「白地図に赤を入れ」(2021/09/26 (日) 11:04:09) の最新版変更点
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*白地図に赤を入れ ◆wuueI8w6Lw
錆びた匂いが満ちていた。
太一の矢傷は、驚いたことにもう治りつつあった。普通、あれだけしっかり突き立てば、しばらく出血が止まらないようなものなのに
縛るまでもなく、血が減っている。右手のひらの傷も、同様だった。
太一が特異体質かと問えばそんなことはないという。傷の治りがよくなるひみつ道具など、聞いたこともない。
念のため二人に持ち物の確認を頼んでみたが、結果は変わらなかった。
「レヴァンティンにそんな能力ねーはずだけどな」
「これもただの鞘だ……と、思う」
考えても仕方がない。未来へ帰った時に、調べてみればいい。
秘密道具もろくにない状況では、他に出来ることはないのだ。まったく、お手伝いロボットが聞いてあきれる。
北へ東へ、地図の中心へ歩を進めるうちに、もうもうと煙が立ち昇る一角を見つけた。火事か何かがあったのは間違いない。
戦闘中に響いた遠雷のような地響きがこれなら、爆発があったか。
まだかなり距離はあるが、見えないことはない。何の変哲もない建物の群……だったのだろう。
煙の上がる部分を望むと、黒ずんだ一軒を中心に、何軒かがドアを失ったり窓ガラスを割られたりしているように見えた。
誰かが爆弾を持ち出してきたと考えるのが自然だ。そしてまだ、いるのかもしれない。
「どうする、二人とも?」
「どうするったって……」
太一がきまり悪そうにヴィータに目をやる。
「行こーぜ。誰かいるかもしれないんだろ?」
「……いいのか?」
己と同じ苗字を持つ、彼女の探し人を思ってか、顔色を伺うような太一の声。
まだ煙も消えていない。第一放送前の死者が、つい今しがたの戦場にいるとは考えにくい。
「いいよ」
煙を見つめたまま、ヴィータは答えた。
「いいんだ」
陽はこんなに眩しいのに、風が妙に肌に寒い。
「うん、それじゃあ行こうか」
わざと声を張り上げて、二人を促した。
レヴァンティンの柄頭に手をかけたヴィータが前へ、鞘を握り締めた太一が続く。
「ヴィータちゃん、いきなり襲い掛かっちゃダメだからね」
「わかってるよ」
集団内では一番気が回ると自負しているドラえもんだが、警戒に当たりやすい後ろのポジションは適していても
奇襲に対抗する防衛手段がない。
かと言って、怪我人で生身の戦いの経験もないであろう太一に任せるわけには行かない。
先頭ポジションにもっとも適したヴィータを後ろに置くのは問題外だ。
最終的にはロボットの硬さで防ぐしかないと覚悟を決めた。だが、せめてショックガンか、空気砲。
瞬間接着銃、空気ピストル程度でも、あれば違うはず。
いや、攻撃に使えるようなものでなくていい。
「ドラえもん」
ひらりマントで十分だ。要は、誰にも攻撃を通すことなく、戦い慣れているらしいヴィータが対応できればそれでいい。
「あればいいな」が目の前を、こちらを一顧だにせず通り過ぎて消えていく。
「ドラえもん!」
「ん……」
顔を上げると、既に足を止めていた太一と目が合った。
「あ、ああ。ごめんごめん。どうかしたのかい?」
「あれ……」
指差された方向に、人が倒れていた。
「道端で大の字って、随分とヨユーな奴だな」
少し距離をとって、ヴィータが倒れた青年を観察している。
見たところ、高校生ほどの年だろう。
服のあちこちが擦れて切れ、体にいくつか褐色の筋も見て取れる。
あの煙の発生源に関わりがあると考えて間違いないのではないか。
三人と同じデイバッグが傍らに同じように倒れこんでいた。
「……死んでる……のか?」
「の割にゃー傷が浅いぞ」
だが骨や神経がやられている可能性も、なくはない。
「オレちょっと見てくる」
そろりと太一が前へ出た。念のためか、鞘は握ったままになっている。
1メートル程度の距離まで近づき、忍び足ほどの速さでゆっくりと周りを回る。
青年が起きる気配はない。
鞘を持ち替えて青年に突き出そうとしてみているが、さすがにつつくまでには至らなかった。
続いて視線をデイバッグに移す。
四次元ポケットと同質の処理を施されているため、見た目から何が入っているか判断するのは難しい。
開いて、さらに直接手を入れて見なければわからない。
そっとデイバッグに伸ばした太一の手首が、掴み止められた。
「てめえ何してんだ!」
太一が胸倉を掴まれる。
ヴィータがレヴァンティンの柄を握った。すんでのところで抜くのは思いとどまったが、いつでも飛び出せるように準備している。
自分には、準備するものが何もない。ただ、とにかく太一に危険が迫ったらすぐに頭突きに走れるように肩を怒らせた。
「し、死んでるのかと思ったんだよ!」
「そーかいそりゃ悪かったな死んでなくてよ!」
地面に座ったままながらも、太一に目一杯睨みを聞かせているのは間違いなくさっきまで動くそぶりも見せなかった青年。
