ソロモンの指輪 ◆nSPmc44fPU


 高校の理科室に、死に至る危険のある薬品は置いていないのが普通だ。
 そして、薬品を使う場所がすぐそばのため、長距離を持ち運べるような設備もない。
 理化室の瓶では乱戦の折にこぼれ、自分に害を及ぼす危険がある。
 ネジ山を切ったプラスチックキャップでは薬品の浸蝕に耐えられず、ガラスの蓋は傾ければすぐに外れてしまう。
「薬品は無理ですね」
「仕方ないね……」
 蒼星石は、まだ心許ない表情である。
 だが、理科室が駄目なら、学校で支給品を越える武器の補給は無理だろう。

 次は天文台だった。
 会談の踊り場で下を見張っていた蒼星石に、望遠鏡と双眼鏡を見せる。棚の用意の一揃えを取ってきたものだ。
 そのうち、双眼鏡の方を差し出した。
「視界が広ければ、それだけ有利になりますからね」
「ちょっと、僕には大きすぎるかも」
 なるほど確かに、へこんだ側を当てれば胸当ての代わりに使えてしまいそうだ。
「では僕が持っていることにしましょう。使う時は遠慮なく言ってください」
 そう言って、一緒くたに自分のデイバッグに放り込む。
「ここの用はこれだけです。待たせてしまいましたね」
「あ、いや。僕はそういうの、気が回らなかったから」
「そう言ってもらえると、気が休まります」
 廊下は自然と歩幅の広いソロモンが前に立った。

 続いて、家庭科室。
 準備室側の棚には、裁縫道具の他に、刺繍に使うのか布地や装飾物がいくつか置いてあった。
 そして包丁。
「……鞘もないのに持っていくのは危険でしょうか」
「僕には使いにくそうだよ」
「そうですね……」
 少し考える。
「ねえ、武器になりそうなものを全部持って行っちゃうのはどうかな?」
「なかなか興味深い意見ですが……」
 蒼星石の意図は、他人の殺害を決めた人間が武器を調達しづらくすることにあるだろう。
 だが、ここに武器を求めて来るのがそういう人間ばかりとも限らない。
 そしてここの刃物だけを持っていくのに、どれだけの効果があるか。
「残念ですが、結論より夜明けが先でしょうね」
「そうだね。ごめん」
「いえ。視点を多彩に持つのは大切なことです。今後ともお願いしますね」
 これ以上収穫が見込める場所はない。これで校内探索は終わりか、と出入り口越しに廊下の窓を見下ろした。
 向かい側の棟1階の廊下、消火栓らしき小さな光が、ぱっと消えてまた現れた。
「おや、あれは」
 振り返る蒼星石に、物音を立てないようにと囁く。
「誰?」
「わかりません。姿は見えませんでしたが、誰かがいることは確かです。消火栓の赤色灯が隠れるくらいだったので、
少なくともあなたのお友達ではないと思いますが」
 ドールが自分たちの入っていた鞄を手に入れたなら、鞄で飛行することは可能だ。だが、こんな屋内で飛ぶような無鉄砲は……
 いるにはいるが、翠星石が物音を立てないとは考えにくい。
「人間の友達もいるんだ。彼なら」
「わかりました」
 ともかく、作戦を練らなければならない。人探しをしている都合上、相手を視認できる程度まで近づく必要があった。
 せっかく手に入れた望遠鏡は、ここでは使いにくい。
「ジュンや小夜さんかもしれないけど、敵かもしれない。こっちから話しかけた方が有利だと思うんだ」
 その通りだ。蒼星石は、見た目より語りの調子の方が性格をよく反映している。
 と、提案を聞くために目を向けた時、ソロモンの脳裏にひらめくものがあった。
「蒼星石、僕に考えがあります。もし君が嫌ならいいのですが」
「僕にできることなら……」
「あなただからこそですよ」

