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Standin'by your side! - (2021/11/24 (水) 14:39:16) のソース
*Standin'by your side! ◆KpW6w58KSs 意外にも、瓦礫の山の捜索には大した時間がかからなかった。 本気を出せば129.3馬力というあまりにも意外な力を持つドラえもんが手伝い、 安静にしておいた方がいい、と言われつつもさり気なくヴィータも手伝ったこともあるだろうが、さて── (……運が良かった……とは言えないね。むしろ……) 現状を見据え、ドラえもんは力無くため息をついた。 捜索の影響で崩れた瓦礫のせいか、それとも何らかの衝撃で崩れたかどうかは分からないが、 太一が命を賭して守ろうとし、結果として逆に太一を助け圧死した彼女の遺体は──原型をとどめていなかった。 さっきまで、優しい表情を垣間見せていた太一の顔は固く、ヴィータは表情が見えにくいものの顔が俯いているのが分かる。 素子の遺体を最初に発見したのは太一だった。更に、まさかと思ったドラえもんが駆け寄るより先にヴィータも覗きこんでしまう。 悔しさから、哀しさから、怒りから、涙がこぼれる。止まらない。 その姿を、ドラえもんは黙って見守ることしか出来なかった。……手を出していいとは思えなかった。 背後で少しの間様子を伺っていたヴィータも、やがて無言で戻ってくる。拳を必要以上に、固く握り締めて。 ◆ 素子のデイパックはかなり汚れていたものの、中にあったものは無事だった。 それから三人で素子の遺体を一緒に埋葬し、全員が落ちついたところでドラえもんが口を開く。 「……ねえ、ヴィータちゃん。前回の放送を聞いてないかい?」 今、欲しいものはまずドラえもん自身が使っていた秘密道具。 次に、その他の──生憎にも素子の分は瓦礫に押しつぶされていたが──護身になる道具。そして、手に入る限りの情報だ。 ただ、彼の欲する道具はまだ見ぬ二つのデイパックの中に残っているのだが。 運が悪いとすれば、彼らが三つのデイパックの存在を知らなかったことだろう。 「聞いたと言えば聞いたけどよ……全部は覚えてねーぞ」 仮面の男の下卑た声が主の名を読みあげる声が今も耳に残る。好きな名前のはずなのに、今すぐにでも忘れたい声。 「今からぼくが言う名前に聞き覚えがあったらでいいんだ」 それからドラえもんが、彼と太一の知る名前を挙げていく。 「……どうかな」 不安そうな瞳がヴィータを見つめた。 「多分…………スネ夫、って奴と……先生ってのが……呼ばれたと思う」 一瞬真実を話すことに躊躇したヴィータだったが、あえて黙ったり嘘を言ってやる必要もないと判断した。 (……放送前に、倒れてた方が良かったかも……な) 「そう」とか細く呟いたあと、俯きながら身体を震わせるロボットをぼんやりと見つめながら、ヴィータはそんなことを考えていた。 ◆ 彼は、確かにズルい人間だったかもしれない。 金持ちの息子であることを鼻にかけ、いつも自慢話でのび太をからかったり。 ジャイアンの威を借りて、一緒になってのび太をいじめたり。 でも、根底まで悪いような少年じゃなかった。 何度も、ジャイアンと共に怯え腰ながら大冒険に参加してきた。 きっと彼もまた、のび太とは違う意味で気が弱かったのだと思う。 彼は、良き教師だった。厳しさの中に生徒を想う気持ちが見てとれた。 厳しかったことの記憶の方がのび太には多いだろうけれど、決して恨んだりなんかしてないはずだ。 自分の知る子供達は、一体どれだけのことを彼に学んだのだろう。 死ぬ瞬間もやはり、彼は怯えていたのだろうか。 最期まで、彼は生徒のことを想っていたのだろうか。 それを確かめる術はもうない。 彼らはもう、死んでしまったのだから。 ◆ それから、気を取り直した一行は橋へと向かっていた。 当初はドラえもんがヴィータを気遣い病院行きを提案していた。 しかしヴィータは病院とは逆方向のビルに行こうと提案した。 ビルの方が人が集まっているだろう。それに、近くのホテルがあるから何かあっても休めるはずだ、というのが彼女の意見だった。 そして最終的に太一が間をとってD-3の橋を目指そうと提案したのだ。 この辺りまで来て、ヴィータの体調に差し支えがないようであればビルの方に、何かあれば病院の方に行けばいい、というわけである。 ヴィータも渋々納得したところで彼らはその場を後にしたのだった。 旅路が順調だったせいだろうか。橋を一つ渡るころには全員が元気を取り戻しているように見えた。 このまま何事も起こらなければ──自称猫型ロボットはそれだけを祈る。 そして、確かにそう祈った瞬間に皮肉にも『何事か』が起こったのだった。 ◆ 運が良かったのだろうか、それとも── 長い時間が立ったように思える。が、誰の一人もシグナムの前には現れなかった。 参加者を減らすことができないことを良いとは言いにくいものの、 ヘタに仕留め損ね実力ある者に追いつかれようのものなら一溜まりもなかっただろう。 ほどほどに疲労も回復してきた。素人相手であれば戦えぬ状況ではない。 ──時は満ちた。 シグナムが立ち上がる。万全とは言えないが、悪い調子ではない。 あの男のように、手の内を全て使いきらねば勝てぬ程の相手でなければ十分戦える、と思う。 立ち止まっていた騎士は再び動き出す。 ──その時だった。 (……爆発……戦闘か) そう遠くない距離だろう。近づかずともまともな状況でないことは推してはかれる。 さて、この状況で自分も割って入るのは良いといえるだろうか……答えは否。 戦闘中の人物が戦いに夢中で外部からの攻撃に油断している可能性もある。 そうであれば仕留めるのは簡単だ。だが、リスクも高い。 それなら、戦いが止んだ頃に残った手負いの人物を仕留めた方が危険性は少ない。 暫くして、もう一回の爆発音が聞こえた。やはり、よろしくない状況のようだ。 もう、この期に及んで正々堂々などと言える状況ではなくなったのだ。無論、自分という存在も。 ひょっとしたら、やはりシグナムの調子はまだ芳しくないのかもしれない。 そうだとしても彼女は動いただろう。それは焦りか使命感か── こうして、二人のベルカの騎士は近づいていく── ◆ 「ッがぁぁぁ!!」 太一の腕のあたりを、何かが貫いたのは彼らが引き返そうとした直後であった。 「た、太一くん!」 「おいっ!」 腕を押さえて蹲る太一を見て、咄嗟にヴィータはこの場にいるはずのもう一人のベルカの騎士を連想した。 『彼女』は、確か弓を扱うことにも長けていた── (そんなはず、) ないと自分に言いきかせようとするが、再び太一に目を戻した直後に現れた人物はまさにヴィータの想像通りであった。 「……やはり、ヴィータか」 「シグナムっ……今の……お前か!?」 ◆ 気付かれぬ程度に戦闘区域を観察し、状況の把握しようとしてたシグナムは、急に目を鋭くさせた。 クラールヴィントが反応を示していた。前回と同じく、三人分。 (さて、今度ばかりは激しい戦闘は避けたいものだな) 今回使うのは、弓の方だ。 当たれば、もしくは仮に当たらずとも相手の反応である程度力量が測れる。 そこで、武器を斧に持ちかえとどめに行くか退くかを判断できるというわけだ。 第一剣がなくなった今では、待ち伏せしても確実に仕留められるというわけでもないだろう。 こんな時にヴィータがいれば。 レーダー通りに進めばやがて三人分の人影が見えてきた。 まだ見ぬ仲間を想い、シグナムは弓を構える。そして、標的は中央にいる少年と思わしき影。 矢が放たれ、少年のうめき声があがる。 それに駆け寄る二人の影。 近寄るうちに片方の姿が見覚えのあるものとなり、それが聞き覚えのある声を出したのはほぼ同時のことだった。 ◆ 「……なんでやった」 明らかに非難を向けたヴィータの視線が飛ぶ。 「お前以外の、全ての参加者を殺す」 それでもシグナムは冷淡に告げる。 「そして、私がお前かのどちらかが死に──」 自分で言っていて改めて、実に利己的だと実感する。 「残った方が願いを叶える。……全ては主はやてのため、だ」 先ほど射た少年の傍に、青いタヌキがいた。 できればこのタヌキは仮面の男の情報を引き出してから殺したいものだ。 「ふざ……けんな」 打ち震えるような声。見れば、手に持つハルバートも小刻みに震えている。 シグナムにはなんとなく分かっていたことだ。 はやてのために夜天の書の蒐集を始めた時の、ヴィータの声がよみがえってくる。 それに、彼女の性格── 「なのはも……フェイトも殺すっていうのか」 「……当然だ」 あるいは、彼女にその気があれば、最後の一人になってもらってもよい。 当然、あの二人は拒むだろうが。 「言ったよな、はやての未来を血で汚したくないって」 「……ああ」 既にはやての生死の懸念は忘れているようだ。 「そんなことまでして……生き返らせて………… はやてが良いっていうわけ……ねぇだろ!!」 怒気を含んだ声。既にハルバートを構えている── (やはり……相容れないか) 「ふざけんな……オバサン」 怒りを内に秘めていたのはヴィータだけではなかった。 「だめだ太一くん!」 「はやてって子が……あんたの……何なのかは知らないけどよ…………」 止まらぬ痛みを力ずくで振り切り、弱々しく立ち上がろうとする。 「……誰かの……犠牲があって……成る幸せなんて…………人を生き返らせる……なんて…… …………あって良いわけ、ある……かよ……!」 それは、もういない主の意向。 