オカシイ世の中覚え書き

第166回国会・参議院厚生労働委員会議事録 2月15日 福島みずほ氏の質問

○福島みずほ君 社民党の福島みずほです。
 柳澤氏の一月二十七日の発言に関しては、戦後六十年たってこのような発言を聞くことになろうとは全く思っていませんでした。極めて残念ですし、極めて悲しいというか、問題があるというふうに考えています。
 総理にお聞きします。柳澤氏の発言の、その産む役目の人が一人頭で頑張ってもらうしかないんです、この発言の何が問題でしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 一月二十七日の厚生労働大臣の発言については、子供を産み育てることは男女が人間の営みとして行うものであり、また様々な事情にある方々もいる中において、この発言は配慮を欠き、女性を始め多くの方々の心を傷付けることとなった、不適切なものだったと、私からもおわびを申し上げる次第でございます。

○福島みずほ君 役目、産む役目の人とおっしゃっているんですね。役目というのは、広辞苑で調べますと、「役として務めなければならないこと。つとめ、職務。」なんですね。女性は産む役目を持っている、務めなければならない、そして一人頭で頑張ってもらうしかないと。私は、多様な生き方があり、多様な選択があることを傷付けた、それを理解してない、根本的に厚生労働大臣として不適格だと思います。
 しかし、二つ目のポイントがあります。総理がおっしゃらなかった点なんですが、厚生労働省そして内閣は、人々が、持ちたい人が子供を産み育てることを応援すべきであって、頑張って産めと、一人頭で頑張れと言う立場ではありません。労働法制をどんどん規制緩和をして働けない状況にしたり福祉を切り捨ててきたのは、正に政府・与党です。
 月刊「世界」三月号のある派遣の女性の実態を御紹介します。私も本人に会ったことがあります。東京都の派遣社員の場合は、一時、中絶まで思い詰めた。数年前、派遣元に妊娠を告げると、育児休業の対象外と解雇通告されたと。中絶を決意して病院を訪れたが、踏み切れないでいるうち、派遣社員の労働組合を知った。会社と交渉して育児休業明けに仕事を紹介してもらう確約を得て出産をした。だが、出産後も、子供の病気で休むと派遣元から、契約更新は難しいとほのめかされます。社会が私に産むなと言っているとその女性は言っています。
 先日、派遣の男性の話も聞きました。年収が二百万から三百万円台、好きな人が将来できても告白することができないんじゃないかとその人は言っていました。
 労働の劣化、悪化はすさまじいものです。偽装請負にメスを入れずに、派遣を規制緩和をし、非正規雇用をつくってきた正に政府の責任です。政府は女性に産めない状況をつくっているわけです。手かせ足かせ掛けてがけを登れと言ったって、それはがけは登れませんよ。
 総理、この女性の発言、あるいは政府こそがいろんな人を応援すべきである、ですから私は政策の転向、変更をすべきであると考えますが、いかがですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) この数年、派遣を始め働き方が大変多様化をしてきているわけでございます。その理由には様々な理由があるわけでありますが、しかしその中で、派遣からあるいはまたパートの方が正規の、正規雇用に進みたければそれが可能な社会をつくっていくべく我々も努力をしていきたい、このように考えております。
 そしてまた、この国会におきまして、労働法制、六本の法案を提出を予定をしておりまして、我々、働き方を変えていく、そしてまた先ほど申し上げましたように、パートの方々を含めての均衡待遇、あるいはまた正規社員になりたい、正規雇用になりたいという方々の望みが、また努力が実現されるような、そういう仕組みをつくっていかなければならないと思っております。

○福島みずほ君 今日の答弁を聞きながら、政策の転向が全くなされない、今国会提出される労働法制問題あり、日本版エグゼンプションについては断念をしない、これでは雇用が不安定ですから、少子化、これの解決にはならないですよ。
 総理、厚生労働大臣は、このパート法案の対象は四%から五%だと言いました。それでよろしいですか。──いや、総理に聞いて……