虫の居所が悪かったというより、元々気性が荒いのだろう。どう見ても年下の相手にすさまじい剣幕である。
瞬間的に、橙色のトレーナーを着た小太りのガキ大将が思考を過ぎ去る。
既に青年というかガキ大将は立ち上がっていた。身長差で太一が爪先立ちになる。
「んで何だ!? 人様の荷物に手ェつけようなんてフザケたマネしやがって!」
「わるかったよ、あやまる! あやまるから!」
「ああん!?」
子供の口先だけのその場しのぎ、とでも思ったのだろう。腹が立ってたまりませんと言わんばかりに顔が歪んでいく。
何とかして止めなければ。そうそう、こういう場合ジャイアンはどうしていただろう。
何かヒントが見つかれば、と高性能ロボットの頭脳を絞って、記憶を掘り起こす。
「のび太あー! 殴らせろー!」
最悪だ。
「おいお前!」
頭を抱えそうになった隣で、ヴィータが声を張り上げた。
「太一謝ってるだろ! もうそれくらいにしろよ!」
「ンだと!? 何だてめえ!」
一番やっちゃいけないパターンだった。
「ああっ、ヴィータちゃ……」
「お前こそ何なんだよ、いきなりこんなとこで転がってて! どうしたのか気になるのは当たり前だろ!?」
「人の荷物を勝手に取ろうとしてそれか!」
ここでいさかいを起こすのはよくない。会った相手とは、できるだけ協力体制を取れるようにしなければ。
なんとかなだめなければならないのだが。
ともかく声をかけないことには始まらない。
「ああもう、二人ともいい加減にしてよ!」
「うん!?」
「ああ!?」
二人分の三白眼が同時に突き刺さる。思わず腰が引けたが、ここで引き下がってしまっては止められるものも止められない。
「喧嘩なんかしてたって……」
「うるせー!」
「タヌキはすっこんでろ!」
タヌ……?
「荷物取ろうとしたんじゃねーっての! 心配して見に行ったぐらいでいちいちうるせーな!」
「どう見ても取ろうとしてたじゃねえか! 心配してたのは俺が起きねえかどうかだろてめえいい加減にしろ!」
青年が何か投げ捨てたようだったが、もう構うものか。ネコ型をタヌキと間違えるなんて、侮辱にも程がある。
「ダレがタヌキだ~~~~~~~~~~~~~!!」
「てめえだクソダルマ! 鏡とか知らねえのか!」
「ダ・ダ、ダ……ダルマと言ったな~~~~~~! 僕は22世紀のネコ型ロボットだぞ! タヌキでもダルマでもないやい!」
「あーもう横からうっせーな! 大体前から思ってたけど、お前どう見てもタヌキだろ!」
「ヴィ……ヴィータちゃんまで! うううううううううう僕の自尊心がボロボロだ! なんて人だきみたちは!
そんなに僕をコケにして楽しいのか! 鬼! アクマ! 取り消せ! 今すぐ取り消せーっ!」
「あ、あのさ……」
「ああ? ヴィータぁ?」
「あたしの名前だ! 文句あるか!」
「僕にあやまる気はないっていうんだね! きみたちがそこまで礼儀のなってない人間だとは思わなかった! まったく親の顔が見てみたい!」
『いねェよそんなモン!』
「……ケッ。どっかで聞いたことあると思ったぜ。なのはがぼろっと言ってたんだ……てめえ、なのはを知ってんのか?」
「なのは!? なのはの知り合いだったら最初っからそう言えよ!」
「ッてめえに言う義理がねえだろ! なんでわざわざ俺がなのはの話を!」
「ンだとこのー!」
「二人で勝手に意気投合してるんじゃない! 僕の話も聞けー!」
「なあ! みんな!」
ふと無理やり張り上げた声が聞こえて、そちらの方を見る。
顔を土まみれにした太一が、むくれた表情で肩を怒らせて立っている。
「……あれ。太一、どーしたんだその顔」
「何してんだお前……ああ、荷物のことはもういい。気に入らねえけど忘れてやらあ」
よくわからないが、いつの間にか丸く収まっているらしい。
だが、そうけろりとした顔をされるのも、なんとなく腑に落ちない。元はといえば、この二人の喧嘩が原因だったのに。
しかし確かに、腹を立ててばかりでも仕方がない。後できっちり問い詰めることにして、この場はひとまず忘れることにしよう。
「なんなんだ、アレ」
「俺に聞くなよ」
それで何なんだお前ら、と青年がふてくされた表情でぶらぶらと立っている。
そりゃこっちのセリフだ、と腕組みをして身長差を埋めようと突っ張るヴィータ。
火にかけたやかんのような空気はどこへやら。
「まったく、二人ともセキニンってもんがないんだから。ねえ太一くん」
ため息をついて見上げると、擦り傷を土埃でコーティングしたものすごい顔で睨みつけられた。
場所は特に移らない。カズマが倒れていた場所で、物陰にこころもち身を隠すようにした以外は、基本的に屋外であった。
建物の散在はあるが、見通しは悪くない。誰かが来たら気づくだろう。
それと、シグナムもまだ近くにいるはずなのだ。
「そこ、もうすぐ禁止エリアなんだけどさ、誰か動けなさそうな人、見なかった?」
「ああ……そういやあの仮面、ンなこと言ってたような気がすんな」
