アマノジャック@新ジャンル専用
新ジャンル「文房具」01_vol01
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新ジャンル 「文房具」
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- 1 愛のVIP戦士 sage 2007/02/07(水) 21:36:04.06 ID:1k+VsptW0
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1.うるさいアイツらは文房具
「あんた、いつもいつもなんて汚い字を書くのよ。
これを消す私の身になってみなさいよ、小学生の使うトイレを
掃除させられてるような気分を味わえるわ…、ねぇちょっと聞いてる?」
聞こえているから始末が悪い。それが聞こえる俺ももっと始末が悪い。
お前がはたして便所掃除なんかできるのかと、小一時間、問い詰めたい気持ちに
襲われたが、そんな不毛な疑問はこの際無視して、こう言った。
「うるさい、ケシゴムなんだから、黙って消してろ」
そう、彼女はケシゴムなのだった。何をとち狂ったのかわからないが、
黒い地に、白いエプロンとフリルの白いカチューシャをつけた――端的に表すと、メイド姿の。
- 2 愛のVIP戦士 2007/02/07(水) 21:40:21.29 ID:1k+VsptW0
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「何よ。消して『あげてる』のよ、そこを勘違いしないで欲しいわ。
しかもよく間違えるから頻繁に仕事しなきゃならないし…。全く、
なんでこんな人が持ち主なのかしら…」
「うるせぇ、ちくしょう!何で俺はこんなのが見えちまうんだ。いいからとっとと消しやがれ」
俺はうんざりしながら、わめくケシゴムメイドの首根っこをつまんで、
無理やり消したいところにもっていく。
静かになることはなかったが、白いエプロンの前にあるポケットをごそごそとやり、
ソイツは『散らばる』の対義語がプリントされたタオルを取り出した。
そして、間違った部分をコシコシと黙って一生懸命に消し始める。
…仕事をしている時は熱心無口になるんだよな…。
「あぁ、もう、汚いったらないわ!」
前言、撤回。
- 5 愛のVIP戦士 2007/02/07(水) 21:44:47.49 ID:1k+VsptW0
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俺がこめかみを押さえて、ふさぎ込んでいると、朗々としたバリトンの声がした。
「アッハッハ、黙って仕事をしないか、ケシゴム君。
早く仕事を終わらせて、筆入れの中で一緒に熱い夜を過ごそうぜ」
「死んでもごめんよ」心底気持ち悪いといった表情で、ケシゴムが答えた。
そうだ何がアッハッハだ、どちくしょう。俺はその声がする方を睨んだ。
その方向にいるモノがさらに俺を陰鬱とさせる。 - 8 愛のVIP戦士 2007/02/07(水) 21:46:46.71 ID:DvvB0PE30
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空気読まずに流れをぶった切るが
俺好きだぜ - 9 愛のVIP戦士 sage 2007/02/07(水) 21:49:11.18 ID:1k+VsptW0
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黒いタキシードに身を包んだダンディズム溢れる青年が、
身の丈より長い倒れたシャーペンを椅子代わりに座って、
やっぱり机の上にいたからだった。 - 10 愛のVIP戦士 2007/02/07(水) 21:50:17.28 ID:1k+VsptW0
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「アッハッハ、断られちまったな。
ああ、ならば本命の君が私の相手をしてくれても…どうだ、やらない…」
プチプチと、Yシャツのボタンを外しているヤツが言い終わる前に、シャーペンを持ち、
思い切り先を机に押し付けて芯を折った。
「アッー!?」奴は芯が急所なのだ。
男が妙に甲高い嬌声を出し、身を痙攣させて失神する。
俺はそのまま後ろのベッドの上にシャーペンを投げ捨てた。
- 11 愛のVIP戦士 2007/02/07(水) 21:55:00.60 ID:1k+VsptW0
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そして、俺は頭を抱え込んだ。
最悪だ…、俺は精神を病んでしまったのだろうか。
それとも、今まで一人で生きようとしてきたつけがこんなとこに
回ってきたのだろうか。
どっちにしろ、わかっていることは…
オレは一昨日の18の誕生日を境に、文房具が人に見えるようになってしまったのだ。八百万の神ってレベルじゃねーぞ。
- 12 愛のVIP戦士 2007/02/07(水) 21:58:10.85 ID:1k+VsptW0
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「…なぁ、俺やっぱり病院にいったほうがいいんだろうか?」
うんざりした気分になって、ケシゴムに聞いてみた。ケシゴムに「聞く」、
ハン、何てシュールな響きだ、こんな言葉が思い浮かぶってことだけで、
精神病院に行く価値はありそうだな。
これまた、うんざりした表情でケシゴムは答えを返す。 - 13 愛のVIP戦士 2007/02/07(水) 22:02:36.28 ID:1k+VsptW0
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「これで、あんた、その質問6回目よ。何度も同じこといわせないでちょうだい。
行ったらいいじゃない、それであんたの気が済むのなら。
そして、『僕、文房具が人に見えるんです』
ってバカ面下げて医者に相談して、脳に直接キク薬を大量に飲まされながら、
秘密の病棟でのヴァカンスを楽しんできたらいいわ。
それこそ、イヤになるぐらい堪能してきなさい。
そして医者にもう大丈夫と太鼓判を押してもらって、あんたがこの部屋に帰った時、
今と変わらない私達があんたを迎えてあげるわ」
右手を胸に当てて、そいつは言った。
「いい?私達はここにいる。それは変わらない事実よ、見える貴方にとってはね」
- 14 愛のVIP戦士 2007/02/07(水) 22:05:57.09 ID:1k+VsptW0
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やってられない。本当にやってられない。自己主張の強いケシゴム、耽美なシャーペン、
その他筆箱、引き出しに眠る数々の文房具達、
それらがまるで肉をもってるかのように振る舞い、俺に声をかけてくる。
もう、正直宿題どころじゃない。 - 16 愛のVIP戦士 2007/02/07(水) 22:10:39.45 ID:1k+VsptW0
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朝起きたら普通の日常、進まない宿題を
普通の文房具でこなしていた毎日が戻ってきますようにと、祈る。
平和な日常を返してくださいと、願う。
一昨日の誕生日以来、ベットに就くたび繰返した願いを、今日もまた繰返す。
ふと、そういやガキんちょだったあの時も、似たようなことを
思っていたなと考えているうちに、だんだんと意識が遠のいていった。
- 18 愛のVIP戦士 2007/02/07(水) 22:15:58.35 ID:1k+VsptW0
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目覚ましが鳴る、朝の始まり。
目を一度ギュッと閉じてから、ゆっくりとあけた。
飛び込んできたのは、目を閉じて、唇を突き出している中年の姿。
とりあえず、思いっきり殴り飛ばした。
メメタァと変な音がして、昨日と同じ嬌声をあげながらデスクトップのPCの方向に飛んで行く。
衝突ってカツンと音をたてた。
パンパンと手を払いながら、思った。ふん、こんなところだけは、しっかりシャーペンしてやがる。
- 19 愛のVIP戦士 sage 2007/02/07(水) 22:16:26.03 ID:1k+VsptW0
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↑中年を青年にorz
- 21 愛のVIP戦士 2007/02/07(水) 22:28:40.89 ID:1k+VsptW0
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ベッドから出る。目覚ましを止めてから、痙攣している男を見つめた。
少し気持ちよさそうに気絶してるのは気のせいか?そう思いたい。
しかし、こいつをベッドに放り捨てたのをすっかり忘れていたな。
しかも、こいつの姿があるってことは、昨夜の願いもどうやら届かなかったてことか。
オーケイ、三度の願い届かず、仏の顔も三度までというのに、チクショウ、許さないが叶えないってか。
何か引用の仕方を激しく間違ってる気がするが、まあいい、
とりあえず俺の心の中で仏はいないことが確定した。このままだと、
神もいなくなるのもそう遠いことではなさそうだ。 - 22 愛のVIP戦士 2007/02/07(水) 22:35:15.21 ID:1k+VsptW0
