オカシイ世の中覚え書き

第166回国会・参議院厚生労働委員会議事録 2月15日 小池晃氏の質問

○委員長(鶴保庸介君) 速記を起こしてください。

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 女性を産む機械という柳澤大臣の発言というのは、これは単なる言葉遣いの問題ではないというふうに思います。今の女性は余りたくさん産んでくれない、産む役目の人が一人頭で頑張ってもらうしかないという、こういう言葉が付いているわけで、これは正に女性を国家の人口政策の道具としている、ここが一番の問題なんだろうというふうに思っております。
 今日も、不適切だった、おわびということはありましたが、この基本的な言わば憲法の人権思想にかかわる根本問題についての反省の言葉というのは聞かれていないわけであります。厚生労働大臣としては不適格であると考えますし、罷免を強く求めてまいります。
 その上で、少子化の克服のために今日は長時間労働の問題に絞って総理にお聞きをしたい。
 一月六日の記者団の質問に答えて、総理は、日本人は働き過ぎと感じている方が多い、家で過ごす時間は少子化対策にとっても必要だというふうに答えておられますが、労働時間の短縮が少子化にとって大事だと、少子化対策として重要だという認識でよろしいでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) やはり、日本人は長時間労働、働き過ぎだと言われておりますし、私もそのように思います。家族みんなで過ごす時間を増やす、家族の団らんを増やす必要はあるのではないかと、このように思います。そして、それを、やはり子供を両親がまた家族ではぐくんでいく上においては、そのワーク・ライフ・バランスを取っていくことがいいのではないかと、このように思います。

○小池晃君 その長時間労働の実態が一体どうなっているかということなんですが、私持ってまいりましたのは、これは昨年十二月に日本労働弁護団が発表した長時間労働酷書というもので、ここに電話相談で寄せられた事例が挙げられているんですが、例えば製造業で男性で三十代の後半、残業は月二百四十時間、月火水は帰りは午前三時、木曜は零時、金曜も深夜、休日は月二日から四日、もう限界で辞めるしかないというふうに言っている。あるいは、大手家電量販店の売場主任、三十代、残業は月百二十時間、残業代未払で労基署が二回指導に入っている、売上げが上がらず、毎日帰宅は午前一時か二時で、睡眠時間は三、四時間、人間としての生活が成り立たないというふうに言っています。あるいは、スーパー、男性二十七歳の方、月の残業は百四十時間で、残業代一時間分だけしか出ない、週休二日制だが有休は全く与えず、職場の離婚率が九割になっている。まだまだあるわけです。
 人間生活が成り立たない、あるいは離婚率が九割だ、こういう働き方が野放しになっていて、どうやって子育てしていけるのかという実態があると思うんです。しかも、これは特殊な例ではなくて、東京労働局の調査では、労災認定の目安とされている一か月に百時間又は二か月から六か月に八十時間を超える時間外・休日労働を行ったか、又は今後このような長時間労働を行う可能性があるという企業が五七・六%になっているわけで、正にこの例に挙げたような働き方は異常ではなくて、大きく広がっているというのは実態だと思うんです。
 総理はこういう実態についてどのように考えていらっしゃいますか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) ただいま委員が御指摘されたような数値は私は承知はしておりませんが、しかし、日本人が働き過ぎであるということは事実だろうと、このように思います。この状況を変えていかなければならないと、私はこのように考えております。
 長時間労働を抑制し、仕事と生活の調和が取れた社会を実現をしていくことが必要でありまして、このため、法定割増し賃金率、言わば残業代でありますが、法定割増し賃金率について中小企業にも配慮をしながら引上げを行うため、労働基準法の改正法案をこの国会に提出をいたします。そして、それとともに、時間外労働の削減に取り組む中小企業に対する助成金を創設をいたしまして、一定時間以上の時間外労働をできるだけ短くすることを労使の努力義務として位置付けるほか、労働基準監督署による重点的な監督指導の強化等を図り、長時間労働の抑制に正面から取り組んでいく考えでございます。

