黒い死神、赤いあくま、そして銀の殺人人形 ◆2kGkudiwr6
私――フェイト・テスタロッサは、双眼鏡で空から麓を見下ろしていた。
普通だったらいい眺めなのかもしれないけど……あいにく、そんなことを感じる余裕は無いみたいだ。
普通だったらいい眺めなのかもしれないけど……あいにく、そんなことを感じる余裕は無いみたいだ。
「……ひどい」
詳細は見えないけど、下はひどい有様。今も、強力な魔力放出の光が走ったばかり。
もし誰かが巻き込まれたとすれば、おそらく……
もし誰かが巻き込まれたとすれば、おそらく……
「見つかったかい?」
例の機械、タチコマが無邪気な様子で呼びかけてくる。
私は首を振って答えようとして……突然、違和感を感じた。
私は首を振って答えようとして……突然、違和感を感じた。
「……あれ?」
「どうしたの?」
「どうしたの?」
ふと西を見る。空に……何かいたような?
だけど、見直した視界の中には何もいなかった。
だけど、見直した視界の中には何もいなかった。
「……気のせいか」
「?」
「なんでもないよ。
この辺だとやっぱり木に邪魔されて探しづらいから、お寺の中に誰かいないか確認して山を下りよう」
「?」
「なんでもないよ。
この辺だとやっぱり木に邪魔されて探しづらいから、お寺の中に誰かいないか確認して山を下りよう」
カレイドルビーは待ち伏せせず、人探しを優先する、と言った。
ならば敵と遭遇するのは避けたい。自分達にとって有効な戦法とは待ち構えて射撃する、というものだからだ。
特にあの蜘蛛と遭遇するのは計画さえ崩れかねない。何としても遭遇は避けなければならない。
そのために、カレイドルビーに「貴女って飛ぶのがへたくそらしいわねぇ」などと告げ、
まず自分が空から誰かいないか探ってみるから二人は隠れているように提案した。
カレイドルビーはぶつくさ言ったものの了承。子供の方も断る理由は無い。
そのまま上手く森の葉に隠れ、マントを羽織って上空へと飛び上がる。
幸い、目撃される心配は少ない。
まず、あの眼鏡の子供はカレイドルビーの方に目を向けがちだ。
カレイドルビーを庇護者として見なしているからだろう。以前私が言った事を覚えているのかもしれないが。
そのカレイドルビーは私の言葉が悔しかったのか、あの杖から魔法の講義を受けていた。
声が微妙に目立ちそうなのが問題だが……結果的には自分の望み通り。
あの蜘蛛はあっさり見つかった。子供を乗せてまだのんびり空を飛んでいる。
真っ直ぐどこかに向かうのではなくその辺を回っているところを見ると、何か探しているのだろうか。
もっとも、こちらに気付いている様子は無い。当然と言えばそうだろう。
あっちは山頂、こっちは森の中、そして私は透明なマント。見つかりようが無い。
素早く降りて、木の葉の中でマントを脱ぎ、隠す……隠し場所が少々、いやかなり不愉快だがしょうがない。
普通に上空から降りてきましたよ、という風に見せかけるにはこうするしかないだろう。
それにここならいざとなれば私の構造物の一部だとでも説明できる。
そうして葉の中から現れた私に、二人は全く疑いの様子を見せていない。マントのことは気付いていないようだ。
この周辺の森は葉が濃くて助かる。あの二人が間抜けなだけかもしれないが。
ならば敵と遭遇するのは避けたい。自分達にとって有効な戦法とは待ち構えて射撃する、というものだからだ。
特にあの蜘蛛と遭遇するのは計画さえ崩れかねない。何としても遭遇は避けなければならない。
そのために、カレイドルビーに「貴女って飛ぶのがへたくそらしいわねぇ」などと告げ、
まず自分が空から誰かいないか探ってみるから二人は隠れているように提案した。
カレイドルビーはぶつくさ言ったものの了承。子供の方も断る理由は無い。
そのまま上手く森の葉に隠れ、マントを羽織って上空へと飛び上がる。
幸い、目撃される心配は少ない。
まず、あの眼鏡の子供はカレイドルビーの方に目を向けがちだ。
カレイドルビーを庇護者として見なしているからだろう。以前私が言った事を覚えているのかもしれないが。
そのカレイドルビーは私の言葉が悔しかったのか、あの杖から魔法の講義を受けていた。
声が微妙に目立ちそうなのが問題だが……結果的には自分の望み通り。
あの蜘蛛はあっさり見つかった。子供を乗せてまだのんびり空を飛んでいる。
