終わりの始まり

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「本当に、あんなことで死ぬなんて………未だに、信じられません……」
「………ギャグの神も、死には勝てないんだよ」

タルクとS×Hがそう呟いた。今彼らは、葬儀の準備をしている。
執政・刻生・F・悠也の葬儀である。
あの後アフロになって出てくると思われた刻生は、全く別のベクトルの姿で現れた。
黒く焦げた、物言わぬ姿となって。
王城を壊した元凶ではあったが、その実誰からも頼りにされていた彼。
それだけに、全員が国葬にしようと提案したのだった。

王国公開講堂は葬儀の用意をする人々が走り回り、騒然たる様子であった。
そんな吏族達や職人や神官達を、既に築かれた祭壇の上の方に飾られた額の中からニカッと笑った刻生・F・悠也が見下ろしていた。
その中で。葬儀会場設営の指揮をしていたtactyは、ふと摂政SOUが祭壇の前に立ち、
遺影を見上げているのを見つけた。喪服である。

「『俺は女性の膝の上でしか死なん!』って言っていたくせに…この…大嘘つきめ…」

そう摂政が呟くのを聞いた。がやがやと煩かったが、tactyははっきりとそう聞こえた。

「……」

だが、次の言葉は聞こえなかった。口は動いたが、声は聞こえなかったのだった。
そして摂政SOUは立ち去った。つかつかと彼は歩いて行く。講堂を、出た。
聞かれたくない言葉か。とtactyは考えた。それから、自分も摂政の真似をして遺影の前に立つ。
葬儀の為に吏族になったわけではないのだが。そう呟いた。刻生は笑っている。
少し奥歯を噛んで、葬儀の準備に戻った。



翌日、急な出来事にもかかわらず、国葬はすぐに行われた。
多くの参列者が席を埋め尽くし、それだけで彼が好かれていたことを証明した。
司会進行のamurに呼ばれ、たくまが弔辞を述べる。

「あんな、事故で死んでしまうとは思っても居なかったからあんまりいい言葉は言えない。
 ただ、一つだけ言えることがある
 今まで、私を支えてくれたことに最大の感謝を。
 そして、どうか安らかに」

たくまが祭壇から離れる。席から嗚咽が聞こえ始めた。
静かに、amurが次に弔辞を述べる人間を呼んだ。
呼ばれた者一人一人が、言葉を選びながら静かに悲しみを重ねてゆく。
特に親交の深かった代表9名が弔辞を述べたところで、誰かが席を立った。
次へ進行しようとしていたamurも含め、全員がその人物を見る。
刻生の下宿先に住んでいた少年、リックだった。
顔は既に涙でぐしゃぐしゃになっており、肩を何度も震わせながら嗚咽を堪えていた。
両親がとめるのも聞かず、祭壇へと駆けて行く。

「なんでいなくなっちゃたんだよー!」

棺に取り付き、何度も叩きながら泣き叫ぶ。
止めようとする黒服たちを、たくまが制した。

「むてきな、ひっく、せいぎのみかたはらっていっれらやないかー!」

もはや言葉になっていないが、棺を叩きつづける。
ばかーと言ってるようにも聞こえる。
それを聞いた人がすすり泣く声も加わり、泣き声のオーケストラとなっていた。
オーケストラはリックが泣き止んで、両親が連れ戻しに行くまで続いた。
落ち着いた後、次へと進もうとするamurの声も、かすかに震えていた。

それ以降、式は滞りなく進んだ。
あまりの悲しみに、滞りなく進むしかなかったといってもいい。
式の最後では多くの人に送られて、刻生は再び火の中に包まれて灰となり、
その灰は国王をはじめとする人々によって海に撒かれ、刻生の肉体は王国から消え去った。

ここにも参加していたリックを見て、ニーズホッグが苦い顔をする。

「嘘をつくってのは、大変だな」
「……めったなことは、言っちゃいけませんよ」
「分かってるが………やはり、辛いものです」

Wyrdも苦い顔で相槌を打つ。
ニーズホッグは忌々しげに自らの喪服を見ると、舌打ちをした。

「こんなもの、何の意味も無いというのに」











続く

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