                       ※

 深夜とはいえ常夜灯が残っている場所には、まだまだ明るいわだかまりが残っている。
 なるべく物陰を通るようにして、高校の建物へ。
 こんな時は黒に揃えた自分の服装が役に立つ。
 校舎内に入ってみれば、何の変哲もない日本の高校だった。稀に廊下と教室を窓で仕切っている場合があるのだが、ここは運良く壁である。
 これなら視界が通らず、ある程度探索に集中できる。
 1階を虱潰しに見て周り、どうやら先客がいるのではないだろうかという結論にたどり着く。
 2階へ上がり、同じく教室を覗きながら廊下を歩いていた時、小さく物音がした。
 見てみるが、特に変わった様子はない。念のためあたりを気にしながら進むと、
 先ほど音がした方向の一室から、人影がちらりと見えてすぐに元の部屋へ戻っていった。
 不意の遭遇か、とも思ったが、相手の動きに慌てた様子がない。
「こいつぁお呼びってことかな……?」
 歩みは変わらず警戒を続けたまま、少しずつ人影が見えた部屋に近づく。
 戸口まで来たところで、壁に張り付いてズボンから唯一の武器を引き抜いた。
 .454カスール・カスタムオート。装弾数7発、総重量4キロ。正気の沙汰ではない。
 こんなものを拳銃にしても、格好をつけて片手で撃とうものなら手首が折れる。握りが悪ければ、肘から行くかもしれない。
 日本警察よろしく、両足を肩幅で踏ん張って、両手でしっかり支えて撃つしかない。それでさえ反動で狙いがずれないかどうか。
 得意の抜き打ちなどやった日には、腕がどこへ飛んでいくことやら。
 鉄塊の重さをした銃を胸の前に両手でしっかり固定し、教室の中を窺った。
「ほおう……」
 藍色の窓を背負って、堂々と立つ男の陰影。
「俺を待っててくれたのかい?」
「ええ。少しお茶など、と言いたいところなのですがね」
 キザな言い草をする。次元の経験則から行くと、こういう奴は大抵食わせ者だ。気をつけなければならない。
 たとえば、踏み込んだ途端に、隠れていた人間に取り囲まれる、とか。
 一瞥するに、他に誰もいなさそうだが。
「何か変なもの隠してないだろうな」
「どうぞ」
 言うや否や、男は長細い何かを前に放り出し、頭の後ろで両手を組んでみせる。
 音からすると、剣か。
「あんた、随分と余裕じゃないか。いきなりズドンなんてのは考えなかったのか?」
「あなたへの誠意と受け取っていただきたいところですね」
「あーそうかい」
 その誠意とやらへの礼儀として、男に銃口を突きつけることはしない。
 いつどこへでもすぐに撃てるよう、両手でしっかり保持して、壁に背を擦るようにしてゆっくりと教室へ。
 他に誰もいないらしい。
 流し台のついた大きな机が規則正しく9つ、横並びに足元に死角を作っている。
 入り口脇の、背の低い棚の上に、学校に不似合いなほど大きい人形と、普通のサイズのぬいぐるみがいくつか、布をかけられて載っていた。
 念のため、布を取り除けて確認する。
 クマもウサギも男の子も、皆壁にもたれて空ろに座っている。
「お行儀のよろしいこって」
 教卓を盾に黒板側へ回り、机の死角を確認。ここにもいない。
「納得していただけましたか?」
「あんたまだその格好だったのか。もう手は降ろしていいぜ。だが剣から離れな」
「それはできません。僕の身の安全が保証されなくなります」
「だろうな。俺ぁあんたみたいな頭の切れる奴が神妙にしてるの見ると、逆に疑っちまうんでね。大体、状況が状況だ。
知った顔以外、そんなにあっさり信用できねえんでな」
「なるほど、あなたに感じた印象は正しかったようですね」
 男が剣を取った。
「動くんじゃねえ」
 次元のカスタムオートに構わず、鞘をベルトに差す。
「ではもうひとつ、僕があなたに敵意がないということを証明しましょう。それで信用していただけますか?」
「よく言うぜ……モノによるな。やってみな」
 話をしながらも、次元は油断なく出入り口へとにじり寄っていく。
 柔らかく笑顔を浮かべると、男は右手をさりげなく振りながら、一声囁いた。
「蒼星石。ご挨拶して差し上げて」
「何……」
 引き金にかかる指に神経を集中させた次元の背後で、小さく鞘走りの音が聞こえた。
 慌てて振り返ると、男の子の人形が、どこに隠し持っていたかコンバットナイフを両手に抱え、次元に突きつけている。
「ちっ……!」
 身を捻って飛び下がろうとした次元の近くで、もうひとつ乾いた鉄の音が流れた。
 腰を切って無理矢理逆回転。したところで、細い剣の切先と目が合った。
「……と、いうことなのですが」
「……ちっ。わかったよ。降参だ」
 思ったとおり、こいつはとんだ食わせ者だ。