建物に寄りかかったカズマからは、いねえと思うけどな、と気のない答えが返ってくる。
視線の集中を浴びて、申し訳程度に砕けて煤けた一角に顔を向けた。
「少なくとも、身動き取れないようなドジがいる気配はなかったぜ」
「おい、こっち見てしゃべれよ」
「いいじゃねえか別に」
鬱陶しげにヴィータの方向を払う。
うなり声が聞こえた気がしたが、構わず話を続けよう。
「で、なんであんなとこに倒れてたんだい?」
「ん、まあ、色々あってな」
きまり悪げにあさってのほうを向く。
「色々って何だよ」
閉じたままの右目ではヴィータを見られないのか、左目でも視界に移るように首を傾けた。
「前から気に食わねえ奴がいたから、ここらでボコってやろうと思って喧嘩仕掛けてたら、なんか建物が爆発して吹っ飛ばされたんだよ」
「うわ、何だそりゃ」
「ンだコラ」
ほうっておくとすぐ額をぶつけ合わせそうなヴィータに、多くを喋らせるのは得策ではない。
「ボコ……って、カズマさんそれ、その人……」
太一が意図した内容に気づいたらしく、カズマの顔が不機嫌そうにしわを増やす。
動物的な勘とでも言うのだろうか。まったくのバカでもないらしい。
「気に入らねえからブッ飛ばす。生き延びようがくたばろうが、知ったことか。それよりてめえ、俺が人殺しに見えるってのか」
「あ、いや、そういうわけじゃないけど」
「状況が状況だからさ、みんな不安なんだよ」
「そ、そうそう。うん」
また胸倉を掴み上げるかと思いきや、それ以上追及する気はなかったのか、面白くなさそうな顔でまたあらぬ方へ目線を移していた。
「ところでカズマ、爆はつ」
「呼び捨てにすんじゃねえ」
「……カズマくん、爆発の原因なんかわかる?」
「知るか」
それはそうだ。
「まー爆弾とかじゃあなさそうだな」
「なんだお前、わかるのか?」
「まあな。爆弾の爆発ってのあ何度か見たことがある」
答えたカズマの瞳の焦点が、ここではないどこかへ離れていった。
「おい、どうした?」
「……いや、何でもねえ」
すぐに表情は消えた。聞いて教えてくれるような相手でもない。
「で、相手の人は?」
「知らねえな。吹っ飛ばされてそのままだったからな」
カズマがこの通りなら、カズマと喧嘩できるような相手が重傷で動けないということもないだろう。
そもそも「前から」気に食わねえ奴、なのだ。カズマと同類と考えるのが妥当で、そうなるとうかつな遭遇はまた面倒なことになる。
「じゃあ、もうすぐ禁止指定だし、そこの探索はしなくていいね」
そう締めくくると、子供二人は頷いて応えた。
「んじゃああたしの質問だ。なのはは今どうしてる?」
カズマはうんざりしている様子だが、聞けることは聞いておくに越したことはない。
彼には悪いが、途中で打ち切ろうとしたらまたヴィータに挑発してもらえばいいだろう。
「さあな。森の方にいたときに別れたっきりなんでね」
「どこへ行くって?」
「市街地っつってた。行くのか?」
「当たり前だろ!」
ヴィータの目元の陰が晴れている。
「あ、なのはだけか? フェイトは?」
「誰だそいつ」
「えっと……金色の髪をこうやって」
と、ヴィータは両手を握ってこめかみのところへ持ってくる。
「頭の横でふたつ束ねた、なのはぐらいの子なんだけど」
と、その動作をカズマはなんだか複雑な表情で見ていた。ゆっくりと首を振る。
「いや、知らねえ」
「そっか……でも、なのははいるんだな!?」
「今言ったばっかりだろ」
「ああ、そっか……」
目に輝きを取り戻したヴィータにいささか引き気味のカズマが、ふいと視線を泳がせた際にこちらの姿が目に留まったらしい。
「おい」
「ん? なんだいカズマくん」
「さっきからずっと気になってたんだけどよ、お前何なんだ?」
無神経な言い草に、多少気分を害さないでもなかったが、まあ確かにドラえもんは22世紀の人間でなければ縁のないフォルムだろう。
「誰かのアルターか何かか?」
「アルター? なんだそれ」
「知らねえなら別にいい」
「なんだよ……」
何か違う心当たりがあるらしい。
「それじゃあ改めまして。ぼくドラえもんです。22世紀のネコ型ロボッ」
「ネコだあ?」
言い終わる前に、カズマの疑問符が挙がってきた。
太一が目を見開いて振り返る。
「ちょっと待ってええええええ!」
「あん!? ど、どうしたんだよ!」
ヴィータが弾かれたように立ち上がる。
叫びはカズマに当てていたようだが、その意図が届く前に、カズマは次の言葉を口に載せている。
「やっぱどう見てもタヌ
※
「まったく……状況が状況だから今回は我慢するけど、ぼくはネコ型なんだからね!」
三者三様にうんざりした顔で座っている。まるで、ドラえもんが一番悪いとでも言いたげな様子だった。
悪いのは自分ではなく、自分をネコだと認めないあの不良の方なのに、どうしてこんな仕打ちに遭うのだろうか。
「うん……ごめんな、ドラえもん」
辛うじて太一がすまなそうな顔を見せたきり。