真っ直ぐどこかに向かうのではなくその辺を回っているところを見ると、何か探しているのだろうか。
もっとも、こちらに気付いている様子は無い。当然と言えばそうだろう。
あっちは山頂、こっちは森の中、そして私は透明なマント。見つかりようが無い。
素早く降りて、木の葉の中でマントを脱ぎ、隠す……隠し場所が少々、いやかなり不愉快だがしょうがない。
普通に上空から降りてきましたよ、という風に見せかけるにはこうするしかないだろう。
それにここならいざとなれば私の構造物の一部だとでも説明できる。
そうして葉の中から現れた私に、二人は全く疑いの様子を見せていない。マントのことは気付いていないようだ。
この周辺の森は葉が濃くて助かる。あの二人が間抜けなだけかもしれないが。
「どうだった?」
「南西に誰かいるみたいよぉ」
「南西に誰かいるみたいよぉ」
もちろん、嘘だ。
ただあの蜘蛛が北東にいたから、それと正反対の方角を言っただけ。
カレイドルビーに続いて、眼鏡の子供が声を上げた。
ただあの蜘蛛が北東にいたから、それと正反対の方角を言っただけ。
カレイドルビーに続いて、眼鏡の子供が声を上げた。
「それ、青いまん丸なロボットじゃなかった?」
「さあ? 森の中だからはっきりとは見えなかったわねぇ」
「さあ? 森の中だからはっきりとは見えなかったわねぇ」
そもそも何も見ていないのだが。
そんな事実を露知らず、眼鏡の子供ががっかりしたような表情になる。
どうやら知り合いと会えるかもとでも期待していたらしい。
私の知ったことではないが。
そんな事実を露知らず、眼鏡の子供ががっかりしたような表情になる。
どうやら知り合いと会えるかもとでも期待していたらしい。
私の知ったことではないが。
「その様子だと、どんな武器を持ってたかも……」
「ええ、はっきりとは見えなかったわねえ」
「……しょうがないわね。とりあえず見に行くから案内して。
それとあなた、いつでも逃げ出せるように覚悟しときなさいよ。
ゲームに乗ってる奴かもしれないんだから」
「う、うん」
「ええ、はっきりとは見えなかったわねえ」
「……しょうがないわね。とりあえず見に行くから案内して。
それとあなた、いつでも逃げ出せるように覚悟しときなさいよ。
ゲームに乗ってる奴かもしれないんだから」
「う、うん」
カレイドルビーの言葉に眼鏡の子供が頷いた。どうやら私の言った通り南西に向かう気になったようだ。
……実際はただの嘘なのだが。
……実際はただの嘘なのだが。
――誰も見つからなくても、すれ違ったんじゃないって言えばいいしねぇ。
そう心の中で呟いて、あの蜘蛛がいた方向と反対に歩き出す。
……この時は、まさか本当に誰かと遭遇するとは思わなかったのだが。
……この時は、まさか本当に誰かと遭遇するとは思わなかったのだが。
歩いてしばらく後。
川の向こうに、人影。変な耳を生やした女だ。
それを見て、ふと思った。
川の向こうに、人影。変な耳を生やした女だ。
それを見て、ふと思った。
――まるで、ジャンクみたいねぇ。
表情は無い。ただ、あても無く歩いているだけ。まるで白痴。
自分達姉妹よりこの女の方がよっぽど人形のようだと思う。
「水銀橙、あんたが見た人影ってあれでいいわけ?」
「多分ね。詳しく確認はできてないから違うかもしれないけどぉ」
自分達姉妹よりこの女の方がよっぽど人形のようだと思う。
「水銀橙、あんたが見た人影ってあれでいいわけ?」
「多分ね。詳しく確認はできてないから違うかもしれないけどぉ」
カレイドルビーからの問いに、私はそう答える。
言うまでも無く、口からでまかせである。
そしてこちらも言うまでも無く、カレイドルビーはそんなことに気付かずに呟いた。
言うまでも無く、口からでまかせである。
そしてこちらも言うまでも無く、カレイドルビーはそんなことに気付かずに呟いた。
「にしても変な格好ね……」
『「「あなた(貴女、お姉さん)も」」』
「……ぐぅ」
『「「あなた(貴女、お姉さん)も」」』
「……ぐぅ」
三者(?)からの強烈なツッコミにカレイドルビーはぐうの音も……いや、出てるか。
それはともかく、これだけ騒いでいれば相手に私達の声が聞こえているはずだ。
しかし、反応する様子は全く無い。……本当に白痴か?
それはともかく、これだけ騒いでいれば相手に私達の声が聞こえているはずだ。
しかし、反応する様子は全く無い。……本当に白痴か?
