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approaching! ◆XnCOMfEOg



 暗闇にも随分目が慣れてきた。
 いざ毛布を被ってみると、目に広がるのは闇の青ではなく、どれほど前か知れない先刻に見せられた赤の飛沫。
 目に映る赤に興奮したなのはの体のコマネズミが、あっちこっちを走り回って心臓を蹴ってぐるぐるぐる。
 眠れるわけがない。
 暗闇にも随分目が慣れてしまった。
 逃げ込んだ場所はどうやら小さめの家具を扱う雑貨屋だったようで、クッションに毛布と、寝る準備だけは整えられる。
 とりあえず最初に手をかけたら鍵が開いていたので忍び込んだだけだった。
 この分なら、近くを探ればもっと色々な物も手に入るかもしれない。
 そう考えながら、すっかりバターと油の匂いが充満した店の中を見回す。
 食べるだけ食べて満腹の不良さんが一人。
 テーブルかけの説明書には、使いすぎると効果がなくなりますと書いてあった。あと何回使えるんだろう。
「……? 呼んだか?」
「えっ、う、ううん」
「ん、そうかよ」
 消化不良そうな顔をして、カズマはなのはから視線を外す。
 あとは夜の暗さがどっしりと、体中に乗っかってきているばかりだった。
 カズマはそれっきり何も言わない。心細さから誰かも構わずに呼び止めてしまったけれど、
 相手によってはあの場で殺されていても文句は言えない状況だった。
 カズマはちょっと怖い人だった。でも、信じても大丈夫みたいに思う。少し離れたところで目を少しだけ開けて、下を向いている。
 やっと気持ちが落ち着いてきたかもしれない。
「あの、お布団まだありますよ」
「いらねえよ」
「でも」
「いらねえっつってんだろ」
 ぶっきらぼうに言い捨てると頭を上げて、背の衣装棚にもたれかかっていた。

                          ※

 街灯のスポットライトを避けながら南へしばらく歩いていると、商店街と思しき場所に入り込んだ。
 深夜ともなると物音がよく響く。昼なら絶対に気づかないだろう、という音まで聞こえてきて、時々必要以上に身に力が入ってしまう。
 さっきのドラのような音は何だったのだろう。聞こえるには聞こえたが、それほど近くもなさそうで、放っておいてもいいような気がする。
 ふと立ち止まった。横に立っている商店は、なんとなく雰囲気が違う。
 周囲に気をつけながら建物を一周してみて、ここだけちゃんと窓にカーテンがかかっていることに気がついた。
 人がいる。
 しかもカーテンをしているということは、これから寝ようというのだろうか。なんだい余裕だなあ、と呆れ笑いが出た。
 でも、そういう相手なら話し合う余地もあるはず。
 意を決して窓をノック。
「すいませーん。いいかーい? いいかなー?」
 警戒されないように、こちらから声を出す。と同時に、すぐに窓枠から身を外した。
 狙い撃ちにされては、お粗末にも程がある。
 案の定、応答なし。
「もしもーし?」
 今更だが、相手が問答無用だった場合は、このやり方はすごく危険だ。
「誰かいるんだよねーっ。あたしも入れてよーっ」
 悪くすれば、もう周りを囲まれている可能性も……ないと思いたい。一目見れば罠を張っていないとわかってもらえるはずだ。
 建材の擦れるビニール質の音を小さく立てて、糸ほどに戸が開いた。

                          ※

 心強いから、という。
 高町なのはと名乗った女の子の意見に、鶴屋は全面的に賛成だった。
 この子も、鶴屋の笑顔にすっかり心を開いたのか、鶴屋を招き入れた時のような固さがかなり和らいでいる。
 だが残念ながら同時に、使えそうもないなあとも思った。
 おそらく衣装棚の前でふてくされている柄の悪い青年も同意見だろう。
 不良の方は喧嘩はできそうだが、殺し合いとなるとどうなるか。なのはに至ってはどこにでもいる普通の女の子だ。
 ちょうどさっき殺したような。
「あーのさ、そっちの彼の名前も教えてほしいなって」
「そうですよ、カ……」
「その前に聞きたいことがある」
「名前? さっき言ったじゃん、あたしは鶴屋……」
「そうじゃねえ。その袖の血だ。バッグにもだ」
 デイバッグに、セーラー服に、気をつけても見落としかねないレベルの小さな血飛沫がひとつ、ふたつ。
 青年の上げた顔に、いつの間にか野犬の目が光っていた。
 やってしまった。頚動脈からの噴血である。バッグを押し当てた程度では、抑え切れなかったのか。
「そりゃあ……」
 最初に女の子の首が飛んだ時さとありがちな言い訳をしようとして、鶴屋は止まった。デイバッグにまで飛んでいる血の説明がつかない。
 危ない危ない。
 危ないついでに、もう少し危ないを重ねるしかない。
「うん、実はここに来る前にちょっと襲われちゃってね」
「お前に怪我はねえようだな」
「まあね……っ。相手に怪我させて、その隙に逃げたのさっ」
「どんな奴だ?」
 さっきまでのくつろいだ空気もすっかり消えてしまい、なのはが隅でうろたえている。
「あの……」
「あっはははー。めがっさ暗くてよくわからなかったのさ! 結構体格はよさげな感じだったよ!」
 いくら本当の話でも、10歳かそこらの女の子に刃物を向けた話なんかして、いい印象なわけがない。
 胃がもたれていそうな顔をして、カズマは黙った。
「あのさっ、それで君の名前……」
 答えはない。
「にょろーん……」
 再びほぐれた緊張に、なのはが場をつなぐように笑った。