我慢するといった手前これ以上は騒がないが、もう少し何かあってもいいのではないかと思わないこともない。
「そうそう、カズマさんは、誰か探してる人とかいるの」
「ん」
空気を換えるべく問いを投げかけられた顔に、ひびが割れた。
「……ナイフを持ったガタイのいい奴だ。心当たりねえか」
「? なんだ、それだけか?」
「ああ。知ってるのか知らねえのか」
「オレ、女の人なら、知ってる」
「なんだと!?」
カズマが跳ね起きた。両腕が、逃がすまいと太一をがっちり固定する。
「誰だ! どこへ行った!? 今どこにいる!」
「お、おい、やめろよ!」
ヴィータが飛びつくが、腕力と身長の差は揺るがしようがない。ぶら下がるのが関の山だった。
「で……でもナイフ持ってるかどうかは知らないし……!」
言わなければ代わりに殺すと言わんばかりの剣幕に、太一は必死に対抗する。
「その人、もう死んじまった……」
腕が止まる。
「オレとドラえもんを助けるためにさ……」
動かない。
ちらと目尻で見ると、刃物の先のような表情のまま、カズマは止まっていた。
ヴィータを跳ね飛ばし、舌打ちをして太一を放り投げる。
「なんなんだよお前!」
悪態をつきながら、ヴィータが着地。
「なあ、カズマさん。そいつ……見つけたら、どうするんだ」
「さあな……どうすっかな。少なくとも」
また、遥か遠くを見た。
「ただじゃおかねえ」
触れるもの全てを切り裂く視線。焦りと苛立ちと怨念で粗く研がれた敵意が、少しだけ身をもたげたように見えた。
誰か死んだのだろう。
そう、ヴィータにとっての八神はやてのような誰かが。
また、面白くなさそうに壁に背を預けていた。
「おい、お前」
「なんだよ」
そうでなければ、この向こう気の強い少女が、口を開けば衝突必至の相手の前に立つ理由がない。
「いっしょに行こう。なのはの友達なら、放っておくわけにはいかねーからな」
「いいよ俺は」
「よくねーよ。いくぞ、ほら」
少女の右手が突き出される。
歩くのを手伝ってやるからついてこい、と言うように。
手袋に包まれたその白い手を、カズマはしばらく睨みつけていた。
「わかったよ、行きゃいいんだろ行きゃ」
両手をズボンのポケットに突っ込み、カズマは寄りかかっていた壁から背を離した。
二人並んで、地図の中心部付近――市街地へ向けて歩き出す。
昼下がりの太陽が、歩き出す二人の影をくっきりと描き出している。
「はあ……やれやれ、先が思いやられるなあ」
「んー、ま……何とかなるって」
太一が先を行く二人とこちらを見比べて、苦く笑った。
【E-2東部 1日目・午後】
方針:市街地へなのはを探しに行く
【八神太一@デジモンアドベンチャー】
[状態]:右腕の矢傷(処置済・アヴァロンの効果で時間とともに小回復)
[装備]:アヴァロン@Fate/stay night
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
ヤマトやルイズも気がかり。
基本:これ以上犠牲を増やさないために行動する。
[備考]
※アヴァロンによる自然治癒効果に気付いていません。
※第一回放送の禁止エリアはヴィータが忘れていたのでまだ知りません
【ドラえもん@ドラえもん】
[状態]:中程度のダメージ
[装備]:無し
[道具]:支給品一式×2、"THE DAY OF SAGITTARIUS III"ゲームCD@涼宮ハルヒの憂鬱
[思考・状況]
基本:ひみつ道具と仲間を集めてしずかの仇を取る。ギガゾンビを何とかする。
【ヴィータ@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:発熱(経過良好)、疲労/騎士甲冑装備
[装備]:レヴァンティン@魔法少女リリカルなのはA's(残弾2/3)北高の制服@涼宮ハルヒの憂鬱(騎士甲冑解除時)
[道具]:なし
[思考・状況]
自分が信じるはやての想いに従い、シグナムや殺人者を止める。
[備考]
※第一回放送は一部の死者の名のみ、第二放送は聞き逃しています。
【カズマ@スクライド】
[状態]:中疲労、全身中程度の負傷(打身・裂傷)
[装備]:なし
[道具]:高性能デジタルカメラ(記憶媒体はSDカード)、携帯電話(各施設の番号が登録済み)、かなみのリボン@スクライド、支給品一式
:鶴屋の巾着袋(支給品一式と予備の食料・水が入っている)ボディブレード
[思考・状況]
1:なのはが心配というわけではないが、子供たちとタヌキをつれて市街地へ。
2:かなみと鶴屋を殺した奴とか劉鳳とかギガゾンビとかもう全員まとめてぶっ飛ばす。
*時系列順で読む
Back:[[Wind ~a breath of cure~]] Next:[[ヒステリックサイン]]
*投下順で読む
Back:[[「ミステリックサイン」]] Next:[[響け終焉の笛]]
|170:[[――は貴方の/あたしの中にいる]]|八神太一|191:[[避けてゆけぬBattlefield]]|
