「白雪姫」(2021/08/20 (金) 06:14:06) の最新版変更点
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*白雪姫 ◆S8pgx99zVs
エリアの南端、海沿いに広がる遊園地の中。
太陽に照らされた明るいオレンジ色のレンガの上に北を目指す二人の影があった。
HOLYの隊員でありアルター能力者でもある劉鳳と、記憶を失い彷徨っていた所を彼に
保護された長門有希を名乗る少女である。
「どうしてなのかな?」
「何がだ?」
少女の疑問に男は足を止めることはなく、そのまま聞き返す。
「遊園地。どうしてみんな動いているのかな?って。誰もいないのに」
「知らないな」
劉鳳の返事はにべもない。
それも当然。このような状況においてそのような疑問を一々考えている余裕はない。
それよりも重要なのは誤解を抱いたままの真紅を探すこと。そして悪を排除することだ。
「……乗ってもいいのかな?」
「なんだと?」
あまりに場違いで能天気な疑問に劉鳳の足が止まる。振り返った彼の顔には明らかな苛立ちの
感情が浮かんでいた。
「状況を考えて発言してくれ。さっきも説明したはずだ。
そんなのんきなことを言っていられる状況ではないことを。
君もさっきその犠牲者を見ただろう?」
犠牲者。その言葉に彼女は血に塗れた老人の姿を思い出す。だが、それには不思議と感慨を
覚えることは無かった。それよりは目の前にいる劉鳳の方が恐ろしいと感じる。
「……ごめんなさい。まだ実感が沸かないみたいで。
でも、じゃあ劉鳳はどうして私を殺さないのかな?」
その言葉に劉鳳の顔が険しさを増す。
「だって、そうでしょう?そういうルールなんだし……
それに、さっきの……絶影?あれがあれば誰でも殺せるんじゃない?」
「ふざけるなっ!!」
突如現れた絶影が触鞭を地面を走らせ、それに伴い砕けたレンガが空に舞い上がる。
「俺を悪と同じものだと思っているのか……」
表情を持たない破壊者である絶影とは対称に劉鳳の顔には明らかな怒りが表れていた。
それには彼女も身を竦めたが、それでも言葉を紡ぐのを止めはしない。
「理解出来ないの。この閉塞した状況下に置いてあなたの行動理念は不利を生じさせるだけ。
それだけの情報投影能力。情報統合思念体の端末である私達にだって与えられていないわ。
それなのにそれを最大限に発揮しようとしないなんて非効率的でしかない」
突如として饒舌に語りだした少女に対して、劉鳳の顔が怪訝なものに変わる。
「人間はよく、『急がば回れ』って言うよね。確実な成果を望むなら慎重に、用意周到に事を起こせと。
だけど、それは場合によると思うわ。今の状況はそうではない場合。椅子取りゲームのように
手をこまねいているだけでは得られる物がどんどん手から零れ落ちていくだけだと思うの」
「……何が言いたい?」
「つまりね。私は成果を得るのを逃したくないの。
あなたのその高次元存在とアクセスする能力。それはこの宇宙の中でも特に稀有な物よ。
私はそれを解析して情報統合思念体に情報を送りたい。
あなたはお人よし過ぎるわ。このゲームを生き残ることはできない。
だったら……、誰かに横取りされたり取り返しがつかなくなる前に……
――私に殺されて」
瞬間。先程絶影が撒き散らしたレンガの破片が槍と形を変えて劉鳳を襲う。
無数に殺到したそれらは彼を串刺しにするはずだったがそうはならなかった。
絶影の二本の触鞭に叩かれ、粉々に砕け散り散乱する。
「本性を表したな下種な悪党が……死んで後悔しろっ!!」
槍を叩き落した二本の触鞭が今度は少女を襲う。
遊園地を舞台に再び、正義の破壊が吹き荒れた。
少女は襲い掛かる触鞭を身をよじり、跳躍して、時には小さな障壁を発生させて避ける。
暴風のように襲い掛かる絶影の触鞭は、地面を、壁を、遊具を破壊し遊園地に傷跡を増やしていく。
――すごいパワーとスピードだわ。まさかあの距離からの不意打ちが全て避けられるなんて。
あーあ。せっかく時間を掛けて構成したのに全部無駄になっちゃった。
それにしてもすごい出力。あの絶影という具現化された存在がその要点ね。
私達と違い一々体内で演算を行なうのではなく、単純な機能を持たせたデバイスを最初に具現化
させることで、本体に掛かる負荷を最小限に抑えている。
