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「プリズムライト(前編)」(2022/01/15 (土) 21:08:31) の最新版変更点
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**プリズムライト(前編) ◆B0yhIEaBOI
人間は光が無いと生きてはゆけない。
昇りつつある朝日を見ながら、遠坂凛は唐突にそう悟った。
闇が嫌いな訳ではない。闇に包まれて安らぐことができるのもまた、人間だ。
でも、闇だけでは駄目なのだ。
闇の中で、自分を照らし、世界を照らし、自分の歩む道を照らす。
そんな光がなければ、人は前には進めない。
ほんのひとすじの光でいいのだ。
その光さえあれば、人はそれを頼りに前に進んでゆける。
そして人は火を手にし、闇の中でも前に進もうとする。
だがその火は、自らの手で熾さなければならない。
だから、私は火を熾す。
幽かに揺れる種火を消すまいと、必死に薪をくべる。
そうすれば、もしも私が倒れても、きっと誰かがその火を受け継いでくれる。
そして何時の日か、その火は闇夜を明々と照らす大火に成るのだ。
「……話って、なんですか」
東の空を眺めたままの凛に痺れを切らしたのか、青色の自称猫型ロボット――ドラえもんが口を開いた。
ここは病院の屋上。
病院に集まった人間の中で最も疲労が少なく、
且つそれに適した能力を持った凛が見張りを買って出た為、凛はそこにいた。
そして、その凛に呼ばれたために、ドラえもんはそこにいた。
改めて見ると、本当に大きな口だ。人の頭ぐらいなら飲み込んでしまえそうな程に。
尤も、そんな不穏な考えを相手に抱かせない不思議な安心感をこのロボットは持っている。
だからこそ凛は、敢えて不信感の漂う水銀燈を遠ざけて、ドラえもんを選んだわけでもあるのだが。
「ええ、話、それも大事な話なんだけど、どこから話したらいいかしらね……」
凛がドラえもんと話さなければならないことは無数にあった。
ドラえもんの科学技術とやらについて。
あのギガゾンビの能力について。
凛の魔術について。
レイジングハートの魔法について。
そして、それらの情報を最大限に駆使して首輪を外し、主催者を倒し、この世界から脱出する方法について。
これらの全てを話しきるのに、一体どれだけの時間が必要なのか。凛には見当もつかなかった。
だが、やらねばならない。
ここに希望という名の種火があり、情報という名の薪が有るのだから。
「そうね。話ってのも色々あるんだけど――最初に『魔法』と『魔術』のことを話しておくわ」
魔法? とドラえもんが怪訝な表情を浮かべたが、凛は気にせず話を続ける。
「魔術と、魔法。貴方達は混同してしまうかもしれないけれど、我々はこの2つを明確に区別している。
その違いを簡単に言えば……そうね、
『火を起こす』『空を飛ぶ』といった、今現在の科学技術で実現可能な事を魔力で実現させるのが、魔術。
そして、『死者を蘇らせる』『時空を超える』などの明らかに実現不可能な奇跡を起こしてしまうのが、魔法。
ここまではいい?」
ドラえもんは黙って頷いた。
それを確認して、凛は語調を強める。
「つまり私たちにとっては、ドラえもん……あなたは魔法使い、否、魔法そのものなのよ」
「ええっ?」
それを聞いたドラえもんが素っ頓狂な声を上げる。
「まあ、驚くのも無理は無いのかも知れないけれど、考えてみれば簡単なことよ。
未来の世界の常識も、私たちにとって見れば奇跡そのものであることあるし、
現在の常識が過去では魔法を駆使しなければ実現不可能だったこともある。ただそれだけのことよ」
「……ふうん。確かに、その理屈ならなんとなく分かる」
「つまり、この世界では貴方は魔法使い。そして、ギガゾンビって奴も魔法使い。OK?」
「分かった。それで?」
「そして、この魔法なんだけど……魔法にも幾つかの種類があるのよ。