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カーテンと窓を開けて、朝の光と空気を全身で感じる。
今日もいい天気だ。遠くの通学路の川沿いに咲いてる満開の桜並木が良く見えた。
冬と違った陽気さを孕んでいる、澄んだ春の風が、自分をそっと撫でていく。
さて、まずはいつものように朝飯を作らないと。
俺には、飯を作ってくれる人なんていないのだからと、
ちょっと感傷にひたりながらキッチンに向かった。
少し急ぐかな、宿題も終わってないし、今日からまた学校も始まるし。
- 23 愛のVIP戦士 2007/02/07(水) 22:47:40.77 ID:1k+VsptW0
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一人暮らしでの朝食なんて自分を満足させるだけなのだから、簡単なものでいい。
できるだけ火を使わずサッサと飯を作って「いただきます」を言い、
急いでソレを掻きこんだ。
食べ終わり「ごちそうさま」とパンッと手を合わせる。
こんな若造なのに一人暮らしをしている俺に三食食う余裕があるのは、
同級生の友達の家が畑をもっており、彼のおばさんが
大変だろうと米やら何やらをもってきてくれるからだ。
最初は受け取れないと断ったのに、半ば強引とも取れるぐらいに
「いいから受け取りなさい」と言われ、以来ありがたく頂いている。
本当に感謝しており、毎日お礼を伝えれないかわりに、
せめてここでキチンと感謝の言葉を口にすることにしているのだった。
- 25 愛のVIP戦士 2007/02/07(水) 22:54:07.36 ID:1helAGRjO
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なんという良スレ
消しゴムが小さくなっていき 無くなってしまう別れに
全俺が泣いた - 26 愛のVIP戦士 2007/02/07(水) 22:57:31.09 ID:1k+VsptW0
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手際よく食器を洗って、部屋に戻る。
PCに衝突ったシャーペンのヤツは、まだ、ビクビクと痙攣しながら転がっている。
しゃべれない分だけまだましだと思って、拾い上げた。
気絶していても手を離さず、シャーペンにブラ下がってくるヤツの姿は
極度に趣味の悪いストラップのようだった。
もし、こんなのがおまけとして付いてくることになったら、
間違いなくそのシャーペンの製造会社は大量の在庫を抱えることになるだろう。
いや、一部のマニアは箱買いするかもしれん。そんなことを思いつつ、机の前に腰を下ろす。
机には白紙の数学の問題が広がっている。
とりあえず、イイワケ程度には埋めておかないとな、
問題をあてられたときにせめて
「途中までやりましたが、わかりませんでした」とかなんとか言うために。
- 27 愛のVIP戦士 2007/02/07(水) 23:09:58.36 ID:1k+VsptW0
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「時間があるときはやらないくせに、時間がないときはやるのね」
ケシゴムはどうしようもない人ね、といいたそうな顔をしながら言った。
お前らのせいだろ?と突っ込みたくもなったが、一理あるので何も言えない。
「うるさい、それが男ってもんだ」
「男だから、なんていわないでちょうだい。あんた個人が、ズボラなだけよ」
えぇ、その通りですよ、コンチクショウ。
なるべく、コイツを筆箱から出さないようにしようと思って
慎重に問題を解いていたのだが、間違えたのだから仕方がない。
間違えたとこを消すのはケシゴムの仕事であり、
一個しかケシゴムをもってない俺は、どうしてもコイツを取り出さざるを得なかった。
- 28 愛のVIP戦士 2007/02/07(水) 23:13:53.98 ID:etkuPonZ0
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これはwktk
- 31 愛のVIP戦士 2007/02/07(水) 23:32:48.68 ID:1k+VsptW0
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筆箱を開け、急な光に目をコシコシと擦るコイツをたたき起こし、摘み上げて
間違った箇所を消させようとしたやりとりが、先のソレだ。
「あぁ、確かにその通りだな。悪いと思ってやるから、黙って協力しろ」
「何?その態度。人に協力を頼むって態度じゃないわね。あんた親からどういう教育受けたわけ?
ここは素直にお願いしますって言うところよ」
ふるふると黒いスカートを揺らしながら、憤然と抗議してくるケシゴムメイド。
「残念だたな、まともなしつけは受けてねぇよ。両方ともガキの頃に死んじまった、
片方は自殺で、片方はそれを追うように病気でな」
俺は、ただの質問に答えるようにそっけなく返した。
そんなこと、とうの昔に踏ん切りがついていて今更、どうこう言う問題でもない。
が、どうやらケシゴムの方は地雷を踏んでしまったと思ったらしく、やってしまったといった表情を作って、
うつむいた。 - 32 愛のVIP戦士 2007/02/07(水) 23:50:47.15 ID:1k+VsptW0
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「…悪かったわ。二度とこんなことは言ったりしない」と謝ってきた。
珍しい、というより初めてだ、コイツが謝ってくるなんて。
「別に気にすることじゃない。だが、ま、悪いと思ったのなら、
そんな顔をしてくれない方がこっちとしては楽だ」
「うん…」と言って、間違った箇所を黙って消し始めた。
わりと失敗に対してクヨクヨしてしまうタイプらしい。
さっきまでの騒々しさがウソのように黙りこくっている。
気まずい沈黙が辺りを覆う。
おかしい、静寂がこの部屋の通常だったはずなのに、
今はこの沈黙が異常であるかのように痛かった。 - 33 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 00:01:28.93 ID:IZ8daTuk0
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話題を振ろうと思って、質問しようとが、何も出てこない。
くそぅ、発想が貧困だな俺。何かないか、何かないか
とひたすらに考えていると、口から質問がポロリとこぼれ落ちた。
「そういや、お前名前なんていうの?」
ケシゴムメイドは、黙々とタオルを動かしている。無視…か。
はぁ、何か他の質問にするべきだったかなぁと思っていると
「ないわ」身じろぎもせずにそっけない答えがソイツの後ろ姿から返って来た。
- 34 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 00:04:23.45 ID:IZ8daTuk0
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「へ?」思わず情けない声が出る。
ダセェ、ここら辺に彼女いない暦=人生ってのが出てくるよな。
「ないっていったの、あたしはただのケシゴムよ。
あんたには違う風に見えるみたいだけど、名前なんてあるはずないじゃない」
と、たんたんと今さっきの俺が答えたみたいに言いやがった。俺は思わず、
「そうか」としか言えず、そいつも「そうよ」と返してきた。 また、沈黙が降りる。
せっかく、何か喋ろうと思ったのに馬鹿か俺は。 - 35 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 00:18:01.71 ID:IZ8daTuk0
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せっかく、何か話して場を和ませようと思ったのに馬鹿か俺は。
何とか話を続けようと、ない頭と、ない経験を必至に働かせた。フル加速、フル回転。
先生、脳のモーターと、顔面が焼ききれそうであります。
そんな、ジャイロチックな脳内回転の果てに、
砂が手から落ちるように、言葉が口からこぼれ出た。 - 36 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 00:30:53.37 ID:IZ8daTuk0
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「わかった、じゃあ俺がつけてやるよ」
「え?」今度は、ケシゴムメイドが情けない声を出す番だった。
こちらを振り返って不思議そうなものでも見るかのように
こっちを見つめてくる。
「名前、考えておいてやるっていったんだ。
いつまでも、おまえって言うのも悪いからよ」
ちょっとの間ポカンとした後、少しだけ、ほんの少しだけ
頬を染めて「…そう」とだけ、つぶやくと、
顔を問題用紙の方に向け、ソイツは今さっきまでしていた作業に戻ってしまった。
- 37 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 00:34:08.61 ID:zwKCRmPq0
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なんだよ!かわいいじゃねえかよ!おいいいぃぃぃ!
