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第142話 爆発形アイドル


「…これからの行動について、もう一度確認しましょう」

自分でも解るくらいにか細く、今にも折れてしまそうな声だった。
マリア自身、今の自分たちの状況が如何に絶望的なのか解っていた。
しかしだからこそ自分たちに何が出来るかを考える必要があり、
それを遂行するための作戦も用意しなければならないと考えた。

「まずそうね、私達にいま残されたアイテムの確認から始めましょうか」

正直期待はしていなかったものの、もしかしたらという希望も捨てきれずにいた。

「私はこの魔眼のピアスだけよ」

とレナは自分の左耳のそれをチャリンと鳴らすかのように指で指しながら揺らした。

「でも、今は疲れていてあんまり効果がないの…ごめんなさい…」

そうレナは申し訳なさそうに俯く。
そこに被せるようににプリシスは口元に人差し指を添えながら言う。

「だったらあたしが付けようか?あたしは戦ってはいないから疲れていないし」

なるほど、確かに首輪の解除ツール作成に勤しんでいたとはいえ特に疲労はない。
それにレナは今精神的に疲弊しきっている。
外すことで少しは楽になるかもしれない

「そうね、とりあえずはそうしましょう」

レナは数瞬戸惑う様子を見せたもののすぐにうなずいた。
丁寧に左耳からピアスを外し渡す。

「その…これ、オペラさんが身に着けていたものだから……
もしエルネストさんに会ったら渡して貰いたいの」

ピアスを受け取ってそれを強く握りしめ逆の手でVサインをしながら答える。

「うん!オッケオッケ!絶対に生き残ってエルネストに渡すんだから」

生き残る。プリシスの言葉を自分へ言い聞かせるように心の中で反芻する。
こんなところで死んでたまるものかと改めて胸に刻む。

(少なくともこれで奇襲だけはなんとか対処できるはずね)

とひとまずは安堵する。
しかし、単純に奇襲されても察知できるだけであって戦闘の可能性がなくなったわけではない。
むしろ十二分にあると考えていいだろう。
そう考えるといくらアイテムがあっても足りない。

「ところでプリシスは何を持っているのかしら?」

「んーっと、あたしはまずこのマグナムパンチと…」

ガシャン、と背中にある大きな腕のような物を動かす。
その小さな身体と不釣り合いな程に大きい。
そしてデイパックの中を漁り、工具、解体した首輪、図面と出していく。

「ほとんど工具とかで武器とかになりそうなのは他にはないかなー」

ある意味期待通りか、と眉間にしわを寄せる。
まともな武器はプリシスのものだけで、しかもそれは彼女専用。
私やレナに渡せる代物ではない、と。
ピアスがプリシスに渡った今、自分とレナは本当に何も無くなってしまった。
先ほど剣士に破壊されたサイキックガンも修理できるかもしれないが、あまり期待は出来ない。

(本当に絶望的じゃない…)

いっそ笑えたら楽になれるかもしれないが、今はそんな場合ではない。
こうなったら先ほどの戦場に何か落ちていないか探したほうがいいのかと考えたその時だった。

「あ、あとこの盗賊てぶくろがあるよ」

そこには広げた右手をこちらに向けているプリシスの姿があった。
しかし、それはマリアの世界にはないものだったので何なのかは知らない。
が、もう名前からしてなんとなく効果は解る様な気がする。
本来ならそんな名前を冠したアイテムを使うこと自体避けたいところであが、
背に腹は代えられないとでも言おうかそんなこと言ってられないのも事実。

「――それは、何の効果があるのかしら?」

半ば回答は解っているもののもし期待通りの効果ならもしかしたらアイテムが手に入るだけでなく、
もしかしたら相手の作戦も崩せるかもしれない。

「まぁ名前の通りっちゃまんまなんだけど、これを装備すると持ち物を盗むことが出来るんだ。
もちろん失敗することもままあるけどね」

これはいける…と確信を持てるまではないものの多少の光明ではある。
自分たちの持ち物に+1されるだけでなく、
相手の持ち物に-1をする…つまり+2分の働きが期待できるのである。
彼女曰くそこまで成功率の高いものでもないらしいが。
しかし、彼女がはめている様にどうやら普通に手で盗るようであるが、
背中のあれで戦う彼女がいきなり手を伸ばしたりしては不審がられるのではないだろうか?
そもそもアレのリーチで戦うと手が届かない。