元々、脳の処理能力に限界がある人間には最適の方法だわ。
逃げる少女を追って絶影と劉鳳も走る。軽妙に攻撃を凌ぎ続ける少女にさらなる攻撃の手を加える。
――攻撃の軌道が単純だからそれを計算するのは容易いけど、スピードが速すぎて処理を
攻性情報の構築に回すことができない。それに――
少女の心臓が一つ大きく波打つ。
――フィジカルサポートへの処理にも影響が出始めた。このままでは彼に討ち取られるのも
時間の問題。一旦、離れないと……
触鞭の一撃を柱を盾にやりすごし、離れるように跳躍。壁を蹴って次の一撃を避け地面を転がる。
その後を追うように地面が弾け、さらに少女を触鞭が追い詰める。
色鮮やかに電飾で飾られた遊具らを犠牲に少女は逃げる――逃げる――逃げる。
それを追う正義の狩人、劉鳳。
彼らが通った後は、地面が捲り上がり、街灯は折れ、草花は散り、遊具は壊れると、散々な有様だった。
逃げる少女が一つの施設に駆け込む――ミラーハウス。鏡の迷路。
追う劉鳳はその浅はかさに心の中で侮蔑する。そして決着をつけるべく絶影の真の力を解放した。
「絶影ッ!!」
劉鳳の叫びとともに絶影を抑える拘束具が四散し、新たな身体を再構成する。
封じられた両腕を広げ下半身を長い尻尾と変えたその姿は、華奢な第一形態とは全く異なり
力強い竜を思わせるものに近い。
広げた両腕、その脇から見える副腕のその片方――剛なる右拳”伏龍”
ドリルのように回転し唸るそれが身体を離れロケットのように撃ち込まれると、少女を飲み込んだ
鏡の迷路は文字通り爆散し――そこに光が溢れた。
一瞬、ストロボのような強い閃光が劉鳳の目を貫く。
目眩し――!?予想外の出来事に相手からの反撃に備え絶影を構えるがそれは無く、
ただ雨のように砕けた玻璃の破片がさらさらと降り散るのみであった。
――逃げられた。そう結論つけざるを得ない。
あれから周囲を探索したが、結局あの少女――長門有希の姿を見つけることはできなかった。
少女を逃し、毒づく劉鳳であったが今回はそれに破壊は伴われなかった。
もうこの場所で無駄な破壊を起こす必要がなかったというのもあるが、なにより若干の消耗が
あったからだ。第一形態まではそうでもなかったが、やはり第二形態ともなると無視できない
程度の消耗がある。今回は短い時間だったので問題はないが、長時間の戦闘は難しい。
それを実感したので、出来うる限りアルター能力は温存しておいた方がよいと判断したのだ。
少女を逃したのは痛恨のミスだが何時までも同じ場所に留まっておくわけにもいかない。
逃した少女は一人ではないのだ。どちらも速やかに発見する必要がある。
劉鳳は最初とは別方向になる西のゲートへと足を向けた。先程の追走劇の結果そちらの方が
近くなったからだ。
油断なく歩く劉鳳。彼の心の中には長門と名乗った少女の言葉が小さな棘となって残っていた。
――自分はこの戦いを生き残れないと。殺す相手を選ぶような余裕は死を近づけるだけだと。
フ、と鼻で笑う。弱くて狡猾な悪党の言いそうなことだ。
だが!自身の正義は絶対!これに殉じ、これに生きる。戯言に貸す耳はない。
確かに油断はあったのかも知れない。事なきを得たがすでに二回も不意打ちを許している。
だが、血迷いこの悪趣味な殺戮遊戯――ギガゾンビの野望に手を貸す程自分は愚かではない。
絶対正義の信念。ギガゾンビ――『悪』の打倒を改めて心に起こすとそこにあった小さな棘を
振り払った。
劉鳳の正義は何者にも曲げることはできない。
一方、辛くも窮地を脱した少女――朝倉涼子は森の中にいた。
森といっても本物ではなく人口のそれもファンシーな作り物めいた森の中だ。
伏龍によって破壊されたミラーハウス。それよりいくらか離れた場所にある童話をテーマにした
コースター。その途中にあるトンネルの中である。
――激しい動悸が治まらない。
あの鏡の迷路。あの内のいくつかの鏡の構成情報に手を加え反射の位相を揃えて目眩しに
したまではよかったが、そこが限界だった。
あわよくばあの隙に反撃をと考えていたが、思いのほか身体が悲鳴を上げるのが早かった。
運よく彼に発見されることは免れたが暫くの間は動くことすらままならないだろう。
動悸が激しいだけではない。頭痛に眩暈に嘔吐感。それと発熱。
なんとか肉体を正常化したいが、そもそもその処理を行なうためのコンディションが整っていない。
――失敗したなあ。
