍の放つ斧を受け止めた。普通に受け止めたのではない。
剣先を横に構え側面が上に来るようにし、刃の側面で上方に受け――――流したのだ。
コンマ一秒のタイミングすら外せない、この局面でそれを成し遂げたのだ。
受け流された黄金の斧は夜空に向かって流れていく、その様は闇夜を照らす鳳凰を連想させた。
その煌きはなんとも綺麗であり、レナスの業の素晴らしさを形容させた。

レナスがこの奇跡を成功させた理由は二つ。
一つはレナスの持つ剣魔剣グラムの存在。
柔な代物なら向かい来る爆発的な衝撃に耐え切れず粉砕していただろう。
だが、魔剣グラムは神がかった代物であるが故にその威力に耐えることができたのだ。
そしてもう一つ、レナスが持つ感覚全て。
レナスの持つ瞬発力、身体能力、集中力、経験、反応力、数を上げれば数え切れないほど多く物が作用する。
レナスの中に潜む潜在能力が最大の功績であった。
まさに神業。

金龍はそのレナスの奇跡をまじまじと見せ付けられる。神業と言える所業に敵ながら賞賛すら上げたくなった。
そして、ここで初めて金龍は見誤ったことを悟ったのだ。
ほぼ互角の実力だと思っていたのが、圧倒的だった。
力の差は歴然であった。自分の力はレナスに対し、力が及ばないのだと。

「ありえん……ありえぬぞ!!」

認められない現実にクェーサーが咆哮を上げる。
金龍の咆哮は大気を揺らし振動させ、大地を振動させる。
クェーサーは手を構えると、魔力を溜め込み、一度、二度、三度と、何度も振り払う。
帯状に放たれる魔力がレナスを襲うが、その金龍の猛攻に傷一つ付くことなく、前に進んでくる。

「何故、何故に…人間に味方する。貴様も知っているであろう。
 人間は鼠のように増えていき、全てを喰らい尽くす。…いや、鼠以下だ。奴らは生態系を壊すことない。だが、人間は違う。
 人間は醜く、欲にまみれ、それゆえ同じ種族で争い、他の種族を巻き込み、平気で世界を滅ぼしていく醜悪で唾棄すべき存在。
 人間がいる限り世界は救われることはない。我ら神なのだぞ。私は世界を救おうとしているのだ。
 それを何故、貴様は邪魔をするっ!!」

レナスは引くこともなく、攻撃を振り払い、確実に金龍に詰めていく。
攻撃を切り裂く隙間から鋭い視線を真っ直ぐ見つめる。

「確かにお前の言うとおり、人は欲望のままに行動し、他者を傷つけ、全てを傷つける。
 人は弱い。弱い、からこそ悪事を重ね、全てのものを傷つける」

レナスは攻撃を払うたびに言葉を紡ぐ。

「だが、私は知っている。弱い故に、弱き者にために戦い。
 他者のために思いやる者がいることを」

瞼を閉じて思い出す。プラチナと呼ばれた人であった頃のことを。
そして、閉じた瞳を開くと真っ直ぐに見据えた。嘘偽りもない純粋な瞳で。

「ルシオのような人がいることを私は知っている。
 だからこそ私は信じられる――――人の可能性を」

レナスが間合いを詰めると、金龍は手に戦斧を具現させるといなや真っ直ぐに振り下ろす。
そして、レナスは振り下ろされた斧を剣で弾き飛ばす。

「人をお前の傲慢で殺させはしない。私には大切で守りたい人たちがいる。
 だから、私は大切な者たちのためにも負けられない」

レナスは剣を振るうと、咄嗟にクェーサーは脚を大きく踏みしめて距離を離す。

「人間のために戦うだと、私には理解できぬ。何故、つまらないことで戦うのだ。
 そんなことで私は負けるというのかっ!!!」

離した距離から何発も魔力を放出させて、そのたびに距離を離し攻撃をし続ける。
金龍の悪足掻き。だが、レナスは軽々とその攻撃をいなしていく。
金龍は徐々に苦渋を舐めさせられていく。

「守るべき者だと、私には……私には……理解できな―――

 ―――そうか、それがお前の強さか」

猛攻を仕掛け続けるクェーサーは相手の強さの源を理解する。
金龍は簡単なことに気付くと、「そうか、そうだったのか」と高らかに嗤った。
レナスの距離を保ち続ける金龍は気付いたのだ。
そして、よりいっそう攻撃を強め、無造作に魔力を飛び火させ、移動距離を増やしていった。

