これまでのあらすじ
セントラルニューメッサーシティ地下で眠っていたかつての仲間《オーバン・ガッポ》は、後天性アームヘッド化人類「アームへッ人」と化していた。
…そう、彼等の物語はあの時点で既に狂っており、既に原形など留めていなかったのだ。
アームヘッド・ストーリー:リターン・デイズ
第58話「取り戻しの旅③」
旅の協力を申し出た雷電のオーバーンは、何かを思い出したようにアルカの方を見る。
『そうだ、あいつを連れ戻す方法…一つ思いついたぞ』
「………本当ですか!?」
『ああ…宇宙船を使う』
「宇宙船…?」
『コールド・スリープ機能を搭載した宇宙船だ。それでヘブンの崩壊を待ち…ファクトリーに直接殴り込んでやるのさ』
彼の提案は、単純かつ確実だったが、あまりにも無謀な片道切符だった…
『俺達は、時を超えられない。だからこの方法でやるしかない』
もし、尖兵達の救出に成功しても、その時には既に帰るべき母星は消失しているのだから。
「…僕、やります。レーラビくんに会いたい」
先ず、アルカの声が上がった。
「私も行くわ…レレラちゃんもレギちゃんも、命の恩人だもの」
「行きます、オリジナルを守るのは、ボクの役目だから」
返答を確認し静かに頷いたオーバンは…現国王の方を向き、問いかける。
『お前はどうする?迅雷のビッグバーン』
「はっ…かの者へのリベンジは、歴代国王の悲願…全力で協力させて頂きます」
『良い心がけだ…早速宇宙船の建造を始めるぞ、ついてこい!』
「はい!初代様!!」
王宮のアームヘッド・ラボに向かい、全力で走り出す国王とアームへッ人!
「…僕達も行こう。まだ、旅路に置いてきたものがあるんだ」
アルカ・リグ・ハリッコの三人は開発をオーバン達に任せ、旅を再開する事にした。
ーーーーー
…遺跡と化した市街地。
アルカはこの地で見た「アームヘッドの存在しない世界」の事を思い出していた。
「オリジナル…ここで何かあったの?」
「いや、ここは単なる廃墟だよ…先を急ごう」
…そして、土の匂いのする街を経由し、ファントムの国。
[ゆくのて゛すね・・・かれ の もとへ]
ファントム達の長"カセットさま"は、胴部を回転させながら問う。
「はい…僕、この惑星を出る事にしました」
旅を通して意志を固めたアルカの目が、真っ直ぐカメラアイを見つめる。
[とめはしません リヘ゛ンシ゛も ミッションも し゛んせい の た゛いこ゛み]
「…カセットさま」
[いきなさい アルカ あなたを しは゛るものは もう このほしには ないのた゛から]
「ありがとうございます…貴方もどうか、お元気で」
三人はカセットの国を後にし、そして……
ーーーーー
…局地的氷雪地帯。
アルカ達は降り積もった雪の中から、一つの、水色のアームコアを掘り起こした。
次回、第59話「さよなら僕たちの」に続く。
最終更新:2018年10月06日 01:45