誰かに迷惑をかけてまで、闇の書で願いを叶えない。 主の、その考えがあってこそ。 ベルカの騎士は『平穏な生活』を。 『家族』を、手に入れた。 「そういうことだ」 太一の台詞に気を取られていたヴィータだったが、改めてハルバートを構える。 「シグナムが、それでも殺しをするっていうなら ──全力で止めてやる」 (主の言葉を忘れるなど──) シグナムは内心で自分に毒づいた。 それでも、自分はもう戻ることは出来ない。 「お前とは出来れば戦いたくはなかったが」 こちらも斧を構える。得物で言えば、こちらの方が不利。しかし、もう止まれない。 「それも止む無しだ」 二人のベルカの騎士が地を蹴ると同時に、まるでゴングの役目を果たすかのように空に仮面の男の顔が浮かぶ。 もう、お互い以外は見えていなかったのだけれど。 【E-2/F-2の橋の近く/昼】 【八神太一@デジモンアドベンチャー】 [状態]:右腕に矢(刺さったまま)、右手に銃創 ※少しずつ治り始めています [装備]:アヴァロン@Fate/stay night [道具]:支給品一式 [思考・状況] 1:傷が痛むが、あのオバサン(シグナム)を止めたい。 2:はやての生死についてのヴィータとシグナムの話の矛盾のことには 薄々気付きつつあるが今はそんなことを考える余裕がない。 3:ヤマトたちと合流 4:荷物を持って姿を消したルイズのことも気がかり。 基本:これ以上犠牲を増やさないために行動する。 [備考] ※禁止エリアはヴィータが忘れていたのでまだ知りません ※ドラえもんをデジモンとは違うものと理解しました。 【ドラえもん@ドラえもん】 [状態]:中程度のダメージ、かなり焦り [装備]:無し [道具]:素子のデイパック、支給品一式、"THE DAY OF SAGITTARIUS III"ゲームCD@涼宮ハルヒの憂鬱 [思考・状況] 1:二人の戦いを止めたいけど、太一は放っておけない。 そもそもぼくが止められるか…… 2:放送で現れたギガゾンビに微妙に動揺。こっちもちょっと気になる 3:ヤマト、はやてを含む仲間との合流(特にのび太)。 基本:ひみつ道具を集めてしずかの仇を取る。ギガゾンビを何とかする。 [備考] ※禁止エリアはヴィータが忘れていたのでまだ知りません ※素子のデイパックの中身は一般支給品のみです 【ヴィータ@魔法少女リリカルなのはA's】 [状態]:戦闘だけに集中、発熱中、結構快方に向かってる [装備]:ハルバート 北高の制服@涼宮ハルヒの憂鬱 [道具]:支給品一式、スタングレネード×5 1:シグナムを全力で止める。出来れば殺さずにおきたい。熱? 知るかよ!! 2:「八神はやて」の生死を確かめる。(シグナムの動向から死んでいると悟りつつある) 3:信頼できる人間を探し、PKK(殺人者の討伐)を行う。 基本:よく知っている人間を探す。 (最優先:八神はやて、次点:シグナム、他よりマシがなのはとフェイト) (戦闘次第によってはシグナム除外か?) [備考] 放送について、死者の名は一部忘れており禁止エリアに関しては全く覚えてないようです。 【シグナム@魔法少女リリカルなのはA's】 [状態]:戦闘だけに集中/戦闘による負傷(処置済)/騎士甲冑装備 [装備]:ルルゥの斧@BLOOD+ クラールヴィント@魔法少女リリカルなのはA's 鳳凰寺風の弓@魔法騎士レイアース(矢20本) コルトガバメント(残弾7/7) [道具]:支給品一式、ソード・カトラス@BLACK LAGOON(残弾6/15) [思考・状況] 基本:自分を最後の一人として生き残らせ、願いを叶える 1:ヴィータを倒す。出来れば殺したくはないが…… 2:その後は無理をせず、殺せる時に殺せる者を確実に殺す [備考] シグナムは列車が走るとは考えていません。 放送で告げられた通り八神はやては死亡している、と判断しています。 ただし「ギガゾンビが騎士と主との繋がりを断ち、騎士を独立させている」という説はあくまでシグナムの推測です。真相は不明。 [共通備考] 二回目の放送が始まりましたが、シグナムとヴィータは気付いていません。 *時系列順で読む Back:[[KOOL EDITION]] Next:[[約束された勝利/その結果]] *投下順で読む Back:[[KOOL EDITION]] Next:[[約束された勝利/その結果]] |143:[[一人は何だか寂しいね、だから]]|八神太一|154:[[峰不二子の動揺]]| |143:[[一人は何だか寂しいね、だから]]|ドラえもん|154:[[峰不二子の動揺]]| |143:[[一人は何だか寂しいね、だから]]|ヴィータ|154:[[峰不二子の動揺]]| |140:[[死闘の果てに]]|シグナム|170:[[――は貴方の/あたしの中にいる]]|