ジェントルラット亡命

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亡命前夜


 一つの行動で一つの成果を得るというのは危険である。
各国の王は、一つの行動で複数の成果を得るように動いてきた。
それはリスク回避の策であり、一気にことを進めて反発されることを防ぐ方法でもある。
少しづつことを進めればよい、やがてくるにゃんにゃん共和国との戦闘のために、
そう信じて少しづつ国力を蓄えてきた。
冒険の合間をぬって得た情報を藩国地図に追加し、アイドレス工場の設立を機にI=Dを作った。
これは、本来このようなことのために用意されたわけではないのだが。

現在、藩国ではしらいしが帝国からの監視を受けていると仮定し、
こちらも同じく監視を厳しくしているポーズを取りながら各方面との連絡に追われていた。
表向きは「しらいしの謀反、及びクーデータの事実がなかったかの調査」としている。
国としてはきちんと軟禁しているので帝国の目を欺くには丁度よかった。

「藩王」
「…ふぇ」
「戦争中に味方を粛清した組織が戦争に勝ったことがあったか?」
「知らないなぁ」

「で、アレはできたのか?」
「できたよー」
「帝国に恭順を示す証として、王犬さまのおみやげ作ってます!」

「うん。それから?」
「それだけ!おみやげだよ、持って帰れよ!」
「………うん、そろそろ死んでみるというのもひとつの策だぞ」
「ギャー」

「いいか、よく聞けよ。シナリオはこうだ。
シュワは、オズルが出た裏山への調査に出発する。
これでI=Dと地図と燃料を与える口実が出来る。」
別に調査する必要もないのだが、
今回の戦闘におけるデータの調査としてシュワを向かわせることにしてあるのだ。
戦争に勝った時ほど用意をしろといいます、という理由つきで。
「ただ、人が死にかけたあの場所は危険なので
普段から問題のあるアイドレス工場主任を、鉄砲玉として一人で行かせる。」
 まあいざとなれば被害を最小限に抑える工夫だと言え、と続けた。
「そこで不幸な事故が起こる」
「事故?」
「死亡事故だ。何をおもったのか、機体はスクラップ原因は不明。
パイロットは死亡する」
「……そういうことなの?」
 きょとんとした顔をして聞くが、理解していないのは明白だった。
 どうせ帝国の使者がきたら自分が弁明することになるんだろうとため息をついた。
「そういうことにする」
 そういうと、手にしていた予定表を出した。
「そのころ俺たちは、アイドレス工場に大々的に視察に行く。
 周辺の異臭騒ぎに対する対策強化の一環だ。
 調査といってもお前は不良品で遊んでていい」
 調査云々は吏族からのデータでなんとかなる。

 新型をためそうとして、失敗した。大事に至らなかったので厳重注意。そういうシナリオが組んである。
 安全性をアピールするために、藩王と周辺の警備隊を集めて大々的に行う式典である。
 急遽準備をしたので、実際これが成功するかどうかも不明なのだが、藩王に余計な心配をかけるのもシャクに触るからつとめて強がっていた。
「同じ国に生きるものとして、一人でも多くの人間を救いたいのはどこの国も同じだ。
 俺は、帝国の一員だが、国が間違ったことをしていたら正すのも臣下の勤めだと思う。」

そういうと、藩王の顔を見る。
鼻ちょうちん出しながら寝ていた。とりあえずパンチ。

「きょうも、たのしいひじゃないな」
ここ数日、証拠集めや経費の策に追われていた。軟禁しているしらいしの顔は見ていない。
無理矢理とはいえ罪人にしたのだあわせる顔がないというのが正しい。
情報官や吏族にウソをつかせて藩民を一人、国的に抹殺する。
まったくいい日ではない。
「……あしたはきっといいひになるよ」
「だといいな」

周囲に誰もいないことを確認して、基地にいるシュワにデータを転送した。

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