|170:[[――は貴方の/あたしの中にいる]]|ドラえもん|191:[[避けてゆけぬBattlefield]]|
|170:[[――は貴方の/あたしの中にいる]]|ヴィータ|191:[[避けてゆけぬBattlefield]]|
|171:[[「聖少女領域」(後編)]]|カズマ|191:[[避けてゆけぬBattlefield]]|
*白地図に赤を入れ ◆wuueI8w6Lw
錆びた匂いが満ちていた。
太一の矢傷は、驚いたことにもう治りつつあった。普通、あれだけしっかり突き立てば、しばらく出血が止まらないようなものなのに
縛るまでもなく、血が減っている。右手のひらの傷も、同様だった。
太一が特異体質かと問えばそんなことはないという。傷の治りがよくなるひみつ道具など、聞いたこともない。
念のため二人に持ち物の確認を頼んでみたが、結果は変わらなかった。
「レヴァンティンにそんな能力ねーはずだけどな」
「これもただの鞘だ……と、思う」
考えても仕方がない。未来へ帰った時に、調べてみればいい。
秘密道具もろくにない状況では、他に出来ることはないのだ。まったく、お手伝いロボットが聞いてあきれる。
北へ東へ、地図の中心へ歩を進めるうちに、もうもうと煙が立ち昇る一角を見つけた。火事か何かがあったのは間違いない。
戦闘中に響いた遠雷のような地響きがこれなら、爆発があったか。
まだかなり距離はあるが、見えないことはない。何の変哲もない建物の群……だったのだろう。
煙の上がる部分を望むと、黒ずんだ一軒を中心に、何軒かがドアを失ったり窓ガラスを割られたりしているように見えた。
誰かが爆弾を持ち出してきたと考えるのが自然だ。そしてまだ、いるのかもしれない。
「どうする、二人とも?」
「どうするったって……」
太一がきまり悪そうにヴィータに目をやる。
「行こーぜ。誰かいるかもしれないんだろ?」
「……いいのか?」
己と同じ苗字を持つ、彼女の探し人を思ってか、顔色を窺うような太一の声。
まだ煙も消えていない。第一放送前の死者が、つい今しがたの戦場にいるとは考えにくい。
「いいよ」
煙を見つめたまま、ヴィータは答えた。
「いいんだ」
陽はこんなに眩しいのに、風が妙に肌に寒い。
「うん、それじゃあ行こうか」
わざと声を張り上げて、二人を促した。
レヴァンティンの柄頭に手をかけたヴィータが前へ、鞘を握り締めた太一が続く。
「ヴィータちゃん、いきなり襲い掛かっちゃダメだからね」
「わかってるよ」
集団内では一番気が回ると自負しているドラえもんだが、警戒に当たりやすい後ろのポジションは適していても
奇襲に対抗する防衛手段がない。
かと言って、怪我人で生身の戦いの経験もないであろう太一に任せるわけには行かない。
先頭ポジションにもっとも適したヴィータを後ろに置くのは問題外だ。
最終的にはロボットの硬さで防ぐしかないと覚悟を決めた。だが、せめてショックガンか、空気砲。
瞬間接着銃、空気ピストル程度でも、あれば違うはず。
いや、攻撃に使えるようなものでなくていい。
「ドラえもん」
ひらりマントで十分だ。要は、誰にも攻撃を通すことなく、戦い慣れているらしいヴィータが対応できればそれでいい。
「あればいいな」が目の前を、こちらを一顧だにせず通り過ぎて消えていく。
「ドラえもん!」
「ん……」
顔を上げると、既に足を止めていた太一と目が合った。
「あ、ああ。ごめんごめん。どうかしたのかい?」
「あれ……」
指差された方向に、人が倒れていた。
「道端で大の字って、随分とヨユーな奴だな」
少し距離をとって、ヴィータが倒れた青年を観察している。
見たところ、高校生ほどの年だろう。
服のあちこちが擦れて切れ、体にいくつか褐色の筋も見て取れる。
あの煙の発生源に関わりがあると考えて間違いないのではないか。
三人と同じデイバッグが傍らに同じように倒れこんでいた。
「……死んでる……のか?」
「の割にゃー傷が浅いぞ」
だが骨や神経がやられている可能性も、なくはない。
「オレちょっと見てくる」
そろりと太一が前へ出た。念のためか、鞘は握ったままになっている。
1メートル程度の距離まで近づき、忍び足ほどの速さでゆっくりと周りを回る。
青年が起きる気配はない。
鞘を持ち替えて青年に突き出そうとしてみているが、さすがにつつくまでには至らなかった。
続いて視線をデイバッグに移す。
四次元ポケットと同質の処理を施されているため、見た目から何が入っているか判断するのは難しい。
開いて、さらに直接手を入れて見なければわからない。
そっとデイバッグに伸ばした太一の手首が、掴み止められた。
「てめえ何してんだ!」
太一が胸倉を掴まれる。
ヴィータがレヴァンティンの柄を握った。すんでのところで抜くのは思いとどまったが、いつでも飛び出せるように準備している。
自分には、準備するものが何もない。ただ、とにかく太一に危険が迫ったらすぐに頭突きに走れるように肩を怒らせた。