- 38 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 00:46:39.14 ID:IZ8daTuk0
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秒単位の沈黙の後、
「あなたの名前は?」後ろをこちらにむけたまま、
ケシゴムが話しかけてくる。 少し照れたような声だった。
――あぁ、そうか。俺達はようやく3日目にして、初めて自己紹介をしているんだ。
ぎこちなく、例えようもなく不器用だけど、
お互いを知り合うための最初の一歩を
今確実に踏みしめようとしているんだ。
出会って最初にやるべきことを飛ばしてたんだな俺達。
- 39 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 00:57:52.82 ID:IZ8daTuk0
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俺はふぅっと一息ついて、自分の名前を口にする。「俺の名前は――
「ちなみに俺の名前は、阿部だ、よろしくな」
いつの間にか起きたシャーペン野郎が俺の台詞にかぶせるように
俺の方勝手に自己紹介をしてきた。
話の腰を折られた俺は、阿部の持っているシャーペンの先の芯を黙って折る。
あの嬌声を上げて転倒し失神する自称阿部。
そういや、コイツの顔ってどっかで見たことあるなと思いつつ、
俺は自分の名前を持っている変なシャーペンをペンケースの中に放り込んだ。
相変わらずシャーペンから手を離さない阿部も
一緒にペンケース中に消えていく。
すると、ペンケースの傍に置いてある置き時計が目に入った。
- 40 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 00:59:13.90 ID:IZ8daTuk0
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俺の方勝手に自己紹介してきた→俺のほうを向いて、勝手に自己紹介してきた
- 41 愛のVIP戦士 sage 2007/02/08(木) 01:05:54.77 ID:IZ8daTuk0
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うぅ…誰かいるのか、コレ?オレのオナニーショーになってないかすら。。
- 42 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 01:08:36.29 ID:zwKCRmPq0
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オナニーでもwktkして待ってるんだぜ
- 43 愛のVIP戦士 sage 2007/02/08(木) 01:14:59.68 ID:IZ8daTuk0
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ありがとう、推敲しながら書いてるんで、遅いがよかったら楽しんでくれ。
- 44 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 01:18:34.60 ID:IZ8daTuk0
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宿題を切り上げる予定を遥かに過ぎている時刻が目に入る。
それが俺の心に特大級の警報をならした。
ワーニン、ワーニン。警報発令、警報発令、速やかに支度せよ、繰返す…
――やばい、このままだと遅刻だ、あのハゲ教師に殺される!!
そう思ったあとの俺の行動は早かった。
「わりぃ、時間だ、急ぐぞ」俺は、ケシゴムを摘み上げてペンケースの中に放り込んだ。
放り込むときに、黒いスカートの中身が見えたような気がするが、
それを脳に焼付けて楽しむ時間は今の俺にはない。 - 45 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 01:19:21.76 ID:IZ8daTuk0
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「ちょっと、あんたの名前をまだ――」
布のペンケースから顔を出して叫ぶケシゴムを押し込んで、チャックを閉めた。
ペンケースの中からもごもご聞こえるがこのさい無視だ。
ペンケースを鞄の中に放り込み、用意してあった教科書、ノートを
詰め込む。
そして身支度を整えた後、窓の鍵を確認して、部屋を飛び出した。
- 46 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 01:31:03.66 ID:IZ8daTuk0
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しかし、今にして思えば飛び出す前に、
今さっき何をやっていたか思い出すべきだったんだ。
その後悔は午後の数学の時間にやってくることになる。
- 47 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 01:32:18.19 ID:IZ8daTuk0
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俺の高校は、先ほど見えた川のそばにある。
だいたい、このアパートから徒歩20分ぐらいの距離で、
もちろん徒歩なんてやってられない俺は自転車通学だ。
急ぐ、ひたすらにこぐ、
車道の白線の内側を原付顔負けの速さで――でもまぁ、実際は抜かれてるんだが――こぐ。
- 48 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 01:41:01.06 ID:IZ8daTuk0
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しかし、いくら狂ったような暴走自転車も、国家権力には勝てないわけで、ミスターストップたる
赤信号の前には止まらざるを得ない。
なんたる、ロス!!一分一秒を争う校門前までのバトルに
こんなところで時間を食うことになるとは!!
うちの高校は、時間に煩く、門を閉めるときは容赦はしない。
規律徹底と、学内安全のための手段だとは生徒には言ってはいるが、さてどうだか。
実はいびってストレス発散したいだけなんじゃねぇの? なんて思ってしまうほどに、
キッチリ定刻に門をお閉めになってくださるのだ、ウチの体育教師どもは。
ミスターストップの機嫌が直る。赤から青、ストップからゴーへ。
止まって重くなったペダルを、思いっきり踏み込んで、俺はまた
進み始める。 - 49 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 02:03:52.65 ID:IZ8daTuk0
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[イン ペンケース]
「何よ、急いでるっていっても、名前を言う時間ぐらいあるじゃない」
激しく上下する鞄のペンケースの中で、
名前をつけられることになったケシゴムメイドが、
怒ったように一人ごちた。
せっかく、自分の新しい持ち主のことを知るいい機会だったのに。
それを、急いでるから、
遅刻しそうだから、
なんて理由で、大事な瞬間をぶち壊した。
- 50 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 02:10:44.97 ID:IZ8daTuk0
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彼女の頭の中から、その決定的瞬間を邪魔した当の本人である、
めくるめく快感によって隣で気絶中の阿部の存在は忘却の遥かかなたにあり、
それ故に、すべての不満が自分の持ち主にむかっているのだった。
「ふん、名前を聞いてもすぐにはソレでよんであげないんだから」プリプリと呟く、でも、
心なしか少し嬉しそうに。 - 51 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 02:13:52.84 ID:IZ8daTuk0
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と、それを指摘する声が、ペンケースの中に響いた。
「あら、でも嬉しそうじゃない」魅惑的な、しっとりとした声だ。
ケシゴムはゆっくりとそっちの方向に顔を向けた。自分の1.5倍ほどある赤い柄のはさみを
軽々と肩にかついだ女性が視界に入る。
女であるケシゴムから見ても、魅力的な肢体――対象的にケシゴムである彼女は、
少し幼く見える姿をしていた――を、はさみと同じのきらびやかな赤い中華の民族衣装
に身を包んでいる。そして面白いもの見たかのようにニヤニヤしてながら、メイドを見つめている。
- 52 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 02:15:36.50 ID:6UW5WUfZ0
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駄目だもう眠い
頑張ってくれ>>1期待してます - 53 愛のVIP戦士 sage 2007/02/08(木) 02:17:02.99 ID:IZ8daTuk0
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ありがとう、超がんがる。
- 54 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 02:23:49.57 ID:XCxdSUSU0
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……消しゴム絵、かいていいか?
- 56 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 02:27:46.57 ID:IZ8daTuk0
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>>54 書いてくれ、超書いてくれ。
- 57 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 02:32:54.24 ID:IZ8daTuk0
-
「あ、あなた、起きてたの?」慌てて、メイドはさみをもった女性に話を返す。
「えぇ、起きてるに決まってるじゃない。だいたいこんなカクテルシェイクみたいな
揺れの中で寝ていられたら、関東の直下型地震が起きた時、
東京タワーの展望台にいても平然としていられるわ」まぁ、こいつは例外だけどね、
と阿部を履いてあるハイヒールでつつきながら付け加えた。
つつくと喜びではなく、
悦びによって気持ちよさそうに笑っている彼の口から、
艶めかしい声が漏れた。 - 59 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 02:51:02.22 ID:IZ8daTuk0
-
二人はげんなりして、見るのをやめる。
チャイナなハサミが少し意地悪く笑って、メイドな彼女を見つめてきた。
「よかったじゃない、名前、付けてもらえるんでしょ?滅多にいないわ、
『名前』をつけてもらえる文房具なんて」私はメーカーの商標ならあるけどね、と、
肩をすくめて、チーターのマークのロゴ捺されてある所を目で指した。
年季が入ってるようで、ところどころペイントが剥げている。
- 60 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 03:01:40.17 ID:IZ8daTuk0
-
それを見たケシゴムの彼女の顔から、すっと笑みが消える。
しまったと勘の鋭いハサミの彼女は、心の中で舌打ちした。
…この娘にこれは見せるべきじゃなかった――。
「いいわね、あなたはそんなに使ってもらっているんだもの…。ゴメンナサイ、
こんなこと言っちゃいけないのはわかってる、わかってるのよ。
でも、思わず言葉に出しちゃうの、不安なの!