「ねぇ、それは装備すれば誰でも出来るものなの?」

一つ質問をぶつける。

「うーん、一概に誰でもってわけでもなくて、
度胸があってポーカーフェイスな人ってのが条件かな?
本当は盗られることにすら気付かれちゃいけないんだけど、
今の状況だったら盗った後は気付かれても敵だったら問題ないんじゃないかな?
盗ってしまえばこっちのものだし」

にっしっし、と悪戯っぽく笑う。
ポーカーフェイスということなら彼女は不敵ではないのではないかという疑問はそっと胸にしまおう。

「ということは気付かれないように……まぁ、相手の背後から素早くコトを済ませば大丈夫かしら?」

彼女はしばし考える。

「んー…いけるんじゃないかな?あ、もちろんこれをあんまりすると身内から嫌われるから注意してね!」


めっ、といった具合に指を立てる。
当然である。盗みと言う行為はどんな宗教・部族でも殺人と並んでまず禁止項目にはいるものの一つであろう。
如何に味方とは言えたやすく許容出来るものではない。

「レナは出来るのかしら?」

レナの方が身軽だろうからどちらかといえば適任であろう。

「えっ…い、いち、ぉぅ…は…」

と消え入りそうな声で答える。
確かに胸を張って言えることではないので気持ちは重々わかるつもりだ。

「そしたらそれはレナが装備しておいて貰えるかしら?
背中のそれで戦うプリシスよりは手足で戦うレナのほうがまだ怪しまれにくいでしょうし」

間接的に手を汚してくれと言っているようなものなのでもし出来ないようなら自分で付けることにしよう。
少なくとも度胸もポーカーフェイスも出来る方だとは思う。

「は、はい…」

恥ずかしいのか、どこか顔を赤らめながらプリシスから受け取った手袋を付ける。
普段ナックルなどを装備しているせいかなんとなく様になるはめ方に見えたのは気のせいだろうか。
さて、アイテムに関してはこんなものだろうか。
当然これでは心もとないので外に落ちているであろう道具類を回収しておきたいところ。
欲を言えば銃が欲しい。ダメ元で聞いてみるとしよう。

「ねぇ、さっき改造してもらった銃なんだけども壊されちゃったのよ。
しかも、刀でグシャっと…」

「ありゃりゃ~」

と製作者は苦笑い。当然である。作ってもらって1時間も経たずに壊してしまっているのだ。

「あたしが渡したセブンスレイはどったの?」

金髪との戦闘中に改造したサイキックガンを貰ったときに落としたはずである。
あれでもないよりはマシなので戻って来るときに回収しておけば良かったと後悔する。

「それも外にあると思うわ」

しばし目を瞑り額に指を当て考える仕草をするプリシス。
やはり難しいのだろうか…
だったら使いやすいとは言えないがセブンスレイで――

「だったら…たぶんセブンスレイから部品を持ってくれば出来ると思うよ」

これは思わぬところでいいほう転がった。
銃さえ確保出来れば少なくとも先ほどの金髪剣士レベルの相手と1対1で遅れを取ることは無くなるだろう。
と安堵しているところで視界の隅の方でうつらうつらと頭を揺らしている青髪の少女。


「……ぁ、っとすみませんっ」

おそらく紋章術の使い過ぎで精神力が削られたところでの先ほどのミランダの死。
精神的に疲れるには充分過ぎるものであった。

「いいわ、とりあえずそんな状態で戦闘になっても何も出来ないでしょうから2階で寝てきなさい」

横でプリシスも頷く。

「で、でも…」

申し訳ない気持ちからか、断るレナ。
とはいえ、どう見ても戦闘は出来そうにはない。

「いい?あなたは格闘が出来るとはいえ紋章術がメインでしょ?まして、治癒も出来るんだから。
むしろ今のうちに少しでも休んどいてもらって、後で補助に回復と充分に働いて貰うわよ」