「すみませーん!」
そんなことに気付いているのかいないのか、眼鏡の子供が大声を上げる……
馬鹿が、違う参加者にまで声が聞こえたらどうする?
とはいえ効果はあったようで、女はこちらに振り向いた。
馬鹿が、違う参加者にまで声が聞こえたらどうする?
とはいえ効果はあったようで、女はこちらに振り向いた。
「……何ですか」
眼鏡の子供は何か言おうとしたらしい。喉を鳴らすような音が聞こえた。
もっとも「らしい」に留まっていたが。理由は簡単に分かる。
女の顔には、生気と言うものが全く感じられないからだろう。
カレイドルビーもどう声をかければいいか迷っているようだし、
私には元々声をかける理由は無い。あんな女なんてどうでもいいから。
沈黙が周囲に広がる。そんな中で始めに動いたのは、あの女。
こちらを無視して再び川沿いに歩き出した。
私としてはそのまま放っておきたかったのだが、そうはならなかった。
カレイドルビーが慌てて止めたのだ。放っておけばいいものを。
もっとも「らしい」に留まっていたが。理由は簡単に分かる。
女の顔には、生気と言うものが全く感じられないからだろう。
カレイドルビーもどう声をかければいいか迷っているようだし、
私には元々声をかける理由は無い。あんな女なんてどうでもいいから。
沈黙が周囲に広がる。そんな中で始めに動いたのは、あの女。
こちらを無視して再び川沿いに歩き出した。
私としてはそのまま放っておきたかったのだが、そうはならなかった。
カレイドルビーが慌てて止めたのだ。放っておけばいいものを。
「ちょっと待ちなさいよ!
見る限りじゃろくな武器も持ってない……というか、
ろくな注意さえ払ってないわね。自殺でもするつもり?」
「……関係、無いじゃないですか」
見る限りじゃろくな武器も持ってない……というか、
ろくな注意さえ払ってないわね。自殺でもするつもり?」
「……関係、無いじゃないですか」
今度はこちらに目さえ向けようとはしない。見さえしないで川沿いに歩いていく。
まるでゼンマイで動く人形だ。ただ歩くためだけが目的に作られた、下らないジャンク人形。
カレイドルビーが言葉に詰まる。詰まりながらも、強引に言葉を続けた。
まるでゼンマイで動く人形だ。ただ歩くためだけが目的に作られた、下らないジャンク人形。
カレイドルビーが言葉に詰まる。詰まりながらも、強引に言葉を続けた。
「確かに、確かに関係ないけど……
あんたなんのために歩いてるのよ。何も目的が無いんなら、せめて……」
「もく、てき……?」
あんたなんのために歩いてるのよ。何も目的が無いんなら、せめて……」
「もく、てき……?」
それがきっかけだった。
女が、突然足を止めた。そして、言葉を呟き出す。まるで、壊れた精密機械のエラー音のように。
「私は、ハクオロさんを探して……見つけて……一緒に……」
女が、突然足を止めた。そして、言葉を呟き出す。まるで、壊れた精密機械のエラー音のように。
「私は、ハクオロさんを探して……見つけて……一緒に……」
小さな声で呟く女は、自身を掻き抱いた。無表情のままで。
ジャンク人形を思わせるその様は、私ですら一瞬寒気を感じた。
他の二人は言うまでも無い。子供に至っては明らかに二、三歩退いている。
ジャンク人形を思わせるその様は、私ですら一瞬寒気を感じた。
他の二人は言うまでも無い。子供に至っては明らかに二、三歩退いている。
「ハクオロさんは……死んじゃってて……
でも、おかしいよ……あの人が死ぬはずない……」
でも、おかしいよ……あの人が死ぬはずない……」
明らかに私たちのことは……いや、周囲の全てが視界に入っていない。
他の二人が黙りこむ中、私は冷静に言葉を出した。
他の二人が黙りこむ中、私は冷静に言葉を出した。
「……係わり合いにならないほうがいいわぁ」
「水銀橙?」
「カレイドルビーも分かってるんでしょお?
あれはもう……ジャンクよ」
「水銀橙?」
「カレイドルビーも分かってるんでしょお?