例えば……貴方達の得意な時間旅行や、空間移動。これらはそれぞれ別の魔法と言えるわ」
「でも、タイムマシーンやどこでもドアにも、共通する技術があるんだけれど……」
「そうね。貴方達から見れば、同系統になるのかもしれない。でも、私たちから見れば全く別のモノなのよ。
これが何を意味しているか分かる? 」
「えっと……??」
「じゃあ、もう一歩踏み込んで言うわね。
私たちが積み上げてきた『魔術体系』と、貴方達が作り上げた科学技術という名の『魔術体系』、
それぞれが独立して成立したように見えるけど、
だからこそお互いの技術を摺り寄せれば、予想外のブレイクスルーが生まれる可能性が高いのよ。
わかる?」
「!?!?!?」
凛の言葉の意味を理解しかねるのか、ドラえもんの返答が途切れる。
その返事に窮したドラえもんに向かって、凛は一枚の紙切れを突きつけた。
『私たちがお互いの情報を共有し活用できれば、ギガゾンビにも付け入る隙ができる、ってことよ!』
「!!!」
「いいわ、答えは自分で考えておいて。私は見張りに集中する」
『そのまま喋らないで。首輪に盗聴器が仕組まれている可能性があるから、ここから先は筆談にしましょう』
そうして凛はドラえもんに話す隙を与えずに別の紙切れを見せると、一方的に会話を終えた。
もちろん“口先だけ”のことである。
凛は黙って、メモ用紙の上に鉛筆を走らせる。
『今まで私が確認した限り、この世界には少なくとも4つの魔術体系が存在するわ。
一つは、貴方達の“未来科学”
一つは、私の“魔術”
一つは、この杖――レイジングハートの “自称・魔法”
一つは、水銀燈のような“ドール”
これらそれぞれの体系は、一部は重複するものの、その大部分はお互い独立しているように思える。
そして、それらにはそれぞれ得意分野があると考えられるのよ。
未来科学は“時間旅行”
魔術は“霊魂”
自称・魔法は“平行世界”
ドールは“生命”
……これはちょっと乱暴な分類だし異論もあるかもしれないけれど、今は便宜上こう位置づけておくわね』
凛は次々に書き記してゆくメモをドラえもんに渡してゆく。
どうやらドラえもんはそのスピードについてゆくのもやっと、といったところだが、
凛もそれをゆっくり待つつもりは無かった。
――頼むわよ、ドラえもん。ギガゾンビの裏をかくにはアンタの知識と理解が必要不可欠なんだから……!
『次に、ギガゾンビの魔術に関して考えてみるわね。
奴は時間移動だけでなく、空間の管理も、平行世界から人物を召喚することもやってのけている。
正直、奴の“魔法”には感服しちゃうけど……
でも、すべての面で奴が私たちを上回っているかと言えば、決してそんなことは無い。
例えば奴はサーヴァントを召喚したとは言え、それ以外の霊的な魔術を一切使っていない。
それに、失礼だけどドラえもんと水銀燈の質感を比べてみれば、水銀燈の方が“生き生きと”して見える。
そして平行世界の管理という点で見れば……レイジングハートの言う“自称・魔法”なら、
貴方達の平行世界への干渉技術と比べても遜色無い。寧ろ秀でているようにも思える。
以上のことから、レイジングハートの“自称・魔法”を掘り下げていけば、
この世界から脱出できる可能性もゼロでは無いと考えられるわ。
わかる!? これらのアドバンテージをうまく利用できれば、
絶対にギガゾンビにも一杯食わせてやることが出来るはずなのよ!』
……だが残念なことに、凛の決め台詞がドラえもんの目に映るには、まだ少し時間が必要なようだった。
ドラえもんは、うんうんと唸りながら凛の渡したメモとにらめっこをしている。
この様子だと、お互いの情報を交換しきるにはかなりの時間を必要とするのは明らかだった。
――ドラえもんって、本当に未来のロボットなんだろうか? その割にはとぼけていると言うか、鈍臭いと言うか……
頭の中に最新鋭のコンピューターが詰まっているとは、どうしても思えない。
未来の技術とは言えそこまでの力は無いのか、それとも何らかの機能に特化しているのか。
はたまた故障でもしているのか……?
