「薔薇の風」(2022/06/05 (日) 22:08:29) の最新版変更点
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**薔薇の風 ◆Bj..N9O6jQ
シグナムは一人、路傍に座っていた。背後にあるのはこの状況下でも稼動しているらし
い遊園地。それだけ見ると、ここが殺し合いの場とはとても思えない。
夜天の書の防衛プログラム・ヴォルケンリッターの将である彼女は様々な世界を旅し、
蒐集を行ってきた。だが、今回ほど特異なことは初めてだ。
「どうなっている……空間転移はできず念話も不可能。
管理局は何をしている……!」
苛立ちが口からこぼれる。普段の彼女なら他人任せにせず自分で突破しようとしている
だろう。だが何より致命的だったのはまともな武器がないこと、そして主であるはやても
参加していることだった。自分のレヴァンティンさえ没収されているのだ、リインフォー
スをはやてが装備している可能性はほぼ有り得ないと言っていい。更に何か妨害がされて
いるのか、念話もできない。まさに危険な状態であることがシグナムを苛立たせている。
もちろん、支給品はある。ありがたいことに、自分のよく見知ったデバイスだ。しかし。
「……せめて、グラーフアイゼンなら何とか使えたかもしれないのだが。
シャマルには悪いが、これは私には扱えん……」
嘆息するシグナムの指にあるのは指輪型のデバイス、クラールヴィント。補助と癒しが
本領であり攻撃の機能は皆無、前線に立って戦うシグナムとの相性は最悪だ。一応は起動
してみたものの、飛行どころか念話が使えるようになった様子さえない。もう一つの支給
品である木刀の方がまだマシだ。使い手であるシャマルに渡そうにも、本人がいなくては
どうしようもない。ならば補助魔法に精通する仲間に渡せればまだいいのだが、ユーノも
クロノもいなかった。なのはもフェイトもヴィータも回復や補助は不得手。望みがあると
すればはやてぐらいか。上手くクラールヴィントを使って時空管理局と連絡が取れれば。
考え事に沈むシグナム。その耳に、ふと音がした。何かが後ろで地面を叩く音。だが、
人間の歩く音とは微妙に質感が違う……
「……ち」
とっさに遊園地の入り口の陰に隠れた。電気は付いていて明るいとはいえ、ただ座って
いるだけよりかはマシだろう。木刀を握り締め、いつでも殴りかかれるように備える。
近くまで来て相手もこちらの気配に気付いたのか、音も止まった。顔を出せばギリギリ
で見えるだろう。だが、相手が射撃を得意としていれば、出した顔を撃ちぬかれる。結果、
シグナムは隠れたまま相手の対応を伺うしかない。
相手も同じ考えだったのか、しばらく何の動きも無く時間が流れる。シグナムにも流石
に焦りが生まれてきた。逃げるべきか、話しかけるべきか……そもそも歩行音だったのか?
一刻も早くはやてに会いたい、そんな考えが焦りを更に増やし、判断を狂わせた。
少しだけ、顔を出す。目に入ったのは……小さな人形。それが手を向けていた。いや、
確かに人形だが生きている人間のように強い意思を感じる。思わずシグナムは困惑してし
まい……それは、間違いなく隙だった。
「!?」
とっさに顔を引っ込める。頬を何かが掠めた。血が流れる。
運がよかった……いや、違う。
「最初から、狙って掠めさせた……?」
そう、あの弾速で真正面から顔を狙うならもっと傷が深くていいはず。何より、自分は
呆然としていたのだから。ならばなぜ……
そんな自問をするシグナムに、相手――人形はすぐに答えた。
「動かないで。動いた瞬間、お前はそこで死ぬ」
「……なに?」
「動いたら今の攻撃を当てる。当たり所によっては致命傷になるのだわ。
でも動かない限り、命は奪わない」
なるほどな、とシグナムは納得した。つまり、脅しだったというわけだ。もちろん、
このまま闇夜に紛れて逃走することは可能だ。だが。