名前を付けてもらう…、そうね、嬉しくないっていったら嘘になるわ。
大事に してもらえるかもしれないっていう、希望がもてるもの。 でもね、
思い出しちゃうとだめなの。
それ以上にやっぱり怖いのよ。やっぱり…怖いのよ…ゴメンナサイ…」
最後の方は消え入りそうな声で、一度主を失ったことのある消しゴムが謝った。
うつむいて、静かに肩を震わせ始めた。 - 61 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 03:05:37.28 ID:IZ8daTuk0
-
赤い彼女はそっと近づいて、――わかっているから――と
小さくなってしまったメイドの彼女の肩を抱く。
「今回持ち主は大丈夫よ、私が保証するわ。
だから、ね?安心して。怖がらないで」
消しゴムである彼女の黒い髪を撫でながら、強く強く抱きしめながら
優しい声で励ました。
――あぁ、この娘はこんなにも繊細なのに。
過去のせいで、本当に信じることを失いかけてる。
怖い思いをしたこの娘に、幸せなるこれからをください――そう願いながら。
- 62 愛のVIP戦士 sage 2007/02/08(木) 03:06:30.02 ID:IZ8daTuk0
-
[イン ペンケース] アウト
- 63 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 03:14:57.08 ID:IZ8daTuk0
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門が見えてきた。急いだかいがあったようで、
どうやらまだ口を開けて待ってくれているようだ、話のわかるヤツだぜお前はよ。
オレはラストスパートとして、最後の力を振り絞る。
門が近づく、俺頑張る。
しかし、あと少しだというのに、遠くからでもわかるハゲ頭が校門に向かっているの
が目に飛び込んできた。
ちくしょう、タイミング図ってたんじゃないのかアイツ!!??
- 64 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 03:21:47.72 ID:XCxdSUSU0
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http://up2.viploader.net/pic2d/src/viploader2d194878.jpg
ラフ画あげ
ハサミ少女萌えにつき
ハサミ少女と消しゴム少女の絵を書くかに
消しゴムのトラウマktkr
主人公がどうするかwktkして待ってる
- 65 愛のVIP戦士 sage 2007/02/08(木) 03:28:35.36 ID:IZ8daTuk0
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- 66 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 03:30:28.04 ID:IZ8daTuk0
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ヤツはちらりとこちらを見た後、まるで何も見なかったという風に、オレを無視して
門を閉め始めた。バカヤロウ、オレのこの頑張りを無駄にする気か、あの、筋肉バカめ!
門が閉まっていく、俺踏ん張る。
門が閉じそうになる、俺粘る。 あと少し、あと少し――っ
門が閉じた、俺諦めた。
わずかな先に見えるのは閉じた門と、その前に仁王立ちする体育教師である筋肉達磨の姿。
閉じた門に敗北した俺がたどり着く。
そして、勢いよく自転車から飛び降りた。
何を置いても即蒸発させるぐらいに、怒りに腹を燃やした俺は、
その体育教師に面と向かってこう言ってやった。 - 67 愛のVIP戦士 sage 2007/02/08(木) 03:32:35.34 ID:IZ8daTuk0
-
「ダ…ダメですかね??」
「ダメだな」 - 68 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 03:45:39.89 ID:IZ8daTuk0
-
逮捕され、連れて行かれる囚人のように肩を落とした俺は、筋肉達磨に引きづられる。
正門からま逆の裏門まで行き、コイツと、教頭に
遅刻届けを受理してもらうためにゲンコツと嫌味を
ありがたく頂くことが決定した。
おめでとう、俺。
ありがとう、先生、って思うかよドチクショウが。
あっはっはーん、レスがないと~、不安になる~、チンケな俺です、ハィ
- 69 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 03:49:27.14 ID:XCxdSUSU0
-
wwwwww
wktkして待ってる人は結構いると思うよww
がんがれ - 70 愛のVIP戦士 sage 2007/02/08(木) 03:50:29.71 ID:ZabQ+t11O
-
これは大好きだ。頑張ってくれ。
- 71 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 03:53:38.42 ID:IZ8daTuk0
-
走りきって目が覚めているのに、
まだ足りないとばかりに痛いゲンコツと、
ねちねちした松脂のような小言を、
達磨と教頭からくらった俺は、
陰鬱な表情をして、自分の教室に向かった。
3のB。それが俺のクラスである。
文型の人間が集う庭。
基本的に数学を理解することができなかった者の巣窟。
俺はその教室の後ろの戸を前にして、立ち止まる。
>>69
>>70 ありがとう、俺、チキンだから不安でしょうがないんだわw
眠気を飲み込んで、超がんがる。 - 72 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 04:01:05.94 ID:IZ8daTuk0
-
俺はその教室の後ろの戸を前にして、立ち止まる。
心の準備をしなければならない。
このちっぽけな脳みそを、あまり働かさなくても、想像できてしまうような光景が、
この戸を広げた前には広がっているはずだった。
別に、遅れてきたから、入ってきた俺に視線が集中するのを怖がっているんじゃねぇ、
そんなチャチなもんじゃけっしてねぇ。もっと恐ろしいものだ。
気合を入れろ、俺!
覚悟を決めろ、俺! 俺は引き戸を開けた。 - 73 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 04:05:25.26 ID:IZ8daTuk0
-
ガラリと金属音がショートホームルームを行っている静かな教室に響く。
予想通り、クラスの皆が俺に注目する。
だが、この際そんなものはどうでもよかった。
俺が用があるのはこいつらのダメなものを見るような目つきではなく、
こいつらが机の上に置いてあるものだった。
目を凝らす。
果たしてそこにあったのは――
いろんな文房具をしょったり、それに座ったり、振り回している種類豊富な小人の姿だった
- 75 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 04:20:10.96 ID:IZ8daTuk0
-
決定。
これで世界がおかしいか、俺の頭がおかしいか、どちらかに絞られた。
今まで思ったこともなかったが、
地獄にいる親父と、どっちにいるかわからない母さんに感謝するぜ、生んでくれてありがとう。
先生に遅刻しましたと、謝って自分の机に向かう。
どうしても、視界に入ってきてしまう、机の上に広がるファンタジーワールド。
ようこそ、ファンタジーワールドへ。
いらっしゃい、ファンタジーワールドへ。そういわれてる気がしてならなかった。
なぜか、視界がぼやける。
視界が滲むのは汗のせいだと自分に言い聞かせて、席についた
- 76 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 04:30:49.27 ID:IZ8daTuk0
-
どうやら、こいつらが特殊なわけじゃないらしい。
俺はペンケースを見つめながら思った。
もう一度辺りを見回す。
元の形の文房具のままに、無機質なものあったが、
このペンケースの中にいるやつらと同じように、
明らかに「普通」じゃないヤツラも大勢いた。
まぁ、もっとも、今から聞く質問でどちらがおかしいか、
世界なのか、俺なのかがわかるだろう。 - 78 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 04:40:10.78 ID:IZ8daTuk0
-
隣の本を読んでいる女子をつつく。少し驚いたかのようにこっちを向いた。
何?と少し長めの髪をもつ同級生が、首をかしげる。
恐る恐る、だが、ハッキリと
俺は彼女の机にある半裸の幼女の姿をした消しゴムを指差して尋ねた。
何でそんな質問をするかわからないという感じに眉をよせて、彼女は言った。
「?消しゴムよ?どうしたの?」 - 79 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 04:41:42.97 ID:IZ8daTuk0
-
おk、ここはまだどっちにも取ることができる灰色返事。
しかし、白か黒なのかはっきりさせるために
ここは一歩踏み込んでその続きを聞かねばならない。
今なら、フロンティアを突き進んだ、アメリカ人の気持ちが少しわかる。
俺は尋ねた。「すまない、どんな形をしてる?」
あたしをバカにしてるのといった表情を作って、彼女は言う。
- 80 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 04:43:45.61 ID:IZ8daTuk0
-
「四角よ、だから、何?」
オーケイ、俺がファンタジーワールドに迷い込んだんじゃない。
俺の脳みそだけが、ファンタジーを映すってことが、今判明した。
お礼を言葉を、眉間に寄せた彼女に言うと、変な人と呟いて
本に目を戻した。
たしかに、君の言うとおり俺の脳は変になっちゃたみたいだよ。
- 82 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 04:52:50.99 ID:IZ8daTuk0
-
少し打ちのめされて、ぼうっとしていると、いつの間にやら昼休みになっていた。
ペンケースを持って、俺はふらりと、教室を出てその足で階段を上った。
屋上に出る。
今はとにかく一人になりたかった、まぁ、もともと友達が多い方ではないのだけれども。
気持ちをおちつけようと大きく息を吸い、吐き出した。しかし、吐き出した息は、
空気が抜けるときのようなため息にしか聞こえず、よけいに俺の気持ちを空しくさせた。
後ろ向きな考えだけが、あの空に飛ぶトンビのようにくるくると回る。
- 83 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 04:58:58.85 ID:IZ8daTuk0
-
…脳みそにうじが湧くとしたら、脳外科にいけばいい。
だが…、人に見えないものが見えてしまうこの場合は、
やはり精神病院にいくしかないのではないだろうか――
そこまで考えたところで今朝のやりとりが浮かんできた
あたし達がここにいるのは、見える俺にとっての事実…か。
止めだ止め。考えたって仕方がない。
とにかくなるようにしか、ならないんだ、今までそうだったしな。
- 84 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 05:06:32.32 ID:IZ8daTuk0
-
自分の頭の中『だけ』に広がる不思議世界。
その事実は流石に俺を疲れさせる。
今日はバイトを休まさせてもらおう、俺は携帯電話を取り出して
先生に断りのメールを送った。
スイマセン、ネツガデタノデ、キョウノバイトハヤスミマス。
ちゃんと変換したはずなのに、
偽りの言葉は嘘っぽいカタカナに見えた。携帯を閉じる。
パタンという悲しい響きが宙に舞った。 - 85 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 05:08:35.29 ID:Nj6MFkC10
-
携帯電話も小人に見えるのかとおもたwwwww
- 86 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 05:24:59.06 ID:IZ8daTuk0
-
しかし、落ち込んでるばかりじゃいられない。
どうするべきか。とりあえず、キチンとこいつらと話してみよう。
どうやら、他の人にはこいつらは見えないらしいので、
話しているところを見られるとまずい。
孤高で通してきた俺が、
孤独のために気がイっちまったなんて噂されたら生きていけない。
- 87 愛のVIP戦士 sage 2007/02/08(木) 05:30:12.77 ID:Nj6MFkC10
-
お?メインヒロインの出番クルコレ?
