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「銃撃女ラジカルレヴィさん(前編)」(2022/02/27 (日) 18:18:31) の最新版変更点
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*銃撃女ラジカルレヴィさん(前編) ◆2kGkudiwr6
「…………」
言葉も無く、それぞれの武器を構えながら二人が待ち構え、一人が歩く。
例えるならガンマンの早撃ちだ。
曲がり角から姿を現すと同時に二人の魔法少女は己が武器を相手へと突きつけ――
「レイジングハート!」
『フェイト!』
――相手の姿と響いた声に、動きを止めた。
「あれ、いつの間に病院に帰ってきたの?」
「てめぇこそ、今までどこふらついてたんだ?」
「カズマさん、この人を知ってるんですか?」
「ほとんど知らねえよ。三十分も一緒にいなかった」
『私から説明します。凛とフェイト、両方を詳しく知っているのは私だけのようですから』
状況を把握したのか、要点をかい摘まんだ内容をレイジングハートが話し始めた。
金髪の少女はフェイトといい、高町なのはの親友であること。
レイジングハートは凛に支給され、今は彼女をマスターと定めていること。
要するに、相手に対して警戒する必要は無い、そういう内容だ。
「そ。なら安心ね」
「はい。よろしくお願いしますね、凛さん」
そして、凛とフェイトはあっさりと信じ込んだ。
基本的に凛はレイジングハートを信用しているし、本人は自覚していないがかなりのお人よしでもある。
それはフェイトも同じ。レイジングハートが信用しているなら悪い人ではないという論理は、彼女の中では自然なものだ。
……だが、カズマはそうもいかなかった。
「どうしたんですか?」
「あいにく、俺はあいつと深く知り合ったわけじゃねえ、一言二言話したくらいだ。
はっきり言ってほとんど他人……むしろ初対面であいつを信頼してるお前の方がおかしいんじゃねえか?」
「おかしくないんです。嫌な人にレイジングハートがあんなボロボロになるまで手を貸すはずがありません」
カズマはまあいいけどよ、などと呟いて構えを解く。それだけ。
無差別に破壊行為を繰り返す犯罪者だなどと情報操作された経験のあるカズマにとって、
自分の見たものこそが絶対の信頼の置けるもの。
あらゆる判断は自分で付ける。それがカズマのやり方である。
もっとも、フェイトの態度はなのはの友人という理由であっさり信用するカズマと同じなのだが、
本人は認めたがらないに違いない。
「それより、水銀燈を見なかった?」
「水銀燈……誰ですか?」
「あ、えっと……どっちの姿を説明すればいいのかな……」
「……よくわかんねェが、ここにぶっ倒れてる人形のことか?」
カズマが指差した先を、凛はしっかりと見た。
表情は変わらなかった。それでも、その瞳は明らかに揺らいでいた。
そこには、まるでよく知る少年のように、正義の味方を目指した男と。
自分をさんざん利用した人形の亡骸がそこにはある。
「…………」
喉から出かかった言葉を、凛は慌てて飲み込んだ。
劉鳳に対して謝ってもいいだろう。礼を言ってもおかしくはない。
水銀燈を罵ってもいいし、八つ当たりでその遺骸を砕いてもいい。
実際、凛はそうしても不自然ではないし、罰は当たらない立場だろう。
だが。
「……馬鹿よ、あんた達は」
ぽつり、と。
どこか悲しげな顔で呟いたのを最後に、凛はすっぱりと頭を切り替えた。
感傷はあるし、悲しみもある。けれど、今は、立ち止まっているときではないのだから。
だから、歯を噛み締めて無理やり感情を押し殺して、話を進める。
「それより、この人形に襲われたり、変なコト吹き込まれたりとかしなかった?」
「いや、俺達が来た時はもう決着付いてた」
「それより、吹き込まれるってどういう意味ですか?」
「ああ、えっとね……」
ざっと要点をかいつまんで凛は説明する。
水銀燈がこっそり自分の名を騙って参加者を襲っていたこと。
わざと火種を作るように振舞っていたこと、などなど、などなど。
人によっては逆に疑いを持たれかねない話だったが……
「そうですか……大変でしたね」
あっさりと、フェイトは信じた。
そもそもレイジングハートが気を許しているという時点で、フェイトが凛を疑う余地は無い。
……だが、それはフェイトだけの話。
「……それが本当だって言う証拠はあんのかよ?」
そう言葉を返したのはカズマだ。
平時ならば別に構いもしなかっただろう。一度会って何事もなく別れたこともある。
その言葉が真実かどうかは、この後の行動で調べればいいと判断しただろう。
だが、あいにく彼は気が立っている。何より、これ以上仲間を死なせるわけにはいかないと決意していた。なのはやかなみのように。
だからこそ、過敏になる。フェイトを死なせないために。
そんなカズマの内面を知る由もないフェイト当人は、語気を荒くして止めに入っていたが。
「やめてください。レイジングハートが信用している人です。悪い人のはずがありません」
「ただの機械じゃねえか」
「ッ! けど、なのはの大切なデバイスなんです!」
「そ、それはそうかもしれねえが……」
フェイトの言葉にカズマは言葉を詰まらせた。
なのはの名前を出されるとカズマは弱い。レヴィがこの事実を知ったらからかう手段として利用するだろう。
とはいえ、カズマが疑いの態度を露にしたというのは事実なわけで。
声のトーンをいくらか落ち込ませながらも、凛は次の言葉を紡いだ。
「一応……証明する手段が無い、ワケじゃないんだけど……」
その言葉に、カズマとフェイトの視線が凛に集まる。
「この周辺に、何か本が落ちていたでしょう?」
「リインフォース……のことですか?」
「そ。水銀燈が隠し持って使ってたから、証人としてはこれ以上無く信頼性があると思う」
一言一句聞いてたってことでしょうから」
「そのリインフォースとやらと組んでる、ってこともありうるんじゃねえのか?」
「カズマさん!」
やっぱりダメか、とうつむく凛に、カズマは言葉を続けていく。
「……だが、お前らがそこまで言うならその本の言葉を聞いてやらねえこともねえ」
「あ……そ、そう?
