戦風姫ちゃんの劇場版の音楽を盗用した音楽が流れる古めかしい街を三人は歩いていた。
「これがこの国の国歌らしいね」
メタリックピンクの髪の女が前を歩く老人に声をかける。
「しかし懐かしいなウィノナ、僕は一世紀前に見たよ」
老人は答える。
「そういう趣味があったの?テルミ…」
ウィノナが若干幻滅したふりをする。
「いやいや、君と合う前の話だよ、すごい昔」
テルミは年に似合わない慌てぶりだ。
「イチャイチャしてる暇はないみたい、歓迎されてないみたいよ」
メタリックゴールドの髪の女が答える。

急に銃を持った男が飛び出し発砲した。二人の女はテルミを守るように前に立った。一発の銃弾がウィノナの額に当たる。
「ヤったぞ!」
男は叫んだが様子がおかしいことに気づく、凹んで落ちたのは弾丸の方だ。

襲撃者はすでに全員が気絶していた。
「ウィノナ、大丈夫か?やはりなれないな」
テルミが心配そうに問う。
「我々の装甲は縦断程度ではびくともせんよ、テルミ殿」
「アイリーンの言う通り大丈夫よ」

イミテーションの街だ、とテルミは感じていた。もう人類はほぼすべて宇宙移民を開始、惑星上にはアームヘッドが跋扈し始めていた。トンドル危機のあと移民船団は多くが出発を終え、やがて人類とアームヘッドの比率は逆転した。反乱をせずにアームヘッドいやバイオニクルはヘブンを取り戻したのだ。そしてテルミは残った人たちも宇宙へ、マタヌイへ帰還すべきだと考えている。一部の人類は自らの王国を守護陣であるビスケットハンマーの周りに作り過去の歴史の栄光の模倣をしていた。だがその愚かな行為はアームヘッドの増大によって打倒され、多くの私王国を承認した大御蓮王朝も第十三移民団として宇宙へ旅立つこととした。その大使としてテルミはこのジョーンズ私王国へとやってきたのだった。

「よく来ましたね」
ジョーンズ公がいう。
「私は山田テルミです、妻の山田ウィノナ、娘の山田アイリーンです」
テルミは二人を紹介した。アイリーンが娘というのは嘘だがそのほうが都合がいいのでそうしている。
「ずいぶんとお若い…」
「その話はいいでしょう、マタヌイ帰還の件、考えてくれましたか?」
「貴様無礼だぞ!」
衛兵が言う。
「途中で我々を襲撃したのは無礼ではないのですか?」
テルミが衛兵を睨む。
「ホホホ、まあ落ち着きなさい」
ジョーンズ公が衛兵をたしなめる。
「アッハイ、失礼しました」
「ホホホ移民の件だが受け入れられぬ、アームヘッドが危険だと?ホホホ我々にはゲイペッドがあるのですぞ」
「多くのBHが倒されています」
「ホホホ、ゲイペッドは太く頑丈ですぞ」
「しかし…」
「ホホホ、安心なされよ、私のシビルヘッドたちは優秀ですぞ」




今回もうまく行かなかった。確かにBH-072は強力で当初の性能を維持できている。しかしそれが長続きするとも限らない。またそのような強力なBHを持つ地域ばかりではないのだ。

「テルミ…」
「ウィノナ…僕たちはこれからどうなっていくんだろうね」

アイリーンはアザーフォビア遺構で胎動するひとつのアームコア反応を確認していた。シンギュラリティを滅ぼしターンバックによりこの時代に帰ってきた彼が発見したのはシンギュラリティの邪悪な断片”メモリーニルヴァーナ”だった。

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最終更新:2014年06月12日 00:44