『す、すごいね凛ちゃん。一人でよくここまで……』
『一人じゃないわよ。レイジングハートもいたし。それに、これからはドラえもんもいるんだしね。
……そう。悔しいけれど、私たち一人々々の力だけじゃ、ギガゾンビには勝てないわ。
だから、力を貸して。
3人寄れば文殊の知恵って言うけれど、ここには各分野のエキスパートが揃ってるんだから、
きっと何か名案が浮かぶはずよ。
だから……難しいかも知れないけど、ドラえもんにも協力して欲しいのよ。
参加者の中で一番ギガゾンビに近しい貴方だからこそ、アイツの足元を掬えるかもしれないの』
凛のメモを読むうちにドラえもんの表情が引き締まってゆくことに、凛は僅かに安堵していた。
ドラえもんは自分の持つ重要性と責任を理解し、それを受け止めてくれたのだから。
――大丈夫。彼なら、きっと、力になってくれる。
もし私が駄目でも、彼がきっと他の誰かに伝えてくれる。私が熾した小さな火を。
……って、縁起でも無いわね。
そして、メモを読み終えたドラえもんが決意のこもった目で私を見る。
『う、うん。分かった。頑張ってみるよ!』
『頼むわよ? じゃあ、まずは貴方の“科学”でいうところの時間移動の理念を教えて貰えるかしら?』
『う~ん、いきなり難しいなぁ。えっと、おおまかに言うとね……』
朝日が、私たちを照らしていた。
でも私たちは、太陽とは別の、小さな、でも力強い光を感じていた。
☆
*時系列順で読む
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*投下順で読む
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|253:[[ひめられたもの(4)]]|遠坂凛|257:[[プリズムライト(後編)]]|
|253:[[ひめられたもの(4)]]|水銀燈|257:[[プリズムライト(後編)]]|
|253:[[ひめられたもの(4)]]|ドラえもん|257:[[プリズムライト(後編)]]|
|253:[[ひめられたもの(4)]]|野比のび太|257:[[プリズムライト(後編)]]|
|253:[[ひめられたもの(4)]]|劉鳳|257:[[プリズムライト(後編)]]|
|253:[[ひめられたもの(4)]]|セラス・ヴィクトリア|257:[[プリズムライト(後編)]]|
|248:[[「選んだら進め。進み続けろ」]]|トグサ|257:[[プリズムライト(後編)]]|
**プリズムライト(前編) ◆B0yhIEaBOI
人間は光が無いと生きてはゆけない。
昇りつつある朝日を見ながら、遠坂凛は唐突にそう悟った。
闇が嫌いな訳ではない。闇に包まれて安らぐことができるのもまた、人間だ。
でも、闇だけでは駄目なのだ。
闇の中で、自分を照らし、世界を照らし、自分の歩む道を照らす。
そんな光がなければ、人は前には進めない。
ほんのひとすじの光でいいのだ。
その光さえあれば、人はそれを頼りに前に進んでゆける。
そして人は火を手にし、闇の中でも前に進もうとする。
だがその火は、自らの手で熾さなければならない。
だから、私は火を熾す。
幽かに揺れる種火を消すまいと、必死に薪をくべる。
そうすれば、もしも私が倒れても、きっと誰かがその火を受け継いでくれる。
そして何時の日か、その火は闇夜を明々と照らす大火に成るのだ。
「……話って、なんですか」
東の空を眺めたままの凛に痺れを切らしたのか、青色の自称猫型ロボット――ドラえもんが口を開いた。
ここは病院の屋上。
病院に集まった人間の中で最も疲労が少なく、
且つそれに適した能力を持った凛が見張りを買って出た為、凛はそこにいた。
そして、その凛に呼ばれたために、ドラえもんはそこにいた。
改めて見ると、本当に大きな口だ。人の頭ぐらいなら飲み込んでしまえそうな程に。
尤も、そんな不穏な考えを相手に抱かせない不思議な安心感をこのロボットは持っている。
だからこそ凛は、敢えて不信感の漂う水銀燈を遠ざけて、ドラえもんを選んだわけでもあるのだが。
「ええ、話、それも大事な話なんだけど、どこから話したらいいかしらね……」
凛がドラえもんと話さなければならないことは無数にあった。
ドラえもんの科学技術とやらについて。
