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怯える少年 ◆/1XIgPEeCM

「ああ、もう、なにがなんだか……」
彼、桜田ジュンは混乱していた。
何時の間に眠ってしまったのか分からないが、目が覚めたら見たこともない部屋の中で、これまた知らない人が沢山いた。
そして仮面の男が出てきて言ったのだ。『キサマらにはこれから殺し合いをしてもらう』と。
これを聞いただけでも軽いパニック状態に陥りそうになったが、さらに人が目の前で死んだ。二人。
一人は筋肉質な男。果敢にも仮面の男に殴りかかり、そして呆気なく首を吹き飛ばされた可哀想な人。
もう一人は、自分よりいくつか年下で小学生くらいの女の子。彼女も同様に首を吹き飛ばされて死んだ。
ジュンは恐怖した。少しでも逆らえば殺される。その恐怖に抗う術もなく、ジュンはまるで石化したようにその場から動けなかった。

……そして、気付いたらここにいたわけだ。
ジュンが飛ばされた場所は会場南の遊園地。H-4のお化け屋敷の中だったが、当の本人はそれを知る由もない。

「うー、なんだよここ……気味悪いなぁ」
思わず正直な感想を漏らしてしまう。周りは薄暗く、壁が真っ赤に染まっている。血のように赤い赤。そんな感じだ。
いくらなんでもこんな気持ちの悪い所に送り込むことはないだろう……。
デイパックを片手に一歩一歩、周りに注意を向けながら前へと歩く。とりあえず出口を捜さなければ。
こんな得体の知れない場所に留まるのはごめんだった。
その時、この場の明かりがフッと消えた。
「ひっ」
情けない声がジュンの口から漏れる。辺りは一瞬の内にして真っ暗闇に包まれた。
そしてどこからかおどろおどろしい……人の呻き声のようなものが聞こえてきた。
誰かのいたずらか。幻聴かもしれない。
ゔゔぅぅぅぅ……。あ゙あ゙ぁぁぁ……。
誰かに助けを求めているような声。聞く者を心の底から震え上がらせるような、そんな声だ。
ジュンは急に恐くなって、駆け出した。暗闇の中駆け出した。
ところどころ壁にぶつかりながらもジュンは走り、ほどなくして出口が見えたので、彼はそこから飛び出した。

「はぁ、はぁっ、くそうっ! なんなんだよ!」
耐え切れず大声を上げてしまうジュン。そこでハッとして、彼は咄嗟に両手で口を塞いだ。
様々な展開の連続で混乱してしまったために気付かなかったのだが、殺し合いはもう始まっているのだ。
大声を出せば、危ない奴に居場所を知られてしまう可能性も大いに有り得る。
体を固まらせ、息を殺して周囲を見渡す。特に人がいるような気配は感じない。ジュンはホッと胸を撫で下ろした。
そして、今さっき自分が出てきた建物。
見ると、一見廃墟のようだが、いかにもそれは自然に成れ果てたものではなく、人工的に作られたものだと分かるお化け屋敷だった。
ジュンは、なんだ、と苦笑する。
少しずつ落ち着いてきたところで、ジュンは自分に支給されたデイパックのことを思い出し、中身を確認する。
中からは水、食料二日分に、地図や名簿、その他もろもろが出てくる。
ジュンは現在地を確認するため地図を広げ、デイパックに入っていたランタンで照らしながら見てみた。

「えっと、ここ……遊園地だよな」
地図を見ながらもジュンは困った表情になる。
周囲には自分がさっき出てきたばかりのお化け屋敷に、近くにはコーヒーカップ。少し離れた所には観覧車が見える。
恐らくは遊園地の中のどこかと考えて良いと思うが……詳しいエリアは特定できない。
およそ4エリア分の広さはあるこの遊園地は、結構広そうだ。
とりあえずは大まかな現在地が分かったからよしとして、ジュンは次に名簿に手を伸ばした。
あの時自分と同じように集められていた人達。少なく見積もっても五十人は確実にいた。自分が知っている人もいるかもしれない。
そう思い、ジュンは名簿を広げ……あった。
ジュンにとってはあまりにも聞きなれた名が、四つ。真紅、翠星石、蒼星石、そして……水銀燈。
「あいつらもいるのか……」
水銀燈は別として、真紅達も参加させられているのなら、何とか彼女らと合流したいとジュンは思った。
何せ自分は所詮引き篭もりの中学生。あの時集められた人達の中には、自分なんかよりも強そうな大人が何人もいた。
常識的に考えて、ただの子供である自分が生き残れるはずがない。
真紅達は一種の希望。一人でいるのは心細い。だから、まずは彼女らと合流して少しでも恐怖を和らげたいと、ジュンは考えた。
今後の行動方針も決まったところで、ジュンは名簿を放り出し再びデイパックを漁る。
確か武器が入っているはずなのだ。流石に武器も持たずに歩き回るのは危険すぎる。
やがてデイパックからは、どうしてこんな物が入っているのか、物干し竿が出てきた。本当に何の変哲もない銀色の棒。
「なんでこんな物が……」
長い。二メートルはあるだろうそれは、どう考えてもこの小さなデイパックには入り切りそうにない代物だ。
まったくもって摩訶不思議だが、不思議なことは日常茶飯事なので特に気にも留めないでおく。
次に出てきたのは、なんと拳銃だった。
しかし軽い。本物の銃器に触れたことがないのでよく分からないが、こんなに軽いものだろうか。
ふと、グリップの部分にセロテープで二つ折りにされた白い紙が貼り付けてあることに気が付いた。
それを引き剥がし開くと、そこには『これはモデルガンです』と黒い文字で書かれていた。がっくりと肩を下ろすジュン。
結局、デイパックに入っていた武器らしい物はこの二つだけだった。