「し、死んでるのかと思ったんだよ!」
「そーかいそりゃ悪かったな死んでなくてよ!」
地面に座ったままながらも、太一に目一杯睨みを聞かせているのは間違いなくさっきまで動くそぶりも見せなかった青年。
虫の居所が悪かったというより、元々気性が荒いのだろう。どう見ても年下の相手にすさまじい剣幕である。
瞬間的に、橙色のトレーナーを着た小太りのガキ大将が思考を過ぎ去る。
既に青年というかガキ大将は立ち上がっていた。身長差で太一が爪先立ちになる。
「んで何だ!? 人様の荷物に手ェつけようなんてフザケたマネしやがって!」
「わるかったよ、あやまる! あやまるから!」
「ああん!?」
子供の口先だけのその場しのぎ、とでも思ったのだろう。腹が立ってたまりませんと言わんばかりに顔が歪んでいく。
何とかして止めなければ。そうそう、こういう場合ジャイアンはどうしていただろう。
何かヒントが見つかれば、と高性能ロボットの頭脳を絞って、記憶を掘り起こす。
「のび太あー! 殴らせろー!」
最悪だ。
「おいお前!」
頭を抱えそうになった隣で、ヴィータが声を張り上げた。
「太一謝ってるだろ! もうそれくらいにしろよ!」
「ンだと!? 何だてめえ!」
一番やっちゃいけないパターンだった。
「ああっ、ヴィータちゃ……」
「お前こそ何なんだよ、いきなりこんなとこで転がってて! どうしたのか気になるのは当たり前だろ!?」
「人の荷物を勝手に取ろうとしてそれか!」
ここでいさかいを起こすのはよくない。会った相手とは、できるだけ協力体制を取れるようにしなければ。
なんとかなだめなければならないのだが。
ともかく声をかけないことには始まらない。
「ああもう、二人ともいい加減にしてよ!」
「うん!?」
「ああ!?」
二人分の三白眼が同時に突き刺さる。思わず腰が引けたが、ここで引き下がってしまっては止められるものも止められない。
「喧嘩なんかしてたって……」
「うるせー!」
「タヌキはすっこんでろ!」
タヌ……?
「荷物取ろうとしたんじゃねーっての! 心配して見に行ったぐらいでいちいちうるせーな!」
「どう見ても取ろうとしてたじゃねえか! 心配してたのは俺が起きねえかどうかだろてめえいい加減にしろ!」
青年が何か投げ捨てたようだったが、もう構うものか。ネコ型をタヌキと間違えるなんて、侮辱にも程がある。
「ダレがタヌキだ~~~~~~~~~~~~~!!」
「てめえだクソダルマ! 鏡とか知らねえのか!」
「ダ・ダ、ダ……ダルマと言ったな~~~~~~! 僕は22世紀のネコ型ロボットだぞ! タヌキでもダルマでもないやい!」
「あーもう横からうっせーな! 大体前から思ってたけど、お前どう見てもタヌキだろ!」
「ヴィ……ヴィータちゃんまで! うううううううううう僕の自尊心がボロボロだ! なんて人だきみたちは!
そんなに僕をコケにして楽しいのか! 鬼! アクマ! 取り消せ! 今すぐ取り消せーっ!」
「あ、あのさ……」
「ああ? ヴィータぁ?」
「あたしの名前だ! 文句あるか!」
「僕にあやまる気はないっていうんだね! きみたちがそこまで礼儀のなってない人間だとは思わなかった! まったく親の顔が見てみたい!」
『いねェよそんなモン!』
「……ケッ。どっかで聞いたことあると思ったぜ。なのはがぼろっと言ってたんだ……てめえ、なのはを知ってんのか?」
「なのは!? なのはの知り合いだったら最初っからそう言えよ!」
「ッてめえに言う義理がねえだろ! なんでわざわざ俺がなのはの話を!」
「ンだとこのー!」
「二人で勝手に意気投合してるんじゃない! 僕の話も聞けー!」
「なあ! みんな!」
ふと無理やり張り上げた声が聞こえて、そちらの方を見る。
顔を土まみれにした太一が、むくれた表情で肩を怒らせて立っている。
「……あれ。太一、どーしたんだその顔」
「何してんだお前……ああ、荷物のことはもういい。気に入らねえけど忘れてやらあ」
よくわからないが、いつの間にか丸く収まっているらしい。
だが、そうけろりとした顔をされるのも、なんとなく腑に落ちない。元はといえば、この二人の喧嘩が原因だったのに。
しかし確かに、腹を立ててばかりでも仕方がない。後できっちり問い詰めることにして、この場はひとまず忘れることにしよう。
「なんなんだ、アレ」
「俺に聞くなよ」
それで何なんだお前ら、と青年がふてくされた表情でぶらぶらと立っている。
そりゃこっちのセリフだ、と腕組みをして身長差を埋めようと突っ張るヴィータ。
火にかけたやかんのような空気はどこへやら。
「まったく、二人ともセキニンってもんがないんだから。ねえ太一くん」
ため息をついて見上げると、擦り傷を土埃でコーティングしたものすごい顔で睨みつけられた。
場所は特に移らない。カズマが倒れていた場所で、物陰にこころもち身を隠すようにした以外は、基本的に屋外であった。
建物の散在はあるが、見通しは悪くない。誰かが来たら気づくだろう。