ふ、ふん! 別に感謝なんかしないんだから!」
「…………」
なぜか微妙に似ている反応をする二人に、フェイトは思わず溜め息を吐きながらデイパックに手を突っ込んだ。
二人の対応の気苦労と、リインフォースの危険性への不安から。
「……ただ、大丈夫なんですか?」
「少なくとも、水銀燈は自由に使いこなしていたわね」
『恐らく、何らかのプロテクトか改竄が行われているものと推測できます』
……なら、なぜ先ほどまでは応答に答えなかったのか?
疑問は警戒を生む。緊張した手つきで、フェイトは手をデイパックに突っ込んだ。
「一応、念のため……カズマさん、私がおかしな動きをしたらすぐに……」
『別にそこまで堕ちたつもりはない』
「……わ」
リインフォースが言葉を出したのは、フェイトが取り出したのとほぼ同時。
だが、凛とカズマは反応していない。その言葉は、フェイトにしか聞こえていないからだ。
『すまない。強引にラグナロクを撃った所為で消耗していたため、先ほどは応答できなかった。
事情は把握している。私の言葉を二人に伝えてくれるか』
■
一方、トグサ達のいる豪邸は、ちょっとした騒動の舞台となっていた。
犯人は、怒り狂うドラえもん。
「やろう、ぶっ殺してやる!」
「お、落ち着け!」
顔を真っ赤にして、ドラえもんが手近にあった木箱を投げ飛ばす。
投擲された木箱はとんでもない速さで吹き飛んだが、幸いトグサを狙ったものではない。
ただの八つ当たりである以上、トグサが狙われる理由はあるはずもない。
……ないが、だからといって今のドラえもんに近づく度胸もトグサにはなかった。
ドラえもんは文字通りに暴れまわっている。この手の類の人間を取り押さえるのが難しいのは身を以って経験済み。
確かに、大切な人間が殺されたという事を知った時の反応としては自然だ。自然だが。
(いくらなんでも、こんなに口と素行が悪いとは思わなかったぞ……)
トグサの額を冷や汗が伝う。いくら自然でも、トグサにとって迷惑なのは変わりない。
今までのやりとりから、ドラえもんはのび太少年の保護者的な位置だと彼は予想していた。
それは正解だ。だが、違ったのはその後に続く予想。
保護者である以上少しは落ち着いて話を聞いてくれるか、という楽天的なトグサの予想……というより寧ろ期待は一瞬で吹き飛んでいた。
自分が守る相手であり同時に親友であるのび太さえも死んでしまった以上当然の反応だが、
この場合問題なのはそれではない。問題は、ドラえもんは重量129.3kg、129.3馬力のパワーを誇るロボットであること。
そんなものが暴れるのを取り押さえるのは、トグサと言えどかなりの苦労を要する。
暴れるままにしておくというのは当然却下。どんなトラブルに巻き込まれるか分かったものではない。
「ああもう、落ち着けって!