あのギガゾンビの能力について。
凛の魔術について。
レイジングハートの魔法について。
そして、それらの情報を最大限に駆使して首輪を外し、主催者を倒し、この世界から脱出する方法について。
これらの全てを話しきるのに、一体どれだけの時間が必要なのか。凛には見当もつかなかった。
だが、やらねばならない。
ここに希望という名の種火があり、情報という名の薪が有るのだから。
「そうね。話ってのも色々あるんだけど――最初に『魔法』と『魔術』のことを話しておくわ」
魔法? とドラえもんが怪訝な表情を浮かべたが、凛は気にせず話を続ける。
「魔術と、魔法。貴方達は混同してしまうかもしれないけれど、我々はこの2つを明確に区別している。
その違いを簡単に言えば……そうね、
『火を起こす』『空を飛ぶ』といった、今現在の科学技術で実現可能な事を魔力で実現させるのが、魔術。
そして、『死者を蘇らせる』『時空を超える』などの明らかに実現不可能な奇跡を起こしてしまうのが、魔法。
ここまではいい?」
ドラえもんは黙って頷いた。
それを確認して、凛は語調を強める。
「つまり私たちにとっては、ドラえもん……あなたは魔法使い、否、魔法そのものなのよ」
「ええっ?」
それを聞いたドラえもんが素っ頓狂な声を上げる。
「まあ、驚くのも無理は無いのかも知れないけれど、考えてみれば簡単なことよ。
未来の世界の常識も、私たちにとって見れば奇跡そのものであることあるし、
現在の常識が過去では魔法を駆使しなければ実現不可能だったこともある。ただそれだけのことよ」
「……ふうん。確かに、その理屈ならなんとなく分かる」
「つまり、この世界では貴方は魔法使い。そして、ギガゾンビって奴も魔法使い。OK?」
「分かった。それで?」
「そして、この魔法なんだけど……魔法にも幾つかの種類があるのよ。
例えば……貴方達の得意な時間旅行や、空間移動。これらはそれぞれ別の魔法と言えるわ」
「でも、タイムマシーンやどこでもドアにも、共通する技術があるんだけれど……」
「そうね。貴方達から見れば、同系統になるのかもしれない。でも、私たちから見れば全く別のモノなのよ。
これが何を意味しているか分かる? 」
「えっと……??」
「じゃあ、もう一歩踏み込んで言うわね。
私たちが積み上げてきた『魔術体系』と、貴方達が作り上げた科学技術という名の『魔術体系』、
それぞれが独立して成立したように見えるけど、
だからこそお互いの技術を摺り寄せれば、予想外のブレイクスルーが生まれる可能性が高いのよ。
わかる?」
「!?!?!?」
凛の言葉の意味を理解しかねるのか、ドラえもんの返答が途切れる。
その返事に窮したドラえもんに向かって、凛は一枚の紙切れを突きつけた。
『私たちがお互いの情報を共有し活用できれば、ギガゾンビにも付け入る隙ができる、ってことよ!』
「!!!」
「いいわ、答えは自分で考えておいて。私は見張りに集中する」
『そのまま喋らないで。首輪に盗聴器が仕組まれている可能性があるから、ここから先は筆談にしましょう』
そうして凛はドラえもんに話す隙を与えずに別の紙切れを見せると、一方的に会話を終えた。
もちろん“口先だけ”のことである。
凛は黙って、メモ用紙の上に鉛筆を走らせる。
『今まで私が確認した限り、この世界には少なくとも4つの魔術体系が存在するわ。
一つは、貴方達の“未来科学”
一つは、私の“魔術”
一つは、この杖――レイジングハートの “自称・魔法”
一つは、水銀燈のような“ドール”
これらそれぞれの体系は、一部は重複するものの、その大部分はお互い独立しているように思える。
そして、それらにはそれぞれ得意分野があると考えられるのよ。
未来科学は“時間旅行”
魔術は“霊魂”
自称・魔法は“平行世界”
ドールは“生命”
……これはちょっと乱暴な分類だし異論もあるかもしれないけれど、今は便宜上こう位置づけておくわね』
凛は次々に書き記してゆくメモをドラえもんに渡してゆく。
どうやらドラえもんはそのスピードについてゆくのもやっと、といったところだが、
凛もそれをゆっくり待つつもりは無かった。
――頼むわよ、ドラえもん。ギガゾンビの裏をかくにはアンタの知識と理解が必要不可欠なんだから……!