「……何が望みだ」
シグナムは留まることを選んだ。
殺さない相手なら大丈夫だと判断したのだ。もっとも、色々やって最後に殺すという
可能性もあるが。
別に、人形が喋ることはもう驚かない。そもそもシグナム自身人間ではないのだから、
そういう物もあるのだと考えただけだ。
「質問があるのだわ。
私は真紅。私と似た人形に心当たりはあって?」
「……ないな」
「そう。桜田ジュンという名に心当たりは?」
「ない」
「今まで、誰かに会った?」
「いや」
「最後に。お前は、なぜ待ち伏せをしていたの? 殺すため?」
「あいにく、今の私は自衛が精一杯だ。木刀で人を殺すのは大変すぎる。ほら」
「…………」
隠れたまま木刀だけをかざし、相手の視界に入れてやる。
人形――真紅がシグナムのいる場所を見つめているのがシグナムにも分かった。信じる
べきか、信じないべきか迷っているのだろう。やれやれ、と溜め息を吐いて。
「何を言っても、無駄かもしれないが……
私は嘘は言っていない。絶対に、だ。ベルカの騎士としての誇りがある」
「…………」
「桜田ジュンという人物を探しているのなら、私も手伝う。
私の探し人も探すという条件付きだが、悪い条件ではないはずだぞ」
真紅は何も言わない。シグナムにこれ以上言うことは無い。しばらくして、真紅はぽつ
りと呟いた。
「……アリスゲームというものを知っていて?」
「知らないな」
「これと似たものよ。私達ドールは他のドールを倒し、ローザミスティカを奪わなくては
いけない使命の下にあった。私達は、アリスという存在になるために作られたのだから。
そして、アリスになるにはアリスゲームに勝ち抜くのがその方法だと思っていた。
つい最近、アリスゲームだけがアリスになる方法ではないと知ったけれど」
シグナムの耳に、笑い声が聞こえた。自嘲するような、哀しげな笑い声だ。
「それに気付くまで大切なものを失ったわ。
蒼星石さえ最後にはお父様のため戦うことを選んだ……選んで動かなくなってしまった。
状況も違うし、私は人形だから断言できないし、したくないけれど……」
真紅の言葉はそこで終わりだった。だが、シグナムにも後半は簡単に予想がつく。
――もし、人間も……このゲームもそんなことばかりなのだとしたら?
「だから、失礼かもしれないけど……お断りするのだわ。
私は仲間達と合流して、対策を練る。
アリスになる手段がアリスゲームだけでないように、きっと何か手段があるはずだから」
裏切られて戦うことになるのはもう嫌だ、と真紅は告げた。
その後は、何も無かった。
真紅と名乗った人形は何処かに消え、シグナムが一人で残された。
見知らぬ他人への極度の不信感。それが真紅にはあった。以前似た経験をしている者と
して、警戒や不安を抱いてしまうのだろう。
シグナムは怒ってもよかったのかもしれない。私を愚弄するのか、と。騎士の名に懸け
て裏切りなんかするものか、と。だが。
「私には、その資格は無いな……」
思わず、シグナムも自嘲の笑みを浮かべていた。真紅の言葉。それはシグナムにも思い
当たる節がある。
はやてが闇の書に侵食された時……蒐集の開始を決意したのは誰だ?他でもない自分達
ヴォルケンリッターだ。人を殺さない、そう決意はしていたし実際に死者は出さなかった。
だが、万が一が起こる可能性もあったのだ。強い決意が元で、殺人が起こされる危険性が
ある。そんな可能性を、シグナムもまた思い起こしてしまっていた。自分が殺されるなら
まだいい、だがもしはやてに危害が及ぶようなことがあれば、私はその相手を殺さずに止
めることができるのか。かつての自分はフェイトを殺してでも闇の書を完成させるつもり
だったというのに。真紅は当然、知らなかっただろうが……不信を受けるに足る過去が、
シグナムにはある。
――そして、もし優勝以外にはやてを帰らせる手段が無い時自分はどうする?