それより、ドラえもん……出身はどこだ?」
「……え?」
「出身だよ、出身」
トグサの質問はありきたりだ。それでも、その質問の意味や答えを思案するために、ドラえもんの動きがふと止まる。
はっきり言って、トグサの質問に深い意味は無い。内容はほとんど思いつきだ。
むしろ、質問したこと自体に意味がある。
事務的な質問をすることで冷静な思考を行わせ、相手を落ち着かせる……警察官として基本的なテクニックだ。
「え、えっと……トーキョーマツシバロボット工場です」
「よし、次は君が来た年代を教えてくれ」
答えることに意識を移し始めたドラえもんを見て、トグサは溜め息を吐きながらも素早く次の質問を出した。
ドラえもんに考える暇を与えず、質問だけに集中させるために。
■
「……まあつるむのは好きじゃねえが、お前と一緒に組んでもいい」
フェイトを通じての説明の後。カズマが呟くように言った言葉に、フェイトと凛は安心したように溜め息を吐いた。
その言葉は要するに敵対はしないと言うこと。ひとまずコレで一安心というわけである。
そのまま、フェイトはリインフォースをしまいこもうとして。
『フェイト・テスタロッサ。
私を彼女に預けてくれないか?』
「え?」
落ち着いた声に、止められた。
『彼女の誤解を生み出したのは私の責任でもある。
破損したデバイス一つだけでは全力を出せないだろう。私も消耗しているとはいえ、できれば手を貸したい。
それに、彼女の声を聞いていると、どこか主はやてを思い出すし……』
「大丈夫……なんですよね?」
『ああ。どうやらこの場における呪縛が上手く働いているようだ。
融合事故は起こらないし、封じられた闇が暴れ出すこともない。
……もっとも、このフィールドから出た後もそうか、といえば否だろうが』
「そう……ですか。なら、その後のことは」
『分かっている。お前と凛に任せた』
それを聞いてやっと、安心したようにフェイトはリインフォースを凛へと手渡した。
同時に、リインフォースは凛へと言葉を紡いでいく。これから世話になる、仮の主へと向けて。
もっともはやてのことがまだ心に残っているためか、敬語を使ったりはしなかったが。
『お前がこのゲームを破壊するために動くと言うのならば、私はお前を主と仰ごう。
それが主はやての最期の命令だ。
先ほどの戦闘の消耗もある、当分はそれほど力は引き出せないが……よろしく頼む』
「え……ああ、うん。よろしく、リイン」
フェイトはひとまず納得したし、カズマはデバイスをよく知らない。
そして凛が拒まない以上、リインフォースの使用に反対する人物はいない。
と、思いきや。
『……融合デバイスと私を併用するのは負荷が大きすぎると思いますが、マイマスター』
意外な相手が割り込んできた。 どこか不満げで……妙に「マイ」の部分を強調した声が。
「どうしたのよレイジングハート。
リインフォースがいればなんとかなるって言ったのはあなたじゃない」
『あれに関してはクラールヴィントでも十分です』
『……レイジングハート、気持ちは分かるが』
どこかぶすっとした声のレイジングハートに言葉を返したのは、呆れたようなバルディッシュ。
もしレイジングハートが人間だったら、恋人の浮気現場を発見したかのような表情になっていたに違いない。
だが、それに気付いたのはバルディッシュだけ。
カズマの質問によりレイジングハートの乙女心は気付かれることなく華麗にスルーされることとなった。
「あれってなんだ? 何か重要なことか?」
「え? うん、えっと……」
カズマの言葉に、思わず凛は口ごもった。
盗聴器があると分かっているのに堂々と話す馬鹿はいない。
もっとも、それは意志を伝えられないことを意味しない。意を汲み取ったフェイトが素早く念話を送っていた。
『つまり、話せないことなんですね。
主催者に対抗する手段、ですか?』
『まあ、そういうコト』
「???」
すぐに、凛が念話を返す。
あいにく魔力を持たないカズマには、二人が何をしているのかさっぱりだったが。
『首輪に関して、何か調べたりとかは?』
『ええ、私の世界の魔術において構造把握は基本だから。
内部構造とかはある程度調べてるわ』
「……おい、さっきから黙りこくってどうした?」
ついに耐え切れなくなったのか、蚊帳の外に置かれかけたカズマが不思議そうに声を上げる。
どう説明するべきか考え込む凛を尻目に、素早くフェイトが紙を取り出し文字を書き付けた。
『念話っていう魔法です。これを使えば、魔力を持った人間同士だけで話ができます』
「?」
『つまり、主催者に聞かれずに話ができる、ということです』
それを見て、納得がいったように……いや、実際納得してカズマは呟いた。
流石に、カズマでも二人の話している内容が分かる。
聞かれずに話さなくてはいけない会話内容。カズマもまた、それを経験済みだ。
「わりぃが、頭を使うのはどうも苦手だ。そういったことはお前らに任せる……
アルターは、役に立たなかったしな」
「あの……どこへ?」
「周りでも見てくるぜ。セイバーさんとやらが戻ってこないとも限らねェ」
「あ、ちょっと待ちなさいよ! せめてこの二人を埋めてから……」