「無駄な足掻きは止すことだな」

難なく猛攻撃を払い続けるレナスは無様に逃げ続ける金龍に痺れを切らす。

「無駄な足掻きだと、いいや違う。
 軌跡だ。勝利へと導く、極上の道筋」
「戯言をっ!」
「まだ気付かないのか? 逃走の間に私が何をしていたか」
「何?」
「簡単なことだ。貴様は守れるかな。
 その大切な者とやらを……」

その言葉を聞いたとき、レナスは初めて気が付いた。今いるこの場所がどんなところか。
一見逃げ続ける金龍の行動に意味があったのだ。それは言葉に巧みにレナスを引き寄せ、後少しで勝てると焦らせたのだ。
レナスとて戦いを長引かせたくはない。戦いを引き延ばせば新たな敵を引き寄せかねないためだ。
金龍は必死に抵抗するふりを(実際、必死なんだが)し、確実に精神を消耗させ、周りを見えなくさせたのだ。
それは、常に最善手を詰め、冷静沈着なレナスにとって最大の害悪だった。
レナスは罠に陥ったのだ。
それはクェーサーを倒すにはあと一歩の場所であるということ、そして、レナスと仲間たちの距離が離れていること。
さらに、その仲間たちに金龍のほうが近いということ。

「饗宴を始めようではないか……そのディナーは貴様の仲間だっ!!」

クェーサーが、そう、言った同時に魔力を凝縮させ両手から波動砲を撃ち出す。
そして、それはソフィアの姿を捉えていた。それはあまりに虚を狙った渾身の一撃。

その上、ソフィアは反応できない。
金龍の出鱈目な攻撃によって、辺りは濃い砂埃で覆われていたのだ。だから、金龍の変えた矛先に気づかない。
放たれる極光。突然のことでキョトンとしているソフィアは金龍の思惑に反応できない。
傍らにいるレザードもクリフも同様に反応できない。ただ一人レナスだけが反応できる。

「くっ!!」

レナスが求められるモノは、二つ。
そのまま、ソフィアたちを構うことなく、隙だらけの金龍を討伐すること。
もう一つは、金龍との戦いを放棄し、すぐにでも助けに駆けつけること。

考える隙は一切与えない…決断はすぐに迫られていた。金龍は土壇場で計算していたのだ。
どちらもぎりぎりの距離であり、かつレナスの判断次第では、どちらも成す事ができないということだ。

レナスに決断が求められていた。

+++

レナスと金龍の戦いが始まると、三人は遠くから二人の戦いを眺めていた。
人間の理解の範疇を超えた戦いがそこにはあった。
神々の戦いに人間はなす術もなく、見守るしかなかった。その壮絶な戦いに介入できるものは一人もいなかった。
ソフィアは魔法で加勢しようとも、二人の戦いはあまりにも早すぎて、狙いを定められない。
クリフも激しい攻防に巻き込まれかねないため、しぶしぶと見守るしかなかった。
レザードは神々の戦いには自分は必要ないものだと分かりきっているので、
援護する気もなく、レナスの活躍をニタニタとしながら見守っていた。

「レナスさん……」

眉を落とし、呆然と見守るしか出来ないソフィア。
今のところ目の前で繰り出される金龍の猛攻にレナスは難なく付いていくが、いつ金龍の攻撃にやられないかと気が気じゃなかった。
そんな心配で卒倒しそうなソフィアを尻目にレザードはくっくっくと笑みを零すだけだった。
ソフィアはそんな不気味な笑みを浮かべるレザードに対し、困惑と怒りの目をぶつけた。

「どうして、笑っていられるんですか。レナスさんがあんなにもがんばっているのに」

震える声にレザードは眼鏡を中指で整え直すとソフィアに笑みを向けた。
不気味な笑みに一瞬、得体の知れないものを感じたソフィアは目を背けそうになるが見つめ返す。

「いやはや、さすが、我が愛しき女神だと思ったのです。
 動く動作、その身体の撓り……全てにおいて完璧だ」
「……!? こんな状況のときに何を見てるんですか!?」
「まあ、後で分かりますよ」