「……考えたくもない」
シグナムは首を振った。どうもマイナス思考ばかりだ。
それに、少なくとも先ほどの会話で分かったことがある。このゲームにあの人形、真紅
は乗っていない。いつか合流する気になったなら、共に何らかの対策が練られるかもしれ
ない。幸い、シグナムの手にはクラールヴィントがある。通信妨害と異空間との通信。
使いこなせればこの狂ったゲームを破壊できる……かもしれない。
「まあ、私には使いこなせないのだが」
根本的な問題にシグナムはため息を吐いたが、嘆いても始まらない。
行動指針は決まった。まず、仲間と合流する。そしてクラールヴィントを渡す。望みが
ありそうなのははやてと……ヴィータも一応。クラールヴィントはベルカ式のデバイス、
ただでさえ補助魔法をあまり使わない上に術式が違うフェイトとなのははあまりあてには
できなさそうだ。人に頼るだけでなく、シグナム自身もなんとか使いこなせないかどうか
努力するべきだろう。
「帰ったらシャマルに礼を言うべきだな。それと、補助魔法の学習もしよう」
後方支援の大切さを思い知りながら、廃墟のように静まり返った遊園地の入り口を出る。
なぜかは知らないが、遊園地からは轟音がした。近づかない方が無難だ。となるとどちら
へ行くか……地図を見ながらシグナムは少し迷ったが、道路沿いに西へ歩くことに決める。
北は広すぎてすれ違う恐れがある。だが西は島を繋ぐ橋の前で待っていればいつか会える。
まさか列車が走っているということはないだろう、とシグナムは判断したのだ。実際には
走っているのだが……もっとも、こんな状況で列車が走っているなどと予想できないのは
仕方の無いことだろう。
「後は、運を天に任せるしかないか……」
自分の知らない所で仲間が殺される……そんな最悪のケースがないことを祈り、シグナムは歩き出した。
【F-3 遊園地入り口・1日目 深夜】
【シグナム@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:健康・道路沿いに西へ移動中
[装備]:クラールヴィント(全く使いこなせていない)@魔法少女リリカルなのはA's
木刀
[道具]:支給品一式
[思考・状況]1はやて、ヴィータ、フェイト、なのはと合流。優先順位は並んでいる通り
2クラールヴィントを使いこなせるようにし、脱出案を考える
3脱出できない時は……?(できれば考えたくない)
※シグナムは列車が走るとは考えていません。
【真紅@ローゼンメイデン】
[状態]:健康・北か東へ移動中
[装備]:不明
[道具]:支給品一式、ランダムアイテムは不明
[思考・状況]ゲームの破壊
人間不信(仲間は例外)
*時系列順で読む
Back:[[少女の幸運と少女の不幸]] Next:[[不死身のドラキュリーナひとり]]
*投下順で読む
Back:[[少女の幸運と少女の不幸]] Next:[[reckless snow wind]]
|シグナム|72:[[最悪の軌跡]]|
|真紅|49:[[決意の言葉]]|
**薔薇の風 ◆Bj..N9O6jQ
シグナムは一人、路傍に座っていた。背後にあるのはこの状況下でも稼動しているらしい遊園地。
それだけ見ると、ここが殺し合いの場とはとても思えない。
夜天の書の防衛プログラム・ヴォルケンリッターの将である彼女は様々な世界を旅し、
蒐集を行ってきた。だが、今回ほど特異なことは初めてだ。
「どうなっている……空間転移はできず念話も不可能。
管理局は何をしている……!」
苛立ちが口からこぼれる。普段の彼女なら他人任せにせず自分で突破しようとしているだろう。
だが何より致命的だったのはまともな武器がないこと、そして主であるはやても参加していることだった。
自分のレヴァンティンさえ没収されているのだ、リインフォースをはやてが装備している可能性はほぼ有り得ないと言っていい。
更に何か妨害がされているのか、念話もできない。まさに危険な状態であることがシグナムを苛立たせている。
もちろん、支給品はある。ありがたいことに、自分のよく見知ったデバイスだ。しかし。
「……せめて、グラーフアイゼンなら何とか使えたかもしれないのだが。
シャマルには悪いが、これは私には扱えん……」
嘆息するシグナムの指にあるのは指輪型のデバイス、クラールヴィント。
補助と癒しが本領であり攻撃の機能は皆無、前線に立って戦うシグナムとの相性は最悪だ。
一応は起動してみたものの、飛行どころか念話が使えるようになった様子さえない。
もう一つの支給品である木刀の方がまだマシだ。使い手であるシャマルに渡そうにも本人がいなくてはどうしようもない。
ならば補助魔法に精通する仲間に渡せればまだいいのだが、ユーノもクロノもいなかった。
なのはもフェイトもヴィータも回復や補助は不得手。望みがあるとすればはやてぐらいか。
上手くクラールヴィントを使って時空管理局と連絡が取れれば。
考え事に沈むシグナム。その耳に、ふと音がした。何かが後ろで地面を叩く音。
だが、人間の歩く音とは微妙に質感が違う……
「……ち」
とっさに遊園地の入り口の陰に隠れた。電気は付いていて明るいとはいえ、ただ座っているだけよりかはマシだろう。
木刀を握り締め、いつでも殴りかかれるように備える。
近くまで来て相手もこちらの気配に気付いたのか、音も止まった。顔を出せばギリギリで見えるだろう。
だが、相手が射撃を得意としていれば、出した顔を撃ちぬかれる。
結果、シグナムは隠れたまま相手の対応を窺うしかない。
相手も同じ考えだったのか、しばらく何の動きも無く時間が流れる。
シグナムにも流石に焦りが生まれてきた。逃げるべきか、話しかけるべきか……そもそも歩行音だったのか?