諭すようにそう言った。実際、戦闘時に備えて一つでも多く紋章術を唱えられる用にしてもらった方がこちらとしても有難い。
それとは別に素直に休んで貰いたいと言う気持ちもあった。

「作戦はあたしたちで考えておくからレナは休んできなよ!」

念を押すかの様に続いてプリシスが言う。

「わ、わかった…それじゃあマリアの傷を治す為に休んで来るわね」

少しこちら意味合いとは違ったものの休んでくれる気になったようで一安心である。

「それじゃあ私は武器の回収に向かうわ。プリシス、敵の接近とレナがきちんと休むように監視お願い」

そういって私は椅子から立ち上がり、扉へと向かう。

「了解だよ!」

元気に親指を立てる少女を見て少し元気を分けてもらえたような気がする。






民家から出るとそこには先ほどの戦闘の傷跡が色濃く残っている。
それこそ、血のにおいもまだ残っていていやでも先の光景を思い描いてしまう。
嫌でもあのとき別の選択をしていれば良かったのではないかと苛まれる。
先ほどの金髪も態勢を整えてまた襲ってくるかもしれない。
侍男もクレスの転移で飛んだはいいもののもしかしたらそう遠くないかもしれない。
もっと別のゲームに乗っている人物が襲ってくるかもしれない。
そう自分たちに取って嫌なケースを思い描いている内にこの場に相応しくない不自然な蛍光色のバットがあった。

(これは……クレスの持ってた……)

そう思い、しゃがんでバットを取る。
マリアの脳裏にもうこの世にはいない男の姿が浮かんだ。



『僕は…ルシファーをゆルシファー(許しは)しない!』



(私が始めてあなたを見たときに吐いたセリフがこれだったかしら?
こんな状況の中でくだらないダジャレを言うだなんてとんだマヌケがいたものだと思ったわ…
その後少し意地の悪い質問をしたら…)

『……誓います。この戦いを終わらしてルシファーを倒すまで、絶対に挫けないと。
 それに言ったはずです。僕の仲間はこんなところで死なないって』



(とか言っちゃって…本当、世間知らずの優等生にしか見えなかったわ…)



『そのレーションの味はどうレーション(でしょう)か?』



(ほんっとぉーーっに、くだらないって思って1発や2発蹴ってやろうかしらって考えたくらいよ全く…)



『僕も神様を信じていれば怪我を治せる気が(けが)してきたぞ!』



(なんで思い出すのがほとんどダジャレなのかしら……
やっぱり2,3発は蹴っといた方が良かったかしら?)



『―――マリアさんは僕が命に代えても守ります。
 僕は最後まで絶対にあなたを守り通します』



(よくもまぁ、そんな恥ずかしいセリフを抜け抜けと吐けるものよね……
……でも、そう――素直にね……嬉しかったわ…)



『…………強いわけじゃないですよ。ただ、こういう役目を引き受けちゃう役目ない(憎めない)奴なだけですよ』



(あの時は気付かなかったけど、これもダジャレだったのよね…
場を一応和ませようとしてくれるのは有難いけどもう少し空気を読んでほしいわ
――というか、ダジャレ言い過ぎじゃないかしら?)



『心配しなくても大丈夫ですよ! それに、マリアの言う事にあやマリアんて(誤りなんて)無いですって』



(そうやって信じてもらえていたのは本当に嬉しかったのよ…
ちょっとカッコいいかもって思いかけちゃったくらい……
でもね……ダジャレは余計よ、ホントに……)



『後は、任せ、……マリア(ました)よ……』

(結局、最期までダジャレだったのよねあなた…
私たちを助ける為にあんな……自分の身を犠牲にしてまでなんて……
だいたい、あなた自分で言ったじゃない…『最後まであなたを守り通します』って、
先に逝っちゃったら、もう……出来ないじゃない……)