それと、シグナムもまだ近くにいるはずなのだ。
「そこ、もうすぐ禁止エリアなんだけどさ、誰か動けなさそうな人、見なかった?」
「ああ……そういやあの仮面、ンなこと言ってたような気がすんな」
建物に寄りかかったカズマからは、いねえと思うけどな、と気のない答えが返ってくる。
視線の集中を浴びて、申し訳程度に砕けて煤けた一角に顔を向けた。
「少なくとも、身動き取れないようなドジがいる気配はなかったぜ」
「おい、こっち見てしゃべれよ」
「いいじゃねえか別に」
鬱陶しげにヴィータの方向を払う。
うなり声が聞こえた気がしたが、構わず話を続けよう。
「で、なんであんなとこに倒れてたんだい?」
「ん、まあ、色々あってな」
きまり悪げにあさってのほうを向く。
「色々って何だよ」
閉じたままの右目ではヴィータを見られないのか、左目でも視界に移るように首を傾けた。
「前から気に食わねえ奴がいたから、ここらでボコってやろうと思って喧嘩仕掛けてたら、なんか建物が爆発して吹っ飛ばされたんだよ」
「うわ、何だそりゃ」
「ンだコラ」
ほうっておくとすぐ額をぶつけ合わせそうなヴィータに、多くを喋らせるのは得策ではない。
「ボコ……って、カズマさんそれ、その人……」
太一が意図した内容に気づいたらしく、カズマの顔が不機嫌そうにしわを増やす。
動物的な勘とでも言うのだろうか。まったくのバカでもないらしい。
「気に入らねえからブッ飛ばす。生き延びようがくたばろうが、知ったことか。それよりてめえ、俺が人殺しに見えるってのか」
「あ、いや、そういうわけじゃないけど」
「状況が状況だからさ、みんな不安なんだよ」
「そ、そうそう。うん」
また胸倉を掴み上げるかと思いきや、それ以上追及する気はなかったのか、面白くなさそうな顔でまたあらぬ方へ目線を移していた。
「ところでカズマ、爆はつ」
「呼び捨てにすんじゃねえ」
「……カズマくん、爆発の原因なんかわかる?」
「知るか」
それはそうだ。
「まー爆弾とかじゃあなさそうだな」
「なんだお前、わかるのか?」
「まあな。爆弾の爆発ってのあ何度か見たことがある」
答えたカズマの瞳の焦点が、ここではないどこかへ離れていった。
「おい、どうした?」
「……いや、何でもねえ」
すぐに表情は消えた。聞いて教えてくれるような相手でもない。
「で、相手の人は?」
「知らねえな。吹っ飛ばされてそのままだったからな」
カズマがこの通りなら、カズマと喧嘩できるような相手が重傷で動けないということもないだろう。
そもそも「前から」気に食わねえ奴、なのだ。カズマと同類と考えるのが妥当で、そうなるとうかつな遭遇はまた面倒なことになる。
「じゃあ、もうすぐ禁止指定だし、そこの探索はしなくていいね」
そう締めくくると、子供二人は頷いて応えた。
「んじゃああたしの質問だ。なのはは今どうしてる?」
カズマはうんざりしている様子だが、聞けることは聞いておくに越したことはない。
彼には悪いが、途中で打ち切ろうとしたらまたヴィータに挑発してもらえばいいだろう。
「さあな。森の方にいたときに別れたっきりなんでね」
「どこへ行くって?」
「市街地っつってた。行くのか?」
「当たり前だろ!」
ヴィータの目元の陰が晴れている。
「あ、なのはだけか? フェイトは?」
「誰だそいつ」
「えっと……金色の髪をこうやって」
と、ヴィータは両手を握ってこめかみのところへ持ってくる。
「頭の横でふたつ束ねた、なのはぐらいの子なんだけど」
と、その動作をカズマはなんだか複雑な表情で見ていた。ゆっくりと首を振る。
「いや、知らねえ」
「そっか……でも、なのははいるんだな!?」
「今言ったばっかりだろ」
「ああ、そっか……」
目に輝きを取り戻したヴィータにいささか引き気味のカズマが、ふいと視線を泳がせた際にこちらの姿が目に留まったらしい。
「おい」
「ん? なんだいカズマくん」
「さっきからずっと気になってたんだけどよ、お前何なんだ?」
無神経な言い草に、多少気分を害さないでもなかったが、まあ確かにドラえもんは22世紀の人間でなければ縁のないフォルムだろう。
「誰かのアルターか何かか?」
「アルター? なんだそれ」
「知らねえなら別にいい」
「なんだよ……」
何か違う心当たりがあるらしい。
「それじゃあ改めまして。ぼくドラえもんです。22世紀のネコ型ロボッ」
「ネコだあ?」
言い終わる前に、カズマの疑問符が挙がってきた。
太一が目を見開いて振り返る。
「ちょっと待ってええええええ!」
「あん!? ど、どうしたんだよ!」
ヴィータが弾かれたように立ち上がる。
叫びはカズマに当てていたようだが、その意図が届く前に、カズマは次の言葉を口に乗せている。
「やっぱどう見てもタヌ
※
「まったく……状況が状況だから今回は我慢するけど、ぼくはネコ型なんだからね!」
三者三様にうんざりした顔で座っている。まるで、ドラえもんが一番悪いとでも言いたげな様子だった。