一刻も早くはやてに会いたい、そんな考えが焦りを更に増やし、判断を狂わせた。
少しだけ、顔を出す。目に入ったのは……小さな人形。それが手を向けていた。
いや、確かに人形だが生きている人間のように強い意思を感じる。
思わずシグナムは困惑してしまい……それは、間違いなく隙だった。
「!?」
とっさに顔を引っ込める。頬を何かが掠めた。血が流れる。
運がよかった……いや、違う。
「最初から、狙って掠めさせた……?」
そう、あの弾速で真正面から顔を狙うならもっと傷が深くていいはず。
何より、自分は呆然としていたのだから。ならばなぜ……
そんな自問をするシグナムに、相手――人形はすぐに答えた。
「動かないで。動いた瞬間、お前はそこで死ぬ」
「……なに?」
「動いたら今の攻撃を当てる。当たり所によっては致命傷になるのだわ。
でも動かない限り、命は奪わない」
なるほどな、とシグナムは納得した。つまり、脅しだったというわけだ。
もちろん、このまま闇夜に紛れて逃走することは可能だ。だが。
「……何が望みだ」
シグナムは留まることを選んだ。
殺さない相手なら大丈夫だと判断したのだ。もっとも、色々やって最後に殺すという可能性もあるが。
別に、人形が喋ることはもう驚かない。そもそもシグナム自身人間ではないのだから、
そういう物もあるのだと考えただけだ。
「質問があるのだわ。
私は真紅。私と似た人形に心当たりはあって?」
「……ないな」
「そう。桜田ジュンという名に心当たりは?」
「ない」
「今まで、誰かに会った?」
「いや」
「最後に。お前は、なぜ待ち伏せをしていたの? 殺すため?」
「あいにく、今の私は自衛が精一杯だ。木刀で人を殺すのは大変すぎる。ほら」
「…………」
隠れたまま木刀だけをかざし、相手の視界に入れてやる。
人形――真紅がシグナムのいる場所を見つめているのがシグナムにも分かった。
信じるべきか、信じないべきか迷っているのだろう。やれやれ、と溜め息を吐いて。
「何を言っても、無駄かもしれないが……
私は嘘は言っていない。絶対に、だ。ベルカの騎士としての誇りがある」
「…………」
「桜田ジュンという人物を探しているのなら、私も手伝う。
私の探し人も探すという条件付きだが、悪い条件ではないはずだぞ」
真紅は何も言わない。シグナムにこれ以上言うことは無い。しばらくして、真紅はぽつりと呟いた。
「……アリスゲームというものを知っていて?」
「知らないな」
「これと似たものよ。私達ドールは他のドールを倒し、ローザミスティカを奪わなくてはいけない使命の下にあった。
私達は、アリスという存在になるために作られたのだから。
そして、アリスになるにはアリスゲームに勝ち抜くのがその方法だと思っていた。
つい最近、アリスゲームだけがアリスになる方法ではないと知ったけれど」
シグナムの耳に、笑い声が聞こえた。自嘲するような、哀しげな笑い声だ。
「それに気付くまで大切なものを失ったわ。
蒼星石さえ最後にはお父様のため戦うことを選んだ……選んで動かなくなってしまった。
状況も違うし、私は人形だから断言できないし、したくないけれど……」
真紅の言葉はそこで終わりだった。だが、シグナムにも後半は簡単に予想がつく。
――もし、人間も……このゲームもそんなことばかりなのだとしたら?