「とんだ嘘つきさんね……」

蛍光色のバットを見つめるつつか細い声で悪態をつく。
その笑みには影がさしている。
おもむろに立ちバットを握りしめる。

「空気の読めないしょうもないダジャレ剣士なんだから、せめて嘘つきさんにならないように最後まで守ってもらうわよ…」

そう言い放ちバットを大切そうにデイパックにしまう。
先ほどまで顔にさしていた影も幾分か薄れている。
おもむろに瞼を閉じ

「ありがとう」

と一言呟き決意を胸に踵を返した。





一通りアイテムを回収し終わって民家に戻ったマリアの目に映ったものはもぬけの殻となった1階であった。
レナがいないのはある意味当然として、プリシスがいないのはおかしい。
少なくとも外で何かあれば聞こえてきたはず。となれば、中で何かあったのであろうか。
マリアの中で警戒レベルを2つほど上げた。
もしかして侵入者でもいたのかとも考える。
先ほどの金髪か、侍のほうか。あるいはブレアあたりがいつの間にか潜んでいたのかもしれない。
先ほど拾ったセブンスレイを構え、恐る恐ると1階を探っていく。
しかし、何もおかしなところはないのを確認したところで2階から話し声が聞こえてきた。
もちろん何を喋っているのかは判別できないがレナとプリシスの声である。
それでも警戒レベルを落とさずに階段を1段1段足音を立てないように慎重に上っていく。


「――んだろうねこれ」

「んー少なくとも触ったりはしない方がいいんだろうけども…」

そこにはレナとプリシスの姿があった。
どうやら侵入者の類ではないらしい。
ひとまずは安心――と言いたいところだが見覚えのない奇妙な黒い裂け目のようなものがあった。
否、マリアには見覚えがあった。
エターナルスフィアからFD空間へと渡る際に使用した惑星ストリームにあったタイムゲートである。
もちろんそれはタイムゲートと言われる身の丈を大きく上回る装置があり、
空間の裂け目とも呼ぶものはどちらかと言えば水色の様なものであったがその性質、雰囲気は目の前のそれと酷似している。

「これは…どうしたの?」

「あ、マリア…戻ってきてたのね……それが、言われた通り休もうと2階に来たらこの首輪と一緒にあったの」

チャリ、と誰のものか解らない首輪を掲げる。
レナは未知なるものに対して怪訝そうな顔をしている。
プリシスは好奇心が刺激されたのか興味津々にあらゆる角度から観察している。
とはいえ見ただけで解るはずもなく、お手上げの様子である。
そもそもここに首輪だけあると言うのも不可解である。

「マリアはこれが何かわかるの?」

「わかる――とは少し違うわね……強いて言えば検討はつくと言った話かしら……
かつて私たちがエターナルスフィアからFD界に渡ってルシファーを倒した話は覚えているかしら?」

二人は首を縦に振る。

「エターナルスフィアからFD界に渡るときにタイムゲートって言う、言わばワープ装置の様なものを使ったのよ。
で、その目の前の黒い裂け目とタイムゲートの雰囲気……気配が似ているのよ」

「「じゃあ!」」

パァっと両者の顔は明るくなる。
二人からしたら耳寄りな情報であることを想像するのは容易い。
だがおかしい、というよりおかしなことだらけである。

「早合点はだめよ二人とも
この空間から脱出できる代物をルシファーたちが用意するわけがないわ、罠の可能性だって…
それに仮にそういう類の代物だったとしても私の知っているものと少し違うのよ
だから私の経験だけで語ることはできない」

そう、こんなものがあることがおかしいのだ。
ルシファーがこんなものを用意するはずがない。
参加者に脱出されてはゲームが成り立たなくなる。
ならば、私達参加者の誰かが作ったのかと言われるとそれも可能性としては極めて薄い。
ルシファーがそんな別空間をつなげられる能力を持つ参加者を黙って見過ごすわけがない。
最初から参加させない、あるいは自分のアルティネイション同様制限が設けられるはずだ。