○小池晃君 今おっしゃいました残業代割増しですけど、まずやっぱり圧倒的にサービス残業野放しになっているわけで、これはやっぱり根絶することが大前提であると思うんです。しかも、今回検討されている案というのは、四十五時間までは変わらない、八十時間までは努力すればよい、八十時間超したときでないと割増しとせず、その割増し率も明確にしていないと。これではやっぱり不十分だと思うんですね。
 元々は一日八時間以上働かせてはならないというのが労基法の考え方なわけであって、時間外労働を抑制するというのであれば、まず、今大臣告示という目安になっているわけですが、何の歯止めにもなっていない年間三百六十時間の残業上限、これ法定化すべきだと。あるいは、その割増し賃金を支払うよりも新しい労働者を雇った方がいいというところまで割増し率を引き上げなければ、これは実効性のある制度にならないということは申し上げておきたいと思うんです。
 この長時間労働にとって重大な問題としてホワイトカラーエグゼンプションのことがございますが、これはいろんな報道あるんですが、率直に総理にお聞きしたいんですが、この国会には提出されないということなんですか。これは明確にしていただきたい。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 自己管理型の労働制につきましては、今国会への法案提出を見送り、法定割増し、先ほど申し上げました法定割増し賃金率について、中小企業にも配慮をしながら引上げを行うための労働基準法改正案を今国会に提出をするということにいたしております。
 この自己管理型労働制は、一定のホワイトカラー労働者を対象に、働く人が自ら労働時間を管理をし、仕事と生活の調和を図りつつ、弾力的、効率的に働くことを可能とすることにより、労使双方にとってメリットのある制度として創設を目指して検討が行われてきたものであります。労働時間の短縮がどの程度図られるかについては、この制度の適用を自ら選択する労働者個人、個々人の意向等によるものと、このように考えております。
 なお、国民の理解を今回なかなか得ることができていないという状況になったのは、残業代がなくなってしまう、残業代がなくなるということが先行をして、制度の趣旨、目的や具体的な内容について議論を深めることができなかったことによるものと思います。
 いずれにせよ、ホワイトカラー労働者の働き方の改革は、働く人たち、国民の理解を得ながら取り組まなければならない課題でもあり、今後とも労働時間制度の在り方について検討をしていく考えでございます。

○小池晃君 その理解が得られていない理由として、今、残業代が出ないということが先行したというふうにおっしゃいましたけれども、これ残業代出ないというのは事実ですよね。要するに、この制度の対象となった労働者というのは労基法の労働時間管理の適用から外れるわけですから、すなわち、その労基法三十二条の対象でなくなるわけですから、そうすると三十七条の時間外、休日及び深夜の割増し賃金の適用が外れることになるわけですから、これは総理ね、残業代が出なくなるって、これは事実じゃないですか。誤解でも何でもない。これは残業代が出ないことにその対象者はなっていくということは間違いないことではないですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 私が誤解として申し上げたのは、これはもうすべての言わばホワイトカラーの人たちにとって残業代がなくなってしまう、我々が対象としている人たちではなくて、また労使双方の協定によるもの、あるいはまた本人が納得するということはかかわりなく、すべて残業代をなくしてしまうんではないか、そういう誤解が広がったという意味について申し上げたわけでございます。

○小池晃君 要するに、この対象となった労働者からは残業代がなくなるという事実はお認めになった。
 しかも、別に国民はそんなこと誤解していませんよ。これは、ホワイトカラーエグゼンプションの対象というのは年収要件とかいろんな報道もされているわけですから、その人たちがその対象になるんだという理解は正しくしていますよ。しかし、それでもおかしいということでこれは怒りが広がったわけでね、私は今のような認識では全く間違いだというふうに思いますね。
 先ほど、労働時間が短縮するんだというようなこともおっしゃったように聞いたんですが、長時間労働の改善というのは少子化の克服にとって大事だという基本認識の上に、ホワイトカラーエグゼンプションを導入するとなぜその労働時間が短縮するのか、そこをちゃんと説明していただきたい。その根拠と保証は一体どこにあるんですか、それ明確に説明してください。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 先ほど申し上げましたように、これはいわゆる自己管理型の労働法制でありまして、労働制でございまして、そこで、言わばこの成果を上げるということを、会社との間においてお互いにこれは言わばこういう成果を上げるという約束事を成り立たせていくわけでございまして、その中で例えば、毎日出社をしなければいけませんが、その中で例えば、一日八時間でなくても、一時間でも二時間でもこれは仕事を終えて帰る、あるいはまた家で仕事をしても構わない、そういう働き方を実現をすることは可能であるという意味において申し上げているわけであります。

