オカシイ世の中覚え書き

<イージス艦事故>「あたご」に回避義務 レーダー役立たず (毎日新聞)

千葉・野島崎沖で海上自衛隊のイージス艦「あたご」=艦長・舩渡(ふなと)健1等海佐(52)、7750トン=とマグロはえ縄漁船「清徳丸」(全長約12メートル、7.3トン)が衝突した事故で、清徳丸を右舷側に見て航行していたあたごに海上衝突予防法に基づく回避義務があったことが分かった。乗組員による目視が不十分だったため清徳丸に気付くのが遅れ、回避動作が間に合わなかった可能性が高い。海上保安庁と海自は行方不明の清徳丸船主、吉清(きちせい)治夫さん(58)と長男哲大さん(23)の捜索を続けると共に、横須賀海上保安部が業務上過失往来危険容疑で艦内を家宅捜索し、舩渡艦長らから事情を聴く。

 石破茂防衛相の自民党部会での説明などによると、あたごは19日午前4時5分ごろ、野島崎沖を北に向かって10ノット(時速約18.5キロ)で航行、漁船1隻が右前方から進路を横切った。そのころ、見張りの乗組員が右方向に緑の灯火を視認した。実際は清徳丸の灯火だったが、この時点では漁船の灯火かどうか分からなかったという。

 同6分ごろ、緑の灯火がスピードを上げて動いたため漁船と確認。全力の後進をかけて回避動作をした。清徳丸は前方約100メートルで大きく面舵(おもかじ)(右舵)を切った。同7分に衝突。レーダーに清徳丸が映っていたか、それを乗組員が認識していたかどうかは不明という。

 海上衝突予防法では、清徳丸の場合、左舷に赤、右舷に緑、後部に白の灯火が義務づけられている。あたごから見て清徳丸は右から左に航行していたとすれば、赤の灯火が見えることになり、乗組員の証言とは矛盾する。漁をしている時はこのほかに赤の灯火が必要だが、当時は操業していなかったという。横須賀海保などは灯火状況や見え方についても詳しく調べている。

 同法によると、2隻の船の進路が交差する場合、右舷側に他の船を見る船に避ける義務がある。やむを得ない場合を除き、相手の船首方向を横切ってはならない。衝突を回避するには、減速、停止、後進、面舵などの方法があり、あたごは全力後進をかけ減速したが間に合わなかった。10ノットで航行していた場合、数百メートルで停止するという。横須賀海保などは、回避動作が十分だったか調べる。

 当時、あたごは当直体制で夜間航行をしており、艦橋に10人程度の乗組員が目視などで洋上を監視。さらに、前方の船舶を映す水上レーダーでチェックしていた。海自幹部によると、300~400メートルより近くなるとレーダーは役に立たず、乗組員の目視に頼ることになる。目視が不十分だった可能性がある。

 海自横須賀基地に着岸したあたごは、艦首右側に十数カ所の白い傷があった。横須賀海保は小型船で傷の状況を見るなど約5時間にわたって捜索、航泊日誌や海図、メモ類など計27点を押収した。

 一方、海保と海自は24時間態勢で巡視船、護衛艦、ヘリコプターなどを出動させ、吉清さん親子の捜索を続けている。捜索に加わっていた漁船が日中、現場近くで吉清さんのウインドブレーカーを発見した。海自は前後に分断された清徳丸の船体を、千葉県館山市沖にえい航している。【本多健、伊藤直孝、内橋寿明】

[毎日新聞2月20日]

[ 2008年2月19日21時56分 ]

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最終更新:2008年02月22日 11:42