「こいつはあんたの操り人形か?」
 男に尋ねながら、床に降り立って直立不動の人形を改めてまじまじと確認する。
 男の子とは思ったが、確かヨーロッパの上流の人間には、女の子にこういう格好をさせて喜んでいる変態がいた気がする。
 なんにせよ、これがビスクドールなら、次元にはどちらでもいい話だ。
 首元の大きな柔らかそうな緑のリボンが窮屈そうに見える。
 背負ったコンバットナイフは、人形の小さな体躯には両手剣のように大きい。
 これがアンバランスの美しさですよとか言い出すのだろうな、と次元は思った。
 ナイフの刃は両手剣でいいとしても、刃の幅そのままの柄は人形には握りこめない。
 となると自然、腕で抱えながら振り回す形になり、攻撃は大振り、ただし指先でも引っかかればまるごと持っていかれる。
 そういう相手になる。
 人形のスピードによっては、かなりの脅威だろう。
 特に今のような、机や椅子や棚の多い、暗い建造物の中などは。
 歩いてきた男が、人形の頭にシルクハットをぽんと載せた。とするとこの格好は男の趣味なのだろうか。
「彼女は、糸がなくても自分で動いてくれる優秀なレディなんですよ」
「なんだと?」
 魔法の人形と来たか。
 どう考えても馬鹿馬鹿しい話だが、バンパイアやら人造人間やらゾンビーやらと大真面目に撃ち合いをやった身としては、
 頭から否定するわけにもいかなそうだ。
 それに事実、男の右手に合わせて、人形がぎこちないながらもヨーロッパ貴族のような挨拶をしている。
 見たわけでもないのにまるまる信じるのはバカのやることだが、
 目の前のものをまったく信じようとしないのはバカを突き抜けて地獄行きだ。
 そうそう、確かマシンガンを埋め込んだ武装マネキンなんて代物があったはずだ。それのバージョンアップだと思えば、気休めになる。
「そんなに物珍しそうに見ないであげてください。あなたのダンディズムは、彼女にとっては少し刺激が強すぎるようですから」
「あー、そーかいそーかい……」
 確かに少し警戒されているような雰囲気が、無表情から出ている。
 次元の脇を通り抜けて、男が人形の頬を右手ですっと撫でた。
「蒼星石、しばらく好きにしていていいですよ」
 人形がややぎこちなく関節をほぐし始める。手足の指先まで回し終えると、人形はゆっくりとそのあたりを歩き始めた。
「ヒュー……どうやって動かしてんだ?」
 糸はないとさっきはっきり言っていた。となるとリモコン操作だろうか。まさか本当に武装マネキンのバージョンアップなのか。
「ですから、自分で動いていると言いましたよ」
 答える男の声を横に、次元の目の前で人形が右手を上げた。薬指に銀の環が光っている。
「? こいつがどうかしたか?」
「これですよ」
 思わず人形に尋ねた次元に、男から声がかかる。彼も右手の薬指に銀の環を嵌めていた。
「これで、僕と彼女の心が繋がり、彼女に意思を与えるのです」
 次元は、口が半開きになっているのを自覚していた。
「それじゃあ何だ? 本物の魔法だってのか?」
「僕にもよくわかりませんが、僕が彼女の主である限り、彼女が生きられるのですから。いいじゃないですか」
 次元なら怪しくて絶対に使えない。
 当分口は閉じられなさそうだと思ったところで、ひとつだけ浮かんできた疑問が次元の頭を少し明晰に戻した。
 今、赤と緑の瞳で次元を見上げている人形。
 自分から動く人形なんてのは、騙し討ちに使えばおそらく外すことはないだろう。
 たった今、ライオンの口に頭を突っ込んでいたことを気づかされたばかりだ。相手がその気がなかったからこそ、助かっている。
 その切札をわざわざ見せるということは自殺行為に等しい。
 数分のやりとりでも、それがわからないような相手じゃないことは大体察しがつく。
 なら指輪はフェイクだろう。
 当たりは、別にある。
「ほれほれ」
 じっと見られているとやることもないので、とりあえず人形の喉をさすってやろうと指を出したら、避けられた。
「やめてあげてください。彼女は猫ではないのですから」
 身の置き処が無い。