○小池晃君 それは全く実態が違うと思いますよ。私が最初に紹介したように、今の労働者というのは本当に厳しい長時間労働、さらされているわけですよ、実例挙げたように。ホワイトカラーエグゼンプションの対象というのはこれ管理職一歩手前の人だと。すなわち私が紹介したような、毎日、百数十時間も残業しているような係長や主任という人たちが対象になっていくわけでしょう。しかもこれ、相次ぐリストラと人員削減で一人当たりのノルマというのはどんどん増えているわけですよ、ホワイトカラーエグゼンプション導入したって仕事量が減るわけじゃないんだから。何でこれは労働時間短縮するんですか。
 今は割増し賃金の支払というのが、不十分だけれども唯一の歯止めになっているわけです。ところが、エグゼンプション導入して、賃金と労働時間の関係というのがなくなってくれば、これは働かせる側はどれだけ長く働かせても痛みを感じないという制度になっていくわけで、それどころかその成果主義賃金が徹底されていけば、これは徹夜してでもそれほど、それこそ死ぬほど働かせるということになるじゃないですか。これは今の実態、労働者の実態から見れば、こういうふうに労働時間が逆に拡大していくことにならざるを得ないと考えますが、総理、いかがですか。

○国務大臣(柳澤伯夫君) 委員長。

○小池晃君 総理が手を挙げている。

○国務大臣(柳澤伯夫君) やや技術的な側面になってまいりましたので、私から御答弁申し上げます。

○小池晃君 技術的じゃないよ、これは大事な問題だよ。

○国務大臣(柳澤伯夫君) 今、委員も御案内のとおり、既に裁量労働制というものが行われております。専門型裁量労働制、企画業務型の裁量労働制というのが行われているんです。しかし、現実の今の活用のされ方はどうかというと、もう非常に専門型のむしろ裁量労働制の方が多いんです。それで、企画業務型の裁量労働制、少ない。それで、もっとここのところを拡充して、本当にこの企画型の人たちの力を出して、同時に労働時間の抑制を図るにはどうしたらいいか、これが我々が直面した問題なんです。
 したがいまして、我々としてはこの裁量労働制の足切りをしまして、企画型の裁量労働制のうちのどちらかというとまだ十分な使用者側との交渉能力等を持ってない人たちの足切り、これはもうそういうグループには入れない。で、そして、企画裁量型の労働についてはもっと使いやすくすると。こういうような、言わば現実に今行われていることの手直しをするに当たって、より用心深く、労働強化にならないような形でこの制度を仕組んだという側面がありますので、是非、更に御検討をいただいて、我々が法案として出したときには是非御理解をし、御賛同を賜りたいと、このように思います。

○小池晃君 実態全く分かってないですよ。
 厚生労働省の調査で、専門業務型の裁量労働制も企画業務型の裁量労働制も、その適用労働者は何て言っているか。労働者の不満で一番多いのは業務量が過大だということですよ。それから、労働時間、在社時間が長いというのはその次ですよ。裁量労働制になって、みんなそういう悲鳴を上げているんですよ。それを更に、裁量労働制より更に一歩進んで、労働時間管理そのものをしなくなる、労働基準法の対象でなくなる、こんなことをしたら正にこういう実態が更に広がることになるじゃないですか。そこ、どうなんですか。

○国務大臣(柳澤伯夫君) 個人としてはいろいろ言う人は、どこか探してくればいるかと思いますよ。しかし、我々は実際に、例えば専門型の裁量労働制をやっている人の中には、やっぱりビジネススクールに現実に行って非常に有効に時間を使っている人も現実におります。
 そういうようなことを考えますと、このクラスの人たちの日本の労働者の方々、ホワイトカラーの方々がワーク・ライフ・バランスを現実のものにしながら、しかもそのライフの中で家事、育児を共同してやる、それからまた自己啓発に努める、こういうような自由度を持ってやっていただくということがやっぱり私はふさわしいと思うんです。そういうことを実現しなければ、いつまでもいつまでも、工場労働というかベルトコンベヤーの仕事、もう労働時間だけが売り物ですというようなそういうところでなく働いていらっしゃる方々の現実に着目した労働法制を作ることが我々に課された課題だと私は思うのでございます。

○小池晃君 全く実態を踏まえてない、どこか別の国の話しているんじゃないかという話ですよ、今の労働者の実態から見れば。
 私、国民は決して、この問題、総理は誤解だとおっしゃったけど、誤解しているんじゃないと思います。この本質を見抜いているからこそ、これだけ多くの反対の声が上がっているんだということを申し上げます。これ、先送りでは駄目です。これはもう根本的に撤回する、そういうふうにしなければこの問題は解決しないと思う。ホワイトカラーエグゼンプションは先送りではなくて撤回をせよということを申し上げて、私の質問を終わります。

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最終更新:2007年03月07日 12:38