きっかけはやはりあの防波堤の上で出会った少年の一撃か。あれで何か歯車が狂ったと思う。
もう荒くなった息を殺すこともできない。ただ横になって有機体の自然回復を待つしかない。
もしかしたらこのまま死ぬかもしれない。
――死か。キョンくんや涼宮さんは今頃どうしてるのかしら。それに長門有希。彼女も……
そこで彼女の意識は途切れた。
牧歌的な森の中、プラスチックの小人に囲まれさながら白雪姫のように深い眠りへとついた。
【F-3/遊園地-西ゲート/午前】
【劉鳳@スクライド】
[状態]:やや疲労/正義に燃えている
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ/支給品一式/斬鉄剣
真紅似のビスクドール(目撃証言調達のため、遊園地内のファンシーショップで入手)
[思考・状況]
1:長門有希(朝倉涼子)を見つけ出し、断罪する
2:老人(ウォルター)を殺した犯人を見つけ出し、断罪する
3:真紅を捜し、誤解を解く
4:主催者、マーダーなどといった『悪』をこの手で断罪する
5:相手がゲームに乗っていないようなら保護する
6:カズマと決着をつける
7:必ず自分の正義を貫く
[備考]
※朝倉涼子のことを『長門有希』、朝倉の荷物を奪った少年を『野原ひろし』と誤認しています。
※例え相手が無害そうに見える相手でも、多少手荒くなっても油断無く応対します。
【F-4/コースターのトンネル内-白雪姫ゾーン/午前】
【朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:側頭部に傷/高負荷による激しい消耗/昏倒
[装備]:SOS団腕章『団長』
[道具]:デイバッグ/支給品一式(食料無し)/鎖鎌/ターザンロープの切れ端/輸血用血液(×3p)
[思考・状況]:気を失っている。
*時系列順で読む
Back:[[行くんだよ]] Next:[[正義の味方]]
*投下順で読む
Back:[[行くんだよ]] Next:[[正義の味方]]
|109:[[リスキィ・ガール]]|劉鳳|146:[[彼は信頼を築けるか]]|
|109:[[リスキィ・ガール]]|朝倉涼子|141:[[二人の少女 恐怖のノイズ/二人旅]]|
*白雪姫 ◆S8pgx99zVs
エリアの南端、海沿いに広がる遊園地の中。
太陽に照らされた明るいオレンジ色のレンガの上に北を目指す二人の影があった。
HOLYの隊員でありアルター能力者でもある劉鳳と、記憶を失い彷徨っていた所を彼に保護された長門有希を名乗る少女である。
「どうしてなのかな?」
「何がだ?」
少女の疑問に男は足を止めることはなく、そのまま聞き返す。
「遊園地。どうしてみんな動いているのかな?って。誰もいないのに」
「知らないな」
劉鳳の返事はにべもない。
それも当然。このような状況においてそのような疑問を一々考えている余裕はない。
それよりも重要なのは誤解を抱いたままの真紅を探すこと。そして悪を排除することだ。
「……乗ってもいいのかな?」
「なんだと?」
あまりに場違いで能天気な疑問に劉鳳の足が止まる。振り返った彼の顔には明らかな苛立ちの感情が浮かんでいた。
「状況を考えて発言してくれ。さっきも説明したはずだ。
そんなのんきなことを言っていられる状況ではないことを。
君もさっきその犠牲者を見ただろう?」
犠牲者。その言葉に彼女は血に塗れた老人の姿を思い出す。
だが、それには不思議と感慨を覚えることは無かった。それよりは目の前にいる劉鳳の方が恐ろしいと感じる。
「……ごめんなさい。まだ実感が湧かないみたいで。
でも、じゃあ劉鳳はどうして私を殺さないのかな?」
その言葉に劉鳳の顔が険しさを増す。
「だって、そうでしょう?そういうルールなんだし……
それに、さっきの……絶影?あれがあれば誰でも殺せるんじゃない?」
「ふざけるなっ!!」
突如現れた絶影が触鞭を地面に走らせ、それに伴い砕けたレンガが空に舞い上がる。
「俺を悪と同じものだと思っているのか……」
表情を持たない破壊者である絶影とは対称に劉鳳の顔には明らかな怒りが表れていた。
それには彼女も身を竦めたが、それでも言葉を紡ぐのを止めはしない。
「理解出来ないの。この閉塞した状況下においてあなたの行動理念は不利を生じさせるだけ。