○国務大臣(柳澤伯夫君) 厚生労働省が把握しておりますデータのうち、推定対象者数として最も近いものは、平成十三年に厚生労働省の外郭団体、二十一世紀職業団体が実施した多様な就業形態の在り方に関する調査による数字でございます。これによりますと、責任の重さが同じかパートの方が重い方、重いこと、あるいは残業、休日出勤が同じかパートの方が多いこと、配転、転勤等の取扱いが同じことも含めて同じ仕事をしているパートのいる割合は四ないし五%との結果であり、二月十三日、私が予算委員会で御答弁申し上げました根拠はこの調査結果を踏まえたものであります。

○福島みずほ君 いや、間違っているんですよ。大臣、これはまた午後でやりますが、要綱は契約期間の定めのないものとなっていますから、大臣が今言ったのは正社員的パートの数なんですよ。つまり、四、五%を前提としても、期間の定めのないものという要綱になっておりますから、今度提案されるパート法案で対象となる者は四、五%よりはるかに低くなるんです。厚労大臣、間違っていますよ。
 次に質問を続けます。
 先ほど割増し賃金の話が出ました。しかし、これは残業時間八十時間以上の者について割増し賃金率を五割にするというものです。八十時間というのは過労死デッドラインです。だったら、もうちょっと初めから五割増しにすればいいものを、私たちは八十時間以上残業するという働き方はやはり危険であると、このことを認めるわけにはいきません。残念なのは、こうやって議論をしながら、雇用政策における政策の転換がなされるべき、しかし出される法案は非常に欠陥があって問題がある、この中で、全然どうやってみんなを応援するかという視点が実はないことです。
 総理、次に家族の健全ということについてお聞きをいたします。極めて健全な状況と極めて健全でない状況とあるのでしょうか。あるいは、総理は健全な家族と健全でない家族があるとお考えでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 私はないと思います。また、柳澤大臣は健全か健全でないかということで健全ということをおっしゃったわけではないと思いますよ。それは正に、将来若者たちへのこの意識調査の中において、多くの若者が将来結婚したい、あるいは将来子供を二人を持ちたい、そう思っている。もしそうではないとして、ほとんどの若者が結婚なんかしたくない、あるいは子供なんか持ちたくないと思っていれば、これは大変私は悲しいことではないかと、こう思うわけであって、そしてそれは別に価値観に踏み入っているわけではないんですよ。やはり多くの人たちが若者がそう思っていることについて、それは健全なことだな、良かったなと、こういうことでございまして、それはそうではない、そういう道を取らない人を否定しているものではないと、このように思いますよ。

○福島みずほ君 子供を持てない人や持たなかった人や、結婚しないで子供を持った人や一人しか子供が持てなかった人、流産したり中絶をしたり死産をしたり、いろんな人たちがこの結婚をして子供を二人持つことが、持つという極めて、極めて健全な状況にあるという発言を聞いたらどう思うでしょうか。
 それで、総理にお聞きをします。
 フランスに行かれて、ロワイヤルさん、フランス社会党大統領候補に会われたと思います。私も彼女に会いました。彼女も私も事実婚で子供を持っております。
 家族についてですが、私は、あることを標準世帯あるいは健全ということではなく、多様なすべての家族を応援すべきだと考えています。しかし、婚外子差別撤廃について自民党は反対をしてきました。フランスやスウェーデンなどは家族、多様なすべての家族を応援するという観点から事実婚の保護や婚外子差別撤廃、これも出生率を上げたと言われております。出生率を上げないと頑張ってきたのはむしろ自民党の政策ではないんでしょうか。検討の余地はないんでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) それは、福島委員の指摘は当たっていないと私は思っています。すべての子供、あるいはいろんな多様な価値があるのも当然我々も承知をしておりますし、その多様な価値を認めないということではない、このように思います。その中で、いろんな形態があるということも私もよく理解をしているわけでありまして、そういういろんな形態の中で頑張っている親子を我々は応援をしていかなければならないと、このように考えております。

