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WHEN THEY CRY - (2022/02/13 (日) 18:55:30) のソース
*WHEN THEY CRY ◆FbVNUaeKtI 赤い陽と共に仮面の男が虚空に消える。 木々の合間からその光景を眺めていたロックは、強くほぞを噛み締めた。 それは泣き声の聞こえる方向に向かって歩いていた時だった。 夕闇の迫る空に現れたのはギガゾンビ。三回目の定時放送だった。 放送の中にはレヴィや、しんのすけの母の名前は無かった。だが・・・ 「うそ、ですわ・・・圭一さん、レナさん・・・・・・・梨花・・・」 背負った少女――北条沙都子が小さな呟きを漏らす。 呆然とした面持ちで紡がれたのは先程、死者として読み上げられたもの。 ここまで来る道すがら、彼女に教えて貰っていた大切な仲間達の名前だった。 「沙都子ちゃん・・・」 「う・・・あ・・・ぁああああああああああ!」 身を案ずる言葉を掻き消し、沙都子が涙を流しながら叫ぶ。 そして、背中の上で我武者羅に手足をばたつかせ始めた。 「お、落ち着くんだ、沙都子ちゃん」 泣きながら暴れる少女を、ロックは何とか支えようとする。 しかし、子供とはいえ二人の人間を抱えた状態ではそれも難しく。 少女の身体は、広い背中から取り落とされた。 木の根が浮かぶ地面に身体を勢いよく打ち付けながら、それでも沙都子は泣き続ける。 不安げな眼差しを向けるしんのすけを大丈夫と言うように抱きしめながら、ロックは少女にかける言葉を探していた。 薄暗くなってきた森の中に少女の泣き声が響く。 三度目の放送が終わった後も、川沿いの地面に蹲りエルルゥは涙を流し続けていた。 幸い、放送に見知った名前は無く、ここも禁止エリアでは無さそうだった。 アルルゥを探しに行かなければいけない。だが、せめてもう少しの間だけ・・・ そんな思いを胸に泣き続けていたエルルゥの動きが、ふと止まる。 声が。自分以外の泣き声が、木々の向こうから流れ出てきていた。 自分よりも幼い少女の泣き声。それを耳に受け、エルルゥはゆっくりと、しかししっかりとした足取りで立ち上がる。 目の前の茂みを抜け、声のする方向へと向かう。 ・・・そこには、幼い男の子を抱き抱えた成人男性と、地面に寝転び泣き叫ぶ幼い少女の姿があった。 「・・・エルルゥ?」 驚いたような表情を向ける男性――ロックに軽く頷くと、エルルゥは改めて少女へと目を向ける。 歳はアルルゥと同じくらいだろうか、大きな声を上げながら泣き叫ぶ少女。 彼女の片足は何かに叩き潰されたように酷い有様になっていた。 その惨状に顔を歪めながらも、エルルゥは思う。彼女は足の痛みで泣いているのではない、と。 「貴方も、誰か大切な人を亡くしたのね」 自らも涙を流しながら・・・エルルゥはそっと少女に手を伸ばす。 そして、地面に転がっていた彼女を抱き起こすと、そのまま胸に体を持たれかからせた。 腕や脚を振り抵抗する少女を無言で抱きしめ、エルルゥはその背中を撫で続ける。 やがて、少女の抵抗は徐々に小さくなり、それに比例して彼女の泣き声も収まってゆく。そして・・・ 「・・・これで、いいんだよね。お婆ちゃん・・・」 エルルゥがそう呟く頃には、少女は疲れ果て、寝息を立て始めていた。 眼を開けると、そこは見慣れた場所だった。 「ここは、梨花のお気に入りの・・・」 「そうなのです、今晩は月がとっても綺麗なのですよ」 背後からの声に沙都子は振り返る。そこには・・・とても、とても大切な、親友の姿があった。 「りかぁ! 心配させないでくださいまし! やっぱり・・・やっぱり、あれは間違いだったんでございますわね!」 「にぱー」 沙都子の怒鳴り声に、梨花は誤魔化すような笑みを返す。 思えば彼女の親友はいつもこうだった。 いつも、いつも変わらぬ笑顔で・・・それでいて、時々何かを諦めたかのような顔をするのだ。 沙都子はそんな親友が心配でもあったし、 何の相談もされない自分は、本当に彼女の親友なのだろうかと不安に思っていた。 