それだけの情報投影能力。情報統合思念体の端末である私達にだって与えられていないわ。
それなのにそれを最大限に発揮しようとしないなんて非効率的でしかない」
突如として饒舌に語りだした少女に対して、劉鳳の顔が怪訝なものに変わる。
「人間はよく、『急がば回れ』って言うよね。確実な成果を望むなら慎重に、用意周到に事を起こせと。
だけど、それは場合によると思うわ。今の状況はそうではない場合。
椅子取りゲームのように手をこまねいているだけでは得られる物がどんどん手から零れ落ちていくだけだと思うの」
「……何が言いたい?」
「つまりね。私は成果を得るのを逃したくないの。
あなたのその高次元存在とアクセスする能力。それはこの宇宙の中でも特に稀有な物よ。
私はそれを解析して情報統合思念体に情報を送りたい。
あなたはお人よし過ぎるわ。このゲームを生き残ることはできない。
だったら……、誰かに横取りされたり取り返しがつかなくなる前に……
――私に殺されて」
瞬間。先程絶影が撒き散らしたレンガの破片が槍と形を変えて劉鳳を襲う。
無数に殺到したそれらは彼を串刺しにするはずだったがそうはならなかった。
絶影の二本の触鞭に叩かれ、粉々に砕け散乱する。
「本性を表したな下種な悪党が……死んで後悔しろっ!!」
槍を叩き落した二本の触鞭が今度は少女を襲う。
遊園地を舞台に再び、正義の破壊が吹き荒れた。
少女は襲い掛かる触鞭を身をよじり、跳躍して、時には小さな障壁を発生させて避ける。
暴風のように襲い掛かる絶影の触鞭は、地面を、壁を、遊具を破壊し遊園地に傷跡を増やしていく。
――すごいパワーとスピードだわ。まさかあの距離からの不意打ちが全て避けられるなんて。
あーあ。せっかく時間を掛けて構成したのに全部無駄になっちゃった。
それにしてもすごい出力。あの絶影という具現化された存在がその要点ね。
私達と違い一々体内で演算を行うのではなく、単純な機能を持たせたデバイスを最初に具現化させることで、本体に掛かる負荷を最小限に抑えている。
元々、脳の処理能力に限界がある人間には最適の方法だわ。
逃げる少女を追って絶影と劉鳳も走る。軽妙に攻撃を凌ぎ続ける少女にさらなる攻撃の手を加える。
――攻撃の軌道が単純だからそれを計算するのは容易いけど、
スピードが速すぎて処理を構成情報の構築に回すことができない。それに――
少女の心臓が一つ大きく波打つ。
――フィジカルサポートへの処理にも影響が出始めた。
このままでは彼に討ち取られるのも時間の問題。一旦、離れないと……
触鞭の一撃を柱を盾にやりすごし、離れるように跳躍。壁を蹴って次の一撃を避け地面を転がる。
その後を追うように地面が弾け、さらに少女を触鞭が追い詰める。
色鮮やかに電飾で飾られた遊具らを犠牲に少女は逃げる――逃げる――逃げる。
それを追う正義の狩人、劉鳳。
彼らが通った後は、地面が捲り上がり、街灯は折れ、草花は散り、遊具は壊れると、散々な有様だった。
逃げる少女が一つの施設に駆け込む――ミラーハウス。鏡の迷路。
追う劉鳳はその浅はかさに心の中で侮蔑する。そして決着をつけるべく絶影の真の力を解放した。
「絶影ッ!!」
劉鳳の叫びとともに絶影を抑える拘束具が四散し、新たな身体を再構成する。
封じられた両腕を広げ下半身を長い尻尾と変えたその姿は、華奢な第一形態とは全く異なり力強い竜を思わせるものに近い。
広げた両腕、その脇から見える副腕のその片方――剛なる右拳”伏龍”
ドリルのように回転し唸るそれが身体を離れロケットのように撃ち込まれると、
少女を飲み込んだ鏡の迷路は文字通り爆散し――そこに光が溢れた。
一瞬、ストロボのような強い閃光が劉鳳の目を貫く。
目眩し――!?予想外の出来事に相手からの反撃に備え絶影を構えるがそれは無く、
ただ雨のように砕けた玻璃の破片がさらさらと降り散るのみであった。
――逃げられた。そう結論付けざるを得ない。
あれから周囲を探索したが、結局あの少女――長門有希の姿を見つけることはできなかった。
少女を逃し、毒づく劉鳳であったが今回はそれに破壊は伴われなかった。
もうこの場所で無駄な破壊を起こす必要がなかったというのもあるが、なにより若干の消耗があったからだ。
第一形態まではそうでもなかったが、やはり第二形態ともなると無視できない程度の消耗がある。
今回は短い時間だったので問題はないが、長時間の戦闘は難しい。