ならば、外部からの干渉と考えるのが一番筋が通っている。
ルシファー、スフィア社に対抗している何らかの組織でもいるのか。
あるいは内部からの分裂、反乱の可能性もある。
どちらにせよ、これを使わない手はない。だが、解析する必要がある。
何か空間を操るのが得意な能力者にでも見てもらう必要がある。
となるとやはりソフィアに来てもらうのが一番かもしれない。
探しに行くべきか否か。それは否だ。
ゲームに乗っているものからすればこんなもの邪魔でしかない。
私たちがここを留守にしている間に破壊――出来るものなのかは解らないが何をされるかわかったものではない。
ならば私たちで防衛するのか――少しの間、それも化け物クラスの実力者が来ないという条件付きでしか不可能だ。

「それだったらこれが解る人を探せばいいのかな?」

とレナが問いかける。
もちろんそれが出来るのならそうしたいところである。

「難しいわね、あてもなく人探しをするほど私たちに余裕はないわ。
それにこれがこの空間からの脱出の手掛かりの一つであることにはかわりない。
私たちがここを留守にしている間にゲームに乗っている誰かが何かするかもしれない…
だから私たちはここを防衛しなくちゃならない」

自分でもひどく無茶苦茶なこと言っていると思う。
だがこの裂け目は脱出する為には必要不可欠なものであることはほぼ間違いない。

「ってことは私たちはここから動けないってこと?」

「そういうことに……なるのかしらね……」

場の空気が急激に重くなる。
結局やらなければならないことが多くて何を優先してすればいいのかがわからくなってくる。
防衛するのと人を呼びに行くのをこの3人で行うのはそれこそ3手に別れても足りない。
そもそも戦力を分散させるほどの余裕はまずない。

「だったら―」

と沈黙した空気をぶち破る様にプリシスが呟く

「他の人にここに来てもらったらいいんじゃない?」

「「え?」」

逆転の発想ではあるが何をどうやってするのか、通信機の類はないというのに。
そもそも出られないなら来てもらうと発想を変える――までなら百歩譲ってまだ解るが、
変えたところでどういう意味があるのか――

「や、だって一応、(仮)ではあるけど首輪の制御ユニットをハッキングするツールはここに出来ているし」

と先ほど完成した装置をデイパックから覗かせる。

「それにこの、えーっと…なんだろう……まぁゲートでいいや!ゲートだってもちろんここにあるでしょ?
だったら他の人にこっちに来てもらった方が手っ取り早いでしょ?
それにここは11時に禁止エリアになる、
このゲートがこの馬鹿げた空間からの脱出に必要なものだとするとタイムリミットはあと大体4時間半しかないわけ。
その間に残りの参加者をここに集める必要がある――
正直あまり手段を選んでいられるほどの時間はないんじゃないかな?」

そうだ、ここはあと5時間もせずに禁止エリアになる。
ひとたび禁止エリアとなればこのゲートは使えなくなる。
そうなるとたまたまとはいえ折角見つけた脱出への手掛かりを失うことになる。
もうゲームも終盤だろう。
これから新たに脱出の手掛かりがつかめるとは考え難い。

「で、でも…肝心のその人を呼ぶのはどうするの?」

当然浮かんでくる質問を隣の少女がする。
それもそうだ。いざ呼ぶにしてもそう都合よく方法があるわけがない。

「うーんと、実はさっきこの装置を作っているときに部屋の中にC4の時限爆弾があったの」

「時限爆弾!?」

まさかそんなものがこの家の中にあったとはと驚きを隠せない。

「そそ、まぁちゃんと止めてはあるんだけどね――でそれがざっと5kgくらいかな?」

と、とんでもないことを言いだす。
そんなものが爆発したらこの民家まるごと吹っ飛ぶんじゃないだろうか。
もう一人の少女はC4がなんなのかいまいち解っていない様子できょとんとしている。

「そんだけの爆弾爆発させればケッコー遠くまで音が聞こえると思うんだ」

「待って!それだとゲームに乗っている人までおびき寄せちゃうじゃない?」

そう都合よく脱出を目指すものだけを集める方法なんて有る筈がない。
まして爆発音だなんて360度に広がる。
それでは危険は増す一方である。

「まぁそれもそうなんだけど、逆に言えばあたしたちに味方してくれる人も集まるでしょ?
さっきの放送によれば残り16人。正直あまり時間はないと思うんだ。
さっきも言ったけど11時にはここが禁止エリアになるしね。
だったらそろそろ大きく”賭け”に出てもいいんじゃないかな?」