「人形を埋めてやる義理はねえし、死んじまった劉鳳に興味はねえ」
そのまま、カズマはその場を歩き去っていく。
呆れたように口を尖らせるのは凛だ。協調性が無さすぎると彼女が愚痴るのも仕方の無いことだろう。
「しょうがないわね、私達で埋めてあげましょう」
『念話で首輪について話しながら、ね』
「はい、わかりました」
そう頷きあって、二人は作業を開始した。
意識は穴を掘ることに集中しながら、念話による会話はやめない。
『首輪についてですけど、だいたいどこまで調べているんですか?』
『えっと、電波が首輪から出てるところまで』
『なら、話は早いです。
詳細は省きますけど、その電波が首輪の機能に絡んでいるらしいんです。
他の人の仮説ですけど、この首輪から出ている電波を誤魔化せば首輪の機能を殺せるかもしれないという案が出ています。
そして、確かにリインフォースやクラールヴィントには通信妨害の魔法がある。
……ただ、電波遮断ならともかく電波を書き換えるのまではやったことがないですし、
それに私はベルカ式の魔法には詳しくなくて……』
『私の魔術はベルカ式に近いらしいけど……あいにく、電波を撹乱する結界なんて覚えは無いわ。
とりあえず、それに絡んだ魔法を色々探して練習してみましょ』
■
「2112年、トーキョーマツシバロボット工場生まれ。
家族構成は妹がひと……いや一体。間違いないね?」
「は、はい」
トグサの言葉に、ドラえもんははっきりと頷いた。
ドラえもんは大分落ち着いてきている。それでも、まだ放っておけるわけではない。
そう、肝心な部分。のび太の死に対するフォローが終わっていない。
あくまで今のトグサは、視線や意識をずれさせているのに過ぎないのだ。
しっかりと向き合わせ、乗り越えさせなくてはならない。
(それが一番難しいんだよなぁ……)
被害者の遺族へのアフターケアは、往々にして困難を極めるものだ。
どうやるか思い悩むトグサだったが、突如響いた音に表情を変えた。
空気を裂き、響き渡った鋭い音。トグサには聞きなれた音だ。
「銃声……!? くそっ!」
トグサは迷わずに立ち上がった。また事件現場に遅れるのは二度と御免だ。
二兎を追うものは一兎を得ず。この場において散々味わったことである。
「俺は病院に行く。落ち着いたらドラえもんも病院に来てくれ」
ドラえもんの答えも聞かないまま、トグサは一気に走り出した。
できるだけ死人を減らすために。
……実は全く大したことではなかったのだが、その時の彼には知る由もない。
■
銃声を聞きつけた人物は、他にもいた。当然のことだが。
フェイトと凛も聞いたし、それに……ここにもまた銃声を聞いたのが四人。
病院へと向かっていたハルヒ達である。そして、彼らは音だけでなく、姿をもしっかりと捉えていた。
もっとも……その中の一人、ロックは「やれやれ」と言わんばかりの表情だが。
「あの様子だと、下手に戦いを止めに入ればこっちが危ない」
「しかし……レヴィ殿とは知り合いと申しておりましたが」
その表情が不思議だったらしいトウカの言葉に、彼は首を振って答えた。
あいにく、裏の世界に足を踏み入れたロックにとって知り合い=安全な人物とは限らないのだ。
それどころか、ロックの経験則は喧嘩を売ったのはレヴィではないかとさえ思わせている。
「知り合いだから分かるのさ……ああいう顔のレヴィはまずい。
以前あんな顔でメイドと殴りあうのを見たことがあってね。
止めに入ろうとしたら殺されそうな目で睨まれた」
「どんなメイドよ、それ。全然萌えない」
ハルヒのツッコミはある意味では一般的な感性に基づいていた。
もっとも無法地帯であるロアナプラを歩くようなメイドと、
お茶くみが得意なSOS団専属メイドは住む世界さえ違うが。
そのメイドによってみくるがメイドを騙る不届き者呼ばわりされていることは、ハルヒには知りようが無いことだ。
「ともかく、俺はレヴィと接触する。
三人はさっき言った通り、魅音達の所に戻ってくれ」
ロックの言葉に、三人の顔が曇る。
そう。先ほど、彼女たちの後ろから響いた爆発音。
正面から響く銃声にだいぶかき消されていたものの、それでもロック達にはしっかりと聞こえる程度のもの。
それはおそらく、不吉しか意味しない。
「一人で大丈夫ですか、ロックさん?」
「あんな音がしたんだ、むしろ危ないのは君達の方だろう。気を付けた方がいい」
「……分かったわ」
「キョン殿とハルヒ殿は某が守ります、ご武運を」
そう言葉を返して、ハルヒ達は身を翻す。
行き先は先ほどまで通った道。仲間が残っている家。
杞憂であることを祈りたい。だがこの場において杞憂ということはほとんど在り得ない。
だからこそ、彼らは走る。
「レヴィ相手にご武運ってのもおかしな話だけどな……」
そう呟いて、ロックは彼の担当するべき音源に向き直った。
一応、襲われて迎撃しているだけという可能性もある。
もっともレヴィと魅音達、どちらが生存能力が高いかと言えば前者だろう。
だからロック一人が残ったのだ。
「まずは詳しい状況把握だな……」
マイクロ補聴器を取り出しながら、ロックは悟られないように歩き出した。