レザードの奇妙な感想に内心『キモイ』と思いつつも、それを口出すことを止め、怒りを露にするソフィア。
そんな言葉も、光悦に浸っているレザードに届くはずもなく、神々の戦いは繰り広げられていた。
怒りの矛先が右往左往としているとき、ソフィアに寒気が走る。
辺りの空気が一変したのだ。それは冷え込んだ冷房施設に入ったような感覚。断続的に寒気という警告音が肌に付く。
クリフもレザードもその空気を感じ取ったのか、顔をしかめる。

遠巻きに見えるのは斧を構える金龍とそれに対峙するレナスの姿。

「貴様は心底私を怒らしたいようだな」

斧を後ろに構える金龍から、おぞましいほどの魔力と殺気が溢れ出しているのだ。
それは、あまりに恐ろしい光景。この場にいるのでさえ、躊躇う。
この場に付き纏う濃く濁った死の匂いがそうさせるのだ。忍び寄る絶対死に。

「レザードさん、クリフさん、このままですと……レナスさんが…」

ソフィアはその一変した空気の最中、手助けを求める。
それもそのはず、金龍の凄まじい気迫をレナスが一身に浴びているのだ。
こんなにも、恐ろしい技を目の前に、私たちに何か出来ないかと必死に提案するが。

「手出しは無用です。まあ、見ていてください。我が女神は何とかしますよ」

レザードは落ち着き払った声でソフィアを宥めた。
そんなの分かりませんよと苦言を漏らすソフィアは、両手を組み合わせ、
先ほどと同じように成り行きを見守るしかなかった。

そして、閃光が弾けた。

だれも、その光景を見ていた。目に付く光景に息を呑みこむ。
『凄い』の一言だった。そのレナスの奇跡の前では、全てがまやかしに思える。

「すごい…」「すげぇ…」

ソフィアとクリフは目を丸くした。
自称神だと名乗っていたレナスの実力に脱帽し、感嘆の言葉を漏らすしかなかった。
そんな驚きで言葉の出ない二人を見て、レザードは自分のことにように陶酔した。


その後、レナスの戦闘は一方試合だった。
レナスの実力は金龍を超えている。そのため、後に繰り広がれるのは死ぬことを恐れる金龍の悪足掻き。
勝利は誰の目にも明らかだった。

「うぉっと、なんとも危ねえな。めちゃくちゃじゃねえか」

ソフィアの隣にいたクリフは金龍の悪足掻きに苦言を漏らす。
辺り構わず放射される攻撃に辺りの地形が変わりつつあった。粉塵が飛び交い、視界を悪くなるばかり。
金龍の行動に見苦しいな、と思いつつ、その攻撃に巻き込まれないようにしていた。
レナスの勝利は目前だった。金龍は疲弊し、攻撃の切れも最初のころよりも下火になっていた。
それに比べ、レナスは最小限の動きで相手に詰めていくため疲労が少ない。

「そろそろだな」

三人はすでに勝利の喜びを噛み締めていた。この後に、起こるであろう悲劇にまだ気付かない。
そして、確定されていた悪夢が忍び寄ろうとしていた。

レナス目掛け、撃ち出されていた攻撃の矛先がこちらに向けられたのだ。
それは、ソフィアを狙う。砂埃が邪魔をする、三人の行動を一瞬でも遅らせるために。

ソフィアは近寄ってくる黄金の煌きに唖然とするばかり。
クリフは後一歩のところで反応できない。
レザードは結界を張ろうとするが、相手のことまで手が回らない。

「嘘…」

気付いた時にはもう遅かった。
思考も感情も何もかもが、目の前の出来事に追いつけない。だが、ただひとつだけ、理解できる。
自分は呆気なく死ぬんだと。

だが、その想いは掻き消される。颯爽と現れる羽のように軽い足音と共に。
ソフィアは目の前には金龍の魔力の胎動を剣で散らすレナスの後姿があった。

「レナスさん!!!」
「間に合ったか……」

自分のために真っ先に駆けつけてくれたレナス。そんな彼女にソフィアはお礼の言葉を紡ごうとする。
だが、感謝の言葉は紡がれることはなかった。顔を振り向けるレナスにソフィアは言葉を失しなったのだ。
口元からレナスの呼吸と一緒に血が紛れ溢れ出す。網膜の奥にその姿が焼印のように刻まれる。
レナスの唇から流れる夥しい血に目を奪われる。瞬きをするたびに、力強い眼から生気が失っていくのが分かる。
何が、起こっているの、と現実と無意識の狭間の中でソフィアは混乱していく。
レナスが抑えていた金色の魔力が散っていく。役目を終えた花のように全て散り終えると、全容が現れる。
そして、ソフィアは喉が焼け付くのを感じた。