あれはもう……ジャンクよ」
これは嘘じゃない。本音だ。
連れて行くには不安要素が大きすぎる。
突然発狂したあの女に後ろから刺される、なんて目には遭いたくない。
放っておきたい、というレベルじゃない。放っておくべきだ。
カレイドルビーも分かっているはずだ。私の言葉が正しい。
……それを。
連れて行くには不安要素が大きすぎる。
突然発狂したあの女に後ろから刺される、なんて目には遭いたくない。
放っておきたい、というレベルじゃない。放っておくべきだ。
カレイドルビーも分かっているはずだ。私の言葉が正しい。
……それを。
「お姉さん、でも……」
眼鏡の子供が妨害する。
憐憫か、同情か、それともカレイドルビーは何でもできる、救えると思い込んでいるのか。
理由はどうでもいい、問題なのはあの女を放っておけないと思っていることだ。
更に問題なのは、カレイドルビーが溜め息を吐いたこと……分かったわよ、と言わんばかりに。
吐きたいのはこっちの方だ。どうやら、また厄介ごとを背負うつもりらしい。
憐憫か、同情か、それともカレイドルビーは何でもできる、救えると思い込んでいるのか。
理由はどうでもいい、問題なのはあの女を放っておけないと思っていることだ。
更に問題なのは、カレイドルビーが溜め息を吐いたこと……分かったわよ、と言わんばかりに。
吐きたいのはこっちの方だ。どうやら、また厄介ごとを背負うつもりらしい。
『Flier Fin』
ふわりとカレイドルビーが飛んだ。
どうやらコツを掴んできたらしく、華麗に川を飛び越えて、女の正面に着地する。
せいぜい十数メートル程度の飛行距離だったからかもしれないが。
どうやらコツを掴んできたらしく、華麗に川を飛び越えて、女の正面に着地する。
せいぜい十数メートル程度の飛行距離だったからかもしれないが。
「……私は、私は」
「即興でも補助があれば余裕よね」
『Accel Mode』
「即興でも補助があれば余裕よね」
『Accel Mode』
未だに呟き続ける女に、カレイドルビーが杖を向ける。同時に、その左腕が光った。
「眠りなさい」
そう告げると同時に、変な耳を生やした女は崩れ落ちた。
まるでゼンマイの切れたジャンク人形のように。
まあ、殺したわけではないんだろう。残念極まる。
まるでゼンマイの切れたジャンク人形のように。
まあ、殺したわけではないんだろう。残念極まる。
「凄い、本当に魔法使いなんだ」
「魔法使いじゃなくて、魔術師」
子供の言葉をそう訂正して、カレイドルビーは女を抱えて再び飛んだ。
多少ふらつきながらも、再び川を飛び越えて私達の前に着地する。
もう予想は付くが、制止を兼ねて確認の言葉を出してみた。
「魔法使いじゃなくて、魔術師」
子供の言葉をそう訂正して、カレイドルビーは女を抱えて再び飛んだ。
多少ふらつきながらも、再び川を飛び越えて私達の前に着地する。
もう予想は付くが、制止を兼ねて確認の言葉を出してみた。
「……まさか眠ってる人間を背負いながら進むつもり?
今襲われれば、その女どころか貴女さえ助けられる自信はないわよぉ?」
「うっさいわね。使い魔らしく従ってなさい!」
今襲われれば、その女どころか貴女さえ助けられる自信はないわよぉ?」
「うっさいわね。使い魔らしく従ってなさい!」
今度は我慢せずに溜め息を吐いた。吐かざるを得ない。全く……甘いことだ。
――ま、いいでしょ。
所詮は無力なただの女。
殺すチャンスはいくらでもある。あの妙な髪形をした子供のように。
盾にするのもいい。これ以上人が増えるようなら、隙を見て暗殺するのもいいだろう。
……ただし、自分の本性を晒すつもりはまだない。
やるなら敵の攻撃に見せかけるか……もしくは、罪を擦り付けるか。
……やりやすい状況くらい作っておくべきか。
そう思い、一つ提案をする。
殺すチャンスはいくらでもある。あの妙な髪形をした子供のように。
盾にするのもいい。これ以上人が増えるようなら、隙を見て暗殺するのもいいだろう。
……ただし、自分の本性を晒すつもりはまだない。
やるなら敵の攻撃に見せかけるか……もしくは、罪を擦り付けるか。
……やりやすい状況くらい作っておくべきか。
そう思い、一つ提案をする。
「ねえ、病院にいかなぁい?」
「どうしたのよ、急に?」
「いい加減、人が増えてきたわ。
だったらひとまずその眼鏡の治療をしてやればいいじゃなあい。
まだ走れないんでしょお?」
「う、うん」
「それに、病院ならその女を置いてこれそうなところもあるしぃ」