- 88 愛のVIP戦士 sage 2007/02/08(木) 05:30:14.60 ID:fAzGjV/hO
-
- 89 愛のVIP戦士 sage 2007/02/08(木) 05:36:05.28 ID:IZ8daTuk0
-
ありがとう、暇な学生をなめるな。
こんなとこで朽ちたりはしない。
がんがる、超がんがる。 - 90 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 05:41:58.12 ID:IZ8daTuk0
-
俺は辺りを見回すと、ちょうど貯水タンクのすきまに
いい具合にかくれるスペースがあった。
そこに入り込む。
まぁ、ここに隠れるところを見られるだけでも、変な噂を立てられそうだがな。
とにかく、丁度腰掛けるのに具合がいいパイプを見つけたので、そこに座る。
足をそろえた両太ももに、ペンケースを置いてチャックを開けた。
- 91 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 05:48:50.43 ID:IZ8daTuk0
-
姉御肌のハサミの女性に抱かれて眠っている、気の強い消しゴムメイド。
我関せずといった表情で、立てかけた定規に座って、静かに何かを読んでいる眼鏡の娘。
コンパスのケースの中で昏々と眠り続ける、どこか吸血鬼を連想させるような、巫女姿な長黒髪の美人。
座ったまま興味深いものを見たといった顔でこちらを見上げてくる、白衣の理知的な女性。たぶん、
そばにある4色ボールペンの人なのだろう。
そして…何かを期待している表情でこちらを向いてくるシャーペンの傍に立つ、自称阿部。こいつは
無視しておこう。 - 92 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 05:58:19.96 ID:IZ8daTuk0
-
…これが原寸大なら楽園なのになぁなんて思ったりもするが、
残念ながら俺の妄想力も、このサイズで限界のようだ。
自分と同じで、ちっちぇな。
そんな自虐的なことを考えていると、消しゴムの頭を撫でていた
ハサミの女性が声をかけてきた。 - 93 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 06:09:23.23 ID:IZ8daTuk0
-
「ねぇ、貴方、この娘に名前をつけてあげるんですって?」
いきなりだったのもあるし、それよりもダウナー状態に落ち込んでいた俺は
「あぁ…」とマヌケに答えることしかできなかった。チャイナ服の彼女は微笑んで
「ありがとう、見ての通り、この娘、気持ち素直に外に出すのが苦手なのよ。
でも、喜んでた。この娘に変わって御礼を言うわ」優雅に、でも、
心の底から感謝を伝えたいといった様子で頭を下げてきた。
慌てて、俺も頭を下げる、まさかこんなに真摯に感謝の言葉をこの人から
頂くなんて思ってもなかった。 - 94 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 06:25:17.81 ID:IZ8daTuk0
-
赤い女性は笑みを崩さず、話を続ける
「この娘、あなたが落し物の展示会場からから拾ってきたそうじゃない?」
そうだ。たしか、去年度の3月の話になる。
もうすぐ来年度になってしまうというので、生徒会が落し物の処分という
理由でいろいろな落し物を、生徒会室前で展示していたことがあった。
俺は、最終日の終りの時間ギリギリに、
そこを覗きにいき、丁度変えの消しゴムが欲しかったところ
だったので、比較的新しいのを選んで一つもらってきたのを思い出した。
人の落し物ですら獲物になる、
一人で生計をたてるキングオブビンボーな高校生の話である。
- 95 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 06:34:40.07 ID:XCxdSUSU0
-
http://up2.viploader.net/pic2d/src/viploader2d194902.jpg
やっつけごめん
俺は寝るが1は寝るなwwwww
起きてまだ1ががんがってたら俺も本気汁だしてがんがるから
とりあえずがんがれwwwww
- 96 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 06:39:46.58 ID:IZ8daTuk0
-
- 97 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 06:41:44.18 ID:IZ8daTuk0
-
「この娘はね、あなたに運良く助けてもらった。でも、普通に考えて、
たった数百円の私達が持ち主からはぐれてしまったら、また元の持ち主のとこに
戻るか、他の人に拾われるなんて幸運あると思う?」
ないだろうなと、俺は思った。彼女は、俺の気持ちをくみとったようで、話を続ける。
「そして、落し物が一緒になった箱にこの娘は入れられた。たくさんの仲間達と
一緒に、この娘は死を待つ恐怖を経験した。だから、あたしはね、もうこの娘に
そんな思いをさせたくないの」自然、俺と、彼女の視線が、消しゴムの方に移る。
愛しそうに消しゴムの髪をなでながら、彼女は言った。
――だから、大事にしてあげて、あなたには『見える』んだから――
消しゴムの頬にうっすらと涙の後が滲んでいるのが見えた。
- 98 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 06:55:57.32 ID:IZ8daTuk0
-
「わかった、大事にする」
「ありがとう、約束よ」と、彼女はまた、ペコリと頭を下げた。
俺は慌てながら、言葉をつなげる
「しかし、あんた、いい奴だな。うん、いい姐さんをやってるよ」
「ウフフ、いい持ち主には、いいものが宿ることが多いのよ」
自分のことを否定せず、なおかつ相手を褒めるなんて…。手だれだ。
「あと約束はちゃんと守ってね、ウフフ」その外見と同じ赤い炎が、瞳の中でチラリと燃えた気がした。
…最後もきっちりと、締める…手だれだ。 - 99 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 07:05:27.73 ID:IZ8daTuk0
-
最後の締めで、背筋が震えたところで、丁度よく予鈴がなった。
「あぁ、そろそろ行かないと。いい話をありがとな」赤い彼女は
「えぇ」と微笑みながらうなずいて、「また、少し後で」と手を振ってくれた。
ゆっくりとファスナーを閉める。開ける時とはまた違った気持ちで、ゆっくりと。
ペンケースを下のズボンの左のポケットにしまい、右のポケットから携帯を取り出し
時間を見る。あと三分か。それに、先生からメールも来てるや。
- 100 愛のVIP戦士 sage 2007/02/08(木) 07:06:45.59 ID:IZ8daTuk0
-
ふん、熱があろうがおして出て来る君が、休むなんて珍しい。
まぁ、多分外せない用事ができたか、休みたいことでもあったのだろう。
たまには存分に休みたまえ。
しかし、次はちゃんと顔をだせよ。
と返って来た。わかる人には、わかられちまうもんだ。
萎れていた植物が水をもらって、勢いよくその丈を伸ばすように、
元気をもらった俺は、勢いよく屋上を飛び出した。
- 103 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 07:27:10.99 ID:IZ8daTuk0
-
階段を走って降きり、ギリギリのところで授業開始に間に合わせた、
起立の声がかかる直前に急いで席に座る。
さっきの隣の女子が、迷惑そうにこっちを見てきたが、気にしない。そして授業が始まった。
ポケットからペンケースを取り出して、机の上に置く。そして、宿題を机に出そうと
鞄の中をまさぐった。このティーチャーの数学は、宿題の問題を授業の一環として使う。
宿題の問題を、黒板に立たせてやらせるため、やってなかったら恥をかくというシステムだ。
もっとも、ある程度まで書いて、わかりませんでした言えば許してくれるのだが。
- 105 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 07:43:41.70 ID:IZ8daTuk0
-
しかし、一向にまさぐっても、宿題の問題用紙の感触がなかった。そんなばかなと思って、
もう一回調べる。なかった。
調べる。ない。調べる。ナイ。調ベル、なイ。ナイナイなィナい、ナイ!!