                          ※

「なのはちゃんなのはちゃん、支給品の確認って済ませたかい?」
 手持ち無沙汰になのはとコミュニケーション。
 彼女にチンピラの名前を聞いてもいいような気がするが、答えるなとでも言いたげなプレッシャーが彼の全身からにじみ出ている。
 変に話をさせて、チーム仲を悪くしてもしょうがない。
「あ、はい……そんなにいいものは入ってませんでした」
「あーらら、そりゃ残念だねっ。まあ、あたしも人の事言えないけどさっ」
 ボディブレードを取り出し、びよんびよんと振ってみせる。情けなそうにだが、なのはからまたひとつ笑顔が出てきた。
 この子は、話していて落ち着く。やたらと裏を読まなくてもよい雰囲気だからだろう。
 彼女と比べると、表すら見せてやるものかと牙を剥いている連れの男がなおのこと近寄りがたい。
「ちなみに聞いていいかなっ。何が入ってた?」
「あ、ええっと、テーブルクロスです」
「そりゃひどいね」
 外に声が聞こえないように、二人揃って忍び笑い。本当に殺し合いをさせるつもりの支給なのだろうか。
 今は、かなみと同じやり方はやめた方がいい。なのはだけならともかく、青年の出方が読めない。
「そうそう、あたし人探ししてるのさっ。ちょっといいかい?」
 となると後する事は情報交換ぐらいになる。カーテンを少し開いて、街灯の明かりで名簿を照らす。
 フェイト、はやて、シグナム、ヴィータ。名前と、特徴。
 そういう姿の人間に会った時になのはの名を出せば、少なくともその場は凌げる。ただし、なのはが生きている限りだ。
 そしてなのはたちにもこちらの名前を出すように言っておけば、SOS団との不慮の交戦の可能性はぐっと減る。
「テスタロッサ? うっわー、強そうな名前だねっ」
「え、そう、です、か……?」
 困り顔のなのはの向こうで、不機嫌そうな青年が、興味の無い顔をしてこちらを窺っている。
 暇なのだろう。
「んふふ、君も見るかいっ? 名前を教えてくれるかなっ?」
「ケッ」
「ありゃりゃ、正直じゃないね」
 なのはもどうしようもないなあという顔で笑っている。
 仕方がないので二人で名簿を見ていると、またカズマが少しずつ近づいてきている気がする。
 目線を上げると、今度はカズマが名簿を注視している顔に行き当たった。
「ふふん、やっぱり興味深々にょろねキミ。それじゃあ名簿からキミの名前を当てて……」
 言い終わらないうちに、カズマの腕が参加者名簿をむしりとった。暗がりに引っ張り込まれた名簿が、また光の下に戻ってくる。
 ただし今度はカズマごと。
「かなみ……!」
 自分の顔が強張ったのが、はっきりと感じ取れた。
「クーガー……劉鳳……!」
 幸運にも、鶴屋の異常は気づかれなかったらしい。それ以上に、カズマの衝撃の方が強かった。
「君島……!?」
「うんうん、私の友達もさ……」
 そろそろ合いの手を、とうっかり口を開いてしまった鶴屋に、カズマの動揺が殺到した。
「どこだ!? かなみは! 君島はどこにいる!?」
 尋ねてもわかるわけがない。カズマの暴走に過ぎない。普通は逆さに振っても「知らない」としか言えない。
 だが、心当たりのありすぎる鶴屋の脳裏に走った思考はそうではなかった。
 この男はかなみを知っている。ならば、自分の来た方向へ行かせてはならない。
「あ、あっち!」
 咄嗟に、あらぬ方向を指差した。
「間違いねえな!? 間違ってたらブッ飛ばす!」
 なにせ相手がチンピラの御面相で、今にも絞め殺しかねない気迫を放っている。勢いに負けて、思わず首を縦に振る。
「くそっ!」
 一声叫ぶと、跳ね起きて扉を蹴破った。逆側に打ち込まれた蝶番が、建材の破片を撒き散らしながらバウンドする。 
 追いかけた方がいい。かもしれない。少なくとも、一人でいるよりはマシなはずだ。
 だが、いなかった場合に吊るし上げを食らったらどう言い逃れるか。わざと撹乱していると思われたら最後だ。
 だがここで考えていても仕方が――――
「あ、カズマさん!?」
 上げかけた腰が固まった。
 なのはが慌てて荷物をかき集め、追いかけようとしたところで、座り込んだ鶴屋を顧みる。
 崩れかけた笑顔をつくろって、とりあえず笑ってみましたという態を装うと、彼女は少しだけ迷った後、外へ飛び出した。
 手前勝手に離れていくカズマを優先したのだろう。
 四角く切り取られた壁から、宵闇と街灯が染み込んできている。
「……うっひゃあ」
 そうだ。
 ついていく馬鹿はいない。
 一雨降られたかのような勢いで、汗が流れていく。
 追いかけるなどという気が起ころうはずもない。カズマの存在感と、なのはの軽い駆け足が遠ざかっていくのを聞き取るまで、
 鶴屋は全身を耳にして、じっと外を窺っていた。
 寒いのは、吹き込む夜風のせいばかりではない。