「置いてくるってあんた……」
「下手に連れて歩くより、隠しておく方がどっちも生き残りやすいと思うけどねぇ?」
「どうしたのよ、急に?」
「いい加減、人が増えてきたわ。
だったらひとまずその眼鏡の治療をしてやればいいじゃなあい。
まだ走れないんでしょお?」
「う、うん」
「それに、病院ならその女を置いてこれそうなところもあるしぃ」
「置いてくるってあんた……」
「下手に連れて歩くより、隠しておく方がどっちも生き残りやすいと思うけどねぇ?」
実際は邪魔だからさっさとどこかに置いてきたいだけだが。
もっとも、正論ではあるだろう。あまり世話を焼いてやる義理はないはずだ。
しかし。
もっとも、正論ではあるだろう。あまり世話を焼いてやる義理はないはずだ。
しかし。
「……駄目よ。少なくとも目が覚めて事情を聞くまでは。またさっきみたいにうろつくかもしれないでしょ。
数時間あれば催眠も解けるから、それまで病院に留まる。
それでいいわね」
「……好きにすれば?」
数時間あれば催眠も解けるから、それまで病院に留まる。
それでいいわね」
「……好きにすれば?」
再び、溜め息を吐く。
やはりか。予想通り、だ。随分甘いこと。
もっとも、こうなるだろうから病院行きを提案したのだけれど。
そう。私が病院に行くのを提案した理由は、拾った女を捨てるためではない。
私の目的は毒の入手。これ以上、カレイドルビーが人を拾うことに備えて。
別に薬に詳しいわけではないが、手に入れるのは水銀などの重金属でもいいのだ。人を殺せれば。
あまりに人が増えるようなら、そういった毒物を飲み物などに混入して殺す。
ドールである自分には毒が通用しない以上、自分が毒見をやって安心させるという手も使えるだろう。
使える人間か否かにもよるが……七人前後。それくらいが、私の許容範囲だ。
同時に、これくらいの数がいれば不信を煽るのも簡単な人数だろう。
もっとも、殺すのは一人か二人でいい。必要なのは内部分裂とカレイドルビーの安全だけ。
カレイドルビーが誰かに疑心さえ持てば、そのまま先制攻撃で殺してしまえる。
但し、強力な前衛が見つかればそいつは生かしておく。騙されやすい馬鹿である場合に限り、だが。
とりあえず、一言だけ言っておくことにする。
やはりか。予想通り、だ。随分甘いこと。
もっとも、こうなるだろうから病院行きを提案したのだけれど。
そう。私が病院に行くのを提案した理由は、拾った女を捨てるためではない。
私の目的は毒の入手。これ以上、カレイドルビーが人を拾うことに備えて。
別に薬に詳しいわけではないが、手に入れるのは水銀などの重金属でもいいのだ。人を殺せれば。
あまりに人が増えるようなら、そういった毒物を飲み物などに混入して殺す。
ドールである自分には毒が通用しない以上、自分が毒見をやって安心させるという手も使えるだろう。
使える人間か否かにもよるが……七人前後。それくらいが、私の許容範囲だ。
同時に、これくらいの数がいれば不信を煽るのも簡単な人数だろう。
もっとも、殺すのは一人か二人でいい。必要なのは内部分裂とカレイドルビーの安全だけ。
カレイドルビーが誰かに疑心さえ持てば、そのまま先制攻撃で殺してしまえる。
但し、強力な前衛が見つかればそいつは生かしておく。騙されやすい馬鹿である場合に限り、だが。
とりあえず、一言だけ言っておくことにする。
「前にも言ったと思うけど、私は……」
「……分かってるわよ」
「……分かってるわよ」
返ってきたのは嫌そうな顔と溜め息。けれでも、反論は無い。
理由は分かる。なぜなら、これが正論だから。
同時に、これは大甘なカレイドルビーにとって厳しい言葉だ。
だからこそ、その裏にある闇には気付けない。
ある程度の黒さだけを表に出しておけば、まさかこれ以上の闇を抱えているとは思えないだろうから。
無駄に善人ぶる演技なんてできないし、したくもない。
だから徹底的なリアリスト程度に思わせておけばいい。言いたいことをはっきり言う人形だと思わせておけばいい。
カレイドルビーが私に言う事はもっともだと感じている以上、捨てられる可能性もまた、低いのだから。
理由は分かる。なぜなら、これが正論だから。
同時に、これは大甘なカレイドルビーにとって厳しい言葉だ。
だからこそ、その裏にある闇には気付けない。
ある程度の黒さだけを表に出しておけば、まさかこれ以上の闇を抱えているとは思えないだろうから。
無駄に善人ぶる演技なんてできないし、したくもない。