それを実感したので、出来うる限りアルター能力は温存しておいた方がよいと判断したのだ。
少女を逃したのは痛恨のミスだが何時までも同じ場所に留まっておくわけにもいかない。
逃した少女は一人ではないのだ。どちらも速やかに発見する必要がある。
劉鳳は最初とは別方向になる西のゲートへと足を向けた。
先程の追走劇の結果そちらの方が近くなったからだ。
油断なく歩く劉鳳。彼の心の中には長門と名乗った少女の言葉が小さな棘となって残っていた。
――自分はこの戦いを生き残れないと。殺す相手を選ぶような余裕は死を近づけるだけだと。
フ、と鼻で笑う。弱くて狡猾な悪党の言いそうなことだ。
だが!自身の正義は絶対!これに殉じ、これに生きる。戯言に貸す耳はない。
確かに油断はあったのかも知れない。事なきを得たがすでに二回も不意打ちを許している。
だが、血迷いこの悪趣味な殺戮遊戯――ギガゾンビの野望に手を貸す程自分は愚かではない。
絶対正義の信念。ギガゾンビ――『悪』の打倒を改めて心に起こすとそこにあった小さな棘を振り払った。
劉鳳の正義は何者にも曲げることはできない。
一方、辛くも窮地を脱した少女――朝倉涼子は森の中にいた。
森といっても本物ではなく人口のそれもファンシーな作り物めいた森の中だ。
伏龍によって破壊されたミラーハウス。それよりいくらか離れた場所にある童話をテーマにしたコースター。その途中にあるトンネルの中である。
――激しい動悸が治まらない。
あの鏡の迷路。あの内のいくつかの鏡の構成情報に手を加え反射の位相を揃えて目眩しにしたまではよかったが、そこが限界だった。
あわよくばあの隙に反撃をと考えていたが、思いのほか身体が悲鳴を上げるのが早かった。
運よく彼に発見されることは免れたが暫くの間は動くことすらままならないだろう。
動悸が激しいだけではない。頭痛に眩暈に嘔吐感。それと発熱。
なんとか肉体を正常化したいが、そもそもその処理を行うためのコンディションが整っていない。
――失敗したなあ。
きっかけはやはりあの防波堤の上で出会った少年の一撃か。あれで何か歯車が狂ったと思う。
もう荒くなった息を殺すこともできない。ただ横になって有機体の自然回復を待つしかない。
もしかしたらこのまま死ぬかもしれない。
――死か。キョンくんや涼宮さんは今頃どうしてるのかしら。それに長門有希。彼女も……
そこで彼女の意識は途切れた。
牧歌的な森の中、プラスチックの小人に囲まれさながら白雪姫のように深い眠りへとついた。
【F-3/遊園地-西ゲート/午前】
【劉鳳@スクライド】
[状態]:やや疲労/正義に燃えている
[装備]:なし
[道具]:支給品一式/斬鉄剣@ルパン三世
真紅似のビスクドール(目撃証言調達のため、遊園地内のファンシーショップで入手)
[思考・状況]
1:長門有希(朝倉涼子)を見つけ出し、断罪する
2:老人(ウォルター)を殺した犯人を見つけ出し、断罪する
3:真紅を捜し、誤解を解く
4:主催者、マーダーなどといった『悪』をこの手で断罪する
5:相手がゲームに乗っていないようなら保護する
6:カズマと決着をつける
7:必ず自分の正義を貫く
[備考]
※朝倉涼子のことを『長門有希』、朝倉の荷物を奪った少年を『野原ひろし』と誤認しています。
※例え相手が無害そうに見える相手でも、多少手荒くなっても油断無く応対します。
【F-4/コースターのトンネル内-白雪姫ゾーン/午前】
【朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:側頭部に傷/高負荷による激しい消耗/昏倒
[装備]:SOS団腕章『団長』@涼宮ハルヒの憂鬱
[道具]:支給品一式(食料無し)/鎖鎌/ターザンロープの切れ端/輸血用血液(×3p)
[思考・状況]:気を失っている。
*時系列順で読む
Back:[[行くんだよ]] Next:[[正義の味方]]
*投下順で読む
Back:[[行くんだよ]] Next:[[正義の味方]]
|109:[[リスキィ・ガール]]|劉鳳|146:[[彼は信頼を築けるか]]|
|109:[[リスキィ・ガール]]|朝倉涼子|141:[[二人の少女 恐怖のノイズ/二人旅]]|
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