「そういえば、圭一やレナから沙都子に伝言なのです」 「伝言? 圭一さんもレナさんも、明日の学校で言えばよろしいのに・・・ 圭一さん達はどうかしたんですの?」 沙都子のその言葉に、梨花はいつものように笑みを浮かべる。 「みー、圭一達は魅ぃの所に行ってるのかもです」 「・・・答えになっていませんわよ、梨花」 「それではまず圭一からの伝言なのです。 おまえはまだ、ここに来ちゃ駄目だ。得意のトラップワークを見せてくれ」 「な、何を、言ってるんですの?」 沙都子の言葉を意に介さず、梨花の言葉は続く。 「レナからは、つらい時は我慢するだけじゃなくて、誰かに頼るのも悪くないよ・・・なのです」 ・・・もう気付いていた。これはお別れなのだと。 今、自分は眠っていて、そして目が覚めればもう梨花達とは会えないのだと。 「・・・圭一さんに、レナさんらしいですわ」 「そうなのです、実に圭一達らしいのです」 その呟きを最後に二人の言葉は止まる。 熱を奪うような夜風を体に受け、二人の少女は無言で佇む。 「私は、このゲームに乗ったんですのよ? にーにーに会いたくて・・・皆を殺す覚悟までしたんですのよ? そんな私に、本当に生きる資格なんてあるんですの?」 唐突に沙都子の言葉が静寂を破る。 呟かれた疑問――懺悔の言葉に、古手神社最後の巫女は慈しむような笑みを沙都子に向けた。 「それでも・・・皆、沙都子に生きていて欲しいのですよ」 「梨花・・・」 俯いて涙を流す沙都子の頭を、まるで母親のように少女は撫でる。 「もう、お別れなのですよ・・・」 その呟きに、沙都子は顔を慌てて上げようとする。その動きを制し、古手梨花は言葉を紡いだ。 「最後に、私からの伝言。生きなさい、沙都子。生きて、幸せになるの。 ・・・私が言うのも、なんだけどね」 含んだような笑みを最後に、彼女の手の感触が消える。 北条沙都子が顔を上げた時、そこにはもう、誰もいなかった。 「・・・そんな事があったのか」 沙都子が寝息を立て始めてから・・・ ロックとエルルゥは木の根元に座り、互いが別れた後の出来事について情報を交換していた。 協力できそうな仲間、ゲームに乗った危険人物、互いの経験した事・・・ 病院で起こった一件は口にしなかったものの・・・その他の事については殆ど話し終え、二人は一息吐く。 「それにしても・・・沙都子ちゃんの脚は非常にまずい状況ですね」 「ああ、まったく酷い事をする」 彼女の足の骨は完璧に粉砕され、松葉杖を使っても移動が困難な状態だった。 「出血に対する応急手当はされているんですけど、このまま放っておくと・・・この子は、一生歩けなく・・・」 エルルゥの消え入るような言葉に、ロックはガッツという男に対して、改めて憤りを覚える。 そして、それと同時に沙都子を救う方法が無いか模索する。 「ギプスができれば一番いいんだが、医者が居ない現状じゃあな・・・とりあえず、病院に行ってみるか」 「ロックさんが、トウカさん達にお会いした場所ですか?」 エルルゥの言葉にロックは頷きで肯定する。 「ああ。それに、あいつ等も戻ってきてるかもしれないからな」 その言葉と共に二人は立ち上がろうとして・・・ 「おねいさ~ん!!!」 五歳児がものすごい勢いで飛んできた。 その奇襲に驚愕しながらも、エルルゥは即座にロックの背中に身を隠す。 「え?あ、その、ロック防壁!」 「がふぉっ!」 ロックの鳩尾に幼児――しんのすけが頭から飛び込む。低い呻き声と共に、ロックは陥落した。 時間は数十分前に遡る。 沙都子が泣き疲れ眠り始めると同時に、大人二人は神妙な顔をして話を始めた。 そのため、しんのすけはせっかく知り合えた美人のお姉さんと、話をすることも出来ずにいた。 「うう、オラもおねいさんとお話がしたいんだゾ・・・」 そうは言っても、二人は大事な話をしている最中。 あの雰囲気の時は話しかけないほうがいいということを、しんのすけは理解していた。 