悪いのは自分ではなく、自分をネコだと認めないあの不良の方なのに、どうしてこんな仕打ちに遭うのだろうか。
「うん……ごめんな、ドラえもん」
辛うじて太一がすまなそうな顔を見せたきり。
我慢するといった手前これ以上は騒がないが、もう少し何かあってもいいのではないかと思わないこともない。
「そうそう、カズマさんは、誰か探してる人とかいるの」
「ん」
空気を換えるべく問いを投げかけられた顔に、ひびが割れた。
「……ナイフを持ったガタイのいい奴だ。心当たりねえか」
「? なんだ、それだけか?」
「ああ。知ってるのか知らねえのか」
「オレ、女の人なら、知ってる」
「なんだと!?」
カズマが跳ね起きた。両腕が、逃がすまいと太一をがっちり固定する。
「誰だ! どこへ行った!? 今どこにいる!」
「お、おい、やめろよ!」
ヴィータが飛びつくが、腕力と身長の差は揺るがしようがない。ぶら下がるのが関の山だった。
「で……でもナイフ持ってるかどうかは知らないし……!」
言わなければ代わりに殺すと言わんばかりの剣幕に、太一は必死に対抗する。
「その人、もう死んじまった……」
腕が止まる。
「オレとドラえもんを助けるためにさ……」
動かない。
ちらと目尻で見ると、刃物の先のような表情のまま、カズマは止まっていた。
ヴィータを跳ね飛ばし、舌打ちをして太一を放り投げる。
「なんなんだよお前!」
悪態をつきながら、ヴィータが着地。
「なあ、カズマさん。そいつ……見つけたら、どうするんだ」
「さあな……どうすっかな。少なくとも」
また、遥か遠くを見た。
「ただじゃおかねえ」
触れるもの全てを切り裂く視線。焦りと苛立ちと怨念で粗く研がれた敵意が、少しだけ身をもたげたように見えた。
誰か死んだのだろう。
そう、ヴィータにとっての八神はやてのような誰かが。
また、面白くなさそうに壁に背を預けていた。
「おい、お前」
「なんだよ」
そうでなければ、この向こう気の強い少女が、口を開けば衝突必至の相手の前に立つ理由がない。
「いっしょに行こう。なのはの友達なら、放っておくわけにはいかねーからな」
「いいよ俺は」
「よくねーよ。いくぞ、ほら」
少女の右手が突き出される。
歩くのを手伝ってやるからついてこい、と言うように。
手袋に包まれたその白い手を、カズマはしばらく睨みつけていた。
「わかったよ、行きゃいいんだろ行きゃ」
両手をズボンのポケットに突っ込み、カズマは寄りかかっていた壁から背を離した。
二人並んで、地図の中心部付近――市街地へ向けて歩き出す。
昼下がりの太陽が、歩き出す二人の影をくっきりと描き出している。
「はあ……やれやれ、先が思いやられるなあ」
「んー、ま……何とかなるって」
太一が先を行く二人とこちらを見比べて、苦く笑った。
【E-2東部 1日目・午後】
方針:市街地へなのはを探しに行く
【八神太一@デジモンアドベンチャー】
[状態]:右腕の矢傷(処置済・アヴァロンの効果で時間とともに小回復)
[装備]:アヴァロン@Fate/stay night
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
ヤマトやルイズも気がかり。
基本:これ以上犠牲を増やさないために行動する。
[備考]
※アヴァロンによる自然治癒効果に気付いていません。
※第一回放送の禁止エリアはヴィータが忘れていたのでまだ知りません
【ドラえもん@ドラえもん】
[状態]:中程度のダメージ
[装備]:無し
[道具]:支給品一式×2、"THE DAY OF SAGITTARIUS III"ゲームCD@涼宮ハルヒの憂鬱
[思考・状況]
基本:ひみつ道具と仲間を集めてしずかの仇を取る。ギガゾンビを何とかする。
【ヴィータ@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:発熱(経過良好)、疲労/騎士甲冑装備
[装備]:レヴァンティン@魔法少女リリカルなのはA's(残弾2/3)北高の制服@涼宮ハルヒの憂鬱(騎士甲冑解除時)
[道具]:なし
[思考・状況]
自分が信じるはやての想いに従い、シグナムや殺人者を止める。
[備考]
※第一回放送は一部の死者の名のみ、第二放送は聞き逃しています。
【カズマ@スクライド】
[状態]:中疲労、全身中程度の負傷(打身・裂傷)
[装備]:なし
[道具]:高性能デジタルカメラ(記憶媒体はSDカード)、携帯電話(各施設の番号が登録済み)、かなみのリボン@スクライド、支給品一式
:鶴屋の巾着袋(支給品一式と予備の食料・水が入っている)ボディブレード@クレヨンしんちゃん
[思考・状況]
1:なのはが心配というわけではないが、子供たちとタヌキをつれて市街地へ。
2:かなみと鶴屋を殺した奴とか劉鳳とかギガゾンビとかもう全員まとめてぶっ飛ばす。
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