「だから、失礼かもしれないけど……お断りするのだわ。
私は仲間達と合流して、対策を練る。
アリスになる手段がアリスゲームだけでないように、きっと何か手段があるはずだから」
裏切られて戦うことになるのはもう嫌だ、と真紅は告げた。
その後は、何も無かった。
真紅と名乗った人形は何処かに消え、シグナムが一人で残された。
見知らぬ他人への極度の不信感。それが真紅にはあった。
以前似た経験をしている者として、警戒や不安を抱いてしまうのだろう。
シグナムは怒ってもよかったのかもしれない。私を愚弄するのか、と。
騎士の名に懸け て裏切りなんかするものか、と。だが。
「私には、その資格は無いな……」
思わず、シグナムも自嘲の笑みを浮かべていた。真紅の言葉。それはシグナムにも思い当たる節がある。
はやてが闇の書に侵食された時……蒐集の開始を決意したのは誰だ?他でもない自分達ヴォルケンリッターだ。
人を殺さない、そう決意はしていたし実際に死者は出さなかった。
だが、万が一が起こる可能性もあったのだ。強い決意が元で、殺人が起こされる危険性がある。
そんな可能性を、シグナムもまた思い起こしてしまっていた。
自分が殺されるならまだいい、だがもしはやてに危害が及ぶようなことがあれば、私はその相手を殺さずに止めることができるのか。
かつての自分はフェイトを殺してでも闇の書を完成させるつもりだったというのに。
真紅は当然、知らなかっただろうが……不信を受けるに足る過去が、シグナムにはある。
――そして、もし優勝以外にはやてを帰らせる手段が無い時自分はどうする?
「……考えたくもない」
シグナムは首を振った。どうもマイナス思考ばかりだ。
それに、少なくとも先ほどの会話で分かったことがある。このゲームにあの人形、真紅は乗っていない。
いつか合流する気になったなら、共に何らかの対策が練られるかもしれない。
幸い、シグナムの手にはクラールヴィントがある。通信妨害と異空間との通信。
使いこなせればこの狂ったゲームを破壊できる……かもしれない。
「まあ、私には使いこなせないのだが」
根本的な問題にシグナムはため息を吐いたが、嘆いても始まらない。
行動指針は決まった。まず、仲間と合流する。そしてクラールヴィントを渡す。
望みがありそうなのははやてと……ヴィータも一応。クラールヴィントはベルカ式のデバイス、
ただでさえ補助魔法をあまり使わない上に術式が違うフェイトとなのははあまりあてにはできなさそうだ。
人に頼るだけでなく、シグナム自身もなんとか使いこなせないかどうか努力するべきだろう。
「帰ったらシャマルに礼を言うべきだな。それと、補助魔法の学習もしよう」
後方支援の大切さを思い知りながら、廃墟のように静まり返った遊園地の入り口を出る。
なぜかは知らないが、遊園地からは轟音がした。近づかない方が無難だ。
となるとどちらへ行くか……地図を見ながらシグナムは少し迷ったが、道路沿いに西へ歩くことに決める。
北は広すぎてすれ違う恐れがある。だが西は島を繋ぐ橋の前で待っていればいつか会える。
まさか列車が走っているということはないだろう、とシグナムは判断したのだ。
実際には走っているのだが……もっとも、こんな状況で列車が走っているなどと予想できないのは仕方の無いことだろう。
「後は、運を天に任せるしかないか……」
自分の知らない所で仲間が殺される……そんな最悪のケースがないことを祈り、シグナムは歩き出した。
【F-3 遊園地入り口・1日目 深夜】
【シグナム@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:健康・道路沿いに西へ移動中
[装備]:クラールヴィント(全く使いこなせていない)@魔法少女リリカルなのはA's
木刀
[道具]:支給品一式
[思考・状況]1はやて、ヴィータ、フェイト、なのはと合流。優先順位は並んでいる通り
2クラールヴィントを使いこなせるようにし、脱出案を考える
3脱出できない時は……?(できれば考えたくない)
※シグナムは列車が走るとは考えていません。
【真紅@ローゼンメイデン】
[状態]:健康・北か東へ移動中
[装備]:不明
[道具]:支給品一式、ランダムアイテムは不明
[思考・状況]ゲームの破壊
人間不信(仲間は例外)
*時系列順で読む
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*投下順で読む
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