その繰り返し、あせりすぎてテンパってきた。
アレ?オカシイヨ、オカシイヨ。朝ちゃんとしたのに、朝、
いいわけできるぐらいには問題用紙を埋めて…キタノ…に?
- 107 愛のVIP戦士 sage 2007/02/08(木) 07:52:58.21 ID:Nj6MFkC10
-
ハサミの姐さんいい人
そして手だれだ。 - 108 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 08:10:19.12 ID:IZ8daTuk0
-
そういや、やった宿題…、鞄の中に『入れた』か?朝の記憶を呼び起こす、時間がなくて慌てて…
筆記用具を、ペンケースの中に放り込んで鞄に入れて、教科書、ノートを入れて、身支度…
コンチクショウ、この俺、やってしまいました。見事に、やった宿題を持ってくるの忘れてしまいました!
バカか、小学生のいい訳みたいだぞ、コレ。
すでに授業が始まっている。隣のクラスのアイツに宿題を借りることもできず、
どうしたもんかと、ペンケースを見つめた。解答なんか書いてないのにね。
隣の人に、見せてもらえれば、てっとり早いのだが
このティーチャーは、授業中宿題を隣に見せることを許さない。
昔、自らの責任は自らで負うべしが座右の銘だと語ってたのを思い出した。
それを、授業に生かしてらっしゃるってわけね、ご立派なことデス。
そして、昨日の宿題の解答を黒板に写す人が選ばれる。
俺が当てられるかどうかは、このティーチャーのいまいち信用できない
無作為摘出の結果次第というわけだ。 - 110 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 08:25:43.15 ID:IZ8daTuk0
-
当たるな当たるなと神に祈る。シンとした、教室の中で、一人ずつ名前が呼ばれていった。
その結果…、
見事に…一番難しい問題に、俺の名前が告げられた。
あっはっは、朝のうちに、いやー、神様もいなくなるのもそう遠くではないと思ったが、
こんなに早くにやってくるとはな、アッハッハ。
隣のあの子が、心底危ないものを見るようにでコッチをチラ見してくる。
今まで、クールにつつがなく、波風をたてないように生きてきたのになんて様だ!
- 111 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 08:41:12.46 ID:IZ8daTuk0
-
当てられた生徒が、黒板に解答を書くために席を立ち始めた。
あぁ、とりあえず、形だけでも前にでていって何か書かなきゃダメなんだろうなと思い、
俺も立ち上がろうとして、少し椅子を引いた。
すると、途端にもぞもぞ、ペンケースが動き出す。やべぇ、バレるんじゃないか?と、
キョロキョロと辺りを見回したが、だれも気づいた様子はなかった、訂正。例の女の子
が今度は哀れみを含んだ顔で俺の顔を見ている。もう、どうにでも思ってくれ。
- 112 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 09:00:35.14 ID:IZ8daTuk0
-
静かにしてくれと言おうと、俺がちょっとファスナーを開けただけで、消しゴムがぷはっと顔を出してきた。
…もはや消しゴムの女の子というより、人面ペンケースと名前を変えたらどうだろうなんて思っていると、
「はやく、もっと広げなさいよ、苦しいでしょ!!」と黒い髪を揺らしながら俺に命令してきた。
なんでこいつ、俺と話す時はこんなに元気なんだろう。
とりあえず、ファスナーの口を広げてやると、
舞うようにペンケースから飛び出してきた。そして、人差し指を俺の胸がある方向につきたてる。
「あたしを、あんたの胸ポケットに入れなさい、ハヤク!!」
俺はなんで?と、顔で表すと、いいから。としか言わない。
眉をひそめる具合を強くしても 、いいから。としか答えない。
- 113 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 09:05:44.09 ID:IZ8daTuk0
-
このままだと埒が明かないので、言われたとおり、
メイドの首ねっこの布地をつまんで、ポケットの中に放り込むと、
急いで前に移動する。
ほとんどのヤツらはすでに書き終わり始めており、
チョーク待ちの数名と他5名ほどといったところだった。
- 114 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 09:08:23.67 ID:IZ8daTuk0
-
ふと、そのチョークを注意して良く見ると、
よぼよぼの病人服を着たおじいさんがしがみ付いていた。
色によって、髪の色や服の色が違ったが総じて似たような姿をしていた。
チョークが黒板に押し付けられるたびに、しわがれた声のなかからも、甲高いこえを発している。
痛そうだ。凄くいたそうだ。
これは、骨粗しょう症の人を無理やり歩かせるのに似ているのではないのだろうか。
たまに、チョークが折れると、デクレッシェンドがかかった声で地面に落ちていく。
…やったことある人にはわかるし、やったことない人には全くわからないが…
SFCゴエモン1の、橋の縁のオタフクを叩くと鳴門の海に落ちていく様に少し似ていた。
- 115 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 09:28:41.06 ID:IZ8daTuk0
-
しかし、今一番気にすることはおじいさいんの境遇ではなく、
目の前につきつけられた、俺に当てがわれた問題だった
問題だけは、ティーチャーが画用紙に書いてあるものを黒板に貼ってくれて
あるので、頭がいいやつなら、ここでわかるのかもしれないが
できの悪いおれには、まるでマジックワーズだ。
…だ、誰かいるぽ? - 116 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 09:29:11.78 ID:jEZqG3kAO
-
なんの援護も出来ないが、期待してる。
頑張れ! - 117 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 09:34:24.75 ID:IZ8daTuk0
-
さて、どうしようか。心の中では、
堂々とわかりませんと書いて、悠々と自分の席に帰るつもりだった。
とりあえず、今はまだほかの人のチョークの音が響いている
コイツにここに来た理由ぐらいは聞いておこう。
「お前、どうしてここに来たんだよ」…応答なし。
「なぁ、黙ってちゃわかんねぇよ」…返答なし。「…、何なんだよ」俺は頭を掻いた。
そうしているうちに、俺にチョークがわたってきた
さっき見たのと同じように必至におじいさんがしがみ付いていた。
- 118 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 09:35:51.64 ID:IZ8daTuk0
-
さて、わかりませんと書いてとっとと帰るかと、
チョークを黒板に当てようとした矢先。
「あんたが、逃げてるからよ」と、メイドが呟いた。少し、心臓が跳ねる。
もう、チョークの音はほとんどない。教室を再び静けさが満たそうとしている。
俺は声を出すことができずに、胸ポケットにいる消しゴムの彼女を睨みつけた。
「あんたが、逃げてるからよ」胸ポケットにいて、負けじと睨みつけてくるメイドは繰返した。
しょうがねぇよ、忘れたんだから。そう思ったから、睨みつけたまま、視線を動かさない。
「いいえ、違うわ。あなたは、最初から逃げてた。
朝の時だってそうよ、あなたは『これぐらい』できたら、いいわけがたつだろ。
ってとこで力を抜いて、止めていたわ」 - 119 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 09:50:11.34 ID:n4qhfGypO
-
頑張り屋さんの1がいると聞いて僕なりにできる事を考えてみました
http://j.pic.to/ab4ih - 120 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 09:53:22.54 ID:GOSaODTOO
-
今北
なんか…文房具を大事にしようかなと思った - 121 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 09:55:47.95 ID:IZ8daTuk0
-
「完璧を求めろってか、くだらない」気づけば口に出ていた。
「違うのよ、私は完璧にこなせとは言ってないわ。壁を
作らないでっていってるの。自分の手で上限をつくらないでって言ってるの。
私は、あなたにこの姿を見せることができたのは3日前からだけど、
あの時拾われてからずっと見てたわ。そう、ずっとあなたを見てた。」
真剣な目で、少しだけ――コイツも我慢したのにでてきてしまったのだろう――
涙で潤ませたその目でしっかりと俺を見据えている。そこで、初めて俺は目を逸らした。
そのあまりにも真っ直ぐな瞳を睨み続けることなんて、俺にはできなかった。
自分の愚かさを見透かされそうで――
自分の汚さを見透かされそうで――
声も、少し潤ませながら、メイドは俺を叱りとばす。 - 123 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 10:00:24.82 ID:IZ8daTuk0
-
「どうしてだろうって思ってたわ。ずっと不思議だった。
でね、今朝あなたの話を聞いてなんとなくだけど、
わかった…気がするの」最後の方は消え入りそうな声で語りかけてくる。
俺はやっぱり、ソイツと目を合わせることができずに、
黒板の方向を向いて固まっていた。初めての経験だった。
