ぼくのなまえはアブク・ガッポ。
おじいちゃんはガラクタ・ガッポ。

これは、ぼくの知ってるおじいちゃんのはなし。
ぼくとおじいちゃんが見た、このせかいのはじっこの、まんなかのこと。




ぼくのなまえはアブク・ガッポ。ガッポのしゅうらくのこども。7さい。
ぼくのおじいちゃんはガラクタ・ガッポ。ごきんじょでもうわさの『ボケろうじん』。
でもぼくは信じてる。
おじいちゃんはボケてなんかいない。


「アブク、おじいちゃんのところへ遊びに行くなら、おじいちゃんが怪我をしないようにちゃんと見張っておきなさい」
おかあさんはぼくにこういいつけるけど、おじいちゃんはうろうろしたってケガなんかしない。
こしは曲がっちゃったけど、歩きかたはしっかりしてる。
目だってちゃんととおくまで見えてる。ぼくのかおもちゃんとわかる。
みんな心配性すぎるんだ。おじいちゃんがボケたとおもってるから。


おじいちゃんと散歩してたら、遠くで大きな音がした。
「あっ、おじいちゃん、アームヘッドだよ」
「んああ、そうじゃなあ、白いのがおるなぁ」
「かっこいいね」
「そうじゃなあ」
「でもこわいね」
「そうじゃろかなぁ」
「こわいよ」
「良い子じゃよ」「そうなの?」
「うむ、悪い子じゃ」
「どっちなの」


「おじいちゃん、おばあちゃんはぼくが4さいのときに死んじゃったよ。なのにどうしておばあちゃんにはなしかけるの?」
「はて、そうかいね。ばあさんはおぼえとるか?はぁ。はぁあ。そうじゃなあ。裏の畑は売ってしまおうか」
「畑は去年ぼくとおとうさんとおかあさんの家になっちゃったでしょ」


「おじいちゃん、またなんかお話してよ」
「はあ、そうじゃなあ。わしが若い頃な、えくじこうちゅうのが出てなあ」
ときどき、おじいちゃんの昔話では、おじいちゃんはアームヘッドにのって戦ったことがあるって言う。
でも、そんなことはなかったって皆言ってる。
どっちがほんとうでも、ぼくはかまわない。


追放されたアンラッキーおじちゃんにもガラクタじいちゃんはやさしかった
おじいちゃんは、おじちゃんは追放なんかされてなかったと思ってたから


おじいちゃんは人をまちがえることはたくさんあるし、いなくなった人をいると思ってはなしかけたりするけど、
いる人をいなかったことにしちゃうことは一度もない。
ぼくはアブク・ガッポ。ふしぎなおじいちゃんのまご。

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最終更新:2013年07月25日 22:01