だから徹底的なリアリスト程度に思わせておけばいい。言いたいことをはっきり言う人形だと思わせておけばいい。
カレイドルビーが私に言う事はもっともだと感じている以上、捨てられる可能性もまた、低いのだから。
「さっさと行くわよ」
「うん」
「はいはい」
「うん」
「はいはい」
そんな思惑は心の底に隠し、私はカレイドルビーに従って歩き出した。
【B-7 1日目 昼】
【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:疲労(小)、全身に軽傷、背中に打撲、決意
[装備]:S2U(元のカード形態)@魔法少女リリカルなのは、双眼鏡
[道具]:支給品一式、西瓜1個@スクライド、NTW20対物ライフル@攻殻機動隊S.A.C(弾数3/3)
[思考]
1:ひとまずお寺へ行って、そのあと山を下りる。
2:双眼鏡を使い、タチコマに乗って他の参加者を探す。
3:カルラの仲間に謝る。
4:自分の友人とタチコマの仲間との合流。
5:眼鏡の少女と遭遇したら自分が見たことの真相を問いただす。
基本:シグナム、ヴィータ、眼鏡の少女や他の参加者に会い、もし殺し合いに乗っていたら止める。
[備考]
カルラの墓には『西瓜@スクライド』が供えられています。
[状態]:疲労(小)、全身に軽傷、背中に打撲、決意
[装備]:S2U(元のカード形態)@魔法少女リリカルなのは、双眼鏡
[道具]:支給品一式、西瓜1個@スクライド、NTW20対物ライフル@攻殻機動隊S.A.C(弾数3/3)
[思考]
1:ひとまずお寺へ行って、そのあと山を下りる。
2:双眼鏡を使い、タチコマに乗って他の参加者を探す。
3:カルラの仲間に謝る。
4:自分の友人とタチコマの仲間との合流。
5:眼鏡の少女と遭遇したら自分が見たことの真相を問いただす。
基本:シグナム、ヴィータ、眼鏡の少女や他の参加者に会い、もし殺し合いに乗っていたら止める。
[備考]
カルラの墓には『西瓜@スクライド』が供えられています。
【タチコマ@攻殻機動隊S.A.C】
[状態]:装甲はぼこぼこ、ダメージ蓄積、燃料わずかに消費
[装備]:ベレッタM92F(残弾16、マガジン15発、マガジン14発)、タチコマの榴弾@攻殻機動隊S.A.C
タケコプター@ドラえもん(残り使用時間6:32)
[道具]:支給品一式×2、燃料タンクから1/8補給済み、お天気ボックス@ドラえもん、西瓜47個@スクライド
龍咲海の生徒手帳、庭師の如雨露@ローゼンメイデンシリーズ
エルルゥの薬箱@うたわれるもの(治療系の薬はなし。筋力低下剤、嘔吐感をもたらす香、
揮発性幻覚剤、揮発性麻酔薬、興奮剤、覚醒剤など)
[思考]
1:ひとまずお寺へ行って、その後山を下りる。
2:空中から他の参加者の捜索。
3:フェイトを彼女の仲間の元か安全な場所に送る。
4:九課のメンバーと合流。
5:自分を修理できる施設・人間を探す。
[備考]
光学迷彩の効果が低下しています。被発見率は多少下がるものの、あまり戦闘の役には立ちません。
効果を回復するには、適切な修理が必要です。
タケコプターは最大時速80km、最大稼動電力八時間です。
[状態]:装甲はぼこぼこ、ダメージ蓄積、燃料わずかに消費
[装備]:ベレッタM92F(残弾16、マガジン15発、マガジン14発)、タチコマの榴弾@攻殻機動隊S.A.C
タケコプター@ドラえもん(残り使用時間6:32)
[道具]:支給品一式×2、燃料タンクから1/8補給済み、お天気ボックス@ドラえもん、西瓜47個@スクライド
龍咲海の生徒手帳、庭師の如雨露@ローゼンメイデンシリーズ
エルルゥの薬箱@うたわれるもの(治療系の薬はなし。筋力低下剤、嘔吐感をもたらす香、
揮発性幻覚剤、揮発性麻酔薬、興奮剤、覚醒剤など)
[思考]
1:ひとまずお寺へ行って、その後山を下りる。
2:空中から他の参加者の捜索。
3:フェイトを彼女の仲間の元か安全な場所に送る。
4:九課のメンバーと合流。
5:自分を修理できる施設・人間を探す。
[備考]
光学迷彩の効果が低下しています。被発見率は多少下がるものの、あまり戦闘の役には立ちません。
効果を回復するには、適切な修理が必要です。
タケコプターは最大時速80km、最大稼動電力八時間です。
【D-4山道・1日目 昼】
【魔法少女カレイドルビーチーム】
【遠坂凛(カレイドルビー)@Fate/ Stay night】
[状態]:魔力小消費/カレイドルビー状態/水銀橙と『契約』/エルルゥを背負っている