 聞けば、ソロモンという名のその男、他にも似たような人形を探しているという。
「知り合いか?」
「彼女の姉妹たちだそうです」
 さらなる質問を予期していたらしいソロモンは、渋い顔で黙った次元を見て拍子抜けした色を見せた。
「では、あなたのご友人について聞かせていただけますか」
「ああ……ルパンと五ェ門と不二子と、あと銭形のとっつぁんだな。ルパンは……まあ、俺が見分ける。
五ェ門は着物と刀持った、今の時代にゃちと場違いな奴だ。見りゃすぐにわかる。で不二子は……」
 長らく顔を合わせている連中ばかりだが、他人に説明するとなると、わかりやすくするには少々骨が折れる。
「別に探してるわけじゃねえが、見つけたらよろしく言っといてくれ」
 一通り聞いて、ソロモンはひとつ頷いた。
「ルパンですか。かの高名な怪盗を思い起こさせますね」
「その高名な怪盗様の3代目だってよ」
「それはそれは。聞きましたか? 蒼星石。アルセーヌ=ルパンのお孫さんだそうですよ。お会いするのが楽しみですね」
「喜んでるとこ悪いが、がっかりすると思うぜ」
 抱きあげた人形に顔を寄せて、笑顔で囁いている。
 どうやら自分の世界に入っている間は人形への操作がおろそかになるらしい。人形は、固い顔でぐらぐらと揺れている。
 これから先もこのスキンシップを我慢して見なければならなそうだ。
 それにしてもなんというか、人形に表情がないはずなのにこわばった顔に見えるのも納得できるというか。
 シルクハットがずり落ちかけている。
「……ん? 何でしょうか、蒼星石?」
 小首を傾げた人形の口元へ、ソロモンはそっと耳を近づける。
 口は動いているようだが、声が出ているかどうか、次元には聞こえない。
 聞き終えたらしいソロモンは、必要なことですから、と人形に向かって和やかに笑って首を横に振った。
「……なあ、抱えてて疲れねえか」
「いいえ。彼女は僕の大切なパートナーですから」
 人形相手に世話を焼いてやってもしょうがないと思いながらも、ふと出してみた助け舟は見事に漂流していった。
 しまいには人形が顔を真っ赤にして泣き出すんじゃなかろうかと余計な想像をし、そこまで空気に引き込まれている自分に溜息ひとつ。
 いや、真っ当に考えれば、あのなんとなく嫌がっているような微妙な演技もすべてソロモンの操作が関わっていることになるのだろうか。
 ポケットに手をやる。タバコが無い。次元は足取りも重く椅子に崩れた。

                       ※

 洗面台に立って、準備室からとってきた飾り布を首に巻きつける。
 首輪の上からだから少し息苦しいが、今後のためには大切なことだ。蝶結びにしたら、うまくリボンになってくれた。
「……でもソロモン、僕はあまり演技に自信がないんだ」
「僕もですよ蒼星石。困りましたね」
 準備室から裁縫サンプルらしいぬいぐるみを集めてきたソロモンが、変わらぬ調子で答える。
「わざとらしかったり、ぎこちなかったりすれば、すぐばれてしまうかもしれませんからね……いや、こういうのはどうでしょう。
 最初からわざとらしく、ぎこちなければ?」
「どうするんだい?」
 ナイフをデイバッグから取り出し、紐で背中に結びつける。何度か引き抜く練習をして、その都度紐の調整をする。
「僕は、君に対してオーバーに接しますよ。君は動く人形なのだから、多少ぎこちないぐらいが丁度いい……さあ、
君の荷物は僕のバッグにひとまとめにしてしまいましょう。『人形』が支給品を持っていたら、変ですからね」
 ナイフを取り出したデイバッグが小さく折りたたまれ、取り出された中身と共にソロモンのデイバッグに収められる。
「蒼星石。これに決めました」
 ソロモンの右手の薬指に、銀色の輝きがあった。
「遠目に見れば、ただの金属リングとわからないはずです。これを、僕たちの『契約の指輪』にしましょう」
 ソロモンと同じように蒼星石も、何に使うのかよくわからないがどうやら教材の一部らしい銀色のリングを右手の薬指に嵌める。
「どちらかが指輪を外したら、君は動かないただの人形に戻ってしまいます。そして、僕の指輪を新たに手に入れる人間がいたら
 今度はその人間が君の主になります」
「それじゃあ、その後ソロモンは……?」
「大丈夫、僕は自分で何とかしますよ」
「うん、わかったよ」
 蒼星石を持ち上げ、出入り口近くの背の低い棚に座らせ、両側にクマとウサギを配置する。
「背筋を伸ばして力を抜いて、目はなるべく自然に開いたままで……そう、上手ですね」
 蒼星石がいる違和感を消すために、準備室から少々埃っぽい布を取ってきて、全体にかける。
 ただし、蒼星石がナイフを抜くのに邪魔にならないように。
 蒼星石の準備はこれで終わりである。あとは、ソロモンが人影を呼び込んだ時に、自分の知った人間だったら演技はなし。
 知らない人間なら、ソロモンが合図を送るまで人形のふりを続け、「挨拶しろ」なら威嚇。「月が綺麗だ」なら攻撃。
 「紹介しよう」なら、ソロモンの見知った顔。武器を取る必要は無い。
 だが、念のため演技は続けようとシュヴァリエは言った。
「それから、必ず合図を待ってから行動に移してください。僕も時々、わざと窮地に立つことがありますから」
 蒼星石の行動を見越して、ソロモンはそう釘を刺していた。
「そうそう、ここからが一番大切なところですが」
 夜の光にレイピアを抜き放ち、刃を確かめる。
「もし君が先に狙われるようなことがあっても、僕はあくまで君を武器として扱います。
その代わり、もし君が『ただの人形』の時に僕が死ぬようなことがあっても、僕を助ける必要はありません」
「……時々、わざと死ぬような目にあうから?」
「ええ。そうですね」
 剣が再び鞘に戻る。
「では、始めましょうか」
 誰一人として一番大切な取り決めを守る気が無いまま、即席のチームプレーが始まる。



