九年目。この年は嫌い。だって――。

今日は結婚ごっこ記念日。今年で――。
「無理を言ってごめん。でも、一緒に居たくて」
「いいんですよ、お姉さま」
そういって、メリーは細長い箱を取り出した。
私はこの日に差し出されるその箱を知っていたから、とてもつらくなった。今度は、と思った。

仕事の入っていたメリーにどうしても断ってほしいとお願いして、この日を二人で過ごしていた。

「ありがとう。うれしい」
そして、その箱を開けて、ネックレスを首に。私の趣味ではないけれど。
それを見てあの子は微笑んだ。
「お姉さま、それ、似合わないですね。私、お姉さまの事、わかってないな」
「そ、そうかな。私、こういうのも好きよ」

「――お姉さま、あの、ごめんなさい」
あ、と。あ、これは知っているぞ、と。これは、回避できなかったと、そういうことだろう。

「お姉さま、私、もうお姉さまとはいられない。お姉さまのこと、わからない」
「プ、プレゼント選びをしくじったからってなによ!だったら――」
「お姉さま、わかって」
その子の左手には、まだ指輪が収まっていて。

九年目。そして三年目の結婚ごっこ記念日。
この思い出も、失敗だった。やっぱり、あの子の事が分からなかった。
だから、次の思い出へ。

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最終更新:2016年10月15日 12:55