今までこんなことなかった。
そう、こんな真摯な目で、自分を変えようとしてくれる意見に出会ったことはなかった。
- 124 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 10:09:27.67 ID:IZ8daTuk0
-
消しゴムの彼女はもう、本当に泣きそうな声になってしまったが俺に囁くのを止めようとはしなかった。
「あなたはきっと、そのことについて
今まで真剣に叱ってもらえる機会を失っていたのねって、
大事な両親を失って、あなたはその機会を失ってしまったのねって、そう思ったの。
あたしはあなたがどういう経験をして、そういう風になったのかはしらない、でもね?」
- 125 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 10:30:55.58 ID:IZ8daTuk0
-
「あたしはあなたに救われたから、今、ここにいることができるの。
だから…あたしじゃ、あなたの過去は変えることは出来ないけれど
だったら…あたしは…、あなたの今を変えてあげたい。
あたしの手じゃ、足りないだろうからっ、他の子たちの力も借り…て――
あなたを、…過去の何かから救……ってあげたい…」
最後のほうは、小さかったり、嗚咽で途切れたりしたが、一生懸命に俺に訴えかけてくる。
そして、ポケットの奥にもぐりこんで細かい嗚咽を重ね始めた。
ちくしょう俺の方こそ泣きてぇよ、
初めて俺を心の底から心配している人を――
初めて俺を心の奥から心配してくれるひとを――こんなにも泣かせてしまった。
- 126 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 10:38:47.41 ID:IZ8daTuk0
-
そのことが俺を涙させようとする。でも、この場所はあまりにも適切じゃない。
そもそも、横にいるティーチャーがこめかみを痙攣させながら俺をみている。
この場をとりあえず、治めないと
目の前の問題を改めて、見直した。目を閉じて深呼吸一つ。
今まで自分を抑えていたものを外す感覚。
俺は目を空けると、左胸のポケットを包むように手をあて、チョークを持った手を黒板に滑らした。
- 127 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 10:52:50.25 ID:ezZzCc0EO
-
学校からだが超ガンガレ
- 128 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 10:53:56.54 ID:IZ8daTuk0
-
あのときのことは、あまりよく覚えていない。
とりあえず、あそこの場所から立ち去りたくて、
自分ののせいで、あの数学の教師に怒られることになったとコイツに思わさせたくなくて
ほぼ、無心でガリガリ書き続けた。
- 129 愛のVIP戦士 sage 2007/02/08(木) 10:54:26.66 ID:IZ8daTuk0
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あ、ありがとう、気合を入れて書いてく…お、グフゥ
- 130 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 11:04:28.17 ID:IZ8daTuk0
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自分ののせいで、あの数学の教師に怒られることになったとコイツに思わさせたくなくて
ほぼ、無心でガリガリ書き続けた。
自分のスペースとして与えられた黒板を、式と言葉で埋めてから俺は自分の席に戻る。
隣のあの子がポカンとしてる、心の中でザマアミロなんて言ってみる。とりあえず何か
悪態をついてみたい気分だった。
椅子に腰をおろした時に、少し乱暴な音がしたが、別に構わない。左胸のポケットに耳を
澄ませると、もう泣いてる声は聞こえなかった、多分疲れて眠ってしまったのだろう。
とりあえず、俺も眠ろう。少し頭を休めよう…何て考えているうちに俺は机に突っ伏していた。
あとから、聞いた話だが、結局あのときの数学の問題は、俺がポケッとしてたせいで
時間が足りず、俺が解いた問題まで進まなかったらしい。まぁ、解いた本人も
寝てしまっていたんで、しょうがないといえばしょうがない。でも、それを
『やった』ことは確かなので、俺はイミもなく満足している。自己満足の典型だよな、コレ。
- 131 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 11:23:17.45 ID:IZ8daTuk0
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それからの授業は、楽なものだった。次の国語は教科書を読むだけだったし、あとは
HRで受験についての話を聞くだけだったからだ。
放課後になり、すでに荷物を片付けていた俺は、凄い勢いで教室を飛び出した。
隣のあの子が頭を抱えたような気がするが、そんなことは気にしなかった
別に急がなくてもそれは逃げやしない。でも、その場所早くいきたかった。
川沿いの桜並木通りから、あえて道を外れて、脇にある公園に自転車を向かわせる。
すると、その公園の真ん中に、川沿いの桜と比べものにならない桜が一本咲いていた。
幹の周りとか、もはや別の樹みたいに太く、樹の下には何個かベンチが置いてあった。
俺は、自分に一番近い、ベンチの一つを選び、桜に背を向けて座る。
おれは出てこいよと、ポケットに呼びかけた。一度、二度目の呼びかけには答えず、
三度目になって、もぐらの子供が穴から飛び出すように、顔だけポケットから出してきた。
不機嫌な顔して、じっと前を見つめてこっちなんて見ようともしない。
- 132 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 11:32:32.78 ID:rmko0uVG0
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追いついた
これはwktk - 134 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 11:56:09.05 ID:IZ8daTuk0
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「なあ?」呼んでみても、返事をしない
「なあ?」呼びかけても、こっちをみない。
「なあ、ありがとな」顔を少しだけ赤く染めたけど、こっちを向かない。
- 135 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 11:59:59.15 ID:IZ8daTuk0
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「じゃぁ、これは独り言だ」俺はそう呟いた。
「そう…」独り言と言ったら返事をしやがる、この天邪鬼め。
今回は目をつぶってやることにして、俺は話を続けた。
「俺の親はな、死んじまったって話したよな」
「……」それは、独り言じゃないわと、言わんばかりに沈黙する。
オーケイ、今日は折れよう、大サービスだ。
「親父は社長でな、うちの母さんは社長婦人になる」
「そう…」やっぱり気のない返事で呟く。
「親父は、完璧主義者でな、何事も完全にこなすことを愛した。
小さなことから積み重ね、堅実に小さいながらも完全なものを目指した。
だけどな、あげくの果て、部下の巨大な失敗の責任をとって
自殺しちまった。部下の失敗は上がとるもんだってな。俺らを残して」
「……」この沈黙はさっきとは違うのはわかる。聞き役に徹してくれているのだ
- 139 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 12:12:47.61 ID:IZ8daTuk0
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「まぁ、失敗の額のほうは、家を売るなりなんなりして、返せる額だったのさ。
貧乏になったが、まぁ、耐えれたよ、親父は正しいことをした。正義の人なんだってね
でも、一番きつかったのは――」
親父が自分の死の代わりに助けたヤツが、実は親父の会社の大事な情報を外に売ってたんだ――
初めて、消しゴムは俺のほうを、心配そうな顔をして、振り返った。
涙の後が頬に少し残っている。昼休みのとは違うんだよな、これ。
しかし、俺はたんたんと語ってるつもりだったが、コイツが振り向くってコトは
どうやら力がこもっちまったらしい、まだまだだな。 - 140 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 12:22:28.60 ID:IZ8daTuk0
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「そいつを恨めば話は早かったんだが、そいつもそのあと、
あっさり交通事故で死んじゃってね、
母さんもどうやら生活があわなかったみたいで、
同じ頃病気になって死んじまった。
残された俺は親父の弟を たよったけど、煙たがられちまったね。
高校をこっちにして、ひとりぐらしをすることにしたのさ」
桜の花びらが、前髪にかかる。俺は、それを取ってメイドのカチューシャに挟んでやった。
消しゴムな彼女は 急なことに体を強張らせたが、差し込まれたのが花びらだとわかると、顔を染めて
花びらを握ったり、離したりした。…、ちょっとでかい羽飾りとみえなくもない…か?