[装備]:レイジングハート・エクセリオン(アクセルモード)@魔法少女リリカルなのは
[道具]:支給品一式(パン0.5個消費 水1割消費)、ヤクルト一本
[思考]
1:高町なのはを探してレイジングハートを返す。
2:ドラえもんを探し、詳しい科学技術についての情報を得る。
3:アーチャーやセイバーがどうなっているか、誰なのかを確認する。
4:知ってるセイバーやアーチャーなら、カレイドルビーの姿はできる限り見せない。
5:自分の身が危険なら手加減しない。可能な限りのび太を守る。
[備考]:
緑の髪のポニーテールの女(園崎魅音。名前は知らない)を危険人物と認識。
レイジングハートからの講義は何らかの効果があったかもしれませんが、それらの実践はしていません。
レイジングハートは、シグナム戦で水銀燈がスネ夫をかばうフリをして見捨てたことを知っており、水銀燈を警戒しています。
【遠坂凛(カレイドルビー)@Fate/ Stay night】
[状態]:魔力小消費/カレイドルビー状態/水銀橙と『契約』/エルルゥを背負っている
[装備]:レイジングハート・エクセリオン(アクセルモード)@魔法少女リリカルなのは
[道具]:支給品一式(パン0.5個消費 水1割消費)、ヤクルト一本
[思考]
1:高町なのはを探してレイジングハートを返す。
2:ドラえもんを探し、詳しい科学技術についての情報を得る。
3:アーチャーやセイバーがどうなっているか、誰なのかを確認する。
4:知ってるセイバーやアーチャーなら、カレイドルビーの姿はできる限り見せない。
5:自分の身が危険なら手加減しない。可能な限りのび太を守る。
[備考]:
緑の髪のポニーテールの女(園崎魅音。名前は知らない)を危険人物と認識。
レイジングハートからの講義は何らかの効果があったかもしれませんが、それらの実践はしていません。
レイジングハートは、シグナム戦で水銀燈がスネ夫をかばうフリをして見捨てたことを知っており、水銀燈を警戒しています。
【水銀燈@ローゼンメイデンシリーズ】
[状態]:服の一部損傷/『契約』による自動回復
[装備]:ヘンゼルの手斧@BLACK LAGOON
[道具]:透明マント@ドラえもん
[思考・状況]
1:カレイドルビーとの『契約』はできる限り継続、利用。最後の二人になったところで殺しておく。
2:カレイドルビーの敵を作り、戦わせる。
3:何かしらの有害性物質を病院で見つけ、あまりに人が増えるようなら誰か一人殺す。
4:真紅達ドールを破壊し、ローザミスティカを奪う。
5:青い蜘蛛はまだ手は出さない。
[状態]:服の一部損傷/『契約』による自動回復
[装備]:ヘンゼルの手斧@BLACK LAGOON
[道具]:透明マント@ドラえもん
[思考・状況]
1:カレイドルビーとの『契約』はできる限り継続、利用。最後の二人になったところで殺しておく。
2:カレイドルビーの敵を作り、戦わせる。
3:何かしらの有害性物質を病院で見つけ、あまりに人が増えるようなら誰か一人殺す。
4:真紅達ドールを破壊し、ローザミスティカを奪う。
5:青い蜘蛛はまだ手は出さない。
[備考]:凛の名をカレイドルビーだと思っている。
透明マントは子供一人がすっぽりと収まるサイズ。複数の人間や、大人の男性では全身を覆うことできません。
また、かなり破れやすいです。
透明マントについては凛にものび太にも話していない。
透明マントは子供一人がすっぽりと収まるサイズ。複数の人間や、大人の男性では全身を覆うことできません。
また、かなり破れやすいです。
透明マントについては凛にものび太にも話していない。
【野比のび太@ドラえもん】
[状態]:喪失に対する恐怖/左足に負傷(走れないが歩ける程度に治療)
[装備]:ワルサーP38(0/8)@ルパン三世
[道具]:USSR RPG7(残弾1)、ホ○ダのスーパーカブ(使用不能)
スーパーピンチクラッシャーのオモチャ@スクライド、支給品一式(パン1つ消費、水1/8消費)
[思考]
1:カレイドルビーと共にドラえもん、ジャイアンを探して合流する。
2:なんとかしてしずかの仇を討ちたい。
[備考]:凛の名をカレイドルビーだと思っている。
[状態]:喪失に対する恐怖/左足に負傷(走れないが歩ける程度に治療)
[装備]:ワルサーP38(0/8)@ルパン三世
[道具]:USSR RPG7(残弾1)、ホ○ダのスーパーカブ(使用不能)