○福島みずほ君 政府は多様なすべての家族を応援していません。婚外子差別があるということは子供の中に差別があることです。そして、もし子供を応援する、子供を持つ家庭を応援するというのであれば、母子家庭の人たちへの福祉をなぜばんばん削っていく政策を取るのでしょうか。金持ちのうちの子はいいんですよ。しかし、下支えが必要な家族をみんなで支えていくことこそ政治じゃないですか。
 これは、例えば九万一千世帯の命綱となっている母子加算、生活保護の規定ですが、単年度の削減額はわずか六十億円です。削って一年間の間に節約できる予算は六十億円。でも、その生活保護の母子加算で生きられる、それに頼っている世帯は九万一千世帯です。
 総理、すべての多様な家族を応援する、特に下支えが必要な、特に困難を抱える一人親家庭やシングルマザーを応援すべき。なぜ児童扶養手当の削減や六十億、この国家予算の中ではそんなに多額ではありません。ここの部分の母子加算、生活保護の部分のカットを検討しているんでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) まずはこの児童扶養手当の削減についてお答えをいたしますと、平成十四年の改正では、母子家庭に対する支援をそれまでの児童扶養手当中心の経済的な支援から就業自立に向けた総合的な支援へと転換をしたのであります。
 児童扶養手当については、離婚時における生活の激変を緩和するための給付へとその位置付けを見直しをして、受給期間が五年を経過した場合にはその一部を支給停止する仕組みを導入をしたわけであります。しかし、その際、母子家庭が置かれている状況を踏まえて、八歳未満の児童を養育している者、障害を有する者などについて一部支給停止の対象外とするほか、支給停止する場合も給付額については少なくとも二分の一は保障することといたしております。今後、平成二十年四月の実施に向けて、支給停止する額などについて改正法の施行後の状況などを踏まえながら検討作業を進めていくとしているわけであります。
 母子家庭の経済的な状況を改善するためには、児童扶養手当等の経済的支援に加えて、特に就労支援を進めることが重要であります。今後更にハローワーク、自治体を通じたきめ細かな就労支援に力を尽くしていきたいと思います。
 そして、母子加算の廃止についてでありますが、生活保護はこれはもう最後のセーフティーネットとして重要な役割を担っている私は制度であると思います。制度の公平性の観点から、自立促進等の観点、国民生活の実態等を踏まえて制度の在り方について適宜見直しを行っていくことが必要であります。現行の母子加算を含めた生活保護の基準額は、母子世帯全体の平均的な所得層の消費水準を上回っています。このため、今回の見直しでは生活保護を受けている母子世帯と受けていない母子世帯との公平性の観点に立ったものであります。
 また、激変緩和にも留意をしながら段階的に行うこととしています。その際、現状の一律、機械的な加算を廃止する一方で、生活保護を受けている母子世帯の自立を促進する観点から、就労している母子世帯等に対しては自立支援を目的とした給付を創設することとしています。
 あわせまして、来年度中に全自治体で就労支援プログラムを策定をしまして、これに基づき個々の母子世帯の状況に応じたきめ細かな支援や福祉事務所とハローワークとの連携による就労支援を一層推進するなど、生活保護を受けている母子世帯の自立をしっかりと支援をしてまいる考えでございます。

○福島みずほ君 明確に間違っています。
 全国の母子家庭は百二十三万人ですが、全国の就労の平均が五百七十九万が平均年間所得ですが、母子家庭は手当や年金を含めても二百二十四万円。日本の母子家庭の就労率は八四%、ただ、臨時やパートが半分強です。先進国の中では日本の女性の母子家庭の就労率は高いんですが、いわゆるワーキングプアになっている。年収の中央値は百八十三万円……

○委員長(鶴保庸介君) 福島委員、福島委員、時間が過ぎておりますので、手短におまとめください。

○福島みずほ君 済みません。
 年収の中央値は百八十三万円です。つまり、極めて困難を抱えている、子供を抱えて極めて困難、そこのカットするんですよ。
 で、総理が言ったのは、すごくおかしいと思うのは、頑張って生活保護を受けていない母子家庭はたくさんあります。しかし、生活保護を受けているところと受けていないところの母子家庭の差ではなくて、共働きや普通の人や富裕層の人たちと比較をしてどう生活を上げるかではないですか。生活保護を受けている母子家庭よりももっと悪い人がいるからそれを削減するというのでは、間違っています。多様なすべての家族を応援するとなっていない。それは健全ということの下に切り捨てている家族があるということです。

○委員長(鶴保庸介君) 福島委員、時間です。

○福島みずほ君 はい。厚労大臣は厚生担当あるいは労働担当としても明確に不適格であり、辞任を求め続けていきます。
 また、この厚生労働大臣、この政策転換できない厚生労働大臣を総理がかばい続けるということについても任命責任を追及していきます。

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最終更新:2007年03月07日 12:41