―――そこには、ケタケタと嗤う少女が。
―――レナスさんの蒼く荘厳な鎧を突き破って。
―――胸に手を突き入れている姿。

「んぅううん……。これだ……この顔が見たかったんだ♪
 苦痛に歪み、絶望するその姿がぁ♪」

―――それは、金龍が送る独演会。一つ一つ、丁寧に実況してくれる殺戮ショー。

「指先に感じるよ、ドクンドクンと小刻みに鼓動する貴様の○○○が♪」

―――グチャッと肉が裂かれる生温い音。

「どうだ、初めて、自分の○○○を見た感想は? まだ動いているだろう♪」

―――取り出した肉塊をレナスに見せびらかす。それはまだ動いていた。

「ん? 何だ、もう見飽きたか……」

―――もう、止めてと叫びたかった。でも、どうしてか、声が出なかった。

「なら、私の目の前から消えな、下種がッッ!!!」

―――金龍の攻撃にレナスの肢体は吹き飛ばされ、地面に激突する。

目の前で歓喜の雄叫びを上げる金龍に構うことなく。
ソフィアは呆然と吹き飛ばされたレナスへと無我夢中に駆け寄った。
ぐったりとうつ伏せに倒れるレナスを見ると、更に目の前が真っ暗になるのを感じた。
様々な感情が混濁する。焼け付いていた喉が渇きを求め、体全体から搾り出される。

「レ…ナスさん…」

人形のようにだらんとするレナスの姿があった。
ソフィアはぐったりとする身体を抱き起こし、必死に身体を揺らし、
返事を求めるが、うんともすんとも反応は返ってこない。
そこには、胸元に拳だいの穴を開け、闇を覗くレナスの姿あった。
レナスの目は描を思わせるほど大きく開き、虚空となった夜空を見つめている。

「起きてよ、レナスさん。ねえ、起きて…よ…んぅ…ぐす…」

ソフィアから大粒の涙が湧き水のように溢れ、頬を伝いレナスの頬に何度も打つ。
その涙によって、意識が取り戻すような奇跡は起きる事なかった。
現実は残酷にもソフィアを打ちのめすだけだった。
レナスの心臓は動かない。彼女の心臓は抜き取られたのだから。
ワンワンと自分のせいだと泣き喚くソフィアに更なる追い討ちをかけられる。

「くっ、あっははははははっ!!! ざまあねえなっ!!
 人間を守ろうとした結果がこれだよ!!」

聞きたくなかった。私を守ってくれた恩人に対して、酷い事を言えるのか。
ソフィアは耳を塞ぎたくなった。が、目の前に差し出される、モノにヒッと声が漏れる。

「良い物を見せてやるよ。あの女の心臓だ。意外と綺麗だろ。
 さっきまで動いていたんだけどな。生きが悪いせいか、止まっちまったよ」

レナスの心臓を勲章のように見せびらかせ、レナス亡き今も、蹂躙し弄ぶ。
止めて、それ以上…レナスさんを汚さないで、と口をパクパクとさせる。
だが、無常にも彼女の願いは届くこともなく。
グシャッと生暖かい音が弾ける。

「おっと、悪かった。力の加減を間違った。粉々に砕け散ってしまったよ。
 なんともまあ、軟い心臓だ。あはははは!!!!!!」

肉の花火にソフィアは意識が遠のく。目の前にいる存在が怖かった。
自分もレナスと同じように痛めつけられ、殺されてしまうんではないかと。
いや、殺されるんだ。
ソフィアの脳内に圧倒的な恐怖が支配される。ソフィアはその場に頭を押さえ少しでも恐怖から遠ざけるように蹲る。
ソフィアの精神は恐怖と悲しみの慟哭を全身に響き渡らせた。


【レナス・ヴァルキリア 死亡】

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第76話 ガウェイン 第103話(2)
第96話 クリフ 第103話(2)
第96話 レナス 第103話(2)
第96話 レザード 第103話(2)
第96話 ソフィア 第103話(2)
第95話 リドリー 第103話(2)
第96話 ルーファス 第103話(2)
第97話 チェスター 第103話(2)
第97話 アシュトン 第103話(2)
第97話 ボーマン 第103話(2)
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