スーパーピンチクラッシャーのオモチャ@スクライド、支給品一式(パン1つ消費、水1/8消費)
[思考]
1:カレイドルビーと共にドラえもん、ジャイアンを探して合流する。
2:なんとかしてしずかの仇を討ちたい。
[備考]:凛の名をカレイドルビーだと思っている。
水銀燈の『契約』について
厳密に言うと契約ではなく、水銀橙の特殊能力による一方的な魔力の収奪です。
凛からの解除はできませんが、水銀橙からの解除は自由です。再『契約』もできます。
ただし、凛が水銀橙から離れていれば収奪される量は減ります。
通常の行動をする分には凛に負荷はかかりません。
水銀橙が全力で戦闘をすると魔力が少し減少しますが、凛が同時に戦闘するのに支障はありません。
ただしこれは凛の魔力量が平均的な魔術師より遥かに多いためであり、魔力がない参加者や
平均レベルの魔力しかない魔術師では負荷が掛かる可能性があります。
逆に言えば、なのは勢やレイアース勢などは平気です。
厳密に言うと契約ではなく、水銀橙の特殊能力による一方的な魔力の収奪です。
凛からの解除はできませんが、水銀橙からの解除は自由です。再『契約』もできます。
ただし、凛が水銀橙から離れていれば収奪される量は減ります。
通常の行動をする分には凛に負荷はかかりません。
水銀橙が全力で戦闘をすると魔力が少し減少しますが、凛が同時に戦闘するのに支障はありません。
ただしこれは凛の魔力量が平均的な魔術師より遥かに多いためであり、魔力がない参加者や
平均レベルの魔力しかない魔術師では負荷が掛かる可能性があります。
逆に言えば、なのは勢やレイアース勢などは平気です。
【エルルゥ@うたわれるもの】
[状態]:ハクオロの死による重度の虚無感。暗示による強制睡眠(数時間で解除)。
[装備]:なし
[道具]:惚れ薬@ゼロの使い魔、たずね人ステッキ@ドラえもん、五寸釘(残り30本)&金槌@ひぐらしのなく頃に
市販の医薬品多数(胃腸薬、二日酔い用薬、風邪薬、湿布、傷薬、正露丸、絆創膏etc)、紅茶セット(残り4パック)
[思考・状況]1:睡眠
[備考]※絶望により何をする気もなれない状態ですが、今のところ優勝して願いを叶えるという考えは否定しています。
※フーとその仲間(ヒカル、ウミ)、更にトーキョーとセフィーロ、魔法といった存在について何となく理解しました。
[道具備考]
1:惚れ薬→異性にのみ有効。飲んでから初めて視界に入れた人間を好きになる。効力は長くて一時間程度。(残り六割)
2:たずね人ステッキ→三時間につき一回のみ使用化。一度使用した相手には使えない。死体にも有効。的中率は70パーセント。
[状態]:ハクオロの死による重度の虚無感。暗示による強制睡眠(数時間で解除)。
[装備]:なし
[道具]:惚れ薬@ゼロの使い魔、たずね人ステッキ@ドラえもん、五寸釘(残り30本)&金槌@ひぐらしのなく頃に
市販の医薬品多数(胃腸薬、二日酔い用薬、風邪薬、湿布、傷薬、正露丸、絆創膏etc)、紅茶セット(残り4パック)
[思考・状況]1:睡眠
[備考]※絶望により何をする気もなれない状態ですが、今のところ優勝して願いを叶えるという考えは否定しています。
※フーとその仲間(ヒカル、ウミ)、更にトーキョーとセフィーロ、魔法といった存在について何となく理解しました。
[道具備考]
1:惚れ薬→異性にのみ有効。飲んでから初めて視界に入れた人間を好きになる。効力は長くて一時間程度。(残り六割)
2:たずね人ステッキ→三時間につき一回のみ使用化。一度使用した相手には使えない。死体にも有効。的中率は70パーセント。
時系列順で読む
Back:圧倒的な力、絶対的な恐怖 Next:逃げたり諦めることは誰にも
投下順で読む
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113:触らぬタチコマに祟り無し Flying tank | フェイト・T・ハラオウン | 165:Boys don't cry |
113:触らぬタチコマに祟り無し Flying tank | タチコマ | 165:Boys don't cry |
126:たとえ道が見えなくとも | 遠坂凛 | 175:いざない |
126:たとえ道が見えなくとも | 水銀燈 | 175:いざない |
126:たとえ道が見えなくとも | 野比のび太 | 175:いざない |
123:親友を失った悲しみと、愛する人を失った悲しみ | エルルゥ | 175:いざない |