随分と思いきったことを考えるものだ。
でも確かにもう終盤。こういった戦いの素人であるソフィアが生き残っているということは、
少なくとも守ってくれている人がいると考えてもいいかもしれない。
あの娘がゲーム乗っているとも到底思えない。
それにチェスターも生きている様子である。
フェイトはゲームに乗っていないと信じるとしよう。特に乗っていると判断する要素もない。
だったら以前の仲間ということ考えたほうがまだ信用に足る。
この時点でソフィアの守り手が1人と考えても味方になりそうなのは4人である。

加えて、エルネストというレナ達の仲間もいる。
ボーマンという例もあるため無条件で味方してくれると考えるのも良くないが確立としてそう低くないだろう。
ボーマンといえばクロードである。結局彼はどうなんだろうか。
火のないところに煙は立たないとは言うが彼女たちの様子を伺うに本来はゲームに乗る様な人物ではないらしい。

反対に確実にゲームに乗っていると考えられるのはボーマンと先ほどの二人。
当然アシュトンも要注意人物である。
ブレアは仮に本人であれば味方してくれるのだろうが、その可能性もあまり考えない方が良いだろう。

まだ未知数な参加者はレザード、ブラムス、クラースの3名。
この3名とエルネストクロードの5名が現状の立場が完全に未知数と考えられるところか。
自分たちを除いた13名中少なくとも4名、未知数の分を50%と考えると6、7名が味方になってくれると見込める計算になる。
そう考えると単純な数字的にはそこまで分の悪い賭けでもないのかもしれない。
もちろん分のいい賭けでは決してないが。

「そう……ね…どうせこのままでもジリ貧だし、ここが禁止エリアになるまでそう時間はない……
事態がいいほうに傾いてくれることを祈って見ましょうか…
あとはそうね、使うタイミングが問題かしら」

そう、使うタイミングが最重要課題である。
むやみやたらと使っても悪戯に危険を増すのは事実である。
ただし、使うのが遅すぎるとそれはそれで他の参加者がここに到着するまでに時間がそれだけ遅くなってしまう。
他の参加者がここに到着するまでに禁止エリアになっては意味がない。
このあたりはまだまだ熟考の余地がありそうだ。

「いいわ、とりあえずプリシスは私の銃を修理してちょうだい――」

「あいさー!」

「――爆弾の方は私で用意しておくわ、悪いけどちょっとだけ工具を借りるわよ」

「そんなこと出来るの?」

至極当然な質問をここまであまり会話に入ってこなかった少女がする。
しかし爆弾の扱いにおいてはクォークの時に嫌でもかというくらいに慣れてきた。
一応解除されているとはいえモノがあると言うことであれば爆弾の製作は彼女にとってそう難しいことではない。
残念ながらマリアには細工のセンスはあまりない為どうしても不格好なものに仕上がってしまうのだ。
どうせ爆発するのだ構わないだろう。そういう思考だから造形には無頓着なのであろうが…
そういえばそれを見たクリフによく笑われたものだ。もっとも、クリフのほうが細工のセンスはないのだが。

「ええ、職業柄とでも言うのかしら…爆弾の扱いには多少の心得はあるわ」

これである程度の方針は立てられたといったところか。
残るは使うタイミングだが、まずは爆弾自体を用意しないと話にならない。
もちろん出来得る限り迅速にだ。

「それじゃあ私とプリシスは作業に入るからレナは有事に備えて5分でも10分でもいいから眠っておきなさい
あとプリシスには悪いけど、奇襲を避けられるように作業中もある程度周りに神経を張り巡らせておいて」

「わかったわ」

「了解っ!」

光明――とまではいかないものの直近でやることは決まった。
あとは事態が好転してくれることを祈るしかないのが歯がゆいが――
それでも自分たちに出来ることはこれが精一杯である。
それを可能な限りいい形で遂行していくしかない。