「ああいうお話をしているときは、静かにしとかないとかーちゃんに起こられるんだゾ」 自らにそう言い聞かせ、話が終わるのをじっと待つ・・・しかし・・・ 「なんだかノドが渇いてきたゾ・・・けど、オラの鞄はどれだかわからないし・・・」 少年の目の前には三つの鞄。しんのすけ、ロック、そして沙都子の物だ。 しんのすけは迷ったあげく、適当に一つ開けてみることにした。 「ぅんしょ、うんしょ・・・ふう・・・おぉ! なんか変な腕があるゾ!」 開けた鞄の一番上にあったのは、鋼の義手。 「うほーい! カンタムロボごっこ~!」 喜びの言葉と共に、義手を取り出そうとするしんのすけ。 しかし、黒い義手は五歳児の腕力で持ち上がるような物ではなく。 「ふんぬ~! ふんぬ~~!! だめだ、ぜんぜん持ち上がらないゾ」 あまりの重さに肩を落とすしんのすけ。 しかし、急に何かを思いついたように顔を上げると、その小さな手を鞄の下へと入れた。 「これをひっくりかえせば・・・ふんぬ~~~~~~!!!!」 両手を鞄と地面の間に入れ、思いっきり持ち上げる。 しんのすけが全力をかけるまでも無く・・・鞄は引っ繰り返り、その中身はぶちまけられた。 びくりと首を竦ませて、しんのすけは恐る恐る背後を振り返る。 ・・・二人は話に夢中になり、気づいていないようだった。 胸を撫で下ろしながら、地面に目を向ける。そこには様々な物が転がっていた。 「え~っと・・・あった! カンタムロボの腕!」 そういって、近くに転がっていた義手に手を伸ばす。 「ふんぬ~~~~~!!!!!」 しかし、やはり持ち上がらない。 数分の時間を費やした後、しんのすけは肩で息をしながら諦めた。 そして、鞄の近くへと改めて目を向けて、そこに転がったペットボトルで本来の目的を思い出す。 「おお、そうだった、そうだった」 そう呟きながら、ペットボトルの水を飲む。 少し飲んで一息。キャップを行儀よく閉めて、鞄に戻し・・・ 「お?」 開いた口の、その深遠に目を奪われた。 鞄へとそっと近づき、手を入れてみる。 何も恐ろしい感触が無いことに安心した後、しんのすけはゆっくりと自らの頭を鞄の中に入れた。 「おぉ!」 瞬間、ものすごい力で、しんのすけの頭が弾き出された。 その感覚に目を輝かせ・・・無垢な少年は、自らの身体をそれへと入れる。 目指すは綺麗なお姉さんの胸元。すでに話は終わり、二人はその場から立ち上がろうとしていた。 「おねいさ~ん!!!」 そして、今に至る。 そこかしこに散らばった荷物を掻き集めながら、ロックはしんのすけに説教をしていた。 「まあまあ、もういいじゃないですか」 「そうだゾ!」 収集を手伝いながらエルルゥが言うと、しんのすけが大きく頷きながら同意する。 その様子に溜息を吐きつつ、ロックは先程からの疑問を繰り返していた。 『どうしてだ? どうして跳ね飛ばされる?』 参加者が鞄に入るという行為。それ自体は確かにゲームに水を差す行為だ。 たとえば、子供の参加者が鞄の中に隠れてしまえば、それだけで生存確率が上がってしまう。 全員が死亡して、最後に残ったのが鞄に隠れていた参加者・・・そんな事態を主催者は望んじゃいないだろう。 だが、ならば何故、弾き飛ばす? 首輪を爆発させれば済むことではないのか? いや、それ以前に・・・何故、奴は何も言わなかった? 鞄に入るのは禁止されていると、一言言えば済むだろうに。 「考えすぎか・・・?」 確かに、鞄に入れるような参加者は、相当小柄な体型じゃないといけない。 そんな体型の参加者が、しんのすけ以外に何人存在するのか? 存在したとしても、鞄に入ろうと考える人物が何人も居るのか? 「いないよな、やっぱり」 そう呟いて、ロックは頭を掻き毟る。 『まあ、何かのヒントにはなるかも知れないな・・・』 そんな風に考えながら、荷物の回収に意識を切り替える。 ―――無数に散らばった道具の中から一つの物品が消えていることに、ロックは未だに気づいていなかった。 その道具、『どんな病気でも治す薬』は樹木の側で横になっている少女の、その懐に存在していた。 『・・・あの方々はいったい何をやっているんですの?』 ロック等が荷物を拾っているのを薄目を開けて窺いつつ思う。 