- 141 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 12:25:06.75 ID:IZ8daTuk0
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俺は話を続ける 、
「親父の求めた完全は、人の心まで満たすものじゃなかったんだ。
その上信じていたヤツに、実は裏切られていたんだ。
どうやら、完全を目指すことは隙を生むらしい。
いや、完全にあろうとする心は隙だらけといったほうが正しいかもしれない。
俺はソレを見て勉強さてもらった。
それに俺は大人の世界…いや、違うな、
人の怖さを知ったよ。
今の俺に、虎と、見知らぬ人間と同じ檻に入れられて、
どちらがに恐怖を覚えると聞かれたら――
俺は人を選ぶね。虎は食うか、食わないかだ、単純明快、
腹が減ったら、襲ってくるだろうし、腹さえ膨らんでいたら
近寄らない限り襲われることもない。でも、人はあの手この手で騙そうとしてくる。
どちらが怖いなんて一目瞭然だ…」 - 143 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 12:48:05.03 ID:IZ8daTuk0
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「あなたに信用できる人間はいないの?」
零れ落ちんばかりの悲哀を溜めて、彼女は言った。あぁ、もう、すぐ泣きそうになるんだな、コイツ。
「いるよ。こんなガキンチョが一人で生きていけるわけないし。ただ…ひどく限られてるけどな」
「例えば、誰?」首をかしげて、丸い目で見上げてくる。
心の中で発砲音が鳴る。やっべ、これはちょっと反則だろう。
「先生だ。彼女はすげぇ、俺が唯一先生とよばさせてもらってる人だ。
人として、今のところ唯一尊敬してるひとかも――」
俺はそのあと、あわあわしながら、先生の武勇伝を熱く語って聞かせた。
でも、俺が語れば語るほど心なしか、なぜか機嫌が悪くなるみたいで、話し終わった頃には
完全にむこうに向いてしまっていた。…俺、何か悪いことしたのか?脂汗がながれた。
- 145 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 13:08:42.56 ID:IZ8daTuk0
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「あたしのことは――」かぶせるように、クルリと振り返って
「ねぇ、信じてる?」 質問してきた。
こ、これはぁぁぁぁぁぁぁ、正直エグイだろ!ローブローだろぉぉ。故意か
ワザとかしらんが、これは、エグイ!!今度は、逆に俺がソッポを向く番だった。
思いっきり顔を逸らして、ポケットいる反則娘と目が合わないようにする。
「ねぇねぇ、あたしはー、ねぇー?」なんてまだ、聞こうとしてやがる、どちくしょう。
- 146 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 13:11:28.49 ID:IZ8daTuk0
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俺は、耐え切れずに立ちあがった。やってられるか。
「何?ちょっと、どうしたのよ、もう!!??」
「桜!!」俺は叫んだ。
「何?桜がどうしたの?」上の満開の桜をキョロキョロと見上げるミス反則。
「お前の名前だ!!」
「え、え、え、え???ちょっと、もっといい感じな雰囲気の中で言いなさいよ、そういうの!」
「うるさいうるさい、帰るぞ!!」
「もう、だったら、あなたの名前を教えなさいよ!」自転車に乗ってる時なとそっけなく返す。
「…、絶対聞いても名前で呼ばないんだからこの、バカッ!」
俺は、耳をふさいで自転車に向かって走り出した。 - 147 愛のVIP戦士 sage 2007/02/08(木) 13:13:36.35 ID:IZ8daTuk0
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春の空は柔らかく、桜の花は鮮やかに風を彩る
儚い色は空高く、桜の花でこれからの日々を彩ろう
今まで、自分の力でで壁を作ってきたのなら――、
これからは、自分の力で少しづつだけど、その壁を打ち砕こう――。
一人で歩こうとしてきたこの道も、大勢で進んで行けるなら
それはきっと――
1、うるさいアイツらは文房具 おっしまい - 148 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 13:15:01.23 ID:IZ8daTuk0
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だぁー、ようやく終わった、どちくしょうwwwwwww
- 149 愛のVIP戦士 sage 2007/02/08(木) 13:20:16.89 ID:Nj6MFkC10
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よく頑張った!
おもしれぇよ、これ - 150 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 13:20:39.91 ID:6xhIDPxaO
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- 151 愛のVIP戦士 sage 2007/02/08(木) 13:24:23.11 ID:HQOx0gnr0
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>>1はなんかラノベが大好きなんだろうな。と思った。
- 152 愛のVIP戦士 sage 2007/02/08(木) 13:26:11.92 ID:IZ8daTuk0
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- 153 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 13:30:30.64 ID:AdvTQhEhO
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- 159 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 13:59:30.83 ID:OyfXroDMO
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- 161 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 14:38:14.35 ID:IZ8daTuk0
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続きキボンヌの件、了解した。プロット考えるから。ちょい、時間かかるが待ってなー
- 166 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 15:42:04.28 ID:HAbT4202O
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実は今この話が気に入ってしまって最初からノートに写しているんだ。
手書きで。
時間がかかるからみんな保守手伝ってくださいおながいします
- 167 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 16:06:58.78 ID:IjdTt/+hO
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- 169 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 16:19:06.94 ID:IZ8daTuk0
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閑話 [イン ペンケースⅡ]
4色ボールペン「惚れてるでしょ?」
消しゴム 「惚れてないわよ!」
4色ボールペン「惚れてるでしょ?」
消しゴム 「ほれてないわよ!!」
4色ボールペン「惚れてないでしょ?」
消しゴム 「ほれてるわよ!!…あっ!!!」
4色ボールペン「ニヤリッ…」
阿部高和 「アッー」
- 171 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 16:27:52.03 ID:IZ8daTuk0
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閑話 「新入り」
イレイザー「うふふ、今日は新しい仲間を紹介するわ!」
シザー「あら、急に元気になったわね…、仮眠でもとったのかしら…
いえ、こっちの話よ。
それにしても、英語で呼ぶとあなた、怖いわね。」
イレイザー「今、私は限りなくスナイピングすることを許されている!!」
シザー「いいから、話の腰を折った私がわるかったから、んで、この…子が
新入り? かわいい子じゃない」
イレイザー「私の先達の属性の人が同じコト言ったような記憶がするけど、
まあいいわ、即戦力よ、即戦力!!」
続く
- 172 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 16:34:00.76 ID:IZ8daTuk0
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イレイザー「その名も、水のりたん♀!よ!
作者の腐った脳みその中から、
意外にも最初のメンバーの属性に選ばれることがなかった…
ロリよ、ロリ!!」
水のり♀「ふゅ…」
シザー「あら、かわいいじゃない、かわいいじゃない!!
よろしくね、水のりちゃん(ポンッと肩に手をあてる)」
水のり♀「あっ、らめぇぇぇぇん、プシャー 、ビクビク」
イレイザー「だ、だめじゃない、あなた!!
水のりちゃんは、ちょっと人見知りで涙腺が弱いのよ!!??」
シザー「…それ、ねぇ、ホントに涙腺だけ?涙腺だけ??」
水のり♀「(光悦)(///)」
なんか、水のりって出てきてたので、勢いで作った。後悔はしていない
- 181 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 18:03:50.80 ID:XCxdSUSU0
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今起きた
1ががんがっててびびった
- 183 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 18:30:08.71 ID:AdvTQhEhO
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