 始まった。
 終わった。
 そこまでは良かった。
 次元大介は危険な人間ではなさそうだった。現状、彼に不満は無い。
 ただ、ソロモンの蒼星石への接し方は、予想を超えて情熱的だったのが、最大の問題だった。
 ローザミスティカのマスター以外の男性に抱き上げられ、優しく顔を近づけられては、
 演技などしなくても動作がぎこちなくなってしまう。
 次元との交渉中は、よいコンビネーションだと思ったのに。
 普段蒼星石を連れ歩く状態がこちらなら、なんとかして改善してもらわなければ。
「……ん? なんでしょうか、蒼星石?」
 こちらの表情に気づいて、ソロモンが顔に耳を寄せてくる。
 これからずっと、意思の疎通にさえこういう接近を伴うかと思うとめまいがしてくる。
「あ、あのさ、その、もうちょっと控えめに接してほしいんだ……」
 囁きどころか吐息になってしまった蒼星石の申し出に、ソロモンは和やかな慈しむような笑顔を向ける。
「必要なことですから」
 ああ、無表情がこんなにもつらい。
 一体どこまでが演技で、どこまでが素なのだろう。
 ともかく、残念ながら今後当分、この恥ずかしい思いを続けなければならないらしいということがはっきりしてしまった。
「助けて翠星石……」
 なんだか泣きたくなってきた。



【A-1高校内部(2階家庭科室)・一日目 黎明】

【ソロモン・ゴールドスミス@BLOOD+】
[状態]:健康。右手薬指に銀色の金属片を、指輪のふりをして嵌めている。
[装備]:レイピア
[道具]:白衣、ハリセン、望遠鏡、双眼鏡(蒼星石用)、蒼星石のデイバッグ
[思考・状況]
1:音無小夜と合流し、護る
2:翠星石の捜索
3:こちらの利になる範囲に限り、次元に協力
基本:蒼星石の主人の人形遣いを装い同行。人形遣いの演技は、不自然をごまかすため大仰にわざとらしく可愛がる。

【蒼星石@ローゼンメイデンシリーズ】
[状態]:健康。右手薬指に銀色の金属片を、指輪のふりをして嵌めている。緑の大リボンで首輪をカモフラージュ。
[装備]:朝倉涼子のコンバットナイフ
[道具]:リボン、ナイフを背負う紐
[思考・状況]
1:翠星石と合流し、護る
2:音無小夜の捜索
基本:ソロモンの魔道傀儡を装い同行。人形の演技は指導どおりぎこちなく無表情に、声は他人に聞かれないように。
   ただ人形遣いの演技が……

【次元大介@ルパン三世】
[状態]:健康
[装備]:.454カスール カスタムオート(弾:7/7)@ヘルシング ズボンとシャツの間に挟んであります
[道具]:支給品一式、13mm爆裂鉄鋼弾(35発)
[思考・状況]
1:殺された少女(静香)の友達と青い狸を探す
2:ギガゾンビを殺し、ゲームから脱出する
基本:こちらから戦闘する気はないが、向かってくる相手には容赦しない

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08:愛する者の為の騎士 ソロモン・ゴールドスミス 115:Pernicious Deed!
08:愛する者の為の騎士 蒼星石 115:Pernicious Deed!
39:「悪人」の正義 次元大介 115:Pernicious Deed!





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