先程の騒ぎで目を覚ましていた沙都子は、眠ったふりをして場の混乱した様子を観察していた。 『まったく・・・殺し合いの真っ最中だって事を忘れてるんじゃありませんの?』 そう、ここはあくまでも殺し合いの場なのだ。 その事を忘れた先には・・・死しか待っていない。今までに名前を読み上げられた人達のように。 『圭一さん、レナさん・・・梨花・・・私は生き残ってみせますわ。 貴方達の分まで生き延びて、そして雛見沢に帰ってにーにーを・・・』 少女は決意を胸に眠り続ける。その想いが正しいか否かは・・・オヤシロさまだけが知っていた。 【A-7川付近/1日目/夜】 【ロック@BLACK LAGOON】 [状態]:若干疲労 [装備]:ルイズの杖@ゼロの使い魔 、マイクロ補聴器@ドラえもん [道具]:なし [思考・状況] 1:道具を拾う 2:一旦、病院へ向かう 3:沙都子を助けたい 4:ギガゾンビの監視の方法と、ゲームの目的を探る 5:山の麓にいるというガッツを警戒 6:しんのすけ、君島、キョンの知り合い及びアルルゥと魅音を探す 7:しんのすけに第一回放送のことは話さない 8:一応、鞄の件について考えてみる [備考]※ケツだけ星人をマスターしました ※病院での一件をエルルゥにまだ話していません ※支給品三人分、黒い篭手?@ベルセルク?、現金数千円 びっくり箱ステッキ@ドラえもん(10回しか使えない。ドア以外の開けるものには無効)が周囲に散乱しています 【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】 [状態]:全身にかすり傷、頭にふたつのたんこぶ、腹部に軽傷、歩き疲れ [装備]:ニューナンブ(残弾4)、ひらりマント@ドラえもん [道具]:支給品一式 、プラボトル(水満タン)×2、ipod(電池満タン。中身不明) [思考・状況] 1:お兄さん(ロック)とお姉さんについて行く 2:お姉さんとお話をする 3:みさえとひろし、ヘンゼルのお姉さんと合流する 4:ゲームから脱出して春日部に帰る。 [備考]放送の意味を理解しておらず、その為に君島、ひろしの死に気付いていません。 【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に】 [状態]:若干疲労、右足粉砕(一応処置済み) [装備]:スペツナズナイフ×1 [道具]:基本支給品一式、ロープ、紐、竹竿他トラップ道具、 簡易松葉杖、どんな病気にも効く薬@ドラえもん エルルゥの薬箱@うたわれるもの(筋力低下剤、嘔吐感をもたらす香、揮発性幻覚剤、揮発性麻酔薬、興奮剤、覚醒剤など) [思考・状況] 1:ロックとしんのすけを『足』として利用し、罠を作るための資材を集める 2:十分な資材が入手できた後、新たな拠点を作り罠を張り巡らせる 3:準備が整うまでは人の集まる場所には行きたくない 4:生き残ってにーにーに会う、梨花達の分まで生きる 5:魅音とは会いたくない 【エルルゥ@うたわれるもの】 [状態]:かなりの肉体的、精神的疲労(若干回復) [装備]:なし [道具]:なし [思考・状況] 1:道具を拾う 2:一旦、病院へ向かう 3:沙都子を助けたい 4:トウカ、アルルゥ等を探す [備考]※ハクオロの死を受け入れました。精神状態は少し安定しました。 ※フーとその仲間(ヒカル、ウミ)、更にトーキョーとセフィーロ、魔法といった存在について何となく理解しました。 *時系列順で読む Back:[[永遠の炎]] Next:[[正義×正義]] *投下順で読む Back:[[永遠の炎]] Next:[[正義×正義]] |196:[[「ブリブリーブリブリー」]]|ロック|220:[[「散りゆく者への子守唄」]]| |196:[[「ブリブリーブリブリー」]]|野原しんのすけ|220:[[「散りゆく者への子守唄」]]| |196:[[「ブリブリーブリブリー」]]|北条沙都子|220:[[「散りゆく者への子守唄」]]| |192:[[受容]]|エルルゥ|220:[[「散りゆく者への子守唄」]]|