                          ※

「かなみー! どこだ! 聞こえたら返事をしろ! かなみー! 君島ぁー!」
「かっ、カズマさん! 大きな声なんて出したら……!」
 夜はただでさえ静かで音が通りやすい。すぐに見つかって大変なことになってしまう。
 どうにか追いついて腰にかじりついたが、なのはを引きずってでも進むつもりらしい。
「カズマさん! おち、落ち着いて!」
 歩調をあわせられず、数メートル引きずられたところでようやく止まった。
「そんなに大きな声を出したら、二人を見つける前に危ない目に遭っちゃいますよ!」
 腰にぶら下がったまま見上げると、相当に殺気立った視線が降りてきている。
「かなみは何もできねえ。俺なんかいい、今危ねえのは俺よりあいつだ。早いとこ見つけてやらねえと……それに……」
 カズマは顔を上げた。奥歯がすごく踏ん張っている音がする。
「君島は死んだ。墓も作った。埋めたのも俺だ。こんなところにいるはずがねえ」
 一瞬、カズマが殺したのかと思ったが、それなら名簿を見て慌てるのは変だ。
 カズマは乱暴だけど、嘘をついたり変なごまかしをしたりしないと思う。してもすぐばれると思う。
 爪先がやっと地面を探り当て、なのはは腰から降りた。
「君島さんって?」
「……腐れ縁だ」
 ようやく、気持ちが落ち着いてきた。
「友達……なんですね?」
「……まあな」
「かなみちゃんは……?」
 なんて答るか、ちょっと気になった。思ったとおりカズマは、眉間にしわをつくって何かじっと考えている。
「……いいだろそんなことは! かなみはかなみだ!」
「私も、友達を探してるんです。あの、一緒に探せないかな、って」
 苛立ちをかわされて、カズマが詰まった。ぐりぐりと眉間のしわに力を入れていたが、ため息をひとつ吐いて、肩から力を抜いた。
「知るかよ。もう好きにしろ」
「うん、好きにやります」
 そうと決まれば、まずはお互いの友達の話から始めなければ。
 知らずに戦ったりなんかしたら大変だ。
「……あれ、そういえば鶴屋さん」
「ほっとけよ。来たくねえから来ないんだろ」
 それはそうかもしれない。
 でも、それでも一人で置いていくのは危ないし、何かがちょっとだけ引っかかる。


【G-8(モール)・1日目 黎明】

【カズマ@スクライド】
[状態]:正常
[装備]:なし
[道具]:高性能デジタルカメラ(記憶媒体はSDカード)・携帯電話(各施設の番号が登録済み)・支給品一式
[思考・状況]
ギガゾンビを完膚無きにボコる。邪魔する奴はぶっ飛ばす。
かなみの保護あるいは君島の確保を最優先。次点、協力要請及び状況把握のためクーガーとの接触。劉鳳? 後だ後!

【高町なのは@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:正常
[装備]:なし
[道具]:グルメテーブルかけ@ドラえもん(回数制限有り:残り22品)・支給品一式
[思考・状況]
カズマと一緒に知人探し。
フェイト、はやて、シグナム、ヴィータの捜索。


【G-8(商店内部)・1日目 黎明】

【鶴屋さん@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:正常。服およびバッグに、ごく目立たないレベルの返り血の付着。
[装備]:ハンティングナイフ
[道具]:自分の支給品、かなみの食料と水、ボディブレード
[思考・状況]
SOS団の面子(キョン、涼宮ハルヒ、長門有希、朝比奈みくる)と遭遇した場合、彼らを守る。
それ以外の面子と遭遇した場合、接触し、利用できそうなら共に行動。利用できそうにないなら隙を見て殺す。
カズマ、なのはは今後、殺害可能状況が来るまで回避する。
基本:ステルスマーダーとして行動


※カズマと君島の原作時間軸は多少の前後があるようです



時系列順で読む


投下順で読む


25:飢えた獣と魔法少女 カズマ 76:「夢を見ていました」
25:飢えた獣と魔法少女 高町なのは 76:「夢を見ていました」
09:信頼に足る笑顔 鶴屋さん 96:「過ぎ去った日常」




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