彼女が私を呼んだ。『ついに渡す日が来た』と。

彼女はいつものように日傘をさし手袋とコートを着ていた。何でも肌を太陽に晒すのは、肌が弱いから嫌だからだそうだ。

『白衣を着るってのも懐かしいから、やっても良かったんだけど。まあ今回は特別な日だからね。ハイセンス・ネーミング』

この名前も懐かしいね、と彼女はいう。

『ロバートもセリアも行ってしまった』
彼女は寂しそうに言った。
『でも、私は待たなくてはいけなかった』
彼女は空を見る。
『ハイセンス、あなたにこの力を渡すと決めてからずいぶん時間がたってしまった。私のしたことも、何が正しくて何が間違っていたかわからない。でも最近気づいたの』

ムスタング・ディオ・白樺は言った。

『過去の特異点適性があなたにあったから、私の力はどんどんあなたに入っていった。そのおかげで私はあの日に失った自分自身をだんだん取り戻せてきたってわかった。』

ムスタングは伸ばしている髪を触りながら言った。
『私の意思に関係なく、完全に私の力はあなたに入った。もうゴレン、あなたが過去の特異点よ。私もやっとロバートやセリアのいる、宇宙に飛び立てる』

最後に意地悪そうな顔をして言った。
『あとは任せたんだぞアイリーン』
ふふふと微笑みながら何処かへ走っていった。


次の日、帽子を忘れたそうなので、家に取りに来た。

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最終更新:2011年06月28日 21:57