『次に、ギガゾンビの魔術に関して考えてみるわね。
奴は時間移動だけでなく、空間の管理も、平行世界から人物を召喚することもやってのけている。
正直、奴の“魔法”には感服しちゃうけど……
でも、すべての面で奴が私たちを上回っているかと言えば、決してそんなことは無い。
例えば奴はサーヴァントを召喚したとは言え、それ以外の霊的な魔術を一切使っていない。
それに、失礼だけどドラえもんと水銀燈の質感を比べてみれば、水銀燈の方が“生き生きと”して見える。
そして平行世界の管理という点で見れば……レイジングハートの言う“自称・魔法”なら、
貴方達の平行世界への干渉技術と比べても遜色無い。寧ろ秀でているようにも思える。
以上のことから、レイジングハートの“自称・魔法”を掘り下げていけば、
この世界から脱出できる可能性もゼロでは無いと考えられるわ。
わかる!? これらのアドバンテージをうまく利用できれば、
絶対にギガゾンビにも一杯食わせてやることが出来るはずなのよ!』
……だが残念なことに、凛の決め台詞がドラえもんの目に映るには、まだ少し時間が必要なようだった。
ドラえもんは、うんうんと唸りながら凛の渡したメモとにらめっこをしている。
この様子だと、お互いの情報を交換しきるにはかなりの時間を必要とするのは明らかだった。
――ドラえもんって、本当に未来のロボットなんだろうか? その割にはとぼけていると言うか、鈍臭いと言うか……
頭の中に最新鋭のコンピューターが詰まっているとは、どうしても思えない。
未来の技術とは言えそこまでの力は無いのか、それとも何らかの機能に特化しているのか。
はたまた故障でもしているのか……?
『す、すごいね凛ちゃん。一人でよくここまで……』
『一人じゃないわよ。レイジングハートもいたし。それに、これからはドラえもんもいるんだしね。
……そう。悔しいけれど、私たち一人々々の力だけじゃ、ギガゾンビには勝てないわ。
だから、力を貸して。
3人寄れば文殊の知恵って言うけれど、ここには各分野のエキスパートが揃ってるんだから、
きっと何か名案が浮かぶはずよ。
だから……難しいかも知れないけど、ドラえもんにも協力して欲しいのよ。
参加者の中で一番ギガゾンビに近しい貴方だからこそ、アイツの足元を掬えるかもしれないの』
凛のメモを読むうちにドラえもんの表情が引き締まってゆくことに、凛は僅かに安堵していた。
ドラえもんは自分の持つ重要性と責任を理解し、それを受け止めてくれたのだから。
――大丈夫。彼なら、きっと、力になってくれる。
もし私が駄目でも、彼がきっと他の誰かに伝えてくれる。私が熾した小さな火を。
……って、縁起でも無いわね。
そして、メモを読み終えたドラえもんが決意のこもった目で私を見る。
『う、うん。分かった。頑張ってみるよ!』
『頼むわよ? じゃあ、まずは貴方の“科学”でいうところの時間移動の理念を教えて貰えるかしら?』
『う~ん、いきなり難しいなぁ。えっと、おおまかに言うとね……』
朝日が、私たちを照らしていた。
でも私たちは、太陽とは別の、小さな、でも力強い光を感じていた。
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