■
*時系列順で読む
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*投下順で読む
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|270:[[FATE]]|フェイト・T・ハラオウン|273:[[銃撃女ラジカルレヴィさん(後編)]]|
|270:[[FATE]]|カズマ|273:[[銃撃女ラジカルレヴィさん(後編)]]|
|269:[[請負人Ⅲ ~決意、新たに~]]|レヴィ|273:[[銃撃女ラジカルレヴィさん(後編)]]|
|269:[[請負人Ⅲ ~決意、新たに~]]|ゲイナー・サンガ|273:[[銃撃女ラジカルレヴィさん(後編)]]|
|270:[[FATE]]|遠坂凛|273:[[銃撃女ラジカルレヴィさん(後編)]]|
|270:[[FATE]]|トグサ|273:[[銃撃女ラジカルレヴィさん(後編)]]|
|270:[[FATE]]|ドラえもん|273:[[銃撃女ラジカルレヴィさん(後編)]]|
|267:[[暁の終焉(後編)]]|ロック|273:[[銃撃女ラジカルレヴィさん(後編)]]|
|267:[[暁の終焉(後編)]]|トウカ|273:[[銃撃女ラジカルレヴィさん(後編)]]|
|267:[[暁の終焉(後編)]]|キョン|273:[[銃撃女ラジカルレヴィさん(後編)]]|
|267:[[暁の終焉(後編)]]|涼宮ハルヒ|273:[[銃撃女ラジカルレヴィさん(後編)]]|
*銃撃女ラジカルレヴィさん(前編) ◆2kGkudiwr6
「…………」
言葉も無く、それぞれの武器を構えながら二人が待ち構え、一人が歩く。
例えるならガンマンの早撃ちだ。
曲がり角から姿を現すと同時に二人の魔法少女は己が武器を相手へと突きつけ――
「レイジングハート!」
『フェイト!』
――相手の姿と響いた声に、動きを止めた。
「あれ、いつの間に病院に帰ってきたの?」
「てめぇこそ、今までどこふらついてたんだ?」
「カズマさん、この人を知ってるんですか?」
「ほとんど知らねえよ。三十分も一緒にいなかった」
『私から説明します。凛とフェイト、両方を詳しく知っているのは私だけのようですから』
状況を把握したのか、要点をかい摘まんだ内容をレイジングハートが話し始めた。
金髪の少女はフェイトといい、高町なのはの親友であること。
レイジングハートは凛に支給され、今は彼女をマスターと定めていること。
要するに、相手に対して警戒する必要は無い、そういう内容だ。
「そ。なら安心ね」
「はい。よろしくお願いしますね、凛さん」
そして、凛とフェイトはあっさりと信じ込んだ。
基本的に凛はレイジングハートを信用しているし、本人は自覚していないがかなりのお人よしでもある。
それはフェイトも同じ。レイジングハートが信用しているなら悪い人ではないという論理は、彼女の中では自然なものだ。
……だが、カズマはそうもいかなかった。
「どうしたんですか?」
「あいにく、俺はあいつと深く知り合ったわけじゃねえ、一言二言話したくらいだ。
はっきり言ってほとんど他人……むしろ初対面であいつを信頼してるお前の方がおかしいんじゃねえか?」
「おかしくないんです。嫌な人にレイジングハートがあんなボロボロになるまで手を貸すはずがありません」
カズマはまあいいけどよ、などと呟いて構えを解く。それだけ。
無差別に破壊行為を繰り返す犯罪者だなどと情報操作された経験のあるカズマにとって、
自分の見たものこそが絶対の信頼の置けるもの。
あらゆる判断は自分で付ける。それがカズマのやり方である。
もっとも、フェイトの態度はなのはの友人という理由であっさり信用するカズマと同じなのだが、
本人は認めたがらないに違いない。
「それより、水銀燈を見なかった?」
「水銀燈……誰ですか?」
「あ、えっと……どっちの姿を説明すればいいのかな……」
「……よくわかんねェが、ここにぶっ倒れてる人形のことか?」
カズマが指差した先を、凛はしっかりと見た。
表情は変わらなかった。それでも、その瞳は明らかに揺らいでいた。
そこには、まるでよく知る少年のように、正義の味方を目指した男と。
自分をさんざん利用した人形の亡骸がそこにはある。
「…………」
喉から出かかった言葉を、凛は慌てて飲み込んだ。
劉鳳に対して謝ってもいいだろう。礼を言ってもおかしくはない。
水銀燈を罵ってもいいし、八つ当たりでその遺骸を砕いてもいい。
実際、凛はそうしても不自然ではないし、罰は当たらない立場だろう。
だが。
「……馬鹿よ、あんた達は」
ぽつり、と。
どこか悲しげな顔で呟いたのを最後に、凛はすっぱりと頭を切り替えた。
感傷はあるし、悲しみもある。けれど、今は、立ち止まっているときではないのだから。
だから、歯を噛み締めて無理やり感情を押し殺して、話を進める。
「それより、この人形に襲われたり、変なコト吹き込まれたりとかしなかった?」
「いや、俺達が来た時はもう決着付いてた」
「それより、吹き込まれるってどういう意味ですか?」