【F-01/朝】

【マリア・トレイター】[MP残量:60%]
[状態:電撃による軽い火傷 右肩口裂傷・右上腕部打撲・左脇腹打撲・右腿打撲:戦闘にやや難有 仲間達の死に対するショック 腰のクロス無し]
[装備:無し]
[道具:荷物一式、カラーバット@現実、解除された時限爆弾@現実]
[行動方針:ルシファーを倒してゲームを終了させる]
[思考1:侍男(洵)と茶髪の剣士(ルシオ)を憎悪]
[思考2:チェスターが仲間を連れて帰ってきてくれるのを待つが、正直期待はしていない]
[思考3:鎌石村方面に向かう?]
[思考4:ブレアを確保したい]
[思考5:爆弾を使える状態にする]
[思考6:爆弾を使って参加者を呼び寄せる]
[思考7:ゲートを死守する]
[思考8:ゲートを詳しい人に調べさせたい]
※高い確率でブレアは偽者だと考えています。

【レナ・ランフォード】[MP残量:5%]
[状態:仲間達の死に対する悲しみ(ただし、仲間達のためにも立ち止まったりはしないという意思はある)、
    精神的疲労極大、ミランダが死んだ事に対するショック、その後首輪を手に入れるため彼女に行った仕打ちに対する罪悪感]
[装備:盗賊てぶくろ@SO2]
[道具:首輪×2、荷物一式]
[行動方針:多くの人と協力しこの島から脱出をする。ルシファーを倒す]
[思考1:…………]
[思考2:侍男(洵)と茶髪の剣士(ルシオ)を警戒]
[思考3:鎌石村方面に向かう?]
[思考4:レオンの掲示した物(結晶体×4、結晶体の起動キー)を探す]
[思考5:自分達の仲間(エルネスト優先)を探す]
[思考6:アシュトンを説得したい]
[思考7:エルネストに会ったら何があったかを話す]
[思考8:少しでも休んで回復しよう]

【プリシス・F・ノイマン】[MP残量:100%]
[状態:かつての仲間達がゲームに乗った事に対するショック(また更に大きく)、仲間達の死に対する悲しみ]
[装備:マグナムパンチ@SO2、魔眼のピアス(左耳)@RS]
[道具:無人君制御用端末@SO2?、ドレメラ工具セット@SO3、解体した首輪の部品(爆薬を消費。結晶体は鷹野神社の台座に嵌まっています)、
    メモに書いた首輪の図面、結晶体について分析したメモ荷物一式、セブンスレイ〔単発・光+星属性〕〔25〕〔50/100〕@SO2、
    壊れたサイキックガン(フェイズガンの形に改造)〔10〕[100/100]@SO2]
[行動方針:惨劇を生まないために、情報を集め首輪を解除。ルシファーを倒す]
[思考1:…………]
[思考2:鎌石村方面に向かう?]
[思考3:レオンの掲示した物(結晶体×4、結晶体の起動キー)を探す]
[思考4:自分達の仲間(エルネスト優先)を探す]
[思考5:クラースという人物も考古学の知識がありそうなので優先して探してみる]
[思考6:エルネストに会ったらピアス(魔眼のピアス)を渡す]
[思考7:マリアの銃を一刻も早く直す]
[思考8:作業中も周囲への警戒は怠らない]
[備考1:制御ユニットをハッキングする装置は完成しています]

【現在位置:平瀬村(中島家付近)の民家2階】

※ミランダの遺体は平瀬村の民家(中島家)周辺に仰向けで寝かせてあります。
 クレスの腕は布に包んだ状態でその脇に置いてあります。
※中島家周辺に落ちているアイテムはマリアがすべて回収しました。
 セブンスレイと壊れたサイキックガはプリシスが修理・改造しています。
※以下のアイテムに関しては3人の中でどう振り分けているかは後の人に任せます。
 パラライズボルト〔単発:麻痺〕〔50〕〔50/100〕@SO3
 万能包丁@SO2
 護身刀“竜穿”@SO3
※壊れたサイキックガンの修理と爆弾の作業時間は後の人に任せます。

【残り15人+α】




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