つまるところ、簡単に言うとこうだ。

物干し竿とモデルガンで戦えと。

冗談じゃない。ジュンは自分の生存確率がぐっと下がってしまったことに落胆する。
強い武器……そう、例えば銃とかそういった系統ならば、多少の体力差があろうと覆すことができるかもしれないのに。
勿論、相手も銃を持っていたら別だが、接近武器と遠隔武器。どちらが強力かは明白だった。
今、ジュンが持っている武器らしい物と言えば、接近武器に部類するであろう物干し竿くらいしかない。
モデルガンでは鈍器として役立つかも怪しいものだろう。
しかし、実際に持ってみると分かるように、物干し竿にはそこそこ重さがある。
引き篭もりで基礎体力があまりないジュンにとっては、これを長時間持ち続けることは苦痛だった。

とにかく。自分の周りに散らかした荷物を全てデイパックに詰めながらジュンは思う。
とにかく真紅達を捜そう。上手く合流できればその後は……何とかなる。
そう決意を固め、ジュンはデイパックを肩に下げ歩き始めようとした。
と。

ドゴオオオオン!!

「うわああっ!」
唐突に聞こえた凄まじい轟音。
驚いてそちらの方を見ると、さっきまで煌びやかなイルミネーションに包まれていた観覧車が、バラバラになって崩れ落ちていく。
観覧車の残骸が地に伏す音と共に、その周辺には盛大な土煙が上がる。観覧車の周りにあったものも容赦なく破壊された。
地獄絵図。まさにそんな言葉がぴったりな光景だった。
「なにが起こったんだ……」
その光景を目の当たりにしながら、ジュンは暫く呆然と立ち尽くし、考え、そして理解した。
あれほどの建造物を一瞬にして破壊してしまう、そんなとんでもない能力を持った者がこの近くにいるのだ、と。
改めて、この殺し合いという状況の異常さに震撼させられる。

ジュンにはある変わった趣味があった。
インターネットで商品を注文し、クーリングオフ寸前に返品してそのスリルを味わうという、なんとも暗い趣味だ。
本人曰く、このスリルがたまらないそうで、これがなかなかやめられないとまらない。
しかし、今のこの状況下で感じるスリルはそんなものとは格が違う。
いつ殺されるか分からない。もしかしたら、一瞬後には死んでいるかもしれないこの状況。
彼とて、自分の命に関わるスリルを味わうことなど、真っ平ごめんなのだ。

ジュンは逃げ出した。観覧車があった方向と反対の方へ。
ほんの少し走ったところで、恐怖一色に染まったジュンの目に救いの架け橋が飛び込んでくる。
防波堤。あそこを渡って行けば、この遊園地から脱出できるかもしれない。
迷っている暇はない。あそこを渡って逃げよう。
そう思ったジュンは、縋るような気持ちで防波堤によじ登り、そして早足に渡り始めた。





【H-4 防波堤・1日目 深夜】
【桜田ジュン@ローゼンメイデンシリーズ】
[状態]:少し疲労 まだ見ぬ敵に怯える
[装備]:物干し竿 ベレッタM92F型モデルガン(どちらもデイパックにしまってあります)
[道具]:デイパック 支給品一式
[思考・状況]
1:防波堤を渡って遊園地から脱出。
2:真紅、翠星石、蒼星石と合流したい。
3:死にたくない。

本スレ1、レス280-282より


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桜田ジュン 90:回天




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