「ああ、えっとね……」
ざっと要点をかいつまんで凛は説明する。
水銀燈がこっそり自分の名を騙って参加者を襲っていたこと。
わざと火種を作るように振舞っていたこと、などなど、などなど。
人によっては逆に疑いを持たれかねない話だったが……
「そうですか……大変でしたね」
あっさりと、フェイトは信じた。
そもそもレイジングハートが気を許しているという時点で、フェイトが凛を疑う余地は無い。
……だが、それはフェイトだけの話。
「……それが本当だって言う証拠はあんのかよ?」
そう言葉を返したのはカズマだ。
平時ならば別に構いもしなかっただろう。一度会って何事もなく別れたこともある。
その言葉が真実かどうかは、この後の行動で調べればいいと判断しただろう。
だが、あいにく彼は気が立っている。何より、これ以上仲間を死なせるわけにはいかないと決意していた。なのはやかなみのように。
だからこそ、過敏になる。フェイトを死なせないために。
そんなカズマの内面を知る由もないフェイト当人は、語気を荒くして止めに入っていたが。
「やめてください。レイジングハートが信用している人です。悪い人のはずがありません」
「ただの機械じゃねえか」
「ッ! けど、なのはの大切なデバイスなんです!」
「そ、それはそうかもしれねえが……」
フェイトの言葉にカズマは言葉を詰まらせた。
なのはの名前を出されるとカズマは弱い。レヴィがこの事実を知ったらからかう手段として利用するだろう。
とはいえ、カズマが疑いの態度を露にしたというのは事実なわけで。
声のトーンをいくらか落ち込ませながらも、凛は次の言葉を紡いだ。
「一応……証明する手段が無い、ワケじゃないんだけど……」
その言葉に、カズマとフェイトの視線が凛に集まる。
「この周辺に、何か本が落ちていたでしょう?」
「リインフォース……のことですか?」
「そ。水銀燈が隠し持って使ってたから、証人としてはこれ以上無く信頼性があると思う」
一言一句聞いてたってことでしょうから」
「そのリインフォースとやらと組んでる、ってこともありうるんじゃねえのか?」
「カズマさん!」
やっぱりダメか、とうつむく凛に、カズマは言葉を続けていく。
「……だが、お前らがそこまで言うならその本の言葉を聞いてやらねえこともねえ」
「あ……そ、そう?
ふ、ふん! 別に感謝なんかしないんだから!」
「…………」
なぜか微妙に似ている反応をする二人に、フェイトは思わず溜め息を吐きながらデイパックに手を突っ込んだ。
二人の対応の気苦労と、リインフォースの危険性への不安から。
「……ただ、大丈夫なんですか?」
「少なくとも、水銀燈は自由に使いこなしていたわね」
『恐らく、何らかのプロテクトか改竄が行われているものと推測できます』
……なら、なぜ先ほどまでは応答しなかったのか?
疑問は警戒を生む。緊張した手つきで、フェイトは手をデイパックに突っ込んだ。
「一応、念のため……カズマさん、私がおかしな動きをしたらすぐに……」
『別にそこまで堕ちたつもりはない』
「……わ」
リインフォースが言葉を出したのは、フェイトが取り出したのとほぼ同時。
だが、凛とカズマは反応していない。その言葉は、フェイトにしか聞こえていないからだ。
『すまない。強引にラグナロクを撃った所為で消耗していたため、先ほどは応答できなかった。
事情は把握している。私の言葉を二人に伝えてくれるか』
■
一方、トグサ達のいる豪邸は、ちょっとした騒動の舞台となっていた。
犯人は、怒り狂うドラえもん。
「やろう、ぶっ殺してやる!」
「お、落ち着け!」
顔を真っ赤にして、ドラえもんが手近にあった木箱を投げ飛ばす。
投擲された木箱はとんでもない速さで吹き飛んだが、幸いトグサを狙ったものではない。
ただの八つ当たりである以上、トグサが狙われる理由はあるはずもない。
……ないが、だからといって今のドラえもんに近づく度胸もトグサにはなかった。
ドラえもんは文字通りに暴れまわっている。この手の類の人間を取り押さえるのが難しいのは身を以って経験済み。
確かに、大切な人間が殺されたという事を知った時の反応としては自然だ。自然だが。
(いくらなんでも、こんなに口と素行が悪いとは思わなかったぞ……)
トグサの額を冷や汗が伝う。いくら自然でも、トグサにとって迷惑なのは変わりない。
今までのやりとりから、ドラえもんはのび太少年の保護者的な立場だと彼は予想していた。
それは正解だ。だが、違ったのはその後に続く予想。
保護者である以上少しは落ち着いて話を聞いてくれるか、という楽天的なトグサの予想……というより寧ろ期待は一瞬で吹き飛んでいた。
自分が守る相手であり同時に親友であるのび太さえも死んでしまった以上当然の反応だが、
この場合問題なのはそれではない。問題は、ドラえもんは重量129.3kg、129.3馬力のパワーを誇るロボットであること。
そんなものが暴れるのを取り押さえるのは、トグサと言えどかなりの苦労を要する。
暴れるままにしておくというのは当然却下。どんなトラブルに巻き込まれるか分かったものではない。
「ああもう、落ち着けって!
それより、ドラえもん……出身はどこだ?」
「……え?」
「出身だよ、出身」
トグサの質問はありきたりだ。それでも、その質問の意味や答えを思案するために、ドラえもんの動きがふと止まる。
はっきり言って、トグサの質問に深い意味は無い。内容はほとんど思いつきだ。
むしろ、質問したこと自体に意味がある。
事務的な質問をすることで冷静な思考を行わせ、相手を落ち着かせる……警察官として基本的なテクニックだ。
「え、えっと……トーキョーマツシバロボット工場です」
「よし、次は君が来た年代を教えてくれ」
答えることに意識を移し始めたドラえもんを見て、トグサは溜め息を吐きながらも素早く次の質問を出した。
ドラえもんに考える暇を与えず、質問だけに集中させるために。
■
「……まあつるむのは好きじゃねえが、お前と一緒に組んでもいい」
フェイトを通じての説明の後。カズマが呟くように言った言葉に、フェイトと凛は安心したように溜め息を吐いた。
その言葉は要するに敵対はしないということ。ひとまずコレで一安心というわけである。
そのまま、フェイトはリインフォースをしまいこもうとして。
『フェイト・テスタロッサ。
私を彼女に預けてくれないか?』
「え?」
落ち着いた声に、止められた。
『彼女の誤解を生み出したのは私の責任でもある。
破損したデバイス一つだけでは全力を出せないだろう。私も消耗しているとはいえ、できれば手を貸したい。
それに、彼女の声を聞いていると、どこか主はやてを思い出すし……』
「大丈夫……なんですよね?」
『ああ。どうやらこの場における呪縛が上手く働いているようだ。
融合事故は起こらないし、封じられた闇が暴れ出すこともない。
……もっとも、このフィールドから出た後もそうか、といえば否だろうが』
「そう……ですか。なら、その後のことは」
『分かっている。お前と凛に任せた』
それを聞いてやっと、安心したようにフェイトはリインフォースを凛へと手渡した。
同時に、リインフォースは凛へと言葉を紡いでいく。これから世話になる、仮の主へと向けて。
もっともはやてのことがまだ心に残っているためか、敬語を使ったりはしなかったが。
『お前がこのゲームを破壊するために動くと言うのならば、私はお前を主と仰ごう。
それが主はやての最期の命令だ。
先ほどの戦闘の消耗もある、当分はそれほど力は引き出せないが……よろしく頼む』
「え……ああ、うん。よろしく、リイン」
フェイトはひとまず納得したし、カズマはデバイスをよく知らない。
そして凛が拒まない以上、リインフォースの使用に反対する人物はいない。
と、思いきや。
『……融合デバイスと私を併用するのは負荷が大きすぎると思いますが、マイマスター』
意外な相手が割り込んできた。 どこか不満げで……妙に「マイ」の部分を強調した声が。
「どうしたのよレイジングハート。
リインフォースがいればなんとかなるって言ったのはあなたじゃない」
『あれに関してはクラールヴィントでも十分です』
『……レイジングハート、気持ちは分かるが』
どこかぶすっとした声のレイジングハートに言葉を返したのは、呆れたようなバルディッシュ。
もしレイジングハートが人間だったら、恋人の浮気現場を発見したかのような表情になっていたに違いない。
だが、それに気付いたのはバルディッシュだけ。
カズマの質問によりレイジングハートの乙女心は気付かれることなく華麗にスルーされることとなった。
「あれってなんだ? 何か重要なことか?」
「え? うん、えっと……」
カズマの言葉に、思わず凛は口ごもった。
盗聴器があると分かっているのに堂々と話す馬鹿はいない。
もっとも、それは意志を伝えられないことを意味しない。意を汲み取ったフェイトが素早く念話を送っていた。
『つまり、話せないことなんですね。
主催者に対抗する手段、ですか?』
『まあ、そういうコト』
「???」
すぐに、凛が念話を返す。
あいにく魔力を持たないカズマには、二人が何をしているのかさっぱりだったが。
『首輪に関して、何か調べたりとかは?』
『ええ、私の世界の魔術において構造把握は基本だから。
内部構造とかはある程度調べてるわ』
「……おい、さっきから黙りこくってどうした?」
ついに耐え切れなくなったのか、蚊帳の外に置かれかけたカズマが不思議そうに声を上げる。
どう説明するべきか考え込む凛を尻目に、素早くフェイトが紙を取り出し文字を書き付けた。
『念話っていう魔法です。これを使えば、魔力を持った人間同士だけで話ができます』
「?」
『つまり、主催者に聞かれずに話ができる、ということです』
それを見て、納得がいったように……いや、実際納得してカズマは呟いた。
流石に、カズマでも二人の話している内容は分かる。
聞かれずに話さなくてはいけない会話内容。カズマもまた、それを経験済みだ。
「わりぃが、頭を使うのはどうも苦手だ。そういったことはお前らに任せる……
アルターは、役に立たなかったしな」
「あの……どこへ?」
「周りでも見てくるぜ。セイバーさんとやらが戻ってこないとも限らねェ」
「あ、ちょっと待ちなさいよ! せめてこの二人を埋めてから……」
「人形を埋めてやる義理はねえし、死んじまった劉鳳に興味はねえ」
そのまま、カズマはその場を歩き去っていく。
呆れたように口を尖らせるのは凛だ。協調性が無さすぎると彼女が愚痴るのも仕方の無いことだろう。
「しょうがないわね、私達で埋めてあげましょう」
『念話で首輪について話しながら、ね』
「はい、わかりました」
そう頷きあって、二人は作業を開始した。
意識は穴を掘ることに集中しながら、念話による会話はやめない。
『首輪についてですけど、だいたいどこまで調べているんですか?』
『えっと、電波が首輪から出てるところまで』
『なら、話は早いです。
詳細は省きますけど、その電波が首輪の機能に絡んでいるらしいんです。
他の人の仮説ですけど、この首輪から出ている電波を誤魔化せば首輪の機能を殺せるかもしれないという案が出ています。
そして、確かにリインフォースやクラールヴィントには通信妨害の魔法がある。
……ただ、電波遮断ならともかく電波を書き換えるのまではやったことがないですし、
それに私はベルカ式の魔法には詳しくなくて……』
『私の魔術はベルカ式に近いらしいけど……あいにく、電波を撹乱する結界なんて覚えは無いわ。
とりあえず、それに絡んだ魔法を色々探して練習してみましょ』
■
「2112年、トーキョーマツシバロボット工場生まれ。
家族構成は妹がひと……いや一体。間違いないね?」
「は、はい」
トグサの言葉に、ドラえもんははっきりと頷いた。
ドラえもんは大分落ち着いてきている。それでも、まだ放っておけるわけではない。
そう、肝心な部分。のび太の死に対するフォローが終わっていない。
あくまで今のトグサは、視線や意識をずれさせているに過ぎないのだ。
しっかりと向き合わせ、乗り越えさせなくてはならない。
(それが一番難しいんだよなぁ……)
被害者の遺族へのアフターケアは、往々にして困難を極めるものだ。
どうやるか思い悩むトグサだったが、突如響いた音に表情を変えた。
空気を裂き、響き渡った鋭い音。トグサには聞きなれた音だ。
「銃声……!? くそっ!」
トグサは迷わずに立ち上がった。また事件現場に遅れるのは二度と御免だ。
二兎を追うものは一兎を得ず。この場において散々味わったことである。
「俺は病院に行く。落ち着いたらドラえもんも病院に来てくれ」
ドラえもんの答えも聞かないまま、トグサは一気に走り出した。
できるだけ死人を減らすために。
……実は全く大したことではなかったのだが、その時の彼には知る由もない。
■
銃声を聞きつけた人物は、他にもいた。当然のことだが。
フェイトと凛も聞いたし、それに……ここにもまた銃声を聞いたのが四人。
病院へと向かっていたハルヒ達である。そして、彼らは音だけでなく、姿をもしっかりと捉えていた。
もっとも……その中の一人、ロックは「やれやれ」と言わんばかりの表情だが。
「あの様子だと、下手に戦いを止めに入ればこっちが危ない」
「しかし……レヴィ殿とは知り合いと申しておりましたが」
その表情が不思議だったらしいトウカの言葉に、彼は首を振って答えた。
あいにく、裏の世界に足を踏み入れたロックにとって知り合い=安全な人物とは限らないのだ。
それどころか、ロックの経験則は喧嘩を売ったのはレヴィではないかとさえ思わせている。
「知り合いだから分かるのさ……ああいう顔のレヴィはまずい。
以前あんな顔でメイドと殴りあうのを見たことがあってね。
止めに入ろうとしたら殺されそうな目で睨まれた」
「どんなメイドよ、それ。全然萌えない」
ハルヒのツッコミはある意味では一般的な感性に基づいていた。
もっとも無法地帯であるロアナプラを歩くようなメイドと、
お茶くみが得意なSOS団専属メイドは住む世界さえ違うが。
そのメイドによってみくるがメイドを騙る不届き者呼ばわりされていることは、ハルヒには知りようが無いことだ。
「ともかく、俺はレヴィと接触する。
三人はさっき言った通り、魅音達の所に戻ってくれ」
ロックの言葉に、三人の顔が曇る。
そう。先ほど、彼女たちの後ろから響いた爆発音。
正面から響く銃声にだいぶかき消されていたものの、それでもロック達にはしっかりと聞こえる程度のもの。
それはおそらく、不吉しか意味しない。
「一人で大丈夫ですか、ロックさん?」
「あんな音がしたんだ、むしろ危ないのは君達の方だろう。気を付けた方がいい」
「……分かったわ」
「キョン殿とハルヒ殿は某が守ります、ご武運を」
そう言葉を返して、ハルヒ達は身を翻す。
行き先は先ほどまで通った道。仲間が残っている家。
杞憂であることを祈りたい。だがこの場において杞憂ということはほとんど在り得ない。
だからこそ、彼らは走る。
「レヴィ相手にご武運ってのもおかしな話だけどな……」
そう呟いて、ロックは彼の担当するべき音源に向き直った。
一応、襲われて迎撃しているだけという可能性もある。
もっともレヴィと魅音達、どちらが生存能力が高いかと言えば前者だろう。
だからロック一人が残ったのだ。
「まずは詳しい状況把握だな……」
マイクロ補聴器を取り